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第457話

Author: 雲間探
玲奈は仕事を終えて基地を離れ、家に帰ってスマホを開くと、智昭は彼女が基地に向かってから1時間以上経ってから、ようやく返信していた。

基地に行く前に送ったメッセージに対して、彼はただ【了解】と返信しただけだった。

おそらく、前に智昭が約束を破ったことがあったからか、ここ半月の間、この【了解】以外、彼から一度も電話がかかってこなかった。

一方、茜はこの十数日の間に、4、5回も電話をかけてきていた。

ここまで確認すると、玲奈は智昭に簡単なメッセージを送った。【仕事が終わった。月曜日には時間がある】

メッセージを送った後、しばらく経っても智昭から返信がなかったため、彼女は待つのをやめた。

茜からの着信履歴については……

茜はただ会いたがっているだけで、特に用事はないはずだ。

そう考え、彼女は折り返し電話をしなかった。

彼女はもう半月近く、静香の見舞いに行っていなかった。

シャワーを浴びて、朝食をとった後、家族と一緒に病院へ静香の見舞いに行った。

静香の臓器不全の症状は徐々に改善していて、玲奈は感謝の言葉を述べた。「中島さん、ありがとうございます」

中島は彼女の肩を軽く叩きながら言った。「謝らなくていいの、これは私の務めよ」

静香の見舞いを終え、玲奈は青木おばあさんたちとエレベーターで降りようとした時、遠山おばあさんと優里、結菜たちの姿が見えた。

彼女たちを見て、玲奈と青木おばあさんは一瞬足を止めたが、すぐにいつもの顔に戻して、エレベーターから出た。

しかし、遠山おばあさんと結菜の表情はあまり良くなかった。

智昭が玲奈と離婚すると言い出してから、玲奈は一貫して協力的な態度を取っていると聞いていた。

前は智昭の都合で離婚届受理の期限半月以上延期され、彼の仕事が終われば、先週の月曜日にて無事に離婚できると思っていた。

ところが玲奈はよりにもよってこの期に急に連絡が取れなくなり、仕事場にも顔を出せず、電話にも出なくなった。

玲奈は明らかに手続きの先日になって、わざと逃げていて、智昭との離婚を引き延ばそうとしているに違いない。

実は最初、彼女たちも玲奈が音信不通になったことを知らなかった。

人に聞いてから、初めてそのことを知ったのだ。

そこまで考えると、結菜は玲奈を強く睨みつけた。

遠山おばあさんの玲奈を見る目も冷たかった。

玲奈はそれ
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Comments (108)
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桜花舞
ゆーいさん、 惰性仲間!笑いました! 毎回キリキリしながら、毎日惰性で?読んじゃってます〜
goodnovel comment avatar
桜花舞
シマエナガさん、 片方おじいさんや藤田家に連れて行ってるけれど、 言葉としては優里に伝えてない。 と信じてます!惰性で笑 でも、もしその推測が当たってるとしたら、、 なんて詐欺師なんでしょう⁈笑 でも、優里には、一度も結婚するとは言っていない!とか堂々と言って欲しい〜
goodnovel comment avatar
ゆーい
TAMAMIさま。 惰性仲間(笑)!嬉しい! もう完結まで、お話違う方向向いても「もしかしたら」ってずっと囚われてるんだろうな…と思います。 桜花舞さまもシマエナガさまも!ざまぁを夢見る惰性仲間が居たので、また気持ちを強く持って破滅を願い続けます!
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