「まさか……あそこまでするなんてね……」 あの夜の全ては、継母である玲子さんと、彼女と父の間に生まれた桜子の企てだった。 * あの夜、私をホテルに呼び出したのは玲子さんだった。あの夜、父たちはそこで開かれたパーティーに参加していた。午後十時をまわった頃、玲子さんから「桜子が酔ったからホテルに彼女を介抱しにきなさい」と連絡があった。呼び出された場所は格式高いホテルだったから、桜子が「好みじゃないからあげる」といって押しつけてきたワンピースを着て向かった。宝飾品一つない地味な装いだけど、いつもより濃いメイクをして、いつもと違う雰囲気の服を着て、久しぶりにしたお洒落は私の心を浮きだたせた。 フロントで名前を言えばいいと玲子さんに言われていた。「花嶺」というと部屋番号を教えてくれた。玲子さんのとった部屋はかなり上の階であることに驚き、廊下に出て部屋と部屋の広い間隔にやはりスイートルームかと呆れた。花嶺家は父の代になってから家業の業績がよくなく、家計は私が何とかやりくりしている状態だというのに、父たちの散財は止まらない。 1泊でいくらだろうと思いながらドアのインターホンを押すと、見知らぬ男が扉を開けた。 私が来るまで桜子の介抱をしていた人だと思った。桜子が言うところの『便利なお友だち』、桜子にはそういう男性がたくさんいる。ただ、その男は雰囲気が違った。いつもならもっと派手な、軽薄な雰囲気の男たちなのに、その男は明らかにオーダーメイドの落ち着いたデザインのスーツを着ていた。意外だなと思ったが、無遠慮に頭の上からつま先までを値踏みするように見られて、やっぱり桜子のお友だちだと思った。 「お待たせいたしまし……「遅い」」 突然、その男は私の腕を掴んで部屋の中に放り投げるように押し込んだ。桜子のお友だちには何度か襲われかけたことがあるから、咄嗟に悲鳴をあげようとしたが、男が何もせず、しかも部屋を出たので拍子抜けしてしまった。扉が閉まった瞬間に真っ暗になった。 状況が読めなかったけれど、ただ真っ暗なだけで、男は出ていったから安全だと私は思ってしまった。 そして気を抜いた瞬間、部屋の中から伸びてきた腕に捕まり――私は地獄を味わった。 * 一難去ってまた一難とは、あの夜の私
Terakhir Diperbarui : 2025-12-12 Baca selengkapnya