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第8話

Author: 雲間探
彼の隣にいた人が尋ねた。「どうしたの」

「知り合いを見かけたような気がして」

彼らは智昭と幼なじみで、玲奈が智昭のことを好きだということも知っていた。

正直なところ、玲奈は美しかったが、静かで、美しいだけで特徴がなく、智昭の好みのタイプではなかった。

智昭が彼女を遠ざけていたように、彼らも玲奈をあまり良く思っていなかった。

彼らが玲奈に会う機会は多くなく、会っても挨拶する気にもならなかった。

正直、玲奈の姿は彼の中でもう少し曖昧になっていて、見間違えたのかもしれないとも思った。

でも、たとえ本当に玲奈だったとしても、気にはしていなかった。

彼は何も言わず、個室に戻った。

……

玲奈は清司に気付かなかった。

ホテルを出て、凜音の家まで送り、その夜は凜音の世話をするため彼女の家に泊まった。

凜音は目を覚まし、玲奈がいるのを見て、感謝して彼女を抱きしめた。「昨夜はありがとう。今度ご飯でも奢るわ」

玲奈は既に朝食を作っていて、彼女の頭を軽くたたいた。「起きて身支度して。朝ご飯が冷めちゃうわ」

凜音は彼女にしがみついて、顔を彼女の腰に埋めたまま離れようとしなかった。「玲奈は柔らかくて良い香りがするわ。抱きしめていると気持ちいい~」

玲奈「……」

凜音は身支度を済ませ、テーブルの上に玲奈が用意した香ばしい朝食を見て、幸せいっぱいで、本当に玲奈と結婚できる人は宝物を手に入れるようなものだと思った。

でも玲奈と智昭の結婚のことを思い出し、玲奈を傷つけたくなくて、その言葉は口にしなかった。

彼女は座って、朝食を食べながらスマートフォンを見ていた。

しばらくすると、彼女の表情が変わり、思わず玲奈に尋ねた。「智昭が帰国したの?」

玲奈「うん」

凜音はスマートフォンを玲奈に渡した。

玲奈は一目見て、それが智昭の親友の清司のSNSだと分かった。

彼は昨夜の集まりの写真を何枚も投稿していた。

写真のキャプションには「お誕生日おめでとう~」と書かれていた。

優里の誕生日を祝うものだったが、九枚の写真のうち四、五枚は智昭と優里の二人きりの写真だった。

特にケーキを切る時は、智昭と優里が同じクリスタルナイフを握って一緒に切っていた。

娘の茜は最初から最後まで一度も写っていなかった——おそらく藤田家の本家の人々に知られるのを避けたのだろう。結局、藤田おばあさんと彼女の祖母は親友で、彼女の母と優里の母との間にあった出来事のせいで、老夫人は優里を良く思っていなかった。

もし老夫人が智昭が茜を優里に近づけていることを知ったら、きっと激怒するだろう。

写真だけを見ると、知らない人は智昭と優里が本当のカップルだと思うかもしれない。

でもこの誕生日パーティーが智昭が優里のために特別に用意したものだということは明らかだった。

半月前の自分の誕生日での冷遇を思い出し、玲奈は視線を逸らした。

凜音は心配そうに彼女を見つめた。「玲奈——」

「大丈夫よ。もう彼らのことは私には関係ないわ」玲奈はスマートフォンを返した。「私から智昭に離婚を切り出したの」

「えっ」

凜音は非常に驚いた。「あ、あなたから離婚を」

「うん」

実は凜音は以前、智昭のことを嫌っていたわけではなかった。

むしろ、以前は彼のことを尊敬していて、一時期は恋心を抱いたこともあった。

特に理由はなく、ただ智昭があまりにも優れた人物だったからだ。

玲奈は三学年を飛び級し、18歳にも満たないうちに国内トップの大学を卒業し、すぐに自分の技術会社を立ち上げ、いくつかの特許を取得した。これは凜音からすれば十分すごいことだった。

でも智昭は13歳で大学を卒業したと言われていた。

智昭は大学卒業後すぐに留学した。

海外から戻った時には、既に複数の自社を設立し、全て上場させていたという。

そしてその時、智昭はまだ20歳にも満たなかった!

智昭の会社は技術、医薬品、エンターテインメント、観光など多岐にわたっていた。

その後数年間で、自分の会社を立ち上げながら、藤田グループも引き継いだ。

ここ数年で、彼は余裕で藤田グループをさらなる高みへと導いた。

業界で智昭の名前が出れば、誰もが賞賛の声を上げないだろうか。

しかも智昭の容姿も非常に優れていた。

だから、玲奈という天才が智昭という天才に落ちたことは、凜音にとって不思議なことではなかった。

しかし、智昭は自分の好きでない人に対して、確かに十分に冷酷だった。

これらの年月、智昭が常に玲奈を誤解し、玲奈の真心を踏みにじっていたことを思うと、彼女は完全に智昭への幻想を失った。

玲奈が智昭をどれほど愛していたか、凜音はずっと見てきた。

この数年間、彼女は玲奈に離婚を勧めたことがなかったわけではない。

でも玲奈はいつも黙って首を振るだけだった。

だから、玲奈が自ら離婚を切り出すとは本当に思っていなかった。

もう朝食も喉を通らず、心配そうに玲奈を見つめた。「何があったの」

ずっと固く智昭を愛していた玲奈が自ら離婚を切り出すなんて、きっと彼女の知らない何かがあったに違いない。

玲奈は少し考えて、言った。「実は大したことじゃないの。たぶん失望が積み重なって、急に疲れを感じて、離婚したいと思っただけ」

玲奈の性格を凜音は理解していた。一度決めたことは、たとえ今はまだ智昭のことを完全に手放せないかもしれなくても、簡単には変えないだろうと。

彼女は本気だった。

凜音は玲奈を抱きしめた。「大丈夫よ。離婚した方がいいわ」

玲奈「うん」

朝食を済ませ、玲奈は凜音の家を出て、出勤した。

まだ引っ越す前は、同じ会社に通っていても、いつも別々に出勤していて、一緒に出勤したことは一度もなかった。

それに彼は彼女を警戒していたので、普段会社では、時には一ヶ月に一度も会わないこともあった。

今は引っ越してきたというのに、二日連続でばったり会ってしまった。

今日の智昭も昔と同じように凛々しく美しく、威厳があり、そして昔と同じように、彼女を見るたびに、表情は一層冷たくなった。

昨日と同じように、智昭は彼女を一瞥しただけで、視線を逸らした。

玲奈は目を伏せ、昨日と同じように、小さな声で「藤田社長」と呼び、智昭が遠ざかってから、会社に入った。

彼女は優里が今日会社に来ているかどうか知らなかったし、気にもしなかった。黙々と自分の仕事に集中した。

お昼になって、祖母から電話がかかってきた。

「玲奈、x市から羊が一頭送られてきたの。寒くなってきたから、今夜帰ってきて食事をしましょう。おばあちゃんが羊の丸焼きを作らせるわ」

老婦人の優しい声を聞いて、玲奈の心が温かくなった。「はい、仕事が終わったら帰ります」

朝以外、玲奈はその日智昭に会うことはなかった。

その日、荷物をまとめて定時で帰ろうとしていた時、和真が書類を持ってきて、急ぎの処理を頼んできた。

玲奈は一瞬止まった。

急ぎと言われたが、内容を一瞥すると、実はこの書類はそれほど急を要するものではないことが分かった。

以前なら、笑顔で引き受け、できるだけ早く完成させると約束していただろう。

特別扱いを求めたくなかったから。

でも今日は、完璧を求める気はなかった——特に智昭に関することは。

それに疲れていた。

今の彼女はただ早く帰って祖母と過ごしたかった。残業はしたくなかった。

以前は智昭の側近秘書たちと良好な関係を築きたいと思っていた。

でももう必要なかった。

それに、和真は昨日物事の善し悪しも分からずに彼女を非難した。そんなことを何もなかったかのように振る舞えるほど大きな心はなかった。

彼女は和真を見て、冷淡に言った。「この仕事は今はしません。帰るところです」

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Mga Comments (2)
goodnovel comment avatar
Megumi Sekita
こんな会社潰れちゃえばいい
goodnovel comment avatar
忍
媚薬を盛られ、丁度玲奈が居て 智昭が襲い、犯人は玲奈と誤解 本当の犯人は……で 既成事実を作り結婚が失敗 離婚後しばらくして 誤解だった事に気づく こんな感じぽいよね
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