Share

第590話

Author: 一匹の金魚
「礼央はあなたを助けることができる。減刑だけだけどね」

萌寧の唇は真っ白で、全身が固まったように動けない。話そうと思っても、喉が締まって声が出なかった。

真衣は目を閉じた。

「うん」

軽々しく一言だけ萌寧は返事したが、それは認めたようなものだ。

「私もただあの大会で勝ちたかっただけだわ。私にとってあの大会がどれほど重要なのか、あなたも知っているでしょ?」

こうなれば。

萌寧は、真衣の前で完全に劣勢に立たされた。

このような感覚は萌寧の心に強い不快感を引き起こした。

萌寧は無意識にそばにいる礼央を見た。こんな時こそ彼は彼女に手を差し伸べてくれるはずだった。

しかし、礼央は微動だにせず、萌寧は理由もなく慌て、背中に冷や汗がにじんだ。

萌寧は歯を食いしばり、真衣を見つめて再び口を開いた。「もうここまで事態が進んだ。どうすれば私たちの間の問題を平和的に解決できると思う?示談で済ませることもできるわ」

ここまで話し合っても、真衣がまだ折れないとは、萌寧には信じられなかった。

真衣は自分が頭を下げて謝る姿を見たいだけじゃないのかしら?自分はすでに頭を下げた。

しかし、運
Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter
Comments (10)
goodnovel comment avatar
洋子
1回目の 薬盛られて…の 事件で 妊娠したなら 2回目の 薬盛られて…で 真衣 妊娠して欲しい。
goodnovel comment avatar
桜花舞
ところで、このお話では、真衣が礼央のことが好きだったっていうことは、周りには知られてなかったんでしたっけ? とすると、礼央は、真衣は延佳が好きだと誤解していたってことなのかなぁ? 真衣は延佳とあまりにも仲が良かったから。 でも、自分は好きだったとしても、 自分ではない人のことを好きな、薬盛られてる相手とするのかぁ。リアルな世界だったら当然抗えなさそうだけどね笑
goodnovel comment avatar
桜花舞
ここから千咲の事件にどうやって持っていくつもりなんだろう? 礼央の意図がわかった気がしたみたいなことが書いてあったけど、真衣、分かったの? 礼央はシラフだったのね、フムフム、ほぉ〜 1回目について、 もしかして、顔がに過ぎていて、延佳の名前呼んだとか? 真衣が相手が礼央だったって知ったのは、目覚めてから? で、やっぱり薬盛ったのは延佳ってことなのかなぁ〜 偶然すぎるって、刺されたこと以外にも、こんな薬盛られることが、たまたま延佳が帰国してからっていうのも含まれてる?
VIEW ALL COMMENTS

Latest chapter

  • 火葬の日にも来なかった夫、転生した私を追いかける   第1703話

    廊下のセンサーライトが消えていく。駐車場に一人立つ麗蘭は、夜風に吹かれ、寒さに身体を震わせた。階下へ降りた時の衝動や切なさ、後悔の念が、夜の闇の中で、ゆっくりと冷めていった。ふと、足の痛みを感じて、麗蘭はようやく我に返った。部屋の窓を見上げると、まるで整理のつかない彼女の心のように、真っ暗だった。彼女は振り返り、建物の入り口へ向かった。あの瞬間、麗蘭は時正が自分を愛し、長年にわたり、心から自分を大切に思い、守り続けてくれていたのだと、確信していた。しかし今、静寂に包まれた夜空の下、少しずつ理性が戻ってきた。そう、夜は人を感情的にさせる。あの写真も、彼が傍にいてくれたことも……彼が自分を愛してくれていたからなのだろうか?それとも、ただ単に――やはり彼は、父に命令された通りに任務をこなしていただけなのだろうか。麗蘭はエレベーターの壁にもたれ、そっと目を閉じた。父は言っていた、彼女を守れと。そして、時正は父に頭を下げて謝罪し、「いかなる処分も受ける」と言った。その時の彼は、依頼人に自分の失態を詫びているようにしか見えなかった。時正は、今まで一度も麗蘭を好きだと言ったことはない。彼女を愛していると、認めたこともない。いつも、「無事を願っている」と言うだけだ。無事――という言葉を聞くと、麗蘭は責任や約束、使命という言葉を連想してしまう。記憶を失う前、ボディガードだった彼は、記憶を失った後も、やはり守護者でしかないのだ。事故に遭えば駆け付け、病気になれば付き添ってくれる。波多野家に脅された時も、彼は密かに手を打って事態を収拾してくれた。しかし、そのどれもが、「榮太郎さんとの約束だから」ということなら、合点がいく。麗蘭は部屋に入ると、明かりをつけないまま、リビングに佇んでいた。窓の外に、まばらな街灯が見える。彼女は膝を抱えてソファに座り、今までの出来事を一つ一つ思い返した。彼女を見つめる時正の眼差しは、深く、重く、優しかった。食事に関しても、彼は彼女の好みをちゃんと覚えていてくれた。こちらが何を言っても、彼は弁解せず、ただ離れた場所から彼女を見守り続けていた。両親の前で、彼はすべて自分の責任だと言った。しかし、職務に忠実なボディガードなら、誰でも彼と同じように行

  • 火葬の日にも来なかった夫、転生した私を追いかける   第1702話

    さらにスクロールすると――麗蘭は指先を止めた。少し若い頃の彼女と時正の写真があった。夕日を背に、彼女が昨夜行った川辺に似た場所で、二人は並んで立っていた。写真の中の時正も、無表情だった。でも麗蘭は、無防備な笑みを浮かべ、彼を見つめていた。こんな眼差しを、彼女が彼に向けることは、二度とないだろう。麗蘭は、さらにスクロールした。一枚、また一枚。クリニック、車内、彼女の玄関前、花火大会、寒そうな雪の降る日……大切な日、ささやかな日常、心温まる瞬間、そんな多くの時間を、彼女は彼と過ごしていた。二人は、本当に長い時間を共に歩んできたのだ。時正は突然麗蘭の生活に飛び込んできたのではなく、ずっと前から彼女の傍にいたのだ。彼女が、「偶然」、「使命」、「責任」だと思っていたものには、根本的に、彼らの歳月が隠されていたのだ。麗蘭の指が、微かに震えた。道理で時正は、自分の好みを熟知し、あんなに優しい目で自分を見つめるわけだ。道理で自分は、記憶を失っても、彼に心を許し、彼といると安心できるわけだ。これは錯覚ではなく、偶然でもない。一方的な思い込みでもない。彼らはずっと一緒に、長く深い歳月を過ごしてきたのだ。忘れてしまった時間は、空白ではなかった。時正が、大切に守ってくれていたのだ。麗蘭の胸に、切なさと罪悪感が込み上げた。彼に言った心無い言葉、冷たい態度。両親の命令に従っただけだと疑ったこと……自分は、何も知らずに、彼に何てひどいことをしてしまったのだろう。彼には感情がなかったわけではない。彼にあるのは責任感だけではない。彼はただ、口に出さないだけなのだ。どれだけ待ったのか、どれだけ我慢したのか、どれだけ傷ついたのか、彼は何も言わない。麗蘭は立ち上がった。まだ微かに足に痛みを感じたが、彼女は気にしなかった。下へ行かなきゃ。彼に会わなきゃ。ちゃんと聞かなきゃ――写真のこと、過去のこと、そして、彼の自分への気持ちは本心なのかどうかを。記憶を理由にして、逃げるのはもう嫌だ。麗蘭は、階下に停まる車に向かおうと、ふらつく足で玄関まで歩き、慌てて靴を履き替え、ドアを開け、急いで階下へ降りた。急がないと、彼がいなくなってしまう。エレベーターが降りる間、麗蘭の胸

  • 火葬の日にも来なかった夫、転生した私を追いかける   第1701話

    「送ろうか?」鳴海が尋ねた。「大丈夫です、一人で帰れます」麗蘭は微笑んだ。「今日は本当にありがとうございました」「遠慮はいらない」鳴海は言った。「気持ちが不安定な時は、仕事に没頭すればいい。多くのことが大したことはないと気づくはずだよ」麗蘭は頷き、地下鉄の駅へ向かった。彼女は夜風に吹かれながらゆっくりと歩いた。足はもうほとんど痛みを感じなかった。麗蘭はふと思った。すべての記憶を取り戻す必要はなく、時正との関係も、はっきりさせなければならないわけでもないのかもしれない。ゆっくりと、日々を過ごすのも悪くない。麗蘭は、クリニックの前に着いた。突然、麗蘭はその場に立ち尽くした。街灯の下に、見慣れた黒い車が停車している。車種やナンバープレートを見て、麗蘭の胸は高鳴った。時正の車だ。彼は自分を……訪ねてきたのだろうか?麗蘭はその場に立ち、指先に力を込めた。今までの平穏が破られ、心に再び複雑な感情が押し寄せた。挨拶をすべきだろうか?「どうしてここに?」と尋ねるべきだろうか?それとも、気付かないふりをするべきだろうか?さまざまな考えが、頭に浮かんだ。昨夜の、彼の気遣いや、両親の前でうつむいていた姿、彼女が彼を追い払った時の、彼の傷ついたような瞳を思い出していた。麗蘭は深く息を吸い、決意した。彼女は目を伏せ、クリニックの入り口に向かって歩き、カードキーを通すと、ドアを開け、エレベーターのボタンを押した。その間、彼女は一度も振り向かなかった。しかし実際は、彼女の胸は激しく高鳴り、心の中は混乱していた。麗蘭は、時正が自分の後を追って来るだろうと思っていた。しかし、彼は来なかった。エレベーターのドアがゆっくりと閉まり、麗蘭は、窓の外を眺めた――車は静かに停車したまま、何の動きもなかった。やはり、彼は追いかけて来ない。上にも上がっては来なかった。ただ、ひっそりと停車した車内から、彼女の部屋に明かりが灯るのを見守っているのだろう。麗蘭はエレベーターの壁にもたれ、そっと目を閉じた。時正は一体、どうしたいのだろう。彼は、ある時は彼女を追い詰め、ある時はきっぱりと身を引く。彼女に気があるような素振りをしたかと思えば、ただ命令に従っているように振る舞う。エレベータ

  • 火葬の日にも来なかった夫、転生した私を追いかける   第1700話

    麗蘭は医師との約束通り、時間通りにシンポジウム会場に到着した。シンポジウムは、市街地の交流センターで行われた。行き交う人々は皆、落ち着いた雰囲気の業界関係者ばかりだった。記憶を失って以来、麗蘭はこのような自身の専門分野に足を踏み入れていなかった。傍にいた鳴海が言った。「焦る必要はない。足の怪我はまだ完治していないし、無理はしちゃいけないよ」麗蘭は軽く頷き、静かに会場を見渡した。来場者の多くが、見覚えのある顔ぶれだったが、記憶に霧がかかったように、彼らの名前が思い出せなかった。しかし、彼らと話をする内に、麗蘭は悟った――かつての自分は、この業界で認められ、尊敬されていたのだ。受付付近で、年配の教授から話しかけられた。「麗蘭さん、ご無沙汰しています。先日、体調が優れないと伺いましたが、お元気そうで何よりです」麗蘭は礼儀正しく応じた。「ご心配いただきありがとうございます。だいぶ良くなりました」また、若い医師や研究者も次々に挨拶に来た。以前共同で取り組んだテーマや、彼女が発表した論文について話す者、「ずっとご指導をお願いしたいと思っていました」と言う者もいた。彼らの目には、偽りのない敬意が込められ、計算も、隠し事も、彼女を心身ともに疲弊させるような煩わしい駆け引きもなかった。麗蘭は一人ひとりに丁寧に対応し、終始笑顔を浮かべていた。記憶を失っていても、これまで培ってきた専門性や応対能力は、少しも失われていなかった。皆と挨拶を交わした後、鳴海が言った。「どうだい?外に出て同業者たちと交流するのも、悪くないだろう?君の能力も、評価も、ちゃんと残っている。誰も奪うことなどできないんだよ」麗蘭はしばらく沈黙した後、「ええ」と返事をした。彼女はその時初めて、鳴海の真意を理解した。鳴海は、彼女に気付かせたかったのだ――記憶を失っても、彼女は川上麗蘭であり、周囲の者たちから尊敬される医師なのだと。彼女の価値は、恋愛や、特定の誰かによって決められるものではないのだ。シンポジウムが始まる頃には、麗蘭の心はすっかり落ち着いていた。壇上で交わされる専門的なやり取りが、彼女の脳裏の奥深くに眠る曖昧な認識を少しずつ呼び覚ましていった。明らかに初めて聞く内容だったが、彼女はどこか懐かしく感じた。久しぶりに感じ

  • 火葬の日にも来なかった夫、転生した私を追いかける   第1699話

    「気分はどうだい?高熱は下がったのかな?」「はい、まだ少し倦怠感がありますが、だいぶ良くなりました」麗蘭は答えた。「ふむ、順調に回復しているようだね」鳴海は続けた。「しかし麗蘭くん、くれぐれも忘れないでくれ。今の君にとって何より大事なのは、心の状態なんだ」麗蘭は呆然とした。「君の記憶喪失は、情緒面での刺激や精神的ストレスと直接関係があるからね」鳴海は真剣な口調で言った。「安定した情緒を保たなければならないんだ。過度な喜びや悲しみ、興奮もできるだけ避けた方がいい。情緒が高ぶり、神経が張り詰めると、今の安定した状態さえも崩れてしまう可能性がある」麗蘭は沈黙した。彼女は誰よりも、情緒を安定させたいと思っていた。いつも、穏やかな気持ちで過ごしたいと願っていた。複雑なことをあれこれ考えずに、平穏な日々を送りたいと思っていた。しかし、身の周りでは、様々なことが起きる。彼女が息もつけないほど、厄介なことが次から次へと起きてしまうのだ。平穏な毎日を望んでいるのに、現実は彼女にその機会を与えてくれない。「ええ」麗蘭は疲れたように返事をした。「できるだけ努力します」鳴海は彼女を見てため息をついた。「君が、大変な日々を送っているのはわかっているよ」「今夜、医学のシンポジウムがあるんだ。君が以前、研究していた分野について話すんだよ。君も参加しないかい?」麗蘭は顔を上げた。「シンポジウム?」「ああ」鳴海は頷いた。「日常生活が辛くて、情緒が抑えられないのなら、仕事で気を紛らわせるのもいいだろう。君は医者であり研究者だ。気分転換ぐらいにはなると思うよ。慣れ親しんだ分野で、専門家と専門的な話をすることで、悩みを一時的に忘れ、混乱した心を鎮めることができるかもしれない。忙しくしていれば、悩む時間もなくなる」麗蘭はぼんやりと医師を見つめた。確かにそうだ。いつまでも恋愛感情や記憶喪失の迷いの中に閉じこもっているわけにはいかない。彼女には専門分野があり、理想があり、やりたいことがあるのだ。時正とのことをあれこれ考えていても仕方ない。まず自分を正常な軌道に引き戻すべきだ。麗蘭は、ゆっくりと深呼吸して、目を輝かせた。「わかりました」麗蘭は頷いた。「参加します。シンポジウムは今夜ですか

  • 火葬の日にも来なかった夫、転生した私を追いかける   第1698話

    麗蘭は、ようやく深い眠りについた。夢の中でだけ優しくしてくれる彼が、ずっと傍にいてくれると思うと、安心できた。時正は、傍で一睡もせずに夜を明かした。-翌日。麗蘭は、ゆっくりと目を覚ました。まだ少し倦怠感は残っていたものの、熱はもうすでに引いたようで、悪寒やめまい、高熱による身体の痛みはなく、喉の痛みも幾分和らいでいた。彼女はソファに横たわり、ぼんやりと天井を見つめた。頭の中に断片的な記憶が甦った――夜の川辺、冷たい風、遠くで見守る影。朦朧とした意識の中で、突然開いたドア……自分を抱きかかえ、薬を飲ませてくれた時正。時正。彼が来てくれた。一晩中、ずっと傍にいてくれた。朦朧とした意識の中で、彼の喉仏にキスをした。薬を飲んだ時に触れた、彼の指先の感触が、まだ唇や舌に残っている。麗蘭は、頬を赤らめた。夢じゃない。少なくとも麗蘭は、夢じゃないと感じていた。彼女は身体を支えながら、リビングを見渡した。全身が、わずかに硬直した。リビングはがらんとしていた。リビングはひっそりと静まり返り、ソファや椅子には動かしたような形跡はなく、誰かがここにいた痕跡は微塵もなかった。昨夜の出来事が、まるで幻だったかのように、リビングは静寂に包まれていた。やっぱり……夢だったのか。麗蘭は手を下ろし、そっと膝の上に置いた。心の中に感じた小さな温もりが、少しずつ冷めていくのを感じた。仕方ない。昨日、麗蘭は時正を怒鳴りつけ、彼を傷つけ、追い払ったのだから。彼がまたここに来て、彼女の世話をしてくれるなんて、あり得ない。高熱のせいで、幻を見ていたのだろう。麗蘭は虚しくなり、そっとため息をついた。時正との関係は、このままなのだろうか?関係を断ち切れないまま、近づいたり遠ざかったりを繰り返す。彼といると胸が高鳴り、心が安らぐのに、つい「借りは作りたくない」などと言ってしまう。時正も、心の内を見せず、「安全を守る」と言うだけ。自分も、過去や理由を尋ねず、気にしていないふりをしているだけ。まるで、張り詰めた細い糸のような関係が、彼女を息苦しく感じさせていた。麗蘭は心の中に渦巻く感情を押し殺し、ゆっくりとソファから立ち上がった。夢であれ現実であれ、日々は続いていく。彼女

  • 火葬の日にも来なかった夫、転生した私を追いかける   第853話

    黒いセダンがゆっくりと高瀬家の実家のある別荘エリアに入っていき、一戸建ての別荘の前に停まった。ここは礼央と真衣の新婚生活用の家だったが、二人が離婚してから、礼央は長い間ここに住み続けている。湊が礼央のシートベルトを外し、彼を車から降ろそうとした。すると、礼央は手を振って、「自分でできる」と言った。礼央は家の中へと歩いていった。壁には二人のウェディングフォトが飾られていた。写真の中の真衣は、目元を細めて幸せそうに笑い、彼の肩に寄り添い、全身で彼を信頼している様子だった。ソファの上には、千咲が幼い頃に遊んだウサギのぬいぐるみが置かれており、耳は少し擦り切れていたが、目立つ場

  • 火葬の日にも来なかった夫、転生した私を追いかける   第879話

    礼央の突然の行動は延佳の計画を狂わせたが、同時に彼は、これ以上待つことはせず、すぐに行動を起こさなければならないと気づいた。彼は携帯を取り出し、ある番号にかけた。「もしもし、俺だ。真衣と千咲の動向を逐一調べてくれ、できるだけ詳細にな。それと、近々礼央とじっくり『話し合い』をするつもりだから、準備しておけ」延佳は電話を切り、立ち上がって窓辺の方に行き、外の夜景を見つめた。-夜は深まっていた。礼央が自宅の別荘に戻り、腰を下ろした途端、湊が書類を持って入ってきた。「高瀬社長、蒔子さんの方は既に人に見張らせています。彼女は電話を切ってから、ずっと別荘から出ていません。それと、延

  • 火葬の日にも来なかった夫、転生した私を追いかける   第878話

    かつて彼は高瀬家からの圧力を耐え抜き、延佳を追い詰めたことからも、その手強さがうかがえる。今や自分は彼の手に落ちてしまった。さっき彼が手を下さなかったからよかったものの、そうでなければ、とっくに囚われの身になっていただろう。蒔子はしばらく休んでから震える手を伸ばし、テーブルの上の携帯を取った。手の震えがひどく、彼女は何度も番号を押し間違え、やっとのことで延佳に電話をかけれた。「もしもし?母さん、どうしたの?」電話口からは延佳の声が聞こえ、何か他のことで忙しいのか、幾分か苛立った口調だった。「延佳!大変なの!礼央が……礼央がさっきここに来たのよ!」蒔子は泣きそうになり、つ

  • 火葬の日にも来なかった夫、転生した私を追いかける   第789話

    少し離れたところで。延佳と葉山蒔子(はやま まきこ)は真衣と礼央の様子をじっと見つめていた。「フン」と、蒔子が短く冷笑し、延佳を見ながら沈黙を破った。「あの二人の仲はいつからこんなに睦まじくなったのかしらね。延佳、あの二人の仲を裂くあなたの手口は、かえって二人を近づけたようね」蒔子の声にはいつもの鋭い皮肉が込められていた。彼女は肩にかけたストールを整えながら、鋭い目つきで遠くの真衣を見つめていた。彼女にとって、高瀬家の後継争いに突然現れた真衣は、いつでも捨てられる駒に過ぎなかった。しかし、延佳は未練があって、真衣になかなか手を出そうとしない。延佳はすぐには返事せず、夜の

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status