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愛人を家に連れ込んだ夫を刑務所送りにした話

愛人を家に連れ込んだ夫を刑務所送りにした話

Oleh:  歓喜Tamat
Bahasa: Japanese
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妊娠が判明したその日、私・吉野柚木(よしの ゆずき)は、何気なく夫・高城渉(たかぎ わたる)の車載レコーダーを確認すると、映し出されたのは――彼と、あのヨガインストラクターとの、車中での情事だった。 画面の中の渉は、私が聞いたこともないような卑俗な言葉を、興奮に任せて吐き散らしている。 映像を見せて問い詰めた。彼は一瞬たじろいだが、すぐに言い訳めいた口調に変わった。 「医者に言われただろ?妊娠の安定期まではダメだって。君と赤ちゃんのことを思えばこそ、外で解決したんだ! 所詮はその場限りの遊びだよ。俺の心はいつだって、君だけに向いているんだから……」 この、開き直ったような口ぶりに、吐き気がこみ上げてきた。 この腹の中の命を、私を縛る鎖にしようというのか。 そっと手を下腹に当て、俯いたまま薄く笑った。 「うん、わかった。信じるから」 遊びたいなら存分に遊べばいい。私が、とことん付き合ってやる――心の中で、静かに、そう呟いた。

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松坂 美枝
松坂 美枝
クズ男女の非道さに真っ向から立ち向かった主人公が立派だった クズ男女はふさわしい末路 主人公は幸せになって良かった
2025-12-13 10:56:49
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第1話
妊娠が判明したその日、私・吉野柚木(よしの ゆずき)は、何気なく夫・高城渉(たかぎ わたる)の車載レコーダーを確認すると、映し出されたのは――彼と、あのヨガインストラクターとの、車中での情事だった。 画面の中の渉は、私が聞いたこともないような卑俗な言葉を、興奮に任せて吐き散らしている。映像を見せて問い詰めた。彼は一瞬たじろいだが、すぐに言い訳めいた口調に変わった。「医者に言われただろ?妊娠の安定期まではダメだって。君と赤ちゃんのことを思えばこそ、外で解決したんだ!所詮はその場限りの遊びだよ。俺の心はいつだって、君だけに向いているんだから……」この、開き直ったような口ぶりに、吐き気がこみ上げてきた。この腹の中の命を、私を縛る鎖にしようというのか。そっと手を下腹に当て、俯いたまま薄く笑った。「うん、わかった。信じるから」 遊びたいなら存分に遊べばいい。私が、とことん付き合ってやる――心の中で、静かに、そう呟いた。渉は一瞬呆然としたが、すぐに大喜びで私を腕の中に引き寄せた。彼の体に染みついたタバコの匂いと、濃厚なクチナシの香りが混ざり、甘ったるくて胸がむかむかした。私は吐き気をこらえ、うなずいた。 「ええ、赤ちゃんのためなら、何でも我慢する」渉は私を離し、さっきの口論で乱れたネクタイを直した。 「やっぱり君はしっかりしてるよな!ちょうどよかった、サプライズを用意してたんだ」彼は振り返り、外に向かって呼びかけた。「真凛、入ってきて」ドアが開き、タイトなヨガウェアに身を包んだグラマラスな女性が入ってきた。正にあの録画の主役、青沼真凛(あおぬま まりん)だ。彼女は着替えていなかった。はだけた胸には無数のキスマークが生々しく、頬の赤みもまだ引いていない。どんなに強い香水も、あのいやらしい情事の匂いを消しきれない。真凛は私を見つめ、挑発と得意げな表情を隠そうともしない。渉は彼女の手を取って、あっけらかんと紹介した。 「君のために、特別にプロのマタニティヨガインストラクターを手配したんだ。こちらは青沼真凛さん、これから、指導しやすいようにうちに住み込んでもらうんだ」手のひらがじんと痛んだ。愛人を家に連れ込み、しかも私のためだと言い張った。渉、あなたは「厚かましい」の極みだね。
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第2話
その夜、私は食卓に料理を並べた。真凛が、ブロッコリーを一箸、渉の茶碗によそった。かつて大嫌いだったブロッコリーを、今では彼は美味しそうに食べている。「料理の腕、上がったな」渉は真凛に料理を取り分けながら、私におざなりな褒め言葉をかけた。真凛は甘えた笑みでそれを受け、そして私を見て眉をひそめた。 「柚木さん、お料理の腕は確かですけど……このエビ、剥き方が雑ですね」 そう言うと、エビをお皿に戻し、嫌そうな顔をした。渉はすぐに表情を引き締め、私を責めるような口調で言った。 「柚木、どういうことだッ!?エビ一匹も、きちんと剥けないのか?」私はうつむき、皿に戻されたそのエビを見つめた。それは、渉が以前、こだわって食べていたエビの塩茹でだった。付き合っていた頃、エビを食べる時はいつも彼が剥いて、私の口に運んでくれた。 「君の手は絵を描くためのものだ、エビ剥きみたいなことは、夫の役目だ」と。今、その絵を描く手はエビを剥き、さらにけなされるまでになった。夫という存在は、無言のまま愛人の傍に立ち、私を辱めた。「……もう一度、剥き直す」 私はもう一匹のエビを取り、鋭い殻の縁が指先を切った。鮮明な痛みが、混濁した思考を引き裂いた。真っ赤な血のしずくがにじみ出て、白いエビの身を染めていった。私は指先の痛みを感じ、無意識に手を振って、その血のついたエビ肉を彼の前に投げてしまった。渉は眉をひそめ、顔に嫌悪を浮かべた。そしてため息をつき、ティッシュを差し出した。「どうしてそんなに不注意なんだ。次からこんな手間のかかるものは作るな。最初から剥きエビを買ってくればいいのに」上辺だけの心遣いだった。渉は忘れている。昔、「剥きエビは鮮度が落ちる」と彼自身が言ったことを。渉は忘れている。「これからずっと、エビは俺が剥く」と約束したことを。彼の愛情は、剥きエビよりも早く鮮度が落ちた。口先の約束だけが、いつまでも重くのしかかる。かつての私は、彼の口から出る「一生」という言葉を、愚かにも信じ込んでいた。私は紙でその血まみれのエビを包み、ゴミ箱に捨てた。彼が触れた手の甲を、こすりながら拭った。彼は私の感情にまったく気づかず、真凛に優しい笑みを向けた。 「柚木は過保護に育てられてきたもんで、こうい
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第3話
渉と真凛が戻ってきたのは、翌日の昼過ぎだ。真凛の手には、高級ブランドの紙袋がずしりと下がっており、その顔には満ち足りた笑みを浮かべている。ソファに座っている私を見ると、彼女はわざわざ袋を目の前に差し出した。 「あら、柚木さん。見てください、社長がこれ全部私に買ってくださったんです。こんなにたくさん持っても使いきれませんけど。フフフッ、せっかくですから、柚木さんも一つお選びになりません?私、気前よくプレゼントしますから」それは私が以前「いいな」とつぶやいた、シーズン限定のバッグだった。あの時、渉はなんと言ったっけ?「こんなバッグ、見栄えだけだ。君は外出も好きじゃないんだから、買っても無駄だよ」その「無駄」なバッグが今、真凛の腕に掛かっている。ちらりと見ただけで、私は言った。 「いいですね。青沼さんに似合ってます。シーズン限定ですから、欠陥品か何かじゃない限り、中古市場にはまず出回らないんですよね。青沼さん、そういう『訳あり品』を見つける嗅覚、さすがですね」真凛の笑みが引きつり、目尻が一瞬で赤くなった。「ごめんなさい、柚木さん……だって、これは社長が……私がトレーニングで大変なのをわかってくれて、心を込めて選んでくれたものなんです!もし私のことで柚木さんがお気を悪くされるなら、私は……」 彼女は唇を噛み、深く傷ついたような表情を見せた。 「……でもお願い!せめて社長の心だけは、踏みにじらないでくださいませんか」渉の表情が暗くなり、車のキーをガシャンとテーブルに叩きつけた。 「柚木、何をでたらめ言ってる!これ、正規店で買ったんだ。レシートだってある!」私は無邪気に目を瞬かせた。 「あなた、怒ってるの?でも、私ただ何気なく言っただけよ。だって青沼さんって雰囲気……確かに、地に足がついていらっしゃるもの。てっきり、倹約家の方かと」真凛は辱められながらも涙をこらえる様子を見せた。渉は彼女をぎゅっと抱き寄せた。 「妊婦とやり合わなくていい。あいつ、今はホルモンのバランスがおかしいんだから」 そう言うと、彼は私を振り返り、失望に満ちた目を向けた。 「柚木、人の好意を、わざわざ悪く取る必要あるか?」私はうつむき、目元の冷たさを隠して従順に振る舞った。 「ごめんなさい。ただ一
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第4話
渉は、私に何らまともな仕事を与えなかった。フロアの片隅に、ただ小さなデスクを一つ置いただけ。彼のオフィスからは遠く、入り口には近い。知らない人が見たら、新人の警備員かと思うだろう。意外だったのは、真凛までもが会社に入ったことだ。「プライベート・ヘルス・コンサルタント」という肩書で入社したが、実質的には渉の秘書のようになっている。体の線がくっきり浮き出るスーツに、腿の付け根すれすれのスカート。一日中、腰をくねらせて渉のオフィスに出入りしている。オフィスのドアはほとんど閉め切られたまま。それでも、中から漏れる真凛の甘えた声や、戯れ合う音は、なぜかいつも外まで聞こえてくる。以前はサボり気味だった社員たちも、私と真凛が来てからは、好奇心に目を輝かせている。たまに仕事で中に入る社員は、皆、気まずそうな顔で出てくる。そして、私の方へちらちら視線を送ってくる。同情、嘲笑、そして茶番を見物するような面白がりの視線だった。「上流階級って大変ね。公然と浮気する旦那様と、じっと見て見ぬふりする奥様。こんな忍耐力があれば、何だって成功するわね」「吉野家はもう高城家には敵わないって聞いたよ。資金繰りが危ないらしいし」「政略結婚に愛なんてあるわけないでしょ。所詮は利益の交換だし。あの子も、本当に社長の子かどうか……」給湯室で、女社員数人が声を潜めて噂話に花を咲かせている。私はドアの外に立ち、コーヒーカップを手にしている。吉野家の資金繰りが危ない?渉が、都合のいい噂を流しているらしい。私が彼なしでは生きていけないと、皆に思わせるためだ。そうすれば、たとえどんなに辱められても、私が我慢するのは当然だという空気になる。私はドアを押して中に入った。噂話はぱったりと止んだ。女社員たちは慌てて散り散りになり、忙しいふりを始めた。オフィスの前に戻り、ドアをノックしようとしたその時、中から、真凛の甘ったるく、わざとらしく嬌声が聞こえた。「社長……もう、ゆっくり……ゆっくりして……柚木さんが外で聞いちゃう……あっ!」「わざとこんな格好して、こうなるの望んでただろ?この小悪魔が!」渉の荒い息遣いに、真凛の震える声が混じっている。私は手を上げたまま、固まった。ドアを叩くことも、立ち去ることもできず
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第5話
それは、渉が最近最も力を入れているプロジェクトであり、吉野家を丸ごと飲み込むために仕掛けた踏み台でもある。だが、彼は知らない。そのプロジェクトの核心データは、とっくに私によって偽物とすり替えられたのだ。そして、本当の罠が、ようやく作動し始めた。夜、渉には大切なビジネスパーティーがある。彼は最初、私を行かせるつもりはなかった。妊婦の私を連れて行けば、自分の体裁が悪くなると思ったからだ。だが、私はどうしても行くと譲らなかった。「今日は高城家にとって大事な日なのよ。私が妻として出席しなければ、あなたの評判にも傷がつくわ。それに、私たちが仲良くして、高城家と吉野家がまだ手を組んでいる姿を、皆に見せたいの」渉は私の言葉に納得した。何しろ今、外部では高城家の資金繰りを疑う声も上がっている。夫婦仲の良さを見せつけておけば、人心を落ち着かせるのに役立つ。「わかった。じゃあ、ちゃんとした服を着て来い!俺の面目を丸つぶれにするなよ」彼はそう吐き捨てると、真凛を連れて支度に出かけた。鏡に映った、少し憔悴した自分を見つめた。面目?ふん……覚悟しておけ。あなたに一生忘れられない「面目」を、見せてあげる。……パーティー会場は、杯を交わす音と、煌びやかな衣装が織りなすざわめきに満ちている。渉は私の腕を取り、深い愛情に満ちた顔をしている。真凛は秘書として後ろに控えている。しかし、彼女の目は一瞬も渉から離れず、時折、ワインを渡すふりをして、こっそりと渉の指を絡めた。渉はそれを密やかに愉しみ、応酬の合間を縫っては、こっそりと真凛と視線を交わした。私はそれを見ていないふりをし、微笑みながら次々と来る賓客への挨拶をこなした。やがて、私は化粧室に行く口実を作った。休憩室の前を通りかかった時、中から聞き覚えのある声が聞こえてきた。中から、聞き慣れた声が聞こえてきた。ドアはわずかに開いている。隙間から、渉が真凛を抱きしめ、陰険な表情を浮かべているのが見えた。「心配するな。あのプロジェクトが成功すれば、吉野家は完全に終わりだ。そうなったら、あいつは用が済み次第、すぐにでも追い出すさ。子供のことは……」彼は冷たく笑った。「生まれたらすぐに引き離す。あついが産後うつで育てられない、っ
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第6話
宴会場のスクリーンには、渉と真凛が裸で絡み合う姿が、残酷にまで鮮明に映し出されている。耳を覆いたくなるような卑猥な言葉の数々。そして、先ほど休憩室で、彼がどう吉野家を乗っ取り、私を狂わせるつもりだったか――その計画の全容が、録音と共に流れた。会場は一瞬、静寂に包まれ、その後、爆発的な騒動に変わった。フラッシュが狂ったように閃き、記者たちが殺到した。「高城社長!この映像についてご説明を!」「ご岳父のご家業を乗っ取り、さらに奥様を精神病院へ入れる計画は本当ですか?」「これが高城グループの企業文化ですか?パートナーを欺き、妻を踏み台に?」渉は人だかりの中心に囲まれ、必死で壇上に押し寄せて私からマイクを奪おうとしたが、私があらかじめ手配しておいた警備員にがっちりと押さえつけられた。彼は顔を真っ赤に染めて叫んだ。「柚木――!この悪女めっ!!よくも俺を陥れたな!」真凛はもう泣き崩れ、隅で震えている。顔を手で覆おうとするが、怒りに燃える人々に押し流され、高価なイブニングドレスは引きずり回されてボロボロに乱れて、見るも無残な姿に崩れている。私は高壇に立ち、この茶番を見下ろすように眺めた。涙がちょうどよいタイミングで頬を伝った。私はそっと下腹に手を当て、声を詰まらせながら、ひとつひとつ、血の滲むような言葉を紡いだ。「私はずっと……ただ従順に、ただ耐えていれば、いつか彼が心を入れ替えてくれると信じていました。この子を授かった時でさえ、彼の振り返る姿を願っていました。でも、私は間違っていました。私が一歩引くたびに、彼は一歩どころか十歩、百歩と踏み込んできました。彼は私の実家を潰すだけでは足りず、私の子供までも奪い、私を気の狂った女に追い込もうとしました」私は涙に濡れた目を上げ、人混みをまっすぐに見据え、渉を射すくめた。「渉、私は離婚します。そして、あなたを、不貞、不正な財産移転、そして……故意の精神的迫害で告訴します」そう言い終えると、私は警備員に囲まれて背を向けた。背後には、私が引き起こした地獄が広がっている。今夜を境に、渉は終わりだ。高城グループの株価は急落し、取引先は契約を解除し、銀行は融資の返済を迫るだろう。――そして、これはまだ序の口でしかない。全てのメディアがこのスキャ
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第7話
「渉、覚えてる?妊娠がわかったあの日、私はどんなに嬉しくてあなたに伝えたかったか。なのに、見せられたのはあの映像だった。あなたは『君のためだ』『遊びだ』と言った」私は軽く笑い、しゃがみ込んで彼と目線を合わせた。「今、私も遊んでるだけよ。あなたが家も財産も失うまで、遊んであげてる。どう?私が仕組んだこの遊びは、気に入った?」渉は目を見開き、信じられないという様子で私を見つめた。「……わざとだったのか?最初から、俺に罠を仕掛けていたと?」「ええ、そうよ」私は立ち上がり、傘の縁を伝う雨滴が、彼の前に跳ねた。「『家の正妻はいつだって君だ』って言った瞬間から、私はこの日を待っていたの。渉、あなたへの報いが、今、届いたわ」私は振り返り、ゲートの中へと歩き去ると、背後から、渉の絶望的な咆哮が追ってきた。「柚木!子供のことも少しは考えろよ!」私は一瞬、足を止めた。子供?私は平坦な下腹に手を当てた。彼が真凛を家に連れ込んだその一週間後のことだ。生理の不調を口実に、個人の医師を自宅に呼び、こっそり手術を受けた。術後の腹痛に耐えながら、彼とあの女の前で、慎ましい妊婦を演じ続けた。そんな男の子供を産むわけか。妊婦検診の結果証明書もあるが、それは私が医師に用意させたものだ。彼を麻痺させるための道具に過ぎない。そして、彼を地獄へ送り込む「死」への通行証でもある。「警備員さん、この狂犬を追い出してください。これ以降、吉野家の土地を汚すような真似はさせないで」……渉は、それでもあきらめていない。騒ぎを大きくすれば、吉野家が口止め料を出すとでも思ったのだろう。彼はさらに、ビジネスホテルの会議室を借り切り、「真相説明会」なるものを開いた。ライブ配信の画面には、髪は乱れ、目はくぼみ、わずかなカメラの前で声を詰まらせながら、私がいかに陰険残忍な女であり、以前から不貞を重ね、挙げ句には子供までも他人の子だと主張する姿が、ありありと映し出された。彼はこの方法で私の評判を貶め、吉野家を脅して金を引き出そうとした。しかし彼は、資本の力を甘く見過ぎていた。そして、世間が「クズ男」に対してどれほど冷酷かということも、まるで分かっていない。彼の発言は、私を微塵も傷つけず、かえって彼
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第8話
私が刑務所付属の病院を訪れた時、渉は病床に横たわり、体中にチューブがつながれている。私の姿を見て、彼の眼球が激しく動き、喉の奥から「グッ…グッ…」という音が漏れた。それは助けを求めるようにも、呪うようにも聞こえた。私はベッドの傍まで歩み寄り、そっと掛け布団の端を整えた。まるで優しい妻みたいに。「あなた、お見舞いに来たわよ。お医者様が言うには、あなたはきっと長生きするんですって。たとえ一生このベッドの上でも、刑務所の中でもね。ちゃんと生きて、あなたの罪を贖ってちょうだい」私は彼の耳元で、ささやくように言った。「そうだ、気になってるでしょう?私たちの子供のこと」彼の呼吸が一瞬で荒くなった。彼の目に、一瞬、複雑な感情が走ったのを見た。それは後悔か、それとも期待か?もうどうでもいい。「秘密を教えてあげる。実はあの子は、とっくにいないの。あなたが私を裏切ったと知ったその時、この手で消したの。だって、あんたみたいな父親の血が流れてるなんて……穢らわしくて耐えられなかったから」渉の瞳孔が急に縮み、喉の奥から、せき込むような「ゲッ…ゲッ…」という荒い音が漏れた。心電図モニターが、鋭く耳障りな警告音を長く鳴らした。看護師たちと医師がなだれ込み、場内は混乱に包まれた。私は冷たい目で、彼らが除細動器で彼の胸を押すのを見つめている。彼の体は電流の刺激に無力に跳ね、また落ちた。やがて、あの一直線は再び波打つように戻った。彼は、生き返った。残念だ。死ぬ権利さえ、彼には与えられていない。私は背筋を伸ばし、最後にもう一度彼を見た。そして背を向けた。鉄格子の窓から陽の光が差し込み、私の体を照らした。暖かい。この長い長い劇は、ようやく幕を閉じた。……渉が刑務所に入って一年後。吉野グループは私の指揮の下で危機を脱し、私自身はビジネス界で「鉄の女」と称されるまでになった。手綱をとる手は、雷のごとく速く、情け容赦なく、周囲からは「冷血」とさえ囁かれた。誰もが言った。柚木社長は、感情のない金儲けマシーンだと。知っているのは私だけだ。私の感情は、あの映像を見た昼下がりに、とっくに死んでいたことを。この日、私は会議中だ。秘書が突然入ってきて、少し慌てた様子だ。「社
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第9話
渉は刑務所で息も絶え絶えに三年をしのいだ。その三年間、私は二度と彼を訪ねようとはしなかった。ただ時折、弁護士から話を聞いただけだった。彼の獄中生活は悲惨を極めていたという。下半身不随で失禁が絶えず、面倒を見てやる者はいなかった。同房者たちは彼を不潔がって嫌い、しょっちゅういじめに及んだ。食事を奪い、彼のベッドに水をかけた。彼は毎日、私や吉野家の者に会わせてくれと泣き叫んだが、誰も取り合わなかった。彼は世界から忘れ去られたゴミのように、暗い片隅でゆっくりと腐っていった。そして、あの冬のことだった。インフルエンザが刑務所を襲った。もともと体の弱っていた渉は、瞬く間に感染した。高熱が下がらぬまま重篤な肺炎を引き起こした。寒さの厳しい冬の夜、彼は果てしない苦痛と後悔のうちに、最後の息を引き取った。彼は目を見開いたまま、最後まで瞼を閉じることはなかった。手には、くしゃくしゃに丸められた写真が握りしめられていた。私たちの結婚式の写真だ。写真の中の私は、幸せいっぱいの笑顔を浮かべていた。そして彼の目には、計算が潜んでいた。火葬の日、私は行かなかった。ただ、彼の遺骨を下水道に撒くように人に頼んだ。彼の穢れた人生が、最後には同じく穢れたものへと還っていくのだ。渉のことを片づけた後、私は自分に長い休暇を与えた。理人と共に、スイスへスキーに出かけた。アルプスの雪に覆われた山頂に立ち、目の前に広がる白一色の世界を見て、私はこれまでにない自由を感じた。「柚木、準備はいいかい?」鮮やかなスキーウェアを着た理人が、私に手を差し伸べた。「うん、できたよ」私は彼の手を握った。そして、身を躍らせた。耳を切り裂くような風の音。過ぎ去った日々への訣別の叫びのようにも、新たに始まる人生への祝福の歌のようにも聞こえた。着地の瞬間、理人がぎゅっと私を抱きしめた。私たちは雪の上で転がり、大笑いした。笑いながら、涙があふれた。「柚木、僕と結婚してくれ」彼は突然片膝をつき、懐から指輪を取り出した。壮大な式も、無数のスポットライトもない。ただ、空いっぱいに舞う雪と、二つの偽りのない心だけ。私はその指輪を見つめ、そして、目の前のこの、私しか見ていない男を見つめた。
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