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第273話

Auteur: 風羽
京介はもう一度、舞に視線を向けた。

彼女が起き上がろうとするのを、そっと手で制した。

「ここで寝て。俺が子どもたちを見てくる。妊娠中なんだから、ちゃんと休まないと」

舞は何か言おうとしたが、京介は身を寄せ、優しく彼女に口づけた。

「じゃあ、俺、下で素麺食べてくる」

……

京介が階下に降りると、素麺はすでにのびてひと塊になっていた。

使用人が慌てて言った。

「旦那様、作り直しますね」

けれど京介は軽く首を振った。

「いいよ。肉味噌をもらえる?」

使用人は微笑んだ。

「やっぱり、奥様の手作り肉味噌は、旦那様のお気に入りですね。何年経っても変わらない」

京介も、ごく淡く微笑んだ。

やがて、肉味噌が運ばれてきた。彼は「もう休んで」と言い、使用人を下がらせた。

夜は、まるで墨を流したように深く静かだった。

京介はひとり、ダイニングに腰を下ろし、決して美味しいとは言えない素麺を、ゆっくりと食べ終えた。

そして、片手で煙草を取り出し、火をつけた。

静かに深く吸い込んだ。

体はもう限界を迎えつつあった。

妻と子どもたちのために、今できることを考えなければならない
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