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第4話

Auteur: 天涯
昌也の目が一瞬泳いだあと、さも当然のように言い放つ。

「成果を出した社員には報いるべきだろ。これくらいのナックレス、ちょうどいいと思ったんだ。お前ならネックレスなんていくらでも持ってるだろ、そんなにケチるな!」

そう言うと彼はパートナーのところへ歩いていき、笑って場を収めようとした。

莉緒はわざと最後に歩き、さっきまでの弱々しさを脱ぎ捨てて挑発的に言う。

「須藤さんが取ってくれた案件のおかげで、あたしも恩恵に預かれたんですよ、ありがとうございます!」

その得意げな目を見て、私は思い切り彼女の顔を平手打ちした。

会場の空気が急に凍りつき、針が落ちる音まで聞こえそうになる。

莉緒の呻き声が上がり、昌也は慌てて彼女を支えながら、怒りで私を睨みつける。

「須藤玲奈、何をするんだ!」

娘も莉緒をかばうように前に出る。

「ママ、最低!大嫌い!」

私は昌也の詰問を無視して、ワイングラスを持ってステージへ小走りで上がった。

「本日はご多忙の中、お集まりいただきありがとうございます。残念ですが、私と坂本社長は離婚手続きを進めています。この部屋は彼のものではなく、私のものです。

また改めて皆さまにご挨拶いたします。どうかご了承ください」

そう言い切り、私はグラスの中の酒を一気に飲み干した。

客たちは大半がビジネス関係者で、この光景を見るとすぐに言い訳をつけて席を立った。

昌也は自分がどうやってここまで来たか、忘れたのだろう。

うちが支えなければ、彼の小さな会社が今日の立場を保てるわけがない。

これまで彼に回した案件や投資の多くは、私が裏で取り持ったものだ。

私がいなくなったら、彼がどうやって偉そうにできるか、本当に知りたい。

盛り上がっていた宴会は、あっという間に冷え切った。昌也の顔色は最悪だ。

彼は面目も外聞もかなぐり捨て、私に向かって声を荒げる。

「須藤玲奈!お前は俺の面目を丸つぶしにした!

離婚の噂が出回れば、会社にどれだけの損害が出るか分かってるのか?

いつからそんなに器が小さくなったんだ?ちょっとしたことでいつまでもネチネチと!」

私は彼の狂ったような詰問を静かに見つめる。

まるで、かつて私が彼と莉緒の親密な振る舞いに崩れ落ちたのに、彼が平然と私を見つめた時と同じ態度だ。

立場が逆になっただけで、彼の必死に叫ぶ姿は猿みたいに見える。

莉緒は顔色を真っ青にして腹を押さえ、弱々しく昌也の腕に寄りかかる。

「社長、全部あたしのせいで、須藤さんに誤解を与えてしまって……すぐに辞めるわ、どうか、ご無理なさらないで」

「莉緒、君のせいじゃない。今すぐ病院に連れて行く。宴会は後で改めて開こう」

「おばさん、あなたのせいじゃない!ママは器が小さいのよ!」

彼らが前後して莉緒をかばうのを見ながら、私は冷笑すると執事に命じる。

「昌也と一花の荷物をまとめておいて。明日の朝までに家の外に放り出して」

執事は眉をひそめ、ためらって勧める。

「奥様、そこまではやりすぎではありませんか。拗ねるのは構いませんが、やり過ぎると大ごとになります。

旦那様とお嬢様は簡単になだめられません。もう一度考え直しては」

その言葉を聞いて、私の目つきは冷たくなる。

この家での私の地位は、こんなにも低かったのか。昌也が呼んだ執事にまで見下されるとは。

「わかった。では、あんたは首になる」

私は嘲るように言った。執事は狼狽した表情でその場を離れ、慌てて去っていった。

私はスマホを取り出し、旧宅の執事にメッセージを送る。

【田村、すぐに来て。関係のない者の荷物を全て取り除く】

【かしこまりました、お嬢様!】

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