結婚して四年、まだ「七年目の浮気」なんて言葉さえ縁のない頃に、周防京介(すおうきょうすけ)はすでに外に愛人を囲っていた。立都郊外の高級別荘。その門の前で、周防舞(すおうまい)(旧姓:葉山)は高級車の後部座席に座り、夫が女と密会する光景を静かに見つめていた。あの女はまだ若く、白いワンピースに身を包み、清らかで人目を引くような美しさがあった。二人は手を繋ぎ、まるで深く愛し合っている恋人のようだった。京介の顔には、舞が一度も見たことのない優しさが浮かんでいた。女が顔を上げ、甘えるように声を上げた。「足、痛い……京介、抱っこして?」舞は思った。京介が応じるはずがないと。彼は感情を表に出さず、気難しい男だ。どれだけ新しい相手を可愛がっていたとしても、そんな甘ったるい要求に応えるような人ではない、と。だが次の瞬間、舞の予想は無惨に打ち砕かれた。夫は女の鼻先をそっとつつき、その仕草には抑えきれない優しさが滲んでいた。そして腰に手を回し、彼女を軽々と抱き上げる。まるで壊れ物を扱うかのように丁寧に、大切そうに。女の白く細い手は自然と男のたくましい首筋へと伸び、黒く艶やかな髪を撫でていた。京介のその首筋には赤い痣がある。見た目はどこか艶っぽく、触れると敏感に反応した。かつて、舞がベッドの中でうっかりそこに触れたとき、京介は彼女の細い腕を押さえつけ、恐ろしいほど激しくなった……そして今、京介はもはや抑えきれず、女の子の身体をあずまやの太い柱に押しつけた。その目は輝いていた。舞はそっと目を閉じた。もう、これ以上見ていたくなかった……舞は、京介がこんなふうに誰かを想い、狂おしくなる姿を今まで一度も見たことがなかった。なら、自分は何だったのだろう?結婚前、自ら追いかけてきたのは他でもない、京介の方だった。「舞、お前は俺の権力の場で最も適したパートナーだ」そのたったひと言に、舞は愛してやまなかった芸術の道を捨て、何のためらいもなく周防家に嫁ぎ、名声と利益の渦巻く世界へ飛び込んだ。まるで炎に惹かれて飛び込む蛾のように、恋に焼かれるように。そして四年の歳月が過ぎ、京介は一族の実権を手にした。舞は、あってもなくてもいい存在、切り捨てられる駒に成り下がった。彼は舞が堅すぎる、女らしさに欠けると嫌がり、外で女を囲い、愛人遊びにふけるようになった。舞、あなたは本当に甘か
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