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第10話

Author: 黄金ノ翼
その後の大輝は、アートの世界から完全に姿を消した。

噂によると、大輝は会社を売り払ったみたい。瑞徳グループへの違約金を払ったら、ほとんど何も残らなかったらしい。

大輝は酒に溺れ、来る日も来る日も、あの小さな屋根裏部屋に閉じこもっていた。

そして、かつて捨てた私のものを、すべて買い戻したそうだ。

大輝は何度も何度も私の肖像画を描いた。でも、できあがるのはいつも、涙を流す私の顔ばかりだった。

大輝は、おかしくなってしまった。

大輝の話は、業界の笑いものになった。ただのゴシップのネタ。

場末のカウンセリングクリニックで大輝を見かけた人がいる。スケッチブックを山ほど抱えて、ぶつぶつと独り言を言っていたそうだ。

「奈津美は戻ってくる……俺の奈津美は、誰よりも優しいから……必ず、戻ってきてくれるはずなんだ……」

でも、私が戻ることは、もう二度となかった。

私は、竜之介と一緒になった。

竜之介はヒーローなんかじゃない。

ただ、不器用に朝ごはんを作ってくれたり、私が絵を描いていると静かにホットミルクを差し出してくれたりする、ごく普通の男。

私たちの結婚式は、小さな教会で挙げた。

マスコミも、有名人もいない。本当に親しい友人だけを招いた式だった。

私は自分でデザインしたウェディングドレスを着た。竜之介は私を見て、その瞳を星のように輝かせていた。

結婚後、私たちは静かな海辺の小さな町に住むことにした。

私は小さなアトリエを開いて、子供たちに絵を教えている。

竜之介は瑞徳グループを辞めて、こぢんまりとした弁護士事務所を開いた。

一年後、私は女の子を産んだ。

その子は私とそっくりの目をしていて、笑うと竜之介と同じように、浅いえくぼができた。

私はよく娘を連れて、海辺に絵を描きに行った。

娘の絵、竜之介の絵、海の絵、空の絵。

私の絵には、もう苦しみや葛藤はない。そこにあるのは、太陽の光と愛だけだった。

ある年、私のアトリエに招かれざる客がやってきた。

大輝だった。

大輝はすっかり老け込んでいた。髪は白くなり、目は濁り、体からはひどい酒の匂いがした。

大輝はアトリエの入り口に立って、私と竜之介を見ていた。庭で蝶々を追いかけている娘のことも。

私たち家族三人は、とても楽しそうに笑っていた。

その光景は、きっと大輝の胸に突き刺さったのだろう
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