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第370話

Penulis: 清水雪代
いつも寡黙で感情を表に出さない悠人が、幸せそうな顔つきになった。明日香は一度も相手の女性に会ったことがないのに、母親の本能で彼女を受け入れていた。

そもそも、悠人は滅多に他人に恋愛のことを話さない子だ。

しかし今回は、明日香の言葉に珍しく応じた。「ええ、母さん。彼女は俺を幸せにしてくれる。人を好きになって、同時にその人からも好かれることが、こんなに素晴らしいとは思わなかった」

智美に出会う前、悠人は一生誰かに心を動かされることはないと思っていた。

彼は仕事熱心な男でもある。

一生一人で過ごしてもいいとさえ思っていた。

どうせ兄が結婚して、彼に跡継ぎが生まれればそれで十分だと。

しかし、智美の登場が、彼の乾いた心を潤してくれた。

この恋愛が、今まで感じたことのないときめきと喜びをもたらしてくれたのだ。

「本当によかったわ。私、本当に嬉しい」明日香は悠人の手の甲を撫で、心から喜んだ。

彼女は悠人がまだとても幼かった頃のことを覚えていた。

彼は和也とは違っていた。和也は活発で明るく、悠人は口数が少なかった。

当時は悠人が言葉が遅いのではないかと心配していた。

その後、悠人が少し大きくなっても、やはり口数は少なかった。

和也が同じくらいの年齢のときには、すでに隣の幼い美穂にまとわりついていた。

しかし悠人はどんな子供にも興味を示さなかった。

彼女はそのことをとても心配し、悠人は感情表現が乏しいのではないかと思っていた。

でも悠人は普段は感情を表に出さないものの、とても賢く、自分の意見もしっかり持っていた。

自分で大学と専攻を選び、家を離れて遠い南の都市に行きたがり、家からの援助を一切断って起業した。

明日香は悠人が優秀で有能だと知っていたが、彼の結婚のことだけが心配だった。

恋愛を一度でもしてくれたら。

明日香はいつもそう願っていた。

今、その願いが叶って、もちろん嬉しかった。

「私のことは心配しすぎないで。ちゃんと世話をしてくれる人がいるから。二日ほど家にいたら帰りなさい。恋愛し始めたばかりなんだから、彼女を長く待たせちゃダメよ」

悠人が尋ねた。「母さんは、俺が付き合ってる女性のことを聞かないの?」

「あなたが見込んだ人なら、信頼するわ」

悠人は笑った。「母さんは絶対彼女を気に入ると思う。彼女もきっと母さんを好きになるよ
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