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第5話

Autor: サンシャイン
「ステラ・ノヴァ」展の開幕当日、結衣はアシスタントとして片隅に座っていた。

顔色は蒼白で、濃いメイクで病み上がりを隠していた。

展示会は順調にスタートしたかに見えたが、莉乃が挨拶のためにステージに上がってから事態は一変した。

彼女はブランド名を間違えて読み上げ、プロモーション映像をかけ間違え、最後の大トリとして紹介したゲストは、なんと買春スキャンダルが発覚したばかりの男性タレントだった。

会場は騒然となった。

ブランド側の代表者は怒りで顔を青筋立て、その場で内容証明を送りつけ、1億6000万円の損害賠償を請求した。

莉乃は司の胸に泣きついた。「わざとじゃないの……どうしよう?」

司は険しい顔で結衣を呼び出した。

会議室の空気は重苦しかった。

ブランド側の代表者が書類の束をテーブルに叩きつけた。

「ゲストの不祥事、ブランド名の誤読、進行の不手際!これが君たちの『ステラ・ノヴァ』展だというのか!?」

司は上座に座り、落ち着き払っていた。

彼は顔を上げ、ドアのそばに立つ結衣に目を向け、感情の欠片もない声で言った。「今回の展示会は橘結衣がすべての企画と実行を担っており、決定権はすべて彼女にあった。桜井は名義上のものであり、実務には一切関与していない」

結衣は勢いよく顔を上げ、声を張り上げた。「柊司!タレントのリストを勝手にすり替えたのは彼女よ!司会進行も彼女がやったの!あなたも知っているはず……」

「俺が何を知っているというんだ?」彼は言葉を遮り、冷ややかな視線を向けた。「契約書に書かれているのはお前の名前だ。メールの決裁もサインもお前がしている。証拠は揃っており、責任の所在は明らかだ」

結衣は怒りで全身を震わせた。「桜井さんは業界の基本的なルールすら分かっていない!それなのに、私に全責任を押し付ける気!?」

莉乃が突然席から立ち上がり、司に抱きついて泣き叫んだ。「司くん、私本当に何も知らない!進行表は全部結衣さんが送ってきたものよ!私があなたの子を妊娠したから、私を陥れようとしてこんなことをしたのね!」

「嘘をつかないで!」結衣は怒鳴った。「白黒を逆転させないで!」

「いい加減にしろ!」

司がテーブルを強く叩き、湯呑みが激しく揺れた。

彼は結衣を睨みつけ、はっきりと告げた。「橘結衣、これ以上騒ぐなら、今すぐ法務部に告訴させるぞ。それにお前が昔、母親の治療費を立て替えてくれと泣きついてきたことも、メディアに公表してやろうか?」

結衣の顔から瞬時に血の気が引いた。

母親のことは、彼女にとって一番の弱点だった。

莉乃はその隙を突いて、泣きじゃくりながら追い打ちをかけた。「司くん……彼女に賠償金を払わせましょうよ?1億6000万なんてどうせ払えないだろうけど、会社の規定通りに処理すればいいわ……」

司は冷たく結衣を見下ろした。「1億6000万円の違約金を払うか、それとも会社の規定に従うかだ。三年間この業界から消え、公式に謝罪しろ」

結衣はその場に立ち尽くし、全身が冷え切るのを感じた。

昨晩、徹夜で修正した第十版の進行表を思い出した。莉乃に勝手に削除されたタレントの確認書を思い出した。胃から血を吐きながら空港までゲストを迎えに行ったことを思い出した。

すべての努力が彼らに泥水のように踏みにじられ、その上罪を被れと言われているのだ。

彼女は不意に笑い出した。笑って涙が出た。

「分かった」彼女の声は風のように軽く、どこか虚ろだった。「私が認める。すべて私一人の責任よ」

彼女はゆっくりと社員証を外し、テーブルの上に置いた。

金属がテーブルにぶつかり、甲高い音を立てた。

「私が謝罪する」彼女は言った。「そして今日から三年間、二度とこの業界には足を踏み入れない」

結衣は背を向けて歩き出した。

司は彼女の背中を見つめながら、なぜか妙な不安に駆られた。

結衣がこの仕事を手に入れるためにどれだけの努力をしてきたか、彼は知っていたからだ。かつて彼女は履歴書を抱え、何十社もの面接を受け、数え切れないほど落とされた末に、ようやく彼の会社に入ったのだ。

それをこんなにもあっさりと手放すというのか?

司の胸が大きく波打ち、彼は思わず後を追って飛び出した。

エレベーターホールで、彼は結衣の手首を強く掴んだ。

「橘結衣!誰に向かってそんな態度をとっている?悔しいのか?だったら最初から俺の会社になんか入るな!」

彼女は抵抗することなく、ただエレベーターの階数表示が切り替わるのを静かに見つめ、独り言のように呟いた。「あなたの言う通りね。あなたが私に与えてくれたものには、最初からすべて見えない値札がついていたってこと、もっと早く気づくべきだったわ」

司は手を離さず、むしろさらに強く握りしめた。

「値札だと?だったらしっかり計算してみろ。お前の母親の命はいくらだ?お前が住んでいるマンションはいくらだ?お前が着ているブランド服はいくらだ?俺がいなければ、お前なんて何の価値もないだろう!」

彼女はようやく彼を見上げ、その目は荒野のように空虚だった。

司は彼女のその死人のような目に激怒し、最も残酷な言葉を吐き捨てた。「なんだ?今更清楚ぶるつもりか?俺のそばにいた頃はそんな計算なんてしてなかっただろう?自分から服を脱いで俺のベッドに潜り込んできたのはどこの誰だ?」

その言葉は鋭い刃となって、彼女の心臓を深く抉った。

エレベーターを待っていた数人の同僚が一斉にうつむき、聞こえないふりをした。

結衣の顔は蒼白だったが、彼女は不意に微笑んだ。

彼女はゆっくりと腕を引き、彼の手指を一本ずつ剥がしていった。

司は空中に手を浮かせたまま、その場に凍りついた。

チンと音がしてエレベーターのドアが開いた。

彼女は中に入り、一階のボタンを押した。

ゆっくりと閉まるドアの隙間から、最後に彼を一瞥した。

「あなたの言う通りよ。きっちり清算しましょう。あのマンションからは今夜中に出て行くわ。今日から、私はもうあなたに何も借りはない」

エレベーターが下がり始めた。

誰もいない静かな廊下に一人取り残された司は、なぜか自分の胸の奥のどこかが、ぽっかりと空洞になってしまったような錯覚を覚えた。
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