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第5話

Author: トマト
家に着いて壁の時計を見ると、すでに午前三時を回っていた。

私は薬を飲み、そのままバスルームへ向かい、熱いシャワーを浴びた。

九年も住んだ家なのに、どこもかしこも馴染み深いのに、そこには私の痕跡が一つもない。

このマンションは蓮のものだ。

内装からインテリアに至るまで、すべてが彼の好みで埋め尽くされている。

私に意見なんてなかったし、あるべきでもなかった。

今にして思えば、「私たちの家」なんて言葉、滑稽でしかない。

熱いお湯が体を打ちつけ、私の意識をより鮮明に覚醒させた。

バスルームから出ると、蓮はすでに帰宅していた。

彼はベランダで電話をかけていた。

とろけるような甘い言葉を、何度も何度も繰り返している。

相変わらずの口説き文句だ。彼が言い飽きていなくても、私の方が聞き飽きてしまった。

胃の底から込み上げる吐き気をこらえ、私は書斎へ向かい、自分のパソコンで退職願を打ち出した。

そして、航空券を明日の早朝便に変更した。

リビングに戻ると、蓮もちょうど電話を終えたところだった。

私の口元を見て、彼は笑みを浮かべていた。

何かを言おうとした彼より先に、私が口を開いた。

「蓮、これ、私の退職願」

差し出された封筒を、彼は受け取らなかった。

整った眉を寄せ、その表情には私が理解できない、理解したくもない複雑な色が浮かんでいた。

すぐに蓮の口元から笑みが消え、表情が氷のように冷え切った。声も恐ろしいほど低い。

「奈緒、いつまでそうやって駄々をこねるつもりだ?」

彼が私の名前を呼んだ時、想っているのが私なのか、それとも「ナオ」なのか、私には区別がつかなかった。

私は自嘲気味に笑った。

「駄々なんてこねてないわ。私たち別れたんだもの、あなたの会社に居座る資格なんてないでしょ。

明日の仕事は、悪いけど他の人に振って。

それから、今までお世話になりました。

この数年で借りたお金、返して欲しければ借用書を書くわよ」

私の声にも、何の感情も籠っていなかった。

蓮は私を見つめたまま、ベッドサイドのテーブルへと歩み寄った。

そして、紙屑の山を掴み上げ、私の顔に投げつけた。

舞い散る紙片を見ると、それは彼がさっき破り捨てた別れの合意書だった。

ただ、そこに書かれていた名前は、私だった。

そして、菜生の合意書は、無傷のままテーブルの上に置かれていた。

私は顔を上げて彼を見たが、心は驚くほど凪いでいた。

九年間、この瞬間のことを何度も想像してきた。

けれど、いざその日が来て、こんなに穏やかな気持ちでいられるなんて思ってもみなかった。

遊び人が心を入れ替えることもあるかもしれない。でも、そのきっかけは私じゃない。

もう信じないし、信じたくもない。

私は予備の合意書を取り出し、再び自分の名前を署名した。

蓮は眉をひそめて私をじっと見つめ、その場に凍りついたように動かなかった。

私は彼の反応を無視し、クローゼットの奥から埃を被った二つのスーツケースを引き出した。

蓮の家に来たばかりの頃に持っていた、私物のスーツケースだ。

派手な色使いで、哀れなほど安っぽく、蓮が飲むコーヒー一杯分の値段にも及ばない代物だ。

九年経っても、この家の中で本当に私に属するものは少なかった。

荷造りを始めてすぐ、二つのスーツケースさえ埋まらないことに気づいた。

すべての準備を終え、私は主寝室には戻らなかった。

荷物を引きずり、予約していたハイヤーに乗り込んだ。

蓮は二階の窓辺に立ち、私が去るのを見下ろしていた。

引き止めもしない。

引き止めるはずもない。

飛び去ったカナリアを本気で追いかける人間なんて、いるはずがないでしょう?

どうせ新しいのを飼えばいいだけ。時間もお金もかかりはしないのだから。

翌日、天気は快晴だった。飛行機は定刻通り離陸準備に入っていた。

しかし、座席についた私のもとに、客室乗務員が慌てた様子でやってきた。

「佐伯様、申し訳ございませんが、一度降りてVIPラウンジへお越しいただけますか。一ノ瀬社長がお待ちです」

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