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第62話

作者: 雨の若君
美宜はふっと鼻で笑った。「私に手出しできるとでも思ってるの?

信じる?私が苦しいって一言呟けば、司野さんは絶対に私の味方をするのよ?」

素羽は、それが真実だと分かっていた。だが、それがどうしたというのか。

この世で素羽が唯一心から大切に思うのは、たった一人――芳枝だけだ。

芳枝に手を出すくらいなら、自分を殺された方がまだマシだ。

自分がどんなに辱められても、どうでもいい。でも、芳枝だけは絶対に許せない。

その時、不意に美宜の顔色が変わった。

「げほっ、げほっ……何してるの?早く手を離してよ、死んじゃう……」

素羽がまだ状況を理解する前に、誰かの手が彼女を乱暴に引き剥がした。

強い力に体ごと引っ張られ、背中を棚の角にぶつけてしまう。思わず顔が苦痛に歪む。

司野の冷たい声が響いた。「素羽、何してるんだ!」

美宜は司野の胸に飛び込むと、涙でぐしゃぐしゃの顔で縋りついた。「司野さん……」

素羽は棚に手をつき、必死に体勢を立て直す。「どうして私が彼女にこんなことしたか、聞いてくれないの?」

司野は冷ややかな目で言った。「美宜は心臓が弱いこと、知らないのか?」

素羽の喉
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