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朱音小夏
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Novels by 朱音小夏

野良猫、御曹司に拾われる

野良猫、御曹司に拾われる

気まぐれな猫のように、夜な夜な男から男へと渡り歩く"天ヶ瀬 夜斗"。 ある日の夜の事だった。夜斗はいつものように酒場で今夜の相手を探していた夜斗は、一人の男に声をかけられる。しかし、その出会いは罠であった。薬を盛られ、路地裏で暴漢達に襲われた夜斗を救ったのは高級なスーツを身に纏った謎の男ーー"京極 玲央"だった。 いきなり現れた彼は夜斗に「僕の所で飼われないか」と話しを持ちかける。 そうして始まった奇妙な同居生活。けれど、玲央には夜斗にだけは知られてはいけない秘密があった。 それは彼が夜斗を探し求め続けていたという事ーー。
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Chapter: 野良猫、仕事?
朝食を取り終えると、玲央は仕事に行く準備をする。夜斗はそんな様子を先程まで交わっていたでかでかとしたベッドに寝転びながら眺めていた。「なぁ、仕事って楽しい?」「...突然どうしたんだい?」「質問に質問で返すなぁー!」と夜斗は憤慨した。玲央はフム。と考えると、一つの答えを導き出した。「僕は楽しいかな?ヨルがいてくれると思うとなおの事ね。」「...じゃあ、オレがいなかった時はどうだったんっだ?「んー、探し物どころでまるで仕事に手が付かなかったよ。」「まぁ、与えられたことはこなしてたけどね。」そう玲央が答えると、夜斗は「ふーん」と何かを考えていた。そして玲央の考えを斜め上を行く事を言いだした。「なぁー。オレも働いてみたい。」「え?!」「...そんなに驚くことかよ?だってヒマなんだもん。」「...あんまり聞きたくはないんだけど、今までの人達のところにいたときはどうしてたの?」玲央の質問に夜斗はニヤリと笑みを浮かべると、ベッドから転がるように降りる。そして玲央に絡みつく様に抱き着く。まるで「これでわかるだろ?」と言わんばかりに。「ヨル君の生き方については分かっていたつもりだったが...身売りの真似事をしていたのかい?」「真似事じゃねーよ?まさにそれ♡ガキん頃から仕込まれてたから。」「...それは、どういう...?」「あぁー、また話それた!なーなー、逃げないからオレも働いてみたい!!」世の中の人間が"働きたくないでござる"精神だと言うのになんて素晴らしい心持なのだろうか。だが正直夜斗を必要以上にこの部屋から出したくはない。...なら、この部屋でできる仕事をさせれば良いのではないか?「ヨル。実はうちの会社で人手不足の部署があってね。その穴埋めと言っては何だけどやってみるかい?基本PC業務だから家で仕事してもらうことになるけど。」「PCは得意!前男んところで株かじったから。WordもExcelも一通りできる!」これは驚いた。こんなのただの野良猫なんかじゃない。血統書が付いていてもおかしくないくらいだ。「それじゃあ急だけど今日僕と会社に来てくれるかい?簡単な面談とテストをしないといけないんだ。」「オレから言っといてアレだけど今日の他の人の予定とか聞かなくていいん?そーゆーとこの担当さんとかさ。」「僕からの推薦って事なら大抵通るし、時間は
Last Updated: 2026-06-17
Chapter: 野良猫、愛知らず
あれから2人は甘い一夜を過ごした。幾度も幾度も戯れ合い気が付けば夜が明けていた。「んン...もう朝になるじゃねえか...。アンタ元気すぎ(笑)」「それだけヨルが魅力的すぎるんだよ?まだまだ足りないくらいに...」「ストップ。あんまりガッツクと飽きが来ちまうかも知んねえだろ?今夜まで我慢。な?」「それにアンタ仕事だろ?」そう言われてしまえば玲央も手が出せない。「仕方がない。今のところは我慢しよう。その代わり...また今夜僕のためだけに可愛く鳴いてくれるかい?」「フハッ。欲張り坊ちゃんだな。...いいぜ?お前のテクも気に入ったし...オレ達相性バツグンみたいだし?」「そう言ってもらえると嬉しいよ。...愛してるよ、ヨル。」玲央がそう言った瞬間、夜斗の顔が暗く曇り、下を向く。そんな夜斗を不審に思った玲央は「ヨル?」と声をかける。「...オレは愛だの恋だのする気はねぇよ。ただ、生きていく術が"コレ"だっただけ。この顔に産んでくれた親には感謝してるがそれだけ。オレは"野良猫"の前に"捨て猫"なんだよ。...誰も本気でオレを愛さない。それに、オレも誰も信じない。」「ヨル...」「だから、オレにそんな言葉をかけるな。求めるな。...いいな?」夜斗の闇を宿した瞳に見つめられ、玲央はゾクリとし、一筋の冷たい汗が背中をつたう。「いいんだぜ?オレの事は"都合のいい猫"とでも思ってくれれば。それならオレも気が楽だ。」言葉は軽々しいものなのに、玲央は自分の愛が伝わっていない事を悲しく思った。そして、それと同時に"愛を教えたい"そう思ったのだった。「ヨル。今はそれでいい。だけれど僕は本気だ。本気で君を愛したい。君が信じられないというなら信じられるまで何度でも、なんでもする。「フハッ。...アンタ結構重いな?」「...褒め言葉としてとっておこう。さあ、それより今は朝食をとる事にしよう。トーストと目玉焼きでいいかい?」「アンタが作るのか?」夜斗は驚きの声を上げる。こんな坊ちゃんが目玉焼きとは言え料理をするとは...。そう思ったのが顔に出ていたのか、玲央は「フフッ」と笑う。「こう見えて料理は得意だよ?誰かさんに食べてもらえるのなら、何でも作るよ?」やはりこの男の愛は大きく、重い。自分が押しつぶされてしまうかと思うほどに。
Last Updated: 2026-06-16
Chapter: 野良猫、溺れる
ー浴室での行為も悪くない。そんな感想を抱いた夜はその疲れをとるようにジャグジーに浸かる。「お前、手馴れてるな。男とヤった事あんの?」「いや?女性からは嫌という程お誘いはあるけれど、男性の相手はヨルが初めてだよ。」「...今サラッとモテ自慢したな?」「コノヤロー!」と夜斗は浴槽の中で玲央に戯れつく。玲央はそれを嬉しそうに受け止めると、夜斗に「コッチを向いて?」と言い深い口づけをした。浴室に響くは蜂蜜のように甘ったるい吐息に玲央は満足気だ。「あぁ...こんなにも幸せでいいんだろうか?」「なんだ?急に。もしかしてオレとヤって天国見れたかよ?」「ソッチは自信あるんだぜ?」そう言う夜斗は猫というよりまるで女豹のようだった。「アンタのテクも悪くなかった。いや?寧ろオレの方が天国見たかも。」そう言うと誘うように、絡みつくように怜央に抱きついた。夜斗は思った。コイツが何を企んでいてもいい。この男を手離すのはもったいない、と。「レオ。決めた。アンタを正式に飼い主だとみとめてやる。拾ったんだ。ちゃんと最後まで責任とって面倒みてくれよ?」夜斗の言葉に玲央は満面の笑みを浮かべた。「もちろんさ!ヨル。大事にするよ。君は僕の宝だ...!」「...宝って。野良猫相手に大袈裟だな。」口ではそう言いつつも満更でもない夜斗であった。「さぁ、そろそろ上がろうか。のぼせてしまうよ。」「それもそうだな。...な。ベッドで続き、しようぜ?」「ヨルが望むのなら、望むままに。」玲央はそう言うと夜斗の手を取りそっと口づけを落とす。その様子に夜斗はゾクリと欲が身体を駆け巡った。"あぁ、この男は自分のモノなのだ"、と。果たして溺れたのは玲央?ーそれとも...。
Last Updated: 2026-06-16
Chapter: 野良猫、酔う
夜斗と玲央はフレンチを楽しんだ後、直ぐさまタワマンへとトンボ帰りをした。夜斗はリムジンの中で、酔い醒ましに買った水をゴクリと飲んだ。酒に酔って火照った身体に冷たい水はよく沁みる。「ハァ...食べたし飲んだなぁ...」「満足してくれたかい?」「飼い主初日としては合格!アンタ一体何者なんだ?それくらい教えてくれよ。こうして専属の運転手がいるくらいだし、さぞ良いとこの坊ちゃんなんだろ??」夜斗がそう言うと玲央は少し考え込むように黙った。なんて答えようか。そう考えているようである。「...何処にでもいる会社経営者の息子だよ。他のところよりは大きい会社だけどね。」「てことは次期社長?!オレとそんなに歳変わらなそうなのに。てかアンタ今いくつ?」「28才だよ。」夜斗は驚いた。まさか自分より2つ年下だったとは...。「オレは年下に猫扱いされてるのか...」「はは。君は年上に見えないから大丈夫だよ。」「...ディスってんのかよ?」「人聞きの悪いこと言うなぁ。ホラ、着いたよ。僕らの家に。」喋っているうちにタワマンへとたどり着いたようだ。そうだ。あのジャクジーを楽しむんだった。「なぁなぁ!ジャクジー!ジャクジー入りたい!」「...ホント、ヨルは猫のようにコロコロと気分を変えるね。見てて飽きないよ。」「早く早く!」と玲央を急かす夜斗に玲央はクスリと笑う。そして最上階の部屋に着くとそこら中にポイポイと服を脱いでいく。パンツ一丁になった所で浴槽にお湯をはる。待っている間あの無駄にでかいベッドに飛び込もう。そう考えていると夜斗は玲央に手を引かれ抱きしめられる。「お、おい...?どうした?」「ヨル...君はいつまでも変わらないでおくれ。」「?どういう事だ?...まさかあれくらいのワインで酔ったか?」「酔った...そうだね、僕は君という存在に酔っているかもしれないな。」そう言いながら玲央は夜斗の頬に手を添えて口付けを交わした。酒の味がするキスは何度もしてきたので慣れている。酒臭いはずなのに、自然と嫌な気はしない。あぁ、気持ちいいな。そう思いながら夜斗は玲央のスーツを脱がしていく。「...一緒に入るか?」「魅力的なお誘いだ。...断るはずが無いだろう?」そうして二人は浴室へときえていった。
Last Updated: 2026-06-16
Chapter: 野良猫、餌付けされる
夜斗は野良猫の様に警戒心を静かに持ちながら玲央の後に着いてタワマンの外へと出た。そしてここへ来た時に乗っていたリムジンに再び乗り込む。「さぁ、ヨル。約束通りフレンチを食べに行こうか。」「!フレンチ...!!」...警戒心は何処へやら。"フレンチ"の言葉に釣られて夜斗は涎を垂らした。そんな夜斗の様子に玲央は微笑ましいものを見る目を向けた。そしてリムジンを走らせると、いつもの酒場の前を通り過ぎ、高級フレンチ店へと辿り着く。店内に入ると玲央は店員に何やらカードを手渡していた。「?なんだ、そのカード。」「ここは完全会員制なんだよ。だから予約なしでも来れるんだ。」「...今までにも高級店に連れてって貰ったことは多かったけど、ここまでスゴい所は...初めてだ...。」夜斗はキラキラと目を輝かせながらこれから食べる料理に心を踊らせ席に着く。そして、アミューズ、オードブル、スープ、メインディッシュ...と次々と料理が運ばれてくる。それを慣れた手つきで口へと運ぶ夜斗に玲央は感心した。「驚いたな...。ここまで手慣れているなんて。作法がとても綺麗だ。」「パパや男どもの中には金持ちが多かったからな。こういう場所でのマナーは一通り身につけてある。」「...気に食わないな。」「え?何?」ボソリと呟く玲央に夜斗は聞き返すと、玲央は笑みを顔に貼り付け「何でもないよ」と答えた。「あぁ、そうだ。これを渡しておこうと思って。」そう言う玲央の手には黒いカードが。「?なんだ...ってコレ...ブラックカード...」「これで好きなだけ買い物していいよ。あ、勿論ネットでね?外に出る時は僕と一緒の時だけ。」「ヨルは僕の飼い猫なんだから、分かるよね?」とサラリと軟禁宣言をしたのである。オレはもう自由気ままな野良猫には戻る事は許されないのだろう。そう悟った夜斗なのだった。「...まぁいいぜ?アンタがオレを満足させてくれるような男であるのなら、な?」そう言うと夜斗はワインを口に含む。その様子に玲央は満足気にニコニコと笑うと、「君を満足させられる男になれるよう、努力しよう。野良出身の猫が逃げないようにするのが飼い主の役目だからね。」と言う。ワイングラス越しに夜斗を見つめながら。
Last Updated: 2026-06-16
Chapter: 野良猫、縛られる
夜斗が玲央に連れてこられたのは所詮"タワマン"と呼ばれる建物。そして通されたのはまさかの最上階。今まで様々な男達を渡り歩いて来たが、ここまでの金持ちは初めてだ。部屋の中へと入ると、白を基調とした家具で揃えられていて眩しい程だ。夜斗は興味津々で部屋中を見て回る。「ほら、ヨル。フレンチが食べたいなら早くシャワーを浴びて来ておいで。着替えは置いて置くから。」「お!そうだった。フレンチがオレを待っている〜♪」そう言うと夜斗は鼻歌混じりで浴室へと向かう。そこで見た光景に夜斗は言葉を失った。東京の夜景を一望できる程の素晴らしい景色だったからだ。「わぁお...。オレ、ホントに此処に住むのか?」そう呟くと夜斗はシャワーで汚れた身体を清め始めた。心の中で「フレンチから帰ってきたら、このジャクジーを楽しもう。」そうルンルン気分でシャワーを終えると玲央が用意した服に腕を通す。...これまた高そうなスーツだ。「レオ。着替えたぞ。」「...うん。やっぱりヨルにはネイビーのスーツが一番良く似合う。」"やっぱり"?この男の言葉には謎に思う部分が多々ある。まるで昔からの夜斗を知っているかのように。「ヨル?どうしたんだい?」夜斗が黙りこくって考えていると、玲央が声をかけてきた。「あぁ、悪いレオ。今までに無いくらいの豪華さで言葉が見つからなくてさ。」そう夜斗が言うと玲央は近寄ってきて夜斗の首にプレートネックレスを着ける。「...これは?」「ヨルは今日から"僕だけの猫チャン"だからね。お守りという名の首輪だよ。」そう言った玲央は笑顔ではあるが目が笑っていなかった。その目を見た夜斗の背筋にゾクリとしたものが走り、「ダメだ。この男は危険すぎる。」と頭の中で警告音が鳴った。「わ、悪いレオ。やっぱりオレ帰るわ。」「...帰る?何処に?ヨルの帰る場所は此処...僕の所だよ?」玲央はそう言うと夜斗をベッドに押し倒した。そしてプレートネックレスに口付けを落とすと、「ヨル。いくら猫でも最終的にはご主人様の元へ帰ってくるんだ...死ぬ前以外は、ね。」あぁ、神様...やはり野良猫には飼い猫になるのは気が重いです。
Last Updated: 2026-06-16
その番犬、狂暴につきまして。

その番犬、狂暴につきまして。

ある日突然交通事故で両親を失った京司(けいじ)。そんな彼を引き取ったのは極道で名の知れた五十嵐組の組長であった。 そんな彼の一人息子、叶弥(きょうや)とともに慌ただしい毎日を送る京司。時には絡まれ、時には涙することも。ガキ大将であった叶弥と泣き虫であった京司。高校生となり、二人は身も心も成長し、京司はいつしかそのケンカの腕っ節から、"五十嵐組の番犬"と呼ばれるように。そんな相思相愛の二人が繰り広げる"ワン"ダフルな日常の物語。
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Chapter: episode9
軽い性描写があります。閲覧には注意して下さい。学生生活の一日はとても早いもので、放課後憂鬱だなぁ、なんて考えながら過ごしていたら、気づけばその放課後になっていた。終業を告げるチャイムと共に生徒達は部活見学に行く者、帰宅する者、各々自由に過ごしていた。叶弥はオレの所に来ようとしたが教師に呼び止められ、オレに「先行ってろ」と言い教師と共に教室を去っていった。大方金髪に対しての注意だろう。オレはこれ幸いと思いながら体育館裏へ向かう。するとそこに居たのはオレが昨日の入学式の日にのした男と、その男と共に居た二人、そして一際デカい男の計四人がいた。「よく一人で来たな、チワワちゃん?」「...のされた相手を良くもまぁ呼び出したな。」「ウルセェ!...ま、いい。ココじゃなんだからそこの体育館倉庫に入れ。」ケンカすんのに倉庫?と思ったが、ここで騒いだら後が面倒なので素直に従い中へ入っていく。するとオレが入ったのを確認した途端鍵をかけられ、おれは大男に羽交い締めにされる。「...なんのマネだ?」オレがそう問うと、のした男...リーダーであろう。その男がオレの顔を持ち上げ口に何かを入れてきた。オレはそれを吐き出そうとしたが口を手で塞がれ飲み込んでしまった。「テメェ...何飲ませやがった?!」「キヒヒッ。...昨日の礼にちょーっと気持ち良くなるお薬を飲ませてやったんだよ。...お前、女みてぇなおキレイな顔してっからちょーっと相手してもらうぜ?」「ふざけっ...?!」オレが文句を言おうとしたその時、身体中が熱く、力が入らなくなった。そして奇妙な感覚に襲われ始めた。「な、んだ...コレ...」「効果はバツグンだ、なっ!!」男はそう言うとオレの制服を思いっきりはだけさせた。「顔だけじゃなくて、身体までキレーじゃねぇか。コレならオレでも勃つぜ。オイ、オメェーらちゃんとカメラ回してんだろーな?」「バッチリっす、兄貴!」「?!」オレはどうにか逃げようと身体を動かそうとしたが、身体中が熱に犯されどうにかなってしまいそうだった。いつの間にか拘束は解かれていたようで、オレは大男にもたれかかるように地面に座ってしまった。身体はだらしなく、男達に見せつける様な体勢になってしまっていた。顔は赤く染まり、その体勢も相まって、男達は「ゴクッ」と生唾を飲み込んだ。「...イイ
Last Updated: 2026-06-17
Chapter: episode8
翌朝、叶弥は何事も無かったかの様にオレに「はよー」と声をかけてきた。オレはそれが何だか腹が立ちつい叶弥の腹部に拳を入れた。「イテェ...その手癖足癖どーにかしろよ。って何怒ってんだ?」「なに、だと?怒られる原因は自分の胸に手を当ててよく考えろ。」「えぇ...」と少し考えた後、叶弥は「あ。」と声を出した。「もしかして昨日キスしたのに怒ってんのか?...それとも最後まですんのに期待して...ってイテェ!」叶弥が人目を気にする事なくそう言うと、近くを通りかかった若衆の連中が「えぇ?!」と声を上げたのでオレは思わず叶弥の頭にゲンコツを入れた。「わ、若と京司さん...いつからそんな仲に?!」「オレ達の女神がぁ...!!」「若、ズルいっすよ...」若衆の連中が途端に騒ぎ始めたので、おれは声を荒らげ「違う!」と叫んだ。頼むから朝から疲れさせないでくれ...。そうしてオレ達は朝食など朝の仕度を済ませて外に出た。...するとまたもや黒塗りのベンツが姿を現した。「若、京司さん。お送り致します。」そう言うとベンツの扉を開けようとした。しかし、叶弥がそれを止め「歩いてくからいいわ。」と告げ歩き始めた。それを見てオレは急いで叶弥を追い「良かったのか?」と声をかけた。「別に歩いて行けねぇー距離じゃねぇーし、時間もあるしな。」「それに...」と言いながら叶弥はオレの手を握ってきた。「?!何してんだよ!」「昨日の夜。折角のめでたい日だからそれに合わせて初夜としけこもうとしたのに邪魔が入ったし、そのままアイツらに捕まって宴会の続きに巻き込まれたからな。...コレで我慢してんだ。許せよ。」「...たく。」どおりで、いつもならオレの部屋に戻ってくる叶弥が大人しくじしつに帰ったワケだ。「...てか初夜ってなんだよ。...オレ達別にそんな仲じゃねーだろうが。」オレがそう言うと、叶弥は歩みを止め、オレを強い眼差しで見つめてきた。「...叶弥?」「お前はオレのモンだ。...誰にも渡さねぇ。」「オイ...どうしたんだよ?」「...なんでもねぇ。学校行くぞ。」「?あぁ。」そう言い学校へと向かおうとする。したのだが、急に現れた不良達に行く手を阻まれた。「オイ!お前らちょっとツラ貸せや。」「...いつの時代の不良のセリフだよ...」「あぁ?!今何つった?!」オ
Last Updated: 2026-06-15
Chapter: episode7
オレの祈り虚しく、迎えは黒塗りのベンツだった。周りの生徒達がなんだなんだと騒いでいる輪に近づくと、車の外で待機していた若衆が「若!京司さん!」と大声で呼んだ。すると人集りの輪が解けオレ達に道が譲られる。「入学式お疲れ様です!宴会の準備が出来てるんで、早く組へ帰りましょう!」「...五十嵐組って本当に何かとこじつけて宴会したがるよな。」オレがボソッと呟くと叶弥は「そーでもなくね?」と言う。「だってお前の誕生日はともかく、オレの誕生日までどんちゃん騒ぎじゃねーか。」「そりゃお前、未来の若頭補佐の誕生日は祝わねーとだろ。」「そうですよ!京司さんはオレ達の女神ッス!」「...女神って...」若衆の言葉に呆れながらオレは車内で頬杖をつきながら外の景色を眺めた。これからこの道を通うのかぁ、とボンヤリしている内に車は組へと帰ってきた。車を門の前に横付けし車のドアが開かれ外へと出ると、組の若衆が屋敷へと続く道に並んで一斉に「おかえりなさい!若!京司さん!」と声をかけてきた。すると奥の方から凛太朗さんが杖をつきながらオレ達の所までやって来た。「おかえりさん。叶弥、京司。」「ただいま、オヤジ。」「ただいま帰りました。凛太朗さん。」オレ達はあいさつを交わし終えると凛太朗さんに連れられ大広間までやって来た。そして各々自分の席へと着く。「えぇー、今日は晴れて叶弥と京司の高校入学の日だ。めでてぇ日だから皆、無礼講で楽しく呑んでくれ。それじゃ、乾杯!」凛太朗さんのかけ声をかわきりにそこら中から「乾杯!」「おめでとうございます!」と声が上がった。そうして、楽しい宴会が始まるのであった。オレは凛太朗さんの元へ行きお酌をする。凛太朗さんが「ありがとさん、京司。」と声をかけてくれた。「今日はありがとうございました。凛太朗さん。」「京司にはこれから叶弥を支えてもらいながら五十嵐組を盛り上げてもらわなきゃいけねーからな。ホラ、京司。お前も呑め。」「いや、オレは...」「いいじゃねーか京ぃ。お前も呑めよォー。」凛太朗さんに酒を勧められるのを断ろうとすると叶弥がビール片手に絡んで来た。「叶弥...お前は未成年と言う自覚をだな...」「良いじゃねぇーかよ。今日はめでてぇ日なんだからよォー。」「そうだぞ京司。かたっくるしいのは無しだ。」「...じゃあ一杯だけ。」
Last Updated: 2026-06-15
Chapter: episode6
こうして無事?出席確認を終えると、大森に引き連れられ、校舎案内となった。そこでは並び順なんて関係ない様で叶弥がオレの元へやって来る。「京ー。お前早速目ぇつけられてんじゃねぇか。」「...お前も人の事言えないだろ。大森、あえて口には出てなかったけどお前の金髪見て眉間にシワ寄せてたぞ。」「マジか。」そう軽口を叩き合いながら校舎案内を終え教室へと戻ってくると、教科書配布やらなんやら細々としたものを行い今日は解散となった。オレは貰った教科書を机の中に突っ込んで帰り仕度をする。すると、大森が「五十嵐ー、田河」ーと呼んできた。「お前らちょっと居残りな。教室で待ってろー。」そう言い残し大森は一度教室を出て行った。「なんなんだろーなぁ?オレ達まだ何もしてなくね?」「まだって...オレからも頼むから高校生活は平穏に送ってくれ...。」「それは周り次第じゃねぇーの?」しばらくすると教室にはオレと叶弥だけが取り残され、皆帰って行った様だった。すると大森が校長を連れて戻って来た。「いやぁ、待たせたな。スマンスマン。」「君達が五十嵐 叶弥君と田河 京司君かな?」校長がそう尋ねて来たので「そうです。」と肯定する。すると校長は笑顔になりながら話しを続けた。「いやぁ、五十嵐君のお父さんには学生時代よく助けられてね。」その言葉にオレと叶弥は驚愕した。どうやら校長と凛太朗さんは学友だったらしい。「お父さんはね、極道の人間だからと最初のうちは腫れ物の様な扱いを受けていたんだけどね。それでも彼の面倒見の良さと人間性であれよあれよと人気者になったんだよ。」「オヤジが...」「私もね、イジメられていた所を何度も助けてもらったよ。それで息子さんである叶弥君には謝らねばならない事があってね...」「謝らねぇといけない事?」叶弥もオレも校長の言葉に疑問を持った。「お父さんが足を悪くして杖無しでは生活出来なくなってしまったのは、私を庇ったせいなんだ。本人にも謝罪はしたんだが、気にしなくていいとしか言ってくれなくて、ずっと気がかりでね...息子である叶弥君にも謝罪したくて時間をとってもらったんだ。...本当に申し訳ない。」校長はそう言うと叶弥に対して頭を下げた。「別に校長先生が悪いわけじゃねぇーし、オヤジも気にしてないと思うんで、謝罪だなんていらねっすよ。」「叶弥君.
Last Updated: 2026-06-15
Chapter: episode5
「えぇー、以上を持ちまして入学式とさせていただきます。新入生の皆さん、保護者の方々、本日は本当におめでとうございました。」そう教師がマイクに向かって言うと入学式は終了となった。50音順に並んでいたため、オレと叶弥は少し離れてしまっていたが、それでいても叶弥が欠伸をしつまらなそうにしている様子は確認できた。...後で説教だな、これは。教師の「では新入生退場。」と言う言葉で新入生は並んでいる順に教室へと向かう。そうして自分達のクラスへとやって来ると、各々が自分の席へと着く。ちなみに新学期なため、最初の席は50音順で決まっていた。オレも自分の席を確認すると早速席に座る。教師が来るまで少し時間がある様で、席には着かず、自由に話しをしている生徒もいた。...叶弥も例外ではなく、オレの元へとやって来た。「京、席離れちまったなぁ。」「...クラスが一緒なんだからそれで良いじゃねーか。」叶弥がワザワザ、オレの所に来てどうでもいい事を話す理由は分かっていた。周りの生徒に虚勢をするためである。...オレが叶弥のモノであると。オレの顔立ちは中性的と言われ、ケンカで鍛えてはいたが、筋肉は付かず身体の線は細かった。そのため中学の時は女子生徒だけでなく、男子生徒からも告白されていた。極めつけは、とある放課後、誰もいない教室で男子生徒から告白をされ断ったら...襲われかけたのである。その時は男子生徒の股間を思いっきり蹴り上げ逃げようとしたのであった。しかしその場面を教師に呼ばれて戻って来た叶弥が運悪く見てしまい、彼は怒り心頭になり男子生徒をボコボコにしようとした。...すんでのところでオレが叶弥を押さえつけ、騒ぎに駆けつけた教師に厳重注意を受けたのであった。そんな経緯があり、叶弥はオレに対し人一倍過保護になったのである。まぁ、叶弥に守られずともオレ自身で対応する事が出来るので、ただただ彼が心配性なだけである。「叶弥。もうじき先生来るんだから席に着け。」「えぇー。もう少し良いじゃねぇーか。」「...皆もう席に着き始めてるし、お前がそこに居るとそこの席のヤツが座れないだろ。」「仕方ねぇな...んじゃ、また後でな。」叶弥はそう言うとオレの頭を一撫でし自分の席へと向かった。それを見届けた後、オレはその席の持ち主に小声で「悪かったな」と言った。そうしている間に教室の扉が開かれ
Last Updated: 2026-06-13
Chapter: episode4
黒い髪をサラサラと靡かせ学校へと向かう。今日の入学式を祝うかのように桜の花びらが風に煽られ舞っている。オレの隣には少し長めの金髪を後ろで一括りにして気怠そうに歩いている叶弥がいる。「朝っぱらから疲れた...」「凛太朗さんじゃ無いけど、ホントお前ってオレの事になると子供の頃のガキ大将みたいになるよな。」「...ウルセェ...」オレが叶弥にそう言うと叶弥は力無く項垂れるのであった。そんな叶弥にオレは追い打ちをかけるような言葉をかける。「いいか、叶弥。中学の時みたいに誰彼構わずケンカ売るなよ?」「...それは京にも言える事じゃねぇか?」「オレはケンカを売ったことは無い。...買いはしたケド。」「売るのも買うのもケンカには違いねェじゃん。」「...屁理屈言うな。」オレは叶弥に軽い蹴りを入れる。それに対し叶弥は笑いながら甘んじて受け入れる。「イテェ(笑)」「痛くないだろ、バァカ。」そうこうしている内に、二人が新たに通う高校へとたどり着いた。オレ達が校門をくぐりぬけると...そこは男、男、男。そうオレ達二人がこれから通うのは男子校である。「...ムサ苦しいな...。」「あぁ...」そんな男の群れの中にオレ達は身を投じた。この高校はオレ達の通っていた中学から進学する者が多かったので、オレと叶弥の噂は知れ渡っている様で、あちこちから視線を感じるのであった。「なぁんか視線がウルセェな。」「これじゃ平和な高校生活は送れそうにないな...」叶弥に同意するとオレ達は遠い目をしてしまった。サラバ、平穏。そうしていると、オレ達の元に大男が三人姿を見せた。「おぅおぅ。五十嵐組の坊ちゃんとそのチワワじゃねぇか。」男の一人がそう言うと別の男が叶弥の胸ぐらを掴んで腕を振りかざした。その瞬間、叶弥は笑みを浮かべ、オレは咄嗟に男の顔面めがけ力いっぱい拳をめり込ませた。すると勢いが良かったのか、男の身体は吹っ飛んでいった。「オレの愛犬ナメんじゃねぇよ?」「犬って言うな。」オレに吹っ飛ばされた男は鼻血を出し、前歯が一本おジャンとなった。そして意識もどこかに飛んでいったらしい。仲間の男達はそんな様子を見て、大きな身体を震わせながら校舎へと逃げていった。「あーあ、やっちまったな、京。」「...オレにヤラせる気満々だったクセに。」「まぁまぁ。...あ
Last Updated: 2026-06-13
ひみつのお姫さま

ひみつのお姫さま

子供の頃からの幼馴染みである佐倉 若葉と巴 新。頭の良い若葉は偏差値の高い共学校へ。頭の悪い新はバカ校で有名な男子校へと進路が分かれた。 ある日、若葉の学校で学園祭が行われた際、若葉は女子の企みにより、女顔を活かした女装をして"桜ちゃん"として客引きをする羽目に。その時、運悪くナンパされ困っていたところ、友人と遊びに来てはぐれてしまった新が助けに入る。若葉は助けてくれた新に礼を言おうとすると、新に両手を握られ、お礼に土曜日にデートしてくれと頼まれてしまう。なんと新はメガネをかけていない若葉を桜ちゃん=若葉だと気が付かなかったらしくって-?!
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Chapter: episode8
新の一声に、若葉とナンパ野郎は2人して新に振り返った。ナンパ野郎は新に邪魔されたのが気に食わなかったのか、新に睨みを効かせながら詰め寄った。「あぁ?なんだァ、青クセェガキが。邪魔すんじゃねぇよ。」「...どっからどう見てもその子嫌がってんじゃねぇか。いい大人が子供相手に何してんだよ。」「んだとコラァ!!」ナンパ野郎が新に殴りかかろうとしたが、新はヒョイっと避けるとナンパ野郎の足を引っ掛け転ばすという見事な流れを披露した。外野はその様子を見て新に拍手を送った。ナンパ野郎は恥をかかされて顔を真っ赤にすると、「クソッ」と言い残し走り去って行った。新は「ダッセェの」と小さく笑ってナンパ野郎が去って行った方向を見た。少しするとハッとして若葉の方へと顔を向けた。「キミ!大丈夫だった?!ケガとかさせられてない?!」どうやら新は助けた相手が若葉だと気付いていない様子だった。若葉も新とは疎遠になっていたせいで、すぐには新だと気付くことが出来なかった。「だ、大丈夫です。...ありがとうございました。」「いや。無事ならいいんだ。えぇ...と...」「あ、1-3で喫茶店してる桜です。」「桜ちゃんか。オレ実はツレ2人と来たんだけどふたりが2人ともはしゃいでどっか行っちまってさ。...よかったら桜ちゃんとこで待たせてもらえない?」新はそう言うと若葉を見つめてきた。若葉はようやく新の事を思い出したが、自分が"佐倉 若葉"である事が言えず、キャスト名である"桜"を名乗ってしまった。「はい。良ければウチのクラスで休んでいってください。案内しますね。」「ありがとう。助かるよ。」そんな簡単なやり取りだったが、若葉はいつかバレるんじゃないかとヒヤヒヤしていたが、全くその様子は見られない。もしかしたらこれは再び新と接点を持てるチャンスなのではないか...と思い、若葉は思い切って新に声をかけた。「あ、あの!先程はホントにありがとうございました!...それで何かお礼をしたいのですが...」「そんな、お礼だなんて!当たり前の事をしただけだし...」「そ、そこをなんとか..!」若葉は若干前のめりになり少し必死になってしまった。そんな若葉の様子に新はビックリしたが、顔を真っ赤にした若葉に見惚れて「可愛いなぁ」と心の中で呟いて、「それなら...」と言葉を紡いだ。「来週の土曜、良け
Last Updated: 2026-06-17
Chapter: episode7
「おーい!新!早く行こうぜ!1回は行ってみたかったんだよなぁ、"桜ヶ丘祭"!」「...オレ昨日バイト遅かったから寝てたいんだけど...」「まぁまぁ、新君。せっかくの青春を謳歌しないでどうするんだ?」「...ハァ...。2人揃って...。10時に桜ヶ丘で待ち合わせだったろ?」新が自室で寝ていると、高校で知り合い仲良くなった田辺と巻が突撃してきた。今、家に居るのは新と妹の唯だけだったので唯が2人を家に上げたのだろう。「だって新、行ってもいいって言ったじゃねぇか。」「だからって朝イチから来るバカがどこにいるんだよ!」「ここに居るよー♩2人もー♩」「ハァ...」新は深くため息をつくと、ベッドから起き上がり私服へと着替える。「なんだかんだ言って、新ってオレ達の言うこと聞いてくれるよな。」「イヤーン♡愛されてるー♡」「うるせぇ!キモイわ!」新は仕度を整え終えると、2人を連れ1階へと降り、リビングに居る唯に声をかける。「唯ー、オレちょっと出てくっから、出かけるなら鍵かけてけよー。」「お兄でかけるんだ。田辺君、巻君。お兄のことお願いね。」「任せて唯ちゃん!」「任されるのはオレの方だよ...」そうして新達3人は桜ヶ丘へと向かった。いつもより道に人が多いのは、やはり桜ヶ丘祭に行く人が多いからだろう。「オレ学園祭とか初めてでテンションあがるー!」「ここらの中学は学園祭とか無いもんな。」田辺と巻はハイテンションで、寝起きの新はそのテンションについていけずにいた。そうこうしているうちに、桜ヶ丘へとたどり着いた。すると2人は目を輝かせ、新が「おい」と声をかけようとしたが、新の声が届く前に2人揃って校舎の中へと消えていってしまった。「...アイツら...!!」新に一緒に行きたいと言っていたわりに、2人共新を置き去りにしていった。新は頭を抱えて一瞬しゃがみ込んだが、来てしまったものはしょうがない。そう思い1人で校内を散策することにした。しばらく歩いていると、前方の方からなにやら揉めている様子が見えた。1人は20代っぽい男。もう1人はピンクのゴスロリを着た女子生徒だった。どうやらナンパのようだ。女子生徒が困って動けないでいるようだから、頭を突っ込みたくはなかったが、誰も助けてはくれないようだったので、出張ることにした。「未成年ナンパしてんじゃねぇよ。
Last Updated: 2026-06-16
Chapter: episode6
13時を回る頃、若葉はクラス委員長に客引きへと行くように命じられた。衣装係の女子と共に着替え教室へと入り、準備段階から予定していたピンクのゴスロリ衣装へと着替える。着替えが終わり軽くメイク直しをしていると、先に客引きをしていた執事コスの男子生徒が入ってきた。「おつー。おう、桜ちゃんの出番ですか。マジ可愛いな(笑)この格好だとお姫様みたいでええやん!」「...今日だけはありがとうと言っておく。」「ホントは嬉しいくせにぃ。そだ、1枚写真撮ろーぜ!」「1枚につき1万な。」「高ぇ(笑)」男子生徒はそう言うとメイクをしていた女子生徒にスマホを渡し、2人のツーショットを撮ると、男子生徒は「サンキュー」と言い撮った写真を見た。「おぉ...これはヤバイな...。確かにこれなら高く売れそう...。」「売るな...。」「あ!桜ちゃん、ネームプレート付け忘れてるよ!」「ありがと。」若葉は女子生徒からネームプレートを受け取ると、腰のエプロン部分に取り付けた。「ホラ、グラスボード寄越せ。」「1人で大丈夫か?」「女子じゃないんだし大丈夫だって。客寄せパンダするだけだし。」若葉はそう言うと、クラスボードを受け取り着替え教室を後にする。1人でいいとは言ったものの、女装をして1人で校内を歩くのに少し抵抗を感じてきてしまった。「やっぱり、ついてきてもらえばよかったかな...。」若葉は小さくポツリと呟くと、首をフルフルと振り、頬をパンと叩いて気合いを入れ直した。「弱気にならない!よし、行くか!」気分を入れ替え、いざ行こうとすると、肩をポンと叩かれ「ねぇねぇ」と声をかけられた。「キミこのクラスの子?可愛いねぇ。名前は?あ、桜ちゃんて言うの?オレ実はツレとはぐれちゃってさァ。良ければ案内してくんない?」見たところ20代前半くらいの男性で、肩を叩いたまま肩を抱き顔を近づけてくる。若葉は気持ち悪く感じ力を入れて手を退けようとするが、思ったよりも強く抱かれているためビクともしない。「黙りしないで、お話ししようよー。」若葉は耐えられないと目をギュッと瞑った瞬間、肩が軽くなるのを感じ、そろりと目を開けた。「未成年ナンパしてんじゃねぇよ。クズが。」
Last Updated: 2026-06-16
Chapter: episode5
時刻は午前10時。学園祭"桜ヶ丘祭"の開始時刻である。桜ヶ丘高校の校舎には、老若男女様々な人々が集まってきている。校舎に入るとそこら中から生徒達の呼び声が溢れかえる。そんな中、早くも1-3は注目の的となっていた。1-3はコスプレ喫茶。男女様々なコスプレで接客をしている中、やはり人々の視線を引き付けたのはメイドのコスプレをした若葉であった。「いらっしゃいませ、お客様。ご注文はいかがなさいますか?」若葉が柔らかい笑みを浮かべ接客すると、女性も男性も顔を赤らめる。そして大半のお客はこう言うのだ。「あの!写真一緒にお願いできますか?!」普段の若葉であれば「こんな黒歴史、写真に残したくない!」と言うところであるが、今は"桜ちゃん"である。お客の要望には喜んで応える。「えぇ。私でよければ喜んで。」若葉がにこやかに応えると、女性客は「キャー!」と大はしゃぎをし、男性客はニヤニヤとしながら写真を撮る。男性客のニヤつきに対しては若干引きながらも「これも集客のため」と思いながら堪えるのであった。そうこうしているうちに1時間が経過した。「桜ちゃん!そろそろ次の衣装に着替えてー!」「ハーイ!」若葉はお客が飽きないように1時間ごとに衣装替えをする事になっている。これはリピーター狙いの策略でもある。そうして、衣装替えした若葉が次に着ているのは、水色を基調としたチェックのセーラー服。髪型はロングのストレートになっていて、清楚なイメージとなっている。着替えとメイク直しを手伝ってくれた女子からはキラキラした目を向けられた。「良いよ...!良いよ桜ちゃん!シンプルすぎるかなぁって思ったけど、全然イケる!」「ホント?変じゃない?」若葉はその場でくるりと回ると、女子達は「メッチャ良い!」「可愛すぎる!」と興奮した面持ちであったため、若葉はホッとして、「それじゃ、接客に戻るね」と声をかけて着替え教室からクラスの教室へと戻った。教室へと入ると周囲からは「キャー!」だの「うおぉ!」だのと声が上がった。若葉はサービスをするかのように「皆さんいらっしゃいませ!桜です!」と言うとウィンクをした。すると教室からはハートが溢れかえるかのようにお客もキャストも桜ちゃんにメロメロになっていた。そんな様子を見ていたクラス委員長は「フッフッフ...」と低く笑い、「やはり私の見立てに狂いは無かった!!」と
Last Updated: 2026-06-16
Chapter: episode4
天気は快晴。見事なまでの学園祭日和。そんな天気とは裏腹で、若葉のテンションはどんよりと曇っていた。「...とうとう来てしまった...。せめて雨でも降って来客数減ってくれればよかったのに...。」若葉が誰にも気づかれないように本当に小さく呟いたのだが、地獄耳のクラス委員長がその呟きを聞き逃すハズがなく。「なんてことを言うの佐倉君!学園祭と言えば晴れと決まっているものよ!そして、この学園祭に来たお客さんを1-3に集客するのよ!そ・の・た・め・に!桜ちゃん!よろしくね!」「...ハァ...」クラス委員長の言葉をかわきりに、クラス中から「桜ちゃんよろしくね!」「期待してるぜ!桜ちゃん!」と声が上がるのであった。「それじゃあ、それぞれ準備に取り掛かりましょう。佐倉君、ちゃんとコンタクト持ってきてくれた?」「...ハイ。持ってきました。」「よし!じゃあハメてね!その後にメイクするから。衣装、メイク係の皆!佐倉君任せるね!」「りょーかい!佐倉君!メッチャ可愛くするからね♡」若葉はクラス委員長から衣装、メイク係の女子へと引き渡された。これはもう腹を括るしかない。こうなったら、来客した客全員惚れさせる勢いでやってやる。頑張れ若葉。負けるな若葉。そう若葉が小さく燃えていると、クラスの皆が「とうとうやる気になってくれた!」と喜んだ。「皆、オレ頑張るから。気負わちゃわないように今日一日は皆も"桜ちゃん"って呼んで。」「佐倉君...いえ、桜ちゃん...!ありがとう!アナタを立派な女の子にしてみせるわ...!!」クラス委員長は感極まって、フルフルと震えている。他のクラスメイト達も「オレ達も気合い入れて美味いもん作るからな!」「私達もコス頑張るからね!」と盛り上がった。クラスの思いが一致団結した後、皆自分達の持ち場へと散っていった。「桜ちゃん、最初の衣装はどうする?やっぱり無難にメイド服からとかどうかな?ウィッグはロングのツインテールで!」「うん。良いと思う。オレって途中、客引きとして校内回るんだよね?」「そうね。その時はこのピンクのゴスロリとか良いと思うんだけど...ウィッグはウェーブで!」衣装担当の女子がおずおずとゴスロリ衣装を若葉に見せてきた。「コレなら派手目で華やかだし、人目を引きやすいから客引きにはピッタリかもね。コレで行こうか。」若葉がそう応え
Last Updated: 2026-06-16
Chapter: episode3
どこを見ても男、男、男。男子校とはむさ苦しく悲しい場所である。マンガの様に美人な若い女性教師が居るわけでもない。そんな中で3年間過ごすというのは、青春を送る若者には酷な話しである。授業中も落ち着きなく騒がしい中、新は回ってきたマンガの最新巻を読んでいた。すると、高校に上がってから仲良くなった斉藤が声をかけてきた。「新ぁー、お前、今月末の土曜ヒマか?」「土曜か...。なんも無いけど何?合コンでも開いてくれるん?」斉藤はこの辺りの高校に顔が広いため、よく合コンを開いたりしているのである。「いやいや。今回は合コンじゃなくて(笑)オレの中学の親友が桜ヶ丘に通ってんだけどさ。その日学園祭らしくって。新一緒にいかね?」「...桜ヶ丘か...」新が遠い目をしながらポツリと呟く。斉藤はそんな新をハッと見やると、「もしかして...」と言葉を紡いだ。「新、お前...桜ヶ丘に元カノでもいんのか?!」「ちゃうわ!!...オレの幼馴染みも桜ヶ丘に通ってんだよ。...まぁ、中2の途中から交流無くなったケド。」「...ふぅーん?なんかアヤシイけど、それって女?男?」「...男だけど。」新が"男"と応えると、斉藤は「なぁーんだ」と言い、後頭部で手を組みながらつまらなそうに新を見やった。「オレはてっきり幼馴染みという名の元カノかと思って期待したのによー。なんだ、男かよー。つまんねぇー。」「...お前なぁ...」新は斉藤に呆れていると、頭の中で幼馴染み..."若葉"を思い浮かべる。先程言った通り、中2のあの日から交流がパタリとやんでしまって、今となっては幼馴染みと言っていいのかわからない程である。自分から若葉を遠ざけてしまったため、今更若葉に合わせる顔がないのだ。新がそう思いだんまりを決め込んでいると、斉藤は「別にいいじゃん?」と声をかけてきた。「オレ達はお客として、学園祭を楽しみに行くだけだし。その"幼馴染みさん"に会いに行く訳じゃねぇんだからさ。気楽に行こうぜ?もしかしたら、ワンチャン可愛い女子といい出会いがあるかもしれねぇし?」「...まぁ、そうだな。いいぜ、いっても。」新がそう応えると、斉藤は「そうこなくっちゃ!」と言いながら背中をバシバシと叩き、「じゃあ、土曜10時に桜ヶ丘の校門前で!」と言うと去って行った。「...若葉...。どうしてっかな...」交
Last Updated: 2026-06-16
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