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第3話

Author: あずきココア
朝、目を覚ました時には、佳之はすでに会社へ向かった後だ。

テーブルの上には、私のために買ってきてくれた朝食が、何種類もきれいに並べられている。

洋食の朝ごはんは嫌いだと何度もはっきり伝えたのに、彼は相変わらず和食も洋食も取り混ぜて、欠かさず用意してくれる。

「いつか好みが変わるかもしれないだろ?先に用意しておくに越したことはないさ。それに、このくらいの小銭はどうってことないし」

そんな風に語る姿にはあまりにも真心がこもっており、まるで今すぐにでも私の手を取ってバージンロードを歩き出しそうなほどだった。

まだお金がなかった頃も、彼は同じだった。

ただ、貧乏なら貧乏なりのやり方があった。月に一度のフルーツ盛り合わせや、よく買ってくれた100円ショップのヘアピン。それで十分だと思っていた。

お金のことで言い争いをしたこともあった。

全財産を賭けて起業なんてするべきじゃない、私たちの家柄じゃ、負けたらおしまいなんだからと私は責めた。

佳之は黙り込んだ。

部屋の隅にしゃがみ込んだ姿は、まるで迷子の子供のようだった。

あまりにも寂しげな後ろ姿。

そんな姿を見せられて、どうして心を鬼にできただろう。

けれど彼が慌てて忘れていったリュックの中に、黒いストッキングと胸元が深く開いたロングドレスを見つけてしまった。

佳之は、私がそういう服を着るのを嫌がっていた。もうそれなりの年齢なんだから落ち着いた格好をするべきだし、そもそも自分の好みじゃないから、と。

つまり、今はそういうのがお好みになったというわけだ。

私は何も言わずにそれらを引っ込め、ジッパーを閉めた。

【亜矢、俺、リュックを忘れていかなかった?触っちゃダメだぞ!中には会社の書類ばかり入ってるから】

佳之からメッセージが届いた。

【うん、触らないよ。会社まで届けようか?】

いつも通りに返信を打ちながらも、私の手はガタガタとひどく震えている。

本当は、問い詰めたくてたまらない。一体どうして、と。

浮気をしているくせに、どうして私を一途に愛しているような振る舞いができるのか。

けれど、彼の言葉を聞くのが怖い。

「あの子のことも愛してるけれど、お前のことも愛してる」なんて。

さらに昔のように下手に出て、必死に許しを請うのだろう。

そうなれば、私はまた絆されてしまうかもしれない。

……
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