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朱音小夏
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Novels by 朱音小夏

野良猫、御曹司に拾われる

野良猫、御曹司に拾われる

気まぐれな猫のように、夜な夜な男から男へと渡り歩く"天ヶ瀬 夜斗"。 ある日の夜の事だった。夜斗はいつものように酒場で今夜の相手を探していた夜斗は、一人の男に声をかけられる。しかし、その出会いは罠であった。薬を盛られ、路地裏で暴漢達に襲われた夜斗を救ったのは高級なスーツを身に纏った謎の男ーー"京極 玲央"だった。 いきなり現れた彼は夜斗に「僕の所で飼われないか」と話しを持ちかける。 そうして始まった奇妙な同居生活。けれど、玲央には夜斗にだけは知られてはいけない秘密があった。 それは彼が夜斗を探し求め続けていたという事ーー。
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Chapter: 野良猫、最終回
現在地、グアム。本日雲一つない晴天である。今回この場所に来ている目的はただ一つ。夜斗と玲央の結婚式である。籍は夜斗が京極家へ養子に入る形で落ち着いた。京極夫妻は夜斗の事を大層気に入っており玲央と共に挨拶に行った際には抱きつかれるほどに大歓迎をされた。「......海外で結婚式とか実在するんだな。ビンボーだったオレからすると夢の様な話しだぜ」「そうかい?今じゃ海外の方が同性カップルに寛容的だからね。......それにしても本当に僕の両親を呼ぶだけの式でよかったのかい?もっと派手にしても良かったんだよ?」「オレに呼べるような人間、いると思うか?......二人きりでも良かったけど、玲央パパと玲央ママは大好きだから来て欲しかった」顔を真っ赤にしながらそう告げる夜斗に、玲央は可愛すぎて辛抱たまらん!!と思いっきり抱きしめた。「そんなに顔を真っ赤にして......!恥ずかしがらなくてもいいんだよ?」「!ち、ちがっ!顔が赤いのは暑さのせいだから!!ほら!早く式場に行くぞ!」もう夜斗はやけになって玲央の腕を解く。そしてタクシー乗り場でタクシーを捕まえて」乗り込んだ。「玲央パパ達はもう着いたかな?」「さっきホテルにチェックインしたって連絡来たから式場にもすぐ向かうって」夜斗はなんだか緊張で落ち着かない様子だ。さっきからソワソワしっぱなしである。そんな夜斗の手を玲央は優しく握ると、自分の口元に持っていくと口づけをした。「ちょ!玲央!ここタクシー......」「夜斗。何も心配いらない。これから幸せになるために神様に誓いを立てるだけ。だからきんちょうしないで。ね?」玲央の言葉が夜斗の心にすとんと落ちると、夜斗は玲央の肩に頭を乗せた。そしてしばらくすると、会場である式場へと辿り着いた。「......スゲーとこだな」「一番歴史のあるところを選んだからね。さ、着替えに行くよ」いくら同性婚とは言え着替えは別々らしい。玲央は新郎側に。夜斗は新婦側に通された。部屋に入ると、真っ白いタキシードが鎮座していた。これに着替えるのか......と思いながら式場スタッフに手を借りながら慣れないタキシードに袖を通していく。そして着替えが終るとヘアメイクへと移った。ヘアメイクをしてもらってる最中、コンコンとドアがノックされ玲央ママが姿を現した。「夜斗ちゃん!今日はおめでとう!い
Last Updated: 2026-07-27
Chapter: 野良猫、番外編2
カタカタ......カタカタ......パソコンのキーボードを叩く音が一人きりの部屋に響き渡る。玲央が会社行っている日は夜斗はマンションに一人きりでリモートワークに勤しんでいる。それでも、一時間に一度は玲央からLINEが来る。内容は他愛もないというか、くだらないというか......。「......コーヒー淹れよう」そう思い立ち上がると、タイミングを見計らったかのようにLINEが入ってきた。相手はもちろん玲央である。『夜斗、お疲れ様。仕事は順調かい?僕は君がいないせいで仕事のモチベーションが上がらないよ......』ほら。やっぱり今回もくだらない。夜斗は既読スルーを決め込むと、コーヒーを淹れにキッチンへと行く。そしてマグカップを手にリビングへと戻ると、スマホがけたたましく着信を告げていた。夜斗はめんどくさいと思いつつ出ないと帰って来た時の方がめんどくさいので、仕方なく通話ボタンを押した。「......もしもし」『あ!やっと出た!もう。既読スルーなんてひどいじゃないか。夜斗は寂しくないのかい?僕は寂しくて寂しくて......』「あー、ハイハイ。寂しいですよー。でもちゃんと仕事してくれた方が、きっとかっこよくてすてきなんだろうなぁ」『!......夜斗はずるいなぁ。そんなこと言われたら仕事頑張っちゃうしかないじゃないか』よし。これで玲央は残りの就業時間、仕事に集中してくれるに違いない。それに夜斗もリモートワークのアルバイトとは言え仕事があるのだ。こちらも集中させてもらいたいものである。「あ、そーだ。帰りに牛乳買ってきてくれるか?今晩はシチューを作りたいんだけど牛乳を切らしてたのをすっかり忘れてた」『夜斗のシチューか......。分かった。いつものでいいのかな?』「おう。頼んだ」『好物のために仕事はなるべく早く終わらせるよ』『好物って......何食べても言うくせに』と心の中でツッコんだ。玲央は夜斗の作るものなら何でも美味しそうに食べる。もう、玲央の料理は全てが好物なのではないだろうか。「それじゃ、オレも仕事あるから切るぞ。くれぐれも玲央パパに迷惑かけんなよ?一時お前が仕事しないで帰りたがるのを抑え込むのに苦労したって言ってたんだからな?」『そのためにLINEは許可してもらったんじゃないか』そう。そうなのだ。玲央に仕事を真面目にやらせるた
Last Updated: 2026-07-26
Chapter: 野良猫、番外編1
これは、夜斗と玲央のとある朝の記録である。朝、6時に夜斗は目を覚まし、脱ぎ散らかした部屋着に袖を通す。そしてベッドから抜け出して朝食の支度をしようとしたその時、腹部に腕が回された。その腕の正体は言わずもがな玲央である。「やと......どこへ行くんだい?」「どこって。朝飯の支度しなきゃお前会社に間に合わないぞ?」「会社......休む」「おいコラ。お偉い専務様がさぼるなよ」夜斗は回された腕を無理矢理外して、キッチンへと行った。そしてエプロンをして、鍋に水をはり火をかける。そしてそこにだしパックを入れ時間を置く。その間に具材を切って切り終えたものから鍋に入れる。そして頃合いになったところで味噌を溶かす。こうして味噌汁の完成だ。そのタイミングでタイマーをかけていたご飯が炊きあがる。おかずが無いのも寂しいので、玉子焼きと酢の物を作った。そうしているうちに玲央が寝室から現れた。「おはよう、夜斗」「おはよう、玲央。飯できたから顔洗って来い」そうして顔を洗った玲央がダイニングへと顔を出した。「うん。今日もいい匂いだ」「さ、早く食べて会社行ってオレの世話代稼いで来い」「今日もウチの猫ちゃんは手厳しいな」食事を済ませると、夜斗は洗い物をし、玲央はスーツへと着替える。「夜斗」「ん。こっちこい」玲央は夜斗に呼ばれるがまま夜斗の元へと歩み寄る。すると玲央はネクタイを夜斗に渡して結んでもらう。これは同棲を開始してからの決まったルーティーンであった。「いつも思うけど新婚さんみたいで楽しいね」「バッ!......何恥ずい事言ってんだ。ほら!さっさと出社!」「じゃあ、ハイ」玲央はそう言うと夜斗に向けて両手を広げる。夜斗は気恥ずかしくなりながらも思い切り玲央の胸に飛び込んだ。「......早く帰って来いよ」「もちろん。愛する僕の猫ちゃんが寂しがるからね」「......寂しがってねーし」「ふふっ。それじゃあ行ってきます」「行ってらっしゃい」そうしてキスをすると玲央は家を出て行った。手を振って見送った夜斗だったが、やはり少し寂しさが押し寄せてきた。寝室に向かうと、玲央が着ていた部屋着に手を伸ばし、ギュッと抱きしめる。いつもこの香りに抱きしめられて夜を過ごしているため、なんだかおかしな気分になってくる。もういっそ自慰をしてしまおうか。そう思い下半身に手
Last Updated: 2026-07-20
Chapter: 野良猫、飼い猫になる
退院してからという日々は目まぐるしかった。社長の言った通り、玲央の母にも会わせられた。彼女はフランクな性格で、"元野良猫"の夜斗にも気さくに......どころか、可愛いぬいぐるみにでもするかのように抱き着いて頬擦りをしてきたのだ。「やーん!可愛い!!この子本当にウチの子になるのよね?ね?!」「落ち着きなさい、母さん。夜斗君が困っているじゃないか」社長の一声で玲央ママは一旦夜斗から身体を離した。その様子は少ししょんぼりとしていた。が夜斗は助かったと思った。何故ならば玲央ママはナイスバディの持ち主だったので、危うく胸で窒息するところだったのだ。「あ、あのオレ......」「なぁに?私達夫婦は孫なんて言わないから安心して玲央の物になっちゃって!そして私を癒して?"可愛い猫ちゃん"」そんなこんなで、玲央の家族からは温かく迎え入れられて安心した夜斗だったが......この温かさに甘えてしまっていいんだろうか。そう思うと怖くなった。「オレはこのまま生ぬるい場所で生きていていいんだろうか?」夜斗は一人きりになった病室でぼそりと呟いた。そして起き上がると、玲央が持ってきていた服に着替える。これが最後の玲央に対する試練だ。もう一度自分を見つけてほしい。そう思いながら玲央から渡されたスマホをベッドに置き病室を後にした。玲央が病院へ着いた時、病院中は混乱していた。何かあったのかとナースに問いかけると、夜斗がいなくなったという。これは自分も探さなければ。しかし、手掛かりがない......こともなかった。夜斗を信じるなら、"最初の場所"にいるに違いない。そう思い玲央は足をそこへと向けた。ブランコなんていつぶりに乗るだろうか、誰もいない公園はこんなに静かで悲しい場所なんだな、と夜斗は感じた。時刻は18時半。もうゲームオーバーかな。そう思いながら、また"野良猫"に逆戻りか。酒場にでも行くかな。そう思った瞬間だった。息を切らして大声を出しながら近づいてくる一人の男が現れた。......その男は玲央である。見つけてくれた。信じてた。お前ならここが分かると。夜斗はブランコから飛び降り玲央に思い切り抱き着いた。「ハァハァ......まったく人騒がせな猫だね。死ぬために姿を消したかと思ったよ」「生ぬるい場所で生きてきたことがないから不安になったんだよ。......それに、お前が本
Last Updated: 2026-07-16
Chapter: 野良猫、危機一髪
「まったく。一時はどうなるかと思ったよ......」「オレだって閻魔さまに会う気でいたさ」何という運の良さなのか、一時は命の危険にあったが駆け付けた救急隊の処置や手術のお陰で、一週間は生死を彷徨ったが無事目を覚ますことが出来たのだった。「あれからヨウタはどうなった?」「ヨウタ......あぁ、彼なら警察に捕まったよ。それにしても......彼が夜斗の"最初の男"ってやつだったんだね」「あぁ。オレに一からPCの技術を叩きこんでくれた恩人で......元恋人と言っていいのかな?」"元恋人"と言うワードに玲央は面白くないという顔を見せたが、夜斗が玲央の頭に手を伸ばし、わしゃわしゃと頭を掻き撫でた。「安心しろ。今もこれからもオレにはお前だけだよ」「これからもって......」「あれぇ?オレ、意識を失う間際に告白したつもりだったんだけどなぁ?」そう夜斗が不敵に笑うと、玲央は顔を真っ赤に染め上げ目を泳がせたのだった。思ってもみない反応に夜斗までもが恥ずかしくなってきてしまった。「な、なんだよその反応......こっちまでこっぱづかしくなるだろーが!」「仕方ないだろう?!あの時は君が死ぬかもしれない恐怖でいっぱいで......最後の言葉になるかもしれなかったんだから......!!」「そ、それは......オレだって死ぬと思ったから伝えなきゃと思って......」まるで初心な中学生のような二人の空間に"コホン"と咳払いが一つ。音の先に目をやると、そこにいたのは玲央の父であり、社長であった。「二人とも。ラブラブなのは構わないが......人目を気にしてほしいものだよ」「しゃ、社長さんが何でこんなところに?!」「やぁ。夜斗君。無事に目を覚まして良かったよ。一時は本当に危険だったところらしかったから私としても君の無事は嬉しい」社長は笑顔でそう言いながら夜斗が横たわるベッドへと近寄ってきた。「本当にこの一週間は玲央は使い物にならなくてね。今までにないようなミスを繰り返す始末。それなのに終業時間になると誰よりも早く退社して、病院の面会時間ギリギリまで居座っていたようだし......。君には早く目覚めてほしかったのは私も同じだったさ」「それは......すみません」自分が寝ている間にそんな事になっていたとは思わなくって、ただただ謝るしかなかった。.
Last Updated: 2026-07-14
Chapter: 野良猫、愛に気づく
眠りから目を覚ますと、見知らぬ部屋にいる事に気がついた。身体は怠いが拘束などはされていない。扉がぎぃっと音を立てて開かれると、部屋に入って来たのはヨウタであった。「おはよう、夜斗。よく眠れたかい?」「......ヨウタ、なんでこんな真似を?」夜斗がそう問うと、ヨウタがわなわなと震えだした。そして、つかつかと夜斗のいるベッドに近づくと、夜斗の身体をベッドに沈めた。「だって......だってこうでもしないとまたいなくなるだろう?!今までずっと探していたんだ!それでやっと見つけたかと思ったのに......夜斗、君は京極 玲央の隣を歩んでいた!!それがどれだけオレの心を切り刻んだことか......分からないだろう?」「ヨウタ......」「ホントはこんな真似したくはなかったよ?けれどこうでもしなければ君はオレの元にやって来ない!!今だってこうしている間にも君の心を占めているのはあの男なのだろう?!」ヨウタは涙を流しながら夜斗を攻め立てる。ヨウタの涙が夜斗の頬をつたった。そんなヨウタの頬に夜斗は手を添えるとぽつりとつぶやいた。「ヨウタ......お前も寂しかったんだな。」「!!や、と......」「でも、オレはお前の物にはなれない。オレはガキの頃から玲央の"神様"らしいからな」そういうと、夜斗はフッと笑った。ヨウタはただただ呆然としたかと思うとポケットからナイフを取り出した。「よ、ヨウタ......?」「きみが、君が悪いんだよ?素直にオレの物にならないから。手に入らないなら......お人形になってもらうしかないね?」ヨウタがそう言ったかと思うと、腹部に鈍い痛みが走った。あぁ、ごめん玲央。お前の神様はもう出来そうもないや......意識を手放そうとしたその時だった。扉が物凄い音を立てて開き、ヨウタの身体が上から吹き飛ばされていった。「夜斗!!しっかりしろ!!今救急車を呼ぶから!」「......れ、お。ごめ、ん」「もしもし!救急です!腹部をナイフで刺されて......」あぁ......玲央の声が遠くなっていく。ありがとう、玲央。オレを見つけてくれて。オレを神様だなんて呼んでくれて。あ、これが、か。これが"愛"ってやつか。......もっと早く知りたかったなぁ。「夜斗!もうすぐ救急車が来る!しっかりするんだ!!」「れ、お......」
Last Updated: 2026-07-12
ひみつのお姫さま

ひみつのお姫さま

子供の頃からの幼馴染みである佐倉 若葉と巴 新。頭の良い若葉は偏差値の高い共学校へ。頭の悪い新はバカ校で有名な男子校へと進路が分かれた。 ある日、若葉の学校で学園祭が行われた際、若葉は女子の企みにより、女顔を活かした女装をして"桜ちゃん"として客引きをする羽目に。その時、運悪くナンパされ困っていたところ、友人と遊びに来てはぐれてしまった新が助けに入る。若葉は助けてくれた新に礼を言おうとすると、新に両手を握られ、お礼に土曜日にデートしてくれと頼まれてしまう。なんと新はメガネをかけていない若葉を桜ちゃん=若葉だと気が付かなかったらしくって-?!
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Chapter: epilogue
「なぁ、ヤバくねぇか?"桜先輩"!」「めっちゃ美少女だったよな!生徒会にはあんな美少女がいるのか......。お近付きになりたい」「お前じゃ無理だろ!......っと、サーセン!」「ううん。こっちこそごめんね?」「......て、ウェエ?!も、もしかして"桜先輩"ッスか?!」「?そうだよ?......あぁ、新入生歓迎会では"女装"してたもんね?ごめんね、オレ"男"だから」春になり、新学期。若葉は2年生となり、生徒会の一員となっていた。新入生歓迎会では、同じく生徒会入りをしたクラス委員長により"桜ちゃん"として参加した。お陰で新入生の間では「超絶美少女」として話題を掻っ攫っていた。「あ、あの、桜先輩!」「あぁ、違う違う(笑)確かに"さくら"だけど、オレの名前は"佐倉"。"佐倉 若葉"」若葉はそう言うとノートの表紙に書かれた名前を見せた。「さ、佐倉先輩!オレ達生徒会目指してて......」「入学したばかりなのに熱心だね(笑)」「ふふっ」と若葉が笑うと新入生の2人は顔を真っ赤に染め上げたそして心の中で、「可愛いすぎるだろ!女装してなくてもこの破壊力か?!」「佐倉先輩...ファンクラブでもあるのか?無きゃ作るぞ?!」と叫んでいた。「あ、ごめんね。オレもう行かなきゃ」「足止めしてスンマセン!」「あぁ、そうだそうだ。」「「?」」若葉はくるりと新入生に振り向くと人差し指を口に当て、「"桜ちゃん"の事は秘密にね?」そう言う「シー」と言って新入生を置いて去ろうとした。しかしその時、スマホの着信音がなり、スマホを見ると、新からのLINEが入っていた。そこには「校門で待ってる」とメッセージがあった。若葉はニヤつきが抑えきれず、スマホで口元を隠した。「あら?佐倉君。まだいたの?"彼氏"が待っているわよ?」「「か、彼氏ぃ?!」」「ちょ、委員長......」「もう委員長じゃありませーん!」「ごめんごめん、樋口さん」「ウム。よろしい。して、そこの新入生は大丈夫かな?」クラス委員長...もとい、樋口が声をかけると、新入生2人は銅像のように固まってしまった。「女装の事も彼氏の事も秘密にしてね?」若葉はウィンクをしてその場を去って行った。いち早く新の元へと行くためにーー。
Last Updated: 2026-08-16
Chapter: episode67
「美味しかったね。こんなお店があるなんて知らなかった」 「なんでも隠れ家的なお店らしいからね」「気に入ってくれて良かった」新がそう言うと、イルミネーションで彩られた並木道を2人で歩いた。これからこのまま家に帰るのだろうか。少し名残惜しい。若葉がそんな事を考えていると、新は若葉の手を引き、「こっち来て?」と裏通りに入っていった。そこはとても静かで、先程までいた街並みとは打って変わった場所であった。少し歩くと階段が現れ、それを登ると、そこには見事な夜景が広がっていた。「うわぁ......キレイ......」 「オレのとっておきの場所。いつか若葉を連れて来たかったんだ。......若葉」 「ん?......これ......」新は若葉の名を呼ぶとプレゼントである指輪を取り出した。「中学の時、自分勝手に突き放しちゃってごめん。これからは隣でオレと一緒に生きて欲しい。......もし、了承してくれるなら、これを受け取ってはくれませんか?」新のこれはプロポーズと言っていいだろう。それに若葉は涙をハラハラと流しながら何度も何度も頷いた。「......オレで良ければ、新と一緒にいさせて下さい......!!」 「若葉じゃなくちゃダメなんだ」新は若葉の返事に安堵すると指輪をケースから取り出し若葉の左手を取ると薬指にはめた。しかし、最後の最後で決まらなかった。指輪のサイズが少しブカブカだったのだ。「......嘘だろう?」 「ふっ......あははっ!」 「カッコつかないなぁ......恥ずかしい......」 「そんな事ないよ?嬉しい」 「......今度チェーンネックレスでも買いに行こうか」 「ふふっ......そうだね」「それじゃあ、オレも」そう言うと先程購入した腕時計を新に渡した。「そう言えば、意味がどうのこうのって言ってたよね?一体なんなの?」 「それはね......"同じ時を刻もう"、"末永く一緒に"だよ」 「ま、まるでプロポーズみたいな......!」 「それを言うとオレは指輪だよ?......ちょっと重いかなって心配だったんだけどね......」新はそう言うと若葉の左手薬指で遊ぶ指輪にそっと触れた。「重いなんて......そんな事ないよ。とっても嬉しい。チェーンネックレス買ったら毎日つけなきゃ!」「お守りだね!」そう言う
Last Updated: 2026-08-15
Chapter: episode66
新のエスコートは完璧だった。まずはオシャレなカフェでお茶をしながら2人きりの会話を楽しみ、時間を見てそのままお昼のメニューを注文する。そして食事を終えると、今話題の恋愛映画を観に映画館へ。ポップコーンとジュースを買い席に着く。映画の内容はありきたりな物ではあるが、若葉の涙を誘うのには十分だった。映画が終わると、新は若葉にハンカチを差し出してくれた。「本当涙脆いよね。まぁ、そんな所も可愛いんだけどね」 「!......バカ」何ともまぁバカップルのようなやり取りである。その後はショッピングモールでウインドショッピングを楽しんだ。そこで、若葉はプレゼントを用意していない事思い出した。若葉は思い切って新にプレゼントの要望を聞くことにした。「あ、あの新......」 「?なに?若葉」 「じ、実はね、オレ、色々あったからプレゼント用意できてないんだ。だから......」 「プレゼントなんて。別にいいんだよ?こうしてデートしてくれてるだけで幸せだからさ」 「それじゃあ、オレの気がすまないよ!......何か欲しい物でもない?サプライズにならないのは......ゴメンだけど......」 「んー......そうだなぁ......あ」 「?」新は周囲をキョロキョロと見渡すとカッコイイ腕時計が目に入った。値段もお手頃でおねだりしやすい。「若葉、あの腕時計とかどうかな?」 「わ!カッコイイ!新に似合いそう!オレ、これプレゼントしたい。いい、かな?」 「もちろん。若葉から贈られる事に意味があるんだよ」 「意味?」 「それは後で教えてあげる」 「?じゃあ買ってくるね!」そう言うと若葉はショップへと駆けて行った。若葉は一体どう言う反応を示すだろうか。恋人が腕時計を贈る意味。それは「同じ時を刻もう」「末永く一緒に」。新は若葉が戻ってくるのを今か今かと待ちわびた。「新!お待たせ」 「おかえり。プレゼント交換はディナー食べてからにしよう?イタリアンのお店予約してあるんだ。お手頃だけど美味しいって噂なんだ」 「わっ!楽しみ!」 「それじゃあ、時間も丁度いいし行こうか」そうして2人は手を繋ぎながらディナーへと向かって行った。
Last Updated: 2026-08-13
Chapter: episode65
ヤバい。マジでヤバい。出かけ間際になって唯に自分も連れて行けとグズられてそれをかわすのに時間がかかった。スマホで時間を確認すると時刻は10時20分。いくらなんでもこんなに遅刻してしまうとは...。急いで時計台の近くのベンチへと向かうと、なんと、若葉が田辺と巻に絡まれているではないか。巻の手が若葉の髪に触れようとしたのを見て頭に血が上り、巻の腕を掴んだ。「......おい、何してんだよ」「新じゃねぇか。てことはやっぱり桜ちゃんかぁー。髪バッサリいったね。服装もだいぶボーイッシュ......と言うかメンズ物?」「......あ、あの、コレは......」「コイツの名前は"佐倉 若葉"。男でオレの恋人に間違いないよ」若葉は新が自分の事を隠しもせずに友人に紹介したのに驚いた。すると巻が合点がいったようで、「やっぱりか」と言った。「やっぱりって?」「いや、桜ちゃん、カンペキに女の子だったんだけど、なんとなく違和感みたいなのがあってさ。納得納得」「えぇ!桜ちゃんおとこの娘だったって事?!クオリティ高ぇよ!てか男の子の格好でも可愛いなんて......」「......引かないんですか?」「「え?」」若葉は俯きながら小声で2人にそう問うた。2人は目を丸くしてパチクリさせると、「あははっ!」と笑い声を上げた。「引く訳ないじゃん!可愛いは正義よ?それに今は同性カップルなんて珍しくもないでしょ!」「そうだよ。えっと、若葉君。オレ達は新の選んだ人に間違いないと思っているから」「だから安心して?」と言う田辺と巻の言葉に若葉は目をうるうると潤ませた。その様子に2人はギョッとして慌て始めた。「わ、若葉君?!どうしたの!泣かないでぇ!」「だ、だって......こんな風に言って貰えるなんて思ってなかったから......。嬉しい。......ありがとう」目を潤ませ笑みを浮かべながら礼を言う若葉に、2人は胸を"ズキューン"と撃ち抜かれたようで、顔を真っ赤にした。「ヤベェ......。可愛すぎるだろ......。若葉君どう?今から新をやめてオレと付き合って痛ェ!!」「せっかく良いヤツらだと思って黙って話を聞いてたのに、今ので台無しだよ。それにオレと若葉は別れる予定は未来永劫来ない!それより!オレ達はこれからデートなの!邪魔すんな!お前らはどうせ合コンだろ?」新がそう
Last Updated: 2026-08-12
Chapter: episode64
遂にやって来ましたこの日が。クリスマスイブが。新は11月から準備を進めてきたので事件のせいでイブのデートは諦めるしかないか、と思っていたが、ダニエルの後押しもあって若葉をデートに誘う事にした。それで若葉の気も紛れてくれるといいのだが。「若葉。今日デートしよう!」「え?デート?」「今日はイブだよ?オレ恋人とイブにデートするのが夢だったんだ。......ダメ、かな?」若葉は新のおねだりに弱い。ソファーに座っている新は立っている若葉を見上げる形になっていて、意図せず上目遣いになっていた。若葉はそんな新の様子に「ぐっ......!」となっていると、ダニエルが声をかけてきた。「ワカバ!恋人のお願いを聞いてあげるのは大事なことデスヨ?留守番なら任せて下サイ!」「ダニエル......分かった、分かった行くから!」「ありがとう、若葉!じゃあ10時に駅前で待ち合わせね!」「え?なんで待ち合わせ?一緒に行けば良いでしょう?」「分かってないなぁ......。待ち合わせをして、恋人をドキドキしながら待つのが良いんだよ」「それじや、オレは一度家に帰るよ!また後で!」そう言うと、新は佐倉家を後にした。「デートなんて考えて無かったからプレゼント用意してないよ?どうしよう?!」「ワカバ、アラタは一緒に過ごすだけでプレゼントデスヨ?だからオシャレしてアラタをビックリさせまショ!」「......まさか、また女装?」「ノンノン!ありのままのワカバで行くのデス!」ダニエルはそう言うと若葉の手を引いて若葉の部屋へと向かった。そしてクローゼットを漁り、クリスマスらしいコーディネートを組んでいった。白のハイネックのセーターにグレーのパンツ。その上には黒のコートと一見シンプルだが、若葉自身に華があるためこのくらいシンプルなモノトーンコーデが丁度いい。「ダ、ダニエル、変じゃない?大丈夫??」「大丈夫!とってもcuteデス!」「さ、もう時間がありませんヨ!」とダニエルに背中を押されて若葉は家を後にして駅前へと向かった。......流石クリスマスイブ。街にはどこを取って見ても、カップル、カップル、カップル......。若葉ば自分が浮いているように感じて少しいたたまれなくなった。そして待ち合わせの駅前に着くとスマホを取り出した。LINEをチェックすると、新から連絡が入っていて、どうも
Last Updated: 2026-08-11
Chapter: episode63
「......あぁ。そう言う訳だ。本当に申し訳ない。......いや、でも......そう言ってもらえると助かる。あぁ。若葉の事は任せてくれ。それじゃあ」「おじさん?」「!若葉」「母さんと電話してたの?」「......やっぱり分かったか。お前の事任せられたよ」「......て事は」若葉は顔をパァッと輝かせ直道に抱きついた。「これからもそばにいてくれるんだね!オレ凄い嬉しい!」若葉の心からの言葉に直道は涙を流しながら若葉を抱きしめ返した。そして、「ありがとう、ありがとう」と感謝の言葉を口にした。その様子を少し離れた所から見ていた新とダニエルは顔を見合せながら笑い合った。その2人に気がついた若葉はチョイチョイと手招きするとバッと手を広げた。そしてその腕の中に新とダニエルの2人も飛び込んで行った。「?!お前ら!」「直道さんばかりズルいですよ。オレ達も若葉とハグしたいです。」「ソーデスヨ!それにワカバが呼んでくれたんデス!来ないわけにはイキマセン!」「まったく......困った子供達だよ、お前らは」そうしている時だった。玄関のチャイムが"ピンポーン"と鳴った。こんな遅くに誰だ?と不審に思っていると、再度チャイムが鳴らされた。直道が代表してインターフォンを確認すると、そこに立っていたのは直道の妻、花緒であった。直道が急いでドアを開けると、花緒が直道に抱きついてきた。「か、花緒?!どうしてここに......」「あなた...私どうしていいのか分からなくて......」「おばさん?」「?!若葉君!本当に、本当にごめんなさい!怖い思いをさせてしまって......!!」「おばさんは何も悪くないよ。それにおじさんも。だから自分を責めないでよ。」「けれど...本当はここに来る資格も、若葉君に会う資格も無いのは分かっているの......。でも、でも......!!」若葉はそっと花緒の事を抱きしめた。花緒はハラハラと涙を流し続け、その場にしゃがみこんだ。「若葉君......優しすぎるわ......。おばさんの事なんて責めて良いのに...。こんなに優しく抱きしめてくれるなんて......」「......オレにとっては、おじさんもおばさんも大切な存在だよ?浩兄の事は正直許せない。でも2人は関係ないよ。それにオレの油断が招いた事件でもあるんだよ。だから、
Last Updated: 2026-08-10
推しゴト!!

推しゴト!!

大学受験に失敗して家に引こもるようになってしまった"桃瀬 美幸"(モモセ ヨシユキ)。ヒキニート化してしまった弟を見かねて、芸能プロダクションを営む姉はとあるアイドルグループの世話係を命じる。そのアイドルグループ"LUMINOUS"(ルミナス)は美幸が箱推ししているアイドルグループで、ひとつ屋根の下で彼らと過ごしていくうちに、メンバー達から様々な感情を向けられるようになりー 主人公 桃瀬 美幸(モモセ ヨシユキ) LUMINOUS 赤羽 翔汰(アカバネ ショウタ)オレ様系 青柳 理(アオヤナギ サトル)パワー系 黄田 晴(キダ ハル)王子様系 緑川 澪里(ミドリカワ ミオリ)あざとい系 紫藤 聖(シドウ キヨシ)おっとり系
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Chapter: episode39
あぁ、面白くない。実に面白くない。翔汰、晴、澪里の三人は先の二人を見てそんな感想を抱いた。今まで、ろくに関係してこなかった癖に。絡んでこなかった癖に。そう言うドロドロとした感情が心を占めている。そんな三人の様子に気がついた美幸は、その淀んだ空気に身体がゾクリとした。そんな重たい空気を破ったのは、聖だった。「ねー、なんでこんな空気悪くなってんの?あ、自分達が出来ないからって僻んでんの?ダッサイよ?」「な!おい聖!黙って見てれば好き勝手したり、言ったり......!もう我慢ならねぇ!」そう言うと翔汰は聖に殴りかかろうとした。しかし、その手を遮ったのは他でもない美幸であった。「ちょっと!皆やめて!喧嘩なんてらしくないよ......!なんでこんな事になってるのさ......」「そ!れは......、お前が拒否らないからだろ......!」「拒否する間もなくされたんだから仕方ないでしょ?!」美幸と翔汰が言い争っていると、晴と澪里も乗っかってきた。「ヨシ君!僕たちともチューしよ!それで皆公平になるから!ね?」「美幸君。僕も澪里に賛成です。ここは公平になるようにしましょう」「え?!」そう言うと、晴は美幸の手を引くとそっと抱きしめキスをした。そしてその次は澪里。そして翔汰へと続いた。もう美幸は何が何だか分からなくなっていた。そして推し達からされるキスに、頭が爆発しそうなくらいだった。「ハァハァ......。もう......よして......?」美幸からの懇願で、やっとやんだキスの嵐。ファンサが強いにも程がある。ファンサの過剰摂取は心臓に悪い。そう思っていると、全員から言われたのはただ一言。「「これはただのファンサなんかじゃないから」」この言葉に何も言えなくなってしまった美幸。ファンサじゃなかったら一体なんなんだ?まさか、皆本気で......?いや、そんなまさか。心を占めるのはそんな自問自答。そう固まっていると、翔汰が口を開く。「別に今すぐに一人を選べなんて言わねぇよ。ただ、いずれは......、な?」そう言われ全員の顔を見る。皆ライブの時に見せるような真剣な眼差しを自分に向けてきている。それだけでこれが冗談なんかじゃないと分かる。これは自分も本気で応えないといけない。そう感じるのだった。...とりあえず視線が痛いので今この場をどうしめるか考える必
Last Updated: 2026-09-12
Chapter: episode38
聖以外のメンバーは、美幸と聖のキスシーンを見てビックリしたのと同時に、なんだかもやりとしたものを感じた。いちはやく立ち直ったのは理だった。「聖がいいなら、オレがしても......構わないな?」「......え?」そう言うと、理は美幸を壁際に追いやって壁ドンをしてきた。美幸は心の中で「さ、理さんの壁ドンだー!!」と表には出さないではしゃいでいたが、次の瞬間、今度は顎クイをして目線を自分に向けさせた。そして静にキスをしてきた。唇を重ねた後、理は美幸の唇をべろりと舐め、満足げに美幸を抱きしめた。「他の奴には渡したくない......。いいから黙ってオレの物になれ」「さ、理さん?え、冗談......?」「冗談なんて心外だ。はじめて出会った時からお前だけを思っている」......もう頭がパンクしそうだ。この2人に想われるような事をしてきただろうか......?「理さん?オレ、貴方に何か想ってもらえるような事しましたか......?」「覚えてないのも無理がない。あの時はまだ子供だったからな。小学生の時、公園で揶揄われていた所を助けてくれたのはお前だった。その後しばらく公園で会うようになったが、オレの親の転勤で会うことがなくなってしまった」「......もしかして、さっ君?」......覚えている。忘れもしない。急に会えなくなったのを寂しく思っていたのだから。でも、記憶にあるさっ君とは随分と雰囲気が変わっていて気がつかなかった。「お前にまた会いたくて、見つけてほしくてアイドルになった。......でも、お前はオレの事を忘れているようだったし......」「ご、ごめん!!忘れてたわけじゃないんだ!......あまりにも記憶の中のさっ君と別人だったから...。」「それは......お前に見合う男になれるように鍛えたからな」「お前のため」そう言われて喜べないわけがない。最高のファンサだ。「でも、よくオレだって気がついたね?名前だってお互いあだ名で呼んでたのに......」そうだ。美幸は理の事を"さっ君"と呼んで、理は美幸の事を"よっちゃん"と呼んでいたのだ。けれど、理はどうして美幸の事に気がついたのだろうか?あの頃はまだメガネも何していなっかった。だから、謎で仕方がない。「......さっ君はどうしてオレに気づいたの?」そんな疑問に理は満面の笑みを
Last Updated: 2026-09-08
Chapter: episode37
美幸はウキウキとした面持ちで玄関のドアを開けた。早くデモ曲が聴きたいからだ。重い買い物袋なんて苦に思わない。「ただいまー。聞いたよデモ曲出来た......んだ、よね?」喜々としてリビングに入った美幸を出迎えたのは......暗い雰囲気をまとった五人の姿だった。一体どうしたというのだろうか。「あ、あの......どうかした?デモ曲に何か問題でもあった?」「......問題なんてもんじゃねーよ!完全に社長の趣味だろう?!知ってんだぞ?社長含め女子社員全員が"腐女子"だって!」「......ふじょし?」翔汰が一体何にキレているのかまったく理解が追い付かない美幸だったが、澪里に差し出されたデモ曲の歌詞を見た。なんだ。普通のラブソングじゃないか。「これのどこが問題なの?ふつうのラブソングでしょ?」「普通じゃねーよ!意味を考えて、もう一回!読み直せ!」"結ばれることの許されない僕たち"、"同じじゃなければよかったのに"、"君と手を繋ぐ事すら許されない"...。身分さのあるラブソングの様に聞こえるが......。翔汰の言った"ふじょし"とやらが関係しているのだろう。「翔汰さん、"ふじょし"って何?」「知らなかったんかよ!"腐った女子"で"腐女子"!男同士の恋愛が好きな奴らの事!!」美幸は翔汰からの説明を聞き、眩暈を起こした。まさか喜子にそんな趣味があるなんて。そして......初めての映像作品になるであろうものに、なんていうものをぶつけてくるのだ......。「い、今は多様性の時代だからね!ま、まあそういう曲も悪くはないと思うよ!」「......お前、初の映像で男とキスできるんかよ?」「キ、キス?!」「ない話じゃないからな」と言う翔汰は少しげんなりしていた。その時だった。聖が美幸の元へと歩み寄ってきた。そして無言で見つめてきたかと思うと、美幸の顎をすくいあげた。「き、聖さん?!」「シー。......黙って?」次の瞬間だった。聖の唇が美幸のそれを塞いできた。美幸はもちろん、他の四人も固まって動けなくなり思考回路が停止した。「んン...!アッ聖さん!......ま、待って!!」「んー?もうギブ?可愛いねー」情報量が多すぎる......。え、これを撮影では何度もするってこと?!しかもLUMINOUSと?!ファンに殺されるんじゃ......。
Last Updated: 2026-09-06
Chapter: episode36
撮影スタジオから外に出て事務所へと向かう。事務所に着くや否や待ち構えていた喜子に「良くやった!」と背中をバシバシと叩かれた。「あのオレ様我儘王子を負かすなんて流石私の弟!いやぁ、黒川君から連絡がきたときはどうかしたのかしらと心配したのに、まさか美幸が自ら志願したって言うじゃないの!一体どういう風の吹き回し?」「......いや、見学してたらなんだかつまらない画だなって思ったのと......」「のと?」「LUMINOUSをバカにされたのが許せなくって!!」やはり美幸は美幸だった。推しがバカにされたのが黙っていられなかったらしい。「......それに、あの高飛車な鼻をへし折ったら面白そうだなって思って」「美幸...貴方黒くなったわね......。そうそう。LUMINOUSの新曲のMVについて明日会議を開くから、主演として貴方も参加して頂戴?」「......モデルは動かなくていいけど、演技ってなると不安が......」あぁ、また気弱さが出てしまう。けれど、喜子はそんな美幸に強い言葉をかけた。「"MIYUKI"。貴方はもうプロよ。大丈夫。カメラの視線を自分の物にする程の実力がある。その役になりきることができるわ。貴方はもう立派な演者よ。自身を持って」喜子の言葉に美幸はハッとする。あぁ、自分は評価されているのか。自分のやってることが"おままごと"になっていなかったのか、と安心することができた。「ありがとう、姉さん。オレ、自信持って挑戦してみるよ」「その勢いよ。うん。いい顔してるわ」「それで......今日皆は?」「今日はデモ曲のデータを渡して終わりよ。今頃家で聞いてるんじゃないかしら?」そうか。皆も前に進んでるんだ。後ろ向きになってる場合ではない。「貴方も帰ったら聞いておいて頂戴?曲の雰囲気を掴んでいたほうが撮影に臨みやすいわよ」それもそうだ。でも一ファンからすると世に出る前のデモ曲を聴くことができるなんて......。と興奮してしまう。美幸は楽しみで仕方なくなっていた。とりあえず、今日の芸能の仕事は終わり。これからの時間は"シェアハウスのお手伝いさん"だ。今日のご飯は何にしようかな。そう考えながら黒川の運転する車に乗り込んだ。
Last Updated: 2026-09-03
Chapter: episode35
「こちらとしては願ってもない申し出です!話題のMIYUKIさんが出てくれるなら是非!」「......いいですよね?黒川さん。」「ハァ......仕方ありませんね。MIYUKI、思う存分暴れてきてください」そうして急遽撮影に参加する事になった美幸。それに対して面白くないのはGRAYだ。「なんでオレ様が新人と撮らなきゃなんねーんだよ」「ま、まぁまぁ。所詮GRAY君の引き立て役だよ」「フンッ。なら精々いい駒になってもらわねぇとな」美幸がヘアメイクをされている時、黒川の耳に入ってきたGRAYとそのマネージャーの会話である。これは面白い事になりそうだ。せいぜい今だけ可愛く吠えているがいい。黒川はそうほくそ笑んだ。「MIYUKIさん、準備完了でーす!」そうして出てきた美幸に言葉を失ったのはGRAYだけではない。それもそうだ。先程まで気弱そうな青年だったのが、自信に満ち溢れ、隠していた色気を全面に押し出しているのだから。「それじゃあGRAY君。よろしくね?」美幸はそう言うと不敵に笑う。GRAYは思わず見とれていた自分に気がつくと「そんなバカな」と呟く。「それじゃあまず、GRAY君、椅子に座って。MIYUKI君はその足に頭を乗せて目線をこっちに!」カメラマンの指示に従いポーズを次々に決めていく。その場にいる誰もかが息を飲んだ。カメラマンもシャッターを切る手が止まらない。「最後に一輪の花に二人で口づけるように......そう!いいよいいよ!......ハイ!以上で撮影は終わります!」その言葉でようやく皆が息をする事が出来るようになった。「凄いよあの新人......MIYUKI?だっけ?リテイク無しじゃん」「GRAY君も途中から引っ張られてたよね......」撮影が終わったので着替えに入ろうとした美幸だったが、その時、「あの!」と声をかけられた。声の主はGRAYだ。「さっきは生意気言ってすんませんでした。......途中から引っ張ってもらって......助かりました」「少しは役に立てたかな?」「役に立つなんて......!とんでもないっす」「そう?なら良かった。それじゃあ、最後にこれだけ」美幸はそう言うとGRAYにそっと耳打ちした。「今度LUMINOUSをバカにしたら......許さないからね?」
Last Updated: 2026-08-29
Chapter: episode34
スタジオの中に入るとスタッフ達が忙しなく動いている。美幸は黒川に促され、椅子に座って水を飲んでいる人物に挨拶をしに行った。「初めまして。本日見学させていただきます、persicumのMIYUKIといいます。よろしくお願いします」美幸はそう言うと笑顔を向けて見せた。しかし、その人物は美幸を上から下まで値踏みするように見ると、「ハッ」と笑ったのである。「LUMINOUSも大概大した事ねぇけど、モデルもレベルが低いんだな。どう見てもモブ顔じゃねぇか。こんなんがモデル名乗れんなら誰でもなれるわ」「は?LUMINOUSが大した事ない」だと?美幸は思わずピキッた。彼らの努力をバカにされたような気がして。「あの、挨拶をされたらきちんと返すのが礼儀というものじゃありませんか?あぁ、貴方はまだ子供のようですもんね。大人の世界の常識は分かりませんか。すみません」「あぁ?オレ様よりチビの癖して何偉そうに言ってんだよ。それにオレは先輩だぞ?それこそ非常識じゃあねぇの?」「......所詮顔だけのくせして」美幸はキレていた。思った事がつい口から零れてしまうくらいに。「オレ様が顔だけだと?言ったな?なら今日オレ様の撮影をしっかりと目に焼きつけろよ?終わる頃には"ごめんなさい"を言わせてやるよ」「そう言えば貴方の名前を聞いていませんでした」「は?知らずに来たのかよ。......耳の穴かっぽじって聞けよ?」そう言うと水の減ったペットボトルを机に置いて立ち上がり、美幸に目を向けた。「オレ様の名前は"GRAY"。しっかり覚えておくんだな」そう言うと彼、GRAYはスポットライトの元へ足を踏み入れた。「MIYUKI......挑発してどうするんですか」「LUMINOUSをバカにしたんです。許せるはずがありません」「ですが、それで彼に火をつけて......」黒川は美幸に飽きれた様子を見せた。しかし美幸もこればかりは譲れない。そうしていると、撮影が始まった。しばらく静かに見学をしていた美幸だったが...…何かが物足りない。翔汰との撮影は燃えるような気持ちになったのに。「所詮口だけのお子様、か......」「MIYUKI?」「あぁ、いえ。すみません。......彼つまらないなと思って」「......一応人気モデルなんですよ?」黒川の言葉に美幸は「フハッ」と笑った。
Last Updated: 2026-08-26
その番犬、狂暴につきまして。

その番犬、狂暴につきまして。

ある日突然交通事故で両親を失った京司(けいじ)。そんな彼を引き取ったのは極道で名の知れた五十嵐組の組長であった。 そんな彼の一人息子、叶弥(きょうや)とともに慌ただしい毎日を送る京司。時には絡まれ、時には涙することも。ガキ大将であった叶弥と泣き虫であった京司。高校生となり、二人は身も心も成長し、京司はいつしかそのケンカの腕っ節から、"五十嵐組の番犬"と呼ばれるように。そんな相思相愛の二人が繰り広げる"ワン"ダフルな日常の物語。
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Chapter: episode85
帰り道、剛はとてもご機嫌であった。今日は〇〇君と〇〇ちゃんと何して遊んだ、初めて食べる給食は美味しかった、などなど。オレの心配は杞憂に終わったようだ。手を繋ぎながら歩いていると、とあるママさん集団がオレ達3人を見ながらヒソヒソしている。...なんだか良くない感じがする。オレが其方をみているのに気付いたママさんのうちの一人が近付いて来た。「こんにちはぁ。今日から入園してきた剛君、だったかしら?」「あ、はい。こんにちは」「こんにちは!」「あら元気が良い事。......ところで、"五十嵐"ってもしかしてあのヤクザの"五十嵐組"の方かしら?」ビンゴ。考えていない訳ではなかった。ママさんの中には極道をよく思っていない人もいるだろう、と。「ちゃんと躾てらっしゃる?ヤクザって乱暴でしょう?ウチの子に影響がないか心配だわぁ。それに、」「......それに?」「父親も母親もいない子なんて、ねぇ?」「......黙って聞いてりゃ、好き勝手言いやがって......!」「だって本当の事でしょう?それに朝、太一先生に言ってたのが聞こえたけれど......貴方達、恋人同士なんですって?男同士で......嫌だわぁ......」このママさんを囲っていたママさん達も、うんうんと頷いている。......どうやら彼女がここのボスママさんのようだ。「けーじ?きょーや?」「剛。大丈夫だからな」「実の親がいないから親子ごっこするには持ってこいなのかしらねぇ?」......言わせておけば言いたい放題。オレも叶弥も我慢の限界に達していた。オレ達が言葉を発そうとした時、騒ぎを聞きつけた園長先生と太一先生がやって来た。「一体なんですか?......あぁ、また貴方達でしたか。他の保護者の方のご迷惑になる事はしないように言いましたよね?」「で、ですが子供の教育に悪いじゃないですか!」「いつの時代の話しをしているのですか?今は多様性の時代ですよ?それに同性カップルなんて珍しくも無いです。」「そうですよ!それに、ぶっちゃけ貴方達より京司さんの方が魅力的ですよ!」「......太一」「おっと、失礼いたしました」園長先生と太一先生の迫力のお陰もあってか、ボスママさん達は顔を真っ青にして「す、すみませんでした!」とそそくさと去って行った。「けーじ、きょーや、お話し終わったか....
Last Updated: 2026-09-12
Chapter: episode84
「叶弥!早く早く!!」「落ち着けよ京。焦らなくても剛は逃げねぇ」オレはこの一日が気が気じゃなかった。剛は無事幼稚園でやれているのか、友達は出来たのだろうか。大変心配であった。幼稚園が近づくにつれてママさんと手を繋ぎながら帰る子供達が見えてくる。「先生ーさよーならー!」「はい。さようなら」子供と言うのは凄い。一日園で遊んだハズなのに元気いっぱいな挨拶をしているのだから。「こんにちは。五十嵐です」オレがそう言うと、叶弥が横で「京が五十嵐って名乗った.....!!もうカンペキ嫁じゃん!」と天を仰いでいた。「おや、叶弥君、京司君。おかえりなさい。剛君待っていましたよ。」「あの.....剛の園での様子は.....」「それはもう!元気いっぱいでお友達も出来ていましたよ。今呼んで来ますね」そう言うと園長先生は剛を呼びに行った。しかし剛を連れてきたのは太一先生だった。「おかえりなさい、京司さん!剛君、今日一日ですっかり園に馴染みましたよ!」「けーじ!おかえり!」「ただいま、剛。幼稚園腹楽しかったか?」「うん!」「つよしくん、バイバーイ!」「こころちゃん!バイバーイ!」子供達が挨拶をしているのを見ていると、太一先生が「ね?大丈夫でしょう?」と声をかけてきた。「剛君、他の子供達から大人気で。あ!給食も好き嫌いせずに全部食べてましたよ!」「ウチでも好き嫌いはさせないようにしているので」「京司さんの教育の賜物ですね!.....それで、あの.....」「?」「良かったら連絡先を交換して「ハイ、ストップー」」「叶弥」太一先生が連絡先を聞いてこようとした時、叶弥がストップをかけてくれた。正直助かった。この手のタイプは一度連絡先を手に入れるとしつこく連絡してくるからだ。「叶弥さん.....いらしたんですか?」「はい。もちろん最初からいましたよ?」.....なんともまぁ、バチバチな二人だ。「きょーや、先生!仲良くしなくちゃダメなんだぞ!」剛は痛いところを突き、大人二人を黙らせた。子供に言われてしまえば叶弥も太一先生も言い合いする事が出来ない。「それじゃあ、オレ達はこれで」「先生さよーならー!」「あぁ、京司さぁん!」
Last Updated: 2026-09-08
Chapter: episode83
朝となり、身支度を整えメシを食べ終えるといざ、幼稚園へと向かうのだった。オレ達は三人で仲良く手を繋ぎながら歩いていると、ママさん達の方から声をかけてきてくれた。「おはよう。えっと、五十嵐君、で良かったかしら?」「おはようございます。はい。五十嵐です」「おはよーごさいます!」オレと剛がママさんと挨拶を交わしていると近くで"ゴンッ"と鈍い音が聞こえた。...音の出処は言わずもがな叶弥である。原因はどうせオレが"五十嵐です"と名乗ったからであろう。「スンマセン。おはよーごさいます」「お、おはよう?おでこ大丈夫?」「大丈夫っス。ご心配ありがとうございます」叶弥は額を真っ赤にしながら、今までに見せたことの無いような爽やかな笑顔をママさんに向けた。するとママさんは頬を紅潮させながら、「そ、そう?なら良かったわ」と言うとそそくさと去って行った。...オレはなんだかそれが面白くなく、叶弥の足を思いっ切り踏みつけた。「痛ってぇ!!何すんだよ京?!」「別にぃ?外ヅラだけはいいなと思って」「?......!なんだァ?ヤキモチか?」「!」図星を指されたオレは顔が一気に熱を帯び、それを誤魔化すかのように剛の手を引くと「早く行くぞ」とボソリと行って幼稚園へと入っていった。「あ!おはようございます京司さん!おはよう剛君!」「おい、オレは無視か」「今日も素敵です。......あれ?顔赤くないですか?もしかして風邪?!」「い、いえ。大丈夫です。ご心配ありがとうございます」「先生!けーじはね、ヤキモチやいてるんだって!」「ヤキモチ......?」剛はオレが固まっている間に先程あった出来事を包み隠さず太一先生につげてしまった。「......京司さん、可愛らしいですね......!!」「やめてください、恥ずかしい......」「ちょーいちょいちょい。何二人で良い感じになろうとしてるわけ?太一先生。京はオレのなんですよ?」「チャンスが無いわけでは無いでしょう?なんてったって結婚している訳では無いんですから」太一先生がそう言うと、叶弥はニヤリと笑みを浮かべ、首から下げていた指輪を見せつけた。「そ、それは......?」「オレと京のペアリング♡」叶弥がそう言うと、太一先生は「くそー!勝ち目が無さすぎるー!」と言って引っ込んでしまった。朝から元気な人だなぁ
Last Updated: 2026-09-06
Chapter: episode82
太一先生はオレの手を握ったまま離してくれない。もうそろそろ学校に向かいたいと言うのに...。そう思っていると叶弥がオレを背後からギュッと抱きしめ太一先生を睨みつけた。「オイ......いつまで京の手を握ってやがる?」「叶弥さん......でしたっけ?一体なんの権利があって邪魔して来るんですか?」「オレは京の恋人だ。口出す権利はあるに決まってるだろ?」「な......な、なんだって?!京司さん!ウソですよね?ウソだと言ってください!」「それは......」太一先生のあまりの勢いに押され、オレは応える事が出来ずにいた。すると叶弥は無理やりオレと太一先生を引き離し、園長先生に「それじゃ!剛の事、よろしくお願いします!」と言ってオレの手を引き幼稚園を後にした。後ろからは「京司さぁーん!」と言う太一先生の情けない声が聞こえた気がした。「ちょ、叶弥!痛いって!」「あ、悪ぃ。......つい。」叶弥はそう言うと握った手を離した。それがちょっと名残り惜しく感じたのはオレの心の中に秘めておくことにした。「いいか、京。剛の送迎は絶対一人で行くなよ?いいな?」「いや、絶対はムリだろう」「グッ......。じゃあ、せめてあの太一とかいう奴はと二人きりになるなよ?いいな?」叶弥のあまりにも真剣な眼差しにオレは「分かった」と了承の返事をするしかなかった。「しかし、まぁ、オレの京はなんでこうも男を惹きつけるのかねぇ......」「そ、そうは言ってもオレにはどうする事も出来ねぇよ......」「オレだって分かんねぇから困ってんだよ......」と言うと叶弥も「だよなぁ......」と同意した。まぁ、武術の心得もケンカの腕っ節もあるので余程の事が無い限り何かが起こる事は無いだろう。......まぁ、何度かピンチに陥った事はあるが。オレ達は「朝から疲れたなぁ」と言うと学校へ向かおうとした。が、その時だった。幼稚園のママさんらしき人達に囲まれてしまったのだ。「さっきの見てたわよぉ?太一先生、またやったのねぇ」「「また?」」「ほら、園長先生も言ってたでしょう?惚れやすいって。でもこれから大変ねぇ」「「?」」「太一先生、惚れやすいけど、一度惚れると厄介って噂よ?」「気をつけてね?」と言うと、ママさん達は去って行った。オレはゾクリとしながら叶弥と共に学校へと向かっ
Last Updated: 2026-09-03
Chapter: episode81
「おはよーございまーす!」「はい。おはようございます。今日も元気いっぱいですね」「はーい!」幼稚園にたどり着くと、元気な挨拶が飛び交っていた。いよいよとなると、剛はカチンコチンに固まってしまった。「剛。大丈夫だ。ホラ、行こう?」「お、おう......」「ここ......オレの出身幼稚園じゃねぇか」「ハァ?!今更?!なんで気が付かなかったんだよ!」「いやぁ......アハハ」オレ達がそんなやり取りをしていると、高校生が幼稚園にいるのが物珍しいのか、ママさん達の注目を集めていた。「おや?......もしかして叶弥君じゃありませんか?」「ア?そーッスけど。......もしかして"タケちゃん先生"?」「そうそう!そうですよ!いやぁ......大きくなりましたねぇ!」「タケちゃん先生こそ、今もここに?もういい歳だろ?」「今は園長をしているんですよ。それに......あ、いたいた。おーい、太一!」まさか叶弥が通っていた頃からの先生がまだいるとは。しかも今では園長先生。これなら剛を安心して任せられる。そう考えていると、"太一"と呼ばれた男が駆け寄って来た。「これは私の息子の太一です。今はこの幼稚園で共に働いています。ホラ、太一。挨拶を。......太一?」太一と呼ばれた先生は何故かオレをみて固まっている。オレは思わず「あの......」と声をかけると、彼は俺の空いている方の手を握って頬を赤くしながら、「ご、後藤 太一です!貴方のお名前は?!」「え......あ、田河 京司です。」「京司さん!あの、一目惚れしました!まずはお友達からどうでしょうか?!」そう迫ってきたのだった。オレと叶弥、園長先生は「「ハァ?!」」と声を上げた。そして園長先生は太一...先生の頭をポカリと叩いた。「痛ぇ!何するんだよオヤ......園長先生!」「太一先生が突拍子も無いことを言い出すからでしょう!すみません、えっと......」「京司でいいです。」「ありがとうございます、京司君。すみません、太一先生は昔から惚れっぽくて......。あ、もしかして今日から入園する......?」「はい。ホラ剛。挨拶して」「い、五十嵐 剛です。おはよーございます」園長先生は太一先生の事を一旦置いておく事にしたのか、話題を剛にふってきた。剛は恥ずかしそうにオレの影に隠
Last Updated: 2026-08-29
Chapter: episode80
それから日々は過ぎ、月曜日。つまり剛の幼稚園入園の日がやってきた。剛は朝からソワソワと落ち着かない様子だ。その証拠に朝メシがなかなか進んでいなかった。「剛、早く食わないと幼稚園に遅れるぞ?」「!だ、大丈夫だ!今食う!」「お前でも一丁前に緊張するんだな」「き、緊張じゃねーし!」剛は叶弥に発破をかけられ一気にメシをかき込んだ。そう言えばここに来る前は幼稚園などには通っていなかったのだろうか?ふと疑問に思ってしまい、オレはつい剛に問いかけてしまった。「剛、もしかして幼稚園初めてか?」「!」「?だってコイツの親働いてただろ?幼稚園行かせないでどうするんだ?」「......ない」「え?」「......お母さん、働いてない。せーかつほご?ってやつもらってた」オレはしくじった、と思った。どうやら触れてはいけないところに触れてしまったらしい。何故なら剛の顔が曇ったからだ。オレはなんて声をかけたらいいか分からないでいた。しかし、それも一瞬で、剛はニパッと笑うと「緊張はするけど楽しみなんだ!」と言ってのけた。「......男前だな、おまえは」「!おう!オレは強いからな!」「"つよし"だけにってか?」「......叶弥、寒い。」「さむーい!」「んだと、コラ」そうしていつも通りの朝メシの光景に戻るとオレは安心した。オレ達が朝メシを食い終えた頃、前園がオレ達の元へとやって来た。「若、京司さん。もし良ければ剛坊ちゃんの送迎をお願い出来ませんか?」「別にいいけど......何かあったのか?」「いえ......何かあったと言う訳では無いのですが......その、私達が行くとカタギの皆さんを驚かせてしまって、剛坊ちゃんの友達作りに支障が出てしまうのではないかと......」「なる程な。分かった。剛の事はオレ達に任せてくれ」そう言うと前園は安心したようで「よろしくお願いします」と言って剛をオレ達に託すと仕事へと向かっていった。「それじゃ、オレ達も行くか。剛、準備は出来てるか?」「おう!完ぺきだぜ!」オレは剛の手を取り玄関から出る。すると、剛と繋いでいない方の手を叶弥が握ってきた。「......オイ、叶弥。何してるんだ?」「何って。手ェ繋いでる」「子供じゃないんだから離せ。剛に笑われるぞ?」「京と手を繋ぎたいと思うのは男として当たり前の事だ
Last Updated: 2026-08-26
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