Se connecter「全然気づかなかったわ、武美は?」
「私も。いま何週目なの?」
「19週です」
和美様と武美が安心したような目をしたのは安定期に入っていることが分かったからだろう。
一方で、週数を言ったことで妊娠がリアルに感じられたのか朋美様は慌て始めた。
立ち上がって私に椅子を勧めてくださる朋美様に和美様が呆れる。
「朋美、落ち着きなさい。妊娠は病気じゃないのだから大事なければ普通に生活して大丈夫なの」
「そ、そうなの?」
「とは言っても、美香さんを立たせている理由もないわね。美香さん、座って、少し立ち入ったことまで聞いてもいいかしら」
「はい、答えられる範囲でとなりますが」
和美様は頷き、私は和美様が目で示された椅子に座る。
武美様はそのまま、朋美様はそのまま元の椅子に座って話を聞く態勢になる。
「あなたたち……」
「私は構いません。いろいろお聞きになりたいのは、この状況では当然だと思いますし」
和美様は気遣ってくださったが、あとで個別に質問されるより一度で済ませてしまいたいのが本音。
聞かれることを想像すれば、何度も話すのは憂鬱だ。
「あ、お兄も呼ぶ?」
「朋美、あなたね……」
「あんた、鬼なの?」
朋美様の提案に和美様は呆れ、武美様は非難なさった。
確かに、鬼のような所業とはいかないだろうけれど、妊娠したという話は当事者でなければ男性には身の置き場のない話題だろう。
それに……。
「蓮司様は私の妊娠を知っていらっしゃいますので……」
「「「はあ?」」」」
わざわざ呼び出す必要はないと言うつもりで言ったのだけれど……どういう反応なのかしら?
「み、み、み、美香さん! もしかして……」
倫理や道徳的なことに目をつぶれば、白州典正のやっていることは合法ではある。 表向きは成功した古美術商で、日本にも白州典正の顧客はいるのか周りは知っていても知らない振りをしていたようだ。 だからこそ大手を振って美術展の主催者などやっているのだろう。 しかし、今回の白州典正が桔梗にしたことは明らかに犯罪。 桔梗は桐谷家の嫁で、桐谷家とその一族が大歓迎している嫁だ。 しかも白洲家が属する文化界の重鎮たちに桔梗は娘や孫のように可愛がられている。 性的暴行は被害者が訴え出なければ成立しないが、社会的に抹殺するなど桐谷家にはできるし、桔梗のためと奮起する大量のジジババが頭に浮かぶ。 それが分からない男ではないだろう。 そうなると、一時の欲望のために白洲典正は全てを掛けたことになる。 なぜ? 孫とは言わないが、桔梗は白洲典正の子どもより10歳以上若い。 そんな桔梗人生の全てを賭けるか? * 「なんだ、この絵……お前が描いたのか?」 俺の言葉に、画集を俺に突きつけていた朋美が呆れた顔を向ける。 「そんなわけないでしょ。石川明梗の作品。彼の作品の中で最も有名で、彼を人間国宝にとまで言わしめた最高傑作『四連花』よ」 美大生の朋美と違って俺は絵が得意ではない。 良し悪しが最終的には時代の風潮とか個人の好みというところが納得できない。 古いものなら一般教養の範囲で覚えているが、現代、特に最近はからっきしだ。 ただ……。 「きれいな絵だな」 「お兄ならそう言うと思った。それでね、この石川明梗先生に会ってみたいんだ」 「なぜそれを俺に言う?」 「桔梗さん、石川先生のお知り合いでしょ?」 ……ん? 桔梗とセットで「石川」と言われて浮かんだのは、あの日、白洲典正から桔梗を助けてくれたあの石川先生だが……。 「分かっているよ。それなら桔梗さんに頼めばいいだろって言いたいんでしょ? でも、頼んで桔梗さんにミーハーな子だって軽蔑されたくないの」 「いや、ちょっと待て……」 聞きたいのは、それではない。 「お兄が桔梗さんに軽蔑されるってこと? それ、私に何か関係ある?」 ……これは、ひどい。 画家で石川明梗を調べると、確かにあの石川先生だった。 祖母さんの知人だったため警戒しておらず、素性を洗わなかったから知らなかった。 彼は都内を中心に
「……気を失ったか」首をかくんともたげで気を失った桔梗。呼吸は安定している。とりあえずは安心、といったところだろう。それにしても……。「たちの悪い薬だ」惨状といえる寝室の状態に苦笑が漏れる。俺のほうは薬など飲んでいないが、煽られたのは薬のせいもあるから文句は言えるだろう。掛け布団と枕は床に落ち、シーツは行為の激しさを見せつけるようにぐちゃぐちゃ。そんな何もなくなったベッドの上で、桔梗はその体を隠すことなく寝ている。くったりとしたその姿は疲労困憊とも言えるし、満足気にも見える。白い肢体は行為の熱で桜色に染まり、気をつけていたつもりだが無意識につけてしまった赤い痕は散った花びらのよう。「ん……」桔梗が身動ぎし、脚が動いて、女の部分が俺の目に入る。穢れを知らない仙女のようなきれいな桔梗だから、赤く腫れたそこが艷やかな様子は生々しく、淫靡さが際立つ。……これは危ない。俺は、自分でも自制が効くタイプだと思っていた。でも俺はいま、至極満足している。性を吐き尽くして欲が満たされたからもあるが、美しい桔梗に己の跡をつけたことに満足している。完璧な女を壊せた。そんな、暴力的な満足感。……気づいてしまった自分が嫌になる。 それにしても、これが桔梗か。こんな女、外に出して大丈夫か?いや、大丈夫ではないな。如何わしい場所に行ったわけでなく、祖母さんと美術展に行っただけでこんなことが起きたのだから。桔梗自身に非はない。完璧と思わせるほど、美し過ぎるだけだ。桔梗の完璧な美しさは見る俺たちが抱いている、俺たちが気づきたくない汚い欲を煽り、表に引きずり出す。 *シャ
「桔梗」強く、でも優しく頭を押さえられて、目の前には蓮司さんの顔。「……蓮司さん」「力を抜いて、ゆっくりと息をしろ」「あ……」脚の間の濡れた部分に、熱いものが触れる。これが何で、これからどうするのかは知っている。でも……本当に?これが……中に……?指とは比べものにならない太いものが潜り込んできて、思わず目を強くつぶり、体がこわばるのを感じる。力を抜いてと言われたのに。 「すみませ……ふぅっ」キスで唇がふさがれる。「謝る必要はない」どうして蓮司さんはキスの最中に話せるのだろう。「痛くないか?」私は首を縦に振る。私にはこれが精一杯。「んぁ……」蓮司さんの舌で歯列をなぞられ、ゾワッとした感覚に奥が疼き、まるで分かっていたように緩んだところを狙って蓮さんが中に入ってくる。「あうっ!」ぐぽんっという感じに塊が入り込んだ感覚に息が詰まるが、塊が通過した入口には余裕ができて少しホッとできた。 「あ……くうっ」大きな塊が先を押し広げては、何かを掻き出すように中を擦りながら引いていく。「んっ」「よく濡れている」……蓮司さん?蓮司さんが私から出てきたものに指で触れ、繋がった部分の上に……そこっ!「ひあんっ!」ビリッと痺れて体の奥が熱を持ち、蓮司さんと繋がった場所がたくさん濡れると、蓮司さんはこれを待っていたように大きく腰を動かす。グチュグチュと音は恥ずかしいけれど、詰め込められた苦しさみたいのはあるけれ
「体はどうだ?」「どうって……そこかしこが、ビリビリって……」「それは、まあ……聞きたいのは薬のほうなんだが……」あ……。薬……あんなことがあったのに、忘れかけてた。「変なところは?」体のあちこちが変な感じだけど、蓮司さんが原因な気もする。頭は、ぽうっと火照った感じはするけれど考えられている。何かに力づくで押さえつけられる感覚はない。 「蓮司さんっ!? ん、あんっ」「悩む姿は可愛いが、俺のことを忘れないで欲しいな」誂うような声で、誂うような台詞を、誂うようにあそこを指で弄びながら……。「でもっ!」「ん? なんだ?」「く、すり……んっ、あふっ……はなし……」「ああ、話か。桔梗が飲まされた薬は恐らく性欲をかき立てるテストステロンに類似した成分のものだろう」「ん……あ……」ぐちゃぐちゃという音に混じる蓮司さんの説明。もう、わけわからない。「これは体内でオキシトシン、もしくプロラクチンを発生させればおさまる」「……ン?」なに、それ……。「どちらも性的快感のピークや射精時に感じるものだ。オキシトシンもしくはプロラクチンが発生すればテストステロンの効果が抑えられて性的衝動を治まる……つまり、指を増やすぞ」!「ああああっ!」2本の指が埋められて、広げられる痛みみたいなものは感じるたのの、それ以上に充足感とゾクゾクッとする感覚のほうが強くてすぐに気にならな
下着は脇によけられて蓮司さんの手が直接あそこに触れ、くちゅっとした音を立ててそこが指で押される。「んあっ」知らない刺激。体が思いきり跳ねてしまう。「あっ……あっ……」折りたたまれた肉が幾重にも重なった部分を蓮司さんの指が押し進んでいく。自分でも必要以上に触れない場所。何となく恥ずかしくて見ることもない。私でさえよく知らない場所。そこを、蓮司さんは触れて、しかもその目でしっかりと見ている。恥ずかしい。「熱いな」分からない。「十分に濡れているが……狭そうだ。痛かったら言ってくれ」……っ!蓮司さんの指が……。「痛いか?」痛みは……ない。首を横に振ると、さらに深くまで蓮司さんの指が……。「あ、あー……」……私の中に蓮司さんの指がある。「ひうっ!」私の体の中で蓮司さんが動く。誠司がお腹の中で動いていた感覚を覚えているから、何かが体内で動く感触は初めてではない。でも、これは違う。蓮司さんは大人で、男の人で……そういう欲がある。恥ずかしい。男性に欲望の対象とみられることが。それよりも、自分がそう見られていることに喜んでいることが。これが……性行為。別の個としている二人の大人なのに、相手の体内に体の一部を埋め、相手の一部を体に埋め込んでいる。その行為が恥ずかしくて堪らない。恥ずかしくて、堪らないはずなのに……。
「もう顔を上げても大丈夫だぞ」蓮司さんの大きなコートに覆い隠され、抱え上げられて運ばれてきた部屋で床に下ろされた。「あ……」足に力が入らず、よろけた体を蓮司さんが支えてくれた。支えてくれる腕の力強さにゾクッとする。「蓮司、さ……」「っ!」ゆらゆらする視界で蓮司さんが苦しそうに顔を歪める。その表情が色っぽくて、お腹の奥がきゅっと疼く。「あ……」太腿をゆっくりと粘度の高い液体が伝うのを感じた。ゆっくりと伝い落ちていく感触は、私を焦らすようでいて、気づけば疼く体を蓮司さんに押しつけていた。「くそっ、もう少し我慢してくれ」そう言って私を離そうとするのを感じて、私は蓮司さんに縋る。「やあっ……やだあ」我慢は苦しい。苦しいのは嫌だ。どうしたらいいのか分からない。「蓮司さん、熱い、熱いの、助けて……」「……くそっ」そう言うが早いか、蓮司さんは私を荷物のように担ぎ上げ、足早に歩き出した。「んっ、あっ、あんっ」蓮司さんが歩くことで体が揺れ、熱が蠢く場所を刺激されて声が漏れる。理性ははしたないと言っているけれど、体の熱はいまや渦巻き、暴れている。「熱い、蓮司さっ……苦しっ……ああんっ!」「くそっ、たちの悪い薬を桔梗に盛りやがって」 ふわっと体が浮く感覚がしたと思ったら、次の瞬間、背中に柔らかいものを感じた。先ほどあの男に横たえさせられたソファを思い出す。「やっ」「……桔梗?」!蓮司さんの声に目をあければ、そこにいるのは蓮司さん。その怯えたような表情に戸惑ってしまい、反射的に謝っていた。「いや……どうした?」「さっきを、思い出した……あの男に、ソファに……でも、大丈夫」蓮司さんだから……。「桔梗……俺