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第4話

Autor: 祐希
クラス中から羨望のざわめきが起こった。

私も羨ましく思いながら、母の胸に飛び込む灯を見つめていた。

校舎を出たところで、私は母の袖をそっと引っ張った。

「お母さん、私も遊園地に行きたいな……」

私はもうすぐ死ぬのに、生まれてから一度も遊園地で遊んだことがなかった。

母は眉をひそめた。

「遥、そんな体調で遊園地に行きたいの?風に当たってひどくなったらどうするのよ」

「そうだよ」

兄が苛立ったように口を挟み、俯いてスマホを操作しながら言った。

「灯がせっかく遊びに行くのに、お前が行って遊園地で吐き散らかしたりしたら、周りがどう思う?縁起でもないだろ」

私は口を開きかけた。絶対に我慢して吐かないから、迷惑はかけないから、本当にただ一度だけ見てみたいのだと言いたかった。

だが、父はすでに私を避けて通り過ぎ、しゃがみ込んで灯の靴紐を結びながら、顔も上げずに言った。

「遥、お前は先に家に帰って休んでいなさい。薬を飲んで一眠りすればいい。数日後、灯の本当の誕生日の時にでも、代わりのプレゼントを買ってやるから」

「代わりのプレゼントなんていらない……」

「はいはい」

母はもう灯を外へ急かしており、振り返って私に向かって手を振った。

「言うことを聞いて、早く帰りなさい。ぐずぐずしないで」

母はそう言うと、父の腕を組んで歩き出した。

兄の背中におぶられた灯は、振り返ってキラキラとした目を向け、私に向かってあっかんべーをした。

彼らの車が校門を出て行くのを見届けてから、私は外へ向かって歩き出した。

胸の奥の鈍い痛みが何度も押し寄せ、一歩踏み出すごとに骨が軋むような気がした。

学校から家までは歩いて二十分かかるが、私は十分歩いただけで耐えきれなくなり、道端の木によりかかって、荒い息をついた。目の前が何度も真っ暗になった。

結局、通りがかった清掃員の女性に気づかれ、救急車を呼んでもらった。

目を覚ますと、病院だった。

白い天井、消毒液の匂い、傍らでは心電図モニターが「ピッ、ピッ」と音を立てていた。

看護師の藤田(ふじた)さんが点滴の管を調整してくれていて、私が目を開けたのを見ると、ほっと息をついた。

「目が覚めた?あなた、道端で倒れていたのよ。内臓が出血していて、かなり危険な状態だから、すぐに手術しなきゃいけないの。

ご家族と連絡が取れないのよ。あなたのスマホに入っていたお父さんとお母さん、お兄さんの番号に、私たちが交代で何度も電話をかけたんだけど、誰も出なくて」

私は手を伸ばし、枕元のスマホを取った。

画面のロックを解除した瞬間、タイムラインに新しい投稿が表示された。

母のインスタグラムだった。

九枚の写真が並んでいる。メリーゴーラウンドで笑う灯、彼女にわたあめを持たせてあげる兄、カメラの前でしゃがみ込んで変顔をしている父。

添えられた文章には『うちのお誕生日の主役、前倒しでお祝い〜!楽しいのが一番!』と書かれていた。

「いいね」は二十以上ついており、すべて親戚や母の友人たちからだった。

私はその投稿を長い間見つめていた。

藤田さんが顔を近づけてそれをちらりと見ると、一瞬ハッとして、慌てて私からスマホを取り上げて、笑顔を作って言った。

「お父さんとお母さん、きっと忙しくて電話の音に気づかなかったのよ。焦らなくて大丈夫、もう一度かけてみるから。今度はきっと繋がるわ」

私は笑って頷いた。

「うん、きっと忙しいんだね」

藤田さんは振り返って私を見た。その瞳に何かが光ったような気がした。彼女は、お湯を汲んでくると言って、足早に病室を出て行った。

私は枕に寄りかかり、天井の明かりを見つめた。

温かみのある黄色い光が、病室全体を柔らかく照らしている。

私は突然ひどく疲れを感じ、まぶたが重くなった。

手元のスマホが再び光った。兄のインスタだった。

父の肩車に乗った灯が、手にアイスクリームを掲げている。

添えられた文章は『うちのワガママ姫が二個目を食べたいって騒ぐから、甘やかすしかないだろ』。

私はふっと小さく笑い、スマホを裏返して枕元に置いた。

窓の外から風が吹き込み、カーテンがわずかに膨らんだ。まるで、見えない手が私に別れを告げているかのようだ。

昨日、白峰霊園で横たわっていた時も、こんな風が吹いていたなと思い出す。

藤田さんはまだ戻ってこない。

お湯を汲むのには、きっと時間がかかるのだろう。

でも、構わない。

私はゆっくりと目を閉じた。口元にはまだ、あの微かな笑みが浮かんでいた。

もう、痛くない。

---

翌日の早朝、藤田さんはようやく私の家族に電話を繋げることができた。

迎えに来た時も、母はまだ文句を言っていた。

「もう、遥ったら。朝っぱらから病院なんかに来て、何をしてるのよ」

兄は俯いてスマホを操作しながら、藤田さんに軽く尋ねた。

「あいつ、何の病気ですか?入院するほどなんですか」

藤田さんは何も言わず、背を向けて三人を廊下の奥へと案内した。

霊安室のドアを押し開けると、冷気がドッと顔に吹き付けた。

母の声がピタリと止んだ。

父はその場に呆然と立ち尽くした。

兄は白い布の下の小さな輪郭を見つめ、唇を微かに震わせた。

藤田さんが静かに口を開いた。

「この子は息を引き取る前、私の手を握って言いました。お参りの手間をかけさせたくないから、少し遠い場所に埋葬してほしい、と。

お墓には、お花を一輪置いてくれるだけで十分だ、と」

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