INICIAR SESIÓN「......分かりました!! 神楽坂 小夜、白蛇神様のために一肌脱ぎましょう!!」
「......ほう? してどのように?」
白妙に問われ、小夜は両手を組み、頭を傾げる。
――すると何を思ったのか、質問攻めを始めてきた。
「美人が好き? イケメンが好き?」
「......何の真似だ?」
「いいから!!」
「......美人だろうな」
「綺麗系? 可愛い系?」
「どちらでも」
「年上派? 年下派?」
「......一体何の真似だ!! こんな質問ばかり!!」
白妙はいい加減うっとしくなり、大声を出した。
小夜はそれに気にすることなくキラキラした瞳で、白妙を見つめる。
「だってだって!! 運命の相手は好みの相手の方が良いじゃないですかぁ!!」
「それは、好みの問題で運命とは関係ないであろう」
小夜は「そうですか......」としょんぼりと肩を落とす。
白妙はそんな小夜の様子に「人間とは面白いものだな」と感心した。
「それにしても......恋愛の神様なんだから自分で探せるんじゃないんですか?!」
「......神にもできないことはある。万能ではないのだ。」
「......本当に分からないんですか?」
「分からぬ。だからこうして頼んでおるのだ」
白妙は小夜の頭に手置くとわしゃわしゃと撫で回した。
一瞬にして小夜の頭はボサボサだ。
「な、なにするんですか!!」
「......いや。特に意味はない」
小夜はなんだか不思議な気持ちになった。
――昔、同じように撫でられたことがある気がする。
「ねぇ、白蛇神様」
「ん? なんだ?」
「......私達初めましてだよね?」
「......あぁ。」
白妙の動きが止まる。
ほんの一瞬。
その紅い瞳が、寂し気に揺れた。
嘘だ。小夜は瞬時にそう思った。
この人は、自分を知っている。
でも、問い詰めても答えてはくれないだろう。
そんな気がした。
まぁ、今は白妙の運命の人を探すのが使命だ。
「じゃあ、一緒に探しましょう!!」
「?」
「白蛇神様の運命の相手!!」
小夜は満面の笑みを浮かべる。
「私が絶対に見つけてあげますよ!!」
その言葉に、白妙はニヤッと笑った。
「言ったのだぞ? ならば、期待するとしよう」
「ハイ!!」
その笑顔を見つめながら、白妙は心の中で呟いた。
――相変わらずだ。
あの頃から何も変わらない。
自分が誰かも知らないくせに。
それでも誰かのために、一生懸命になれる。
「......そう言えば、いつまで"白蛇神様"と呼ぶ気だ?」
「へあ?」
「......白妙でよい」
白妙はなんだか照れ臭そうに言った。
今まで気高くいたのに、急に可愛らしく感じた。
「では!! ゴホン。白妙様!!」
「あぁ」
こうして――。
女子高生巫女・神楽坂 小夜と、白蛇神・白妙による、
"運命の相手探し"が始まったのであった。
小夜達は休み時間になる度に、校舎中を歩き回った。 しかし、運命の相手らしき人物は見つからない。 やがて放課後になり、小夜達は人気のない屋上で集会のような集まりをしていた。 小夜は気づいた。 人数が一人多いことに。「な、な、な、何しれっと入り込んでるんですか!! 誰ですか、あなた!!」「あらー? 久しぶりに人間に見つかったわぁ」 その人物は、小夜が羨むほどのグラマラスな身体つきで、頭には可愛らしい猫耳が。「......そなた、もしや神楽坂神社にもいたか?」「え? 白妙様、お知合いで?」「違う。こやつの気配を感じたことが何度かあるのだ」「なるほど......。てことは、人間では、ない?」「......そなた、何者だ?」 白妙は謎のグラマラス美女を目を細めながら見つめる。 グラマラス美女はケラケラと笑いながら、透に抱き着いた。「な、なんですか?! なんでオレ?!」「アタシは、この子の守護霊よ。しゅ・ご・れ・い♡」「......の割にはずっと傍にいなかったようだが?」「アタシは猫だからねぇ。猫は気ままな生き物なのよ。......まぁ、目を離した隙に貧乏神に憑りつかれて近づけなくなったけれど」「ひぇえ! おいらを睨まないでおくれよ!!」 グラマラス美女は貧丸をジトーっと睨みつけながら、「シャー」っと威嚇をした。 そんなやり取りを見て、小夜はあることに気づいた。 ――名前を聞いていない。「あのぉー、ところでお姉様のお名前は何と?」「ん? なぁに、このちんちくりんな子は」「ち、ちんちくりん?! 失礼な!!」「だって、貧相な身体つきだし......、今まで神社に居たのにも気がつかなかったみたいだし?」「ぐっ......」 小夜は何も言い返すことが出来なかった。 たしかに、白妙に出会うまでは神社の娘にも関わらず、霊感が全くなかった。 そのため、白妙が言うまで彼女の存在に気がつかなかったのだ。「まぁ、いいわ? アタシの名前は"小判"。小判お姉様とお呼び」「......小判お姉様」「うふふ。素直な子はだぁい好きよ♡」 小判はそういうと、小夜をギュッと抱きしめた。 ――小夜はというと。「くっ!! この柔らかい感触が羨ましい!! 小判お姉様!! どうしたら私もグラマラスになれますか?!」「こればっかりは遺伝だから♡
学校に着くと、多くの生徒達で賑わっていた。 普通に話すと周りに不審がられるので、小夜は小声で白妙に話しかける。「......白妙様、どうです? それっぽいのいます?」「いや。おらんな」「......そもそもどうやって探すんです?」「我には人間の言う、"運命の赤い糸"とやらが見える。それがないものが候補だな」「どうして繋がっていない人なんです?」 小夜が気になったことを問うと、白妙はため息をつきながら目を閉じた。「我には自身の赤い糸が見えぬ。だから、人間も赤い糸が憑いていない者が我と繋がっている可能性があると考えている」「なるほど......ん? "考えている"? 確定じゃないんですか?!」 小夜は器用に小声で叫んだ。 白妙はそんな小夜にムスッとしながら小夜の頬をつねった。「いひゃい。いひゃいれふ......ふう」「なんならそなたの運命の相手を見ても良いのだぞ?」「え?!」 白妙のその言葉に反応したのは何故か透であった。 小夜は、何故透が? と思ったが声には出さなかった。「安心しろ透。そなたは別の誰かと繋がっておる」「誰かって誰?!」「......近くにいないと相手までは分からぬ」 透は、運命の相手が小夜ではないという現実にガッカリしながら、「これももしかして貧丸のせいか?」と透に引っ付いている貧丸を睨みつける。 ちなみに今貧丸は、白妙によって"憑りつく"ことが出来なくなったので、"引っ付く"ことで満足している。「小夜。そなたの赤い糸は......?」「白妙様? どうしたんです?」「......いや、何でもない」 白妙に見えた小夜の赤い糸。 ――小指には絡まっているのに切られたかのように先がない。 見えないのではなく、先がないのだ。 白妙も初めて見る状態なため、思わず口を閉じた。「白妙様ぁ、私の運命の人はいるんですか? 私も乙女の端くれ! 気になっちゃいますよぉ」「......あ、あぁ。いる。いることには間違いないから安心するがいい」 白妙の言葉に「やったー!!」と喜ぶ小夜と、ガックシと肩を落とす透。 白妙は小夜の小指から目が離せないでいた。「小夜。そなた、好いている相手はいないな?」「な、なんですか急に。神様も恋バナしたくなっちゃうんですか?」「そんなわけあるか。この戯けが。......そなた
学校へと向かう途中、白妙が透をじっと見つめ始めた。「白妙様? どうしたんですか? ハッ!! まさか透に運命を感じて......!!」「違うわ!! ......透」「は、はい!」「そなた、一体何を連れている?」「......へ?」 白妙はそういうと、透の背に手を伸ばし、何かを引っぺがすような動きを見せた。 すると、透は「あれ?」と首を傾げる。 ――なんだか、肩が軽くなった気がする。「し、白妙様、一体何をしたのですか? なんだか肩が軽く......」「そなた、気がついていなかったのか? そなたにこれが憑りついておったのだ」 白妙はそういうと、ずいっと何かを見せてきた。 が、何を持っているのか見えない二人。 白妙はそんな二人の様子に、「ハァ」っとため息をつくと、神力をその手に持った物に注ぐ。「お? おぉ? なんだか力が強くなった気がするぞ?」「だ、だ、誰ぇええ?!」 急に目に見えるようになった人物に小夜は驚きの声を上げる。 白妙は、首根っこを持ったままその人物に目を合わせる。「......そなた、貧乏神だな? 何故透に憑りついている?」「びびび貧乏神?!」「......いやぁ、強すぎない霊力が心地よくて」「透。そなた、不運が続いていたのではないか?」 白妙にそう言われ、透は少し考え込む。 ――そう言われてみれば思い当たる節は幾度となくあった。 子供の頃は、幼稚園にお弁当を持っていくのを忘れたり、小学校では忘れ物をしょっちゅうしたり。 最近は、財布を落とすことに始まり、傘がないときに限って雨が降ったり、テスト前にシャーペンが壊れたり、自販機で飲み物を買おうとすると小銭をばらまけたり...... 透はそれを全て「人生ちょっとついてないな」くらいに済ませていたが――。「今、そなたが考えていること全てこやつの仕業だ」「いやぁ、この子ほんっとに運が悪くてねぇ」「!! お前のせいかぁああ!!」 透は貧乏神の胸ぐらを掴み、ぶんぶんと揺さぶった。「そ、それにしても今まで見えなかったのにどうして見えるようになったの?」「我が見えるように貧乏神に力を注いだ」「ちょっとちょっと。貧乏神っていうのやめてくれる? おいらには"貧丸"って名前があるんだから」「......あまり変わりない気がするけれど」 透は貧丸から、「ギブ.
こうして学校へと行く事になった白妙。 小夜が掃除の後始末をしているのを見ていると、境内に入ってくる人間の気配を察知した。「おい、誰か来るぞ」「え? あぁ、それなら......」「小夜、おはよう」「おはよう、透! ......ハッ!! 白妙様白妙様!!」 小夜は何かを思いついたかのように、白妙を呼ぶ。「なんだ?」「......彼とか、どうです?」「......は?」 小夜の斜め上の発言に、白妙は鳩が豆鉄砲を食ったように目を点にする。 どうやら小夜は透も候補になるのではと考えたらしい。 ――そして。「物は試しです!! さぁ!! ぶちゅっとどうぞ!!」「小夜!! そなた何を考えている?! 我にそんな趣味はない!!」「趣味と運命は別物です!!」 小夜は力強く白妙の背中を押す。 それに倣い兎月も一緒になって小夜の手伝いをした。「さ、小夜? うーちゃん? なにしてるの? と言うか、そのキラキラした人は誰?!」「説明は後!! とりあえず、この人とキスして!!」「は、はい?! いくら小夜の頼みでもそれは聞きたくないよ!!」「我もお断りだ!!」 小夜と兎月は白妙を押すのをやめ、ため息をついた。「まったく。我儘はダメですよ? 今からそんなのでどうやって運命の相手を探す気ですか?」「......小夜、オレにも説明してもらえるかな?」 透がそう言うと、小夜は胸を張って透に簡単に説明をした。「この方は神楽坂神社の祀る白蛇神様の白妙様!! ちょーっと諸事情があって、依り代に戻ることが出来なくなってしまって、依り代に戻るための"運命の相手"を探すことになったの!!」「......それで、なんでキス?」 小夜は「ふっふっふ」と怪しい笑みを浮かべた。 透は何やら嫌な予感がして、小夜を直視できない。「それはだね、透君。白妙様は"運命の相手と口づけをすること"によって依り代に戻ることが出来るのだよ!!」「運命の相手?」「そ!!」 小夜は何故だか得意げだ。 しかし、それに反して、透の顔は芳しくない。「それってさぁ、小夜が手伝う必要ある?」「......なんだと?」「だってそうじゃないですか。神様なんでしょう? 貴方。自力でどうにかしてみたらいいんじゃないですか?」 透は白妙に対して敵意をむき出しにしている。 小夜はピリつきだ
四人で楽しく朝食を囲んだ後、小夜は食器を洗っていた。 すると白妙が、洗い終わった食器を拭き始めたのだった。「し、白妙様?! なにされているんですか?!」「なにって......食器を拭いている」「神様にそんなことさせられません!!」「......今更我を神扱いするのか?」 そう言われてしまえば小夜はぐうの音も出ない。「あ!! 学校に行く前に参道の掃除をしなきゃいけないんだった!!」「......話を逸らしたな」「そ、そんなつもりは決して!!」「......おい、小夜。お前ちゃんと着替えてから行けよ? まだ部屋着じゃねえか」「は、はーい!!」 小夜は洗い物をササッと済ませると、自室へと戻って行った。「白妙様。後は私がやりますので......」「ん? そうか? でももう終わる。気にするな」(神様に洗い物の手伝いをさせて気にしない方が出来ない!!)「あぁ、もう終わった。これより先は頼んでも良いか?」「え、ええ! もちろんです!!」 白妙は権蔵に後を任せると小夜の部屋へと向かった。 そんな白妙に気がついた兎月も一緒についていった。「小夜。我も外に連れて行ってはくれぬか?」「き、キャーー!! 覗きぃ!!」「違う!! ......そなた、神に対する態度がなってないのではないか?」「わ、分かりました!! ごめんなさい!! だから出て行ってぇ!! 着替えられない!!」 小夜はそう言うと白妙と兎月を廊下へ押しやった。 白妙はしばらく呆然とすると、我を取り戻し――(神を締め出すとはいい度胸だな......)「......お待たせしまし、た......って、怒ってらっしゃる?」「そなた、初めてだぞ? 我を締め出す行為をしたのは」「うっ......で、でも!! 乙女の着替え中に入ってくる方が悪いと思いませんか?!」「お主のような貧相な身体になんとも思わない」「......さいですか」 小夜は肩を落とした。 (......たしかに!! スタイルがいいわけではないけれども!!)「そうだ。我も掃除に連れて行ってくれ。どのように神社が保たれているのか知りたい」「......神様も掃除するんですか?」「ん? 我は見ているだけだ」「見てるだけ?!」 小夜のそんなツッコミに、白妙は、"神の役割は人の働きを見守ること"と言って
あれだけ叫んでいたというのに、小夜はもう何もなかったかのように朝食の支度にとりかかる。 その間、白妙と権蔵は膝を突き合わせて話をしていた。「ほ、本当に、本当にあの白蛇神様なのですか......?」「くどい!! 何度言わせる気だ?」 何度も聞き返す権蔵に白妙は少し、いや、大分呆れていた。「我はこの神楽坂神社に祀られている白蛇神、白妙である」「あ、あぁ......まさかこの目でお目にかかれる日が来ようとは......光栄です!!」 権蔵はあまりにも神々しい白妙に手を合わせながら涙する。 しかし、権蔵には疑問が一つあった。「それにしても......何故急にお姿を現したのでしょうか?」「ん?あぁ、それは......」「あああああ!! ご飯できたよぉ!!」「む。小夜、そなた自分のやったことを隠すつもりか?」「う......」 権蔵はそのやり取りを不思議そうに見ていた。 "隠す"とは一体どういうことなのだろうか?「権蔵。そなたの娘は我の依り代を倒したのだ。それにより我は目覚めたと言うわけだ」「ハァ?! 依り代を?! 倒した?! 小夜、一体どういうことだ!!」「ま、まあまあ落ち着いて。そのお陰で白妙様にお目にかかれたんだからさ!」 権蔵は頭を抱えた。 落ち着きのなさは昔からあったとはいえ、まさか依り代を倒すとは......。「それにしても、そんなに騒ぐことなの?昨日まで像だったんだよ?」「その像が依り代、神様だったんだろうが!!」「そっかぁ」「納得するな!!」 小夜と権蔵が親子漫才を繰り広げていると、白妙はため息をつきながら呆れた。「......騒がしい親子だな」「いつものことだ」 そんな白妙に、兎月が笑いながら答える。「そ、そんな事よりご飯できたよ? 冷めないうちに食べよう?」「......まったく。お前はマイペースにも程がある。大体なぁ......」「あーもー!! ごめんなさーい!! ほら!! ご飯ご飯!! ――神様と守護霊ってご飯食べるの?」「必要はないが食べることならできる」「小夜のご飯?! 僕も食べたいぞ!!」 兎月の言葉に、小夜は嬉しくなり、二人の分のご飯も用意しておいてよかったと思った。 具沢山の味噌汁のとてもいい匂い。 それに焼き鮭にふわふわの玉子焼き、ほうれん草のおひたし。 朝からバラ