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第3話

作者: 愛しき影
私は床から這い上がり、壁にすがってよろよろと入口まで向かった。

病院を出ると、そのままタクシーで学校へ向かった。

学校に到着し、松葉杖をつきながら痛む足をひきずって、職員室へと向かった。

担任の松井真司(まつい しんじ)が受験当日に向けた準備をしていたが、私を見ると途端に眉をひそめた。

「増田さん?どうしたの?」

「松井先生、受験票を燃やされてしまったんです。再発行はできますか?」

真司は私をちらりと見て、ギプスで固めた足に目を止めると、すぐに逸らした。

「受験票は一枚きりだ。試験前にあれほど大事にしろと言ったのに、不注意で失くしたんだろ?」

「失くしたんじゃないんです……燃やされたんです」

「木村くんから連絡が来ているぞ。交通事故の影響で精神的に不安定になり、学校で騒ぎを起こすかもしれないとな」

真司は私の言葉を遮り、冷たく言い放った。「再発行できる期間はもう過ぎたんだ。どんな事情があろうと再発行はできない!」

「失くしたんじゃないです!勲が私の受験票を……」

「もういい!」

真司は机の上にペンを投げ捨てた。

「増田さん、君は成績がいいが、それで傲慢になっていいわけじゃない。一番大切な時にやらかして、しかも自分を支援してくれている木村くんに責任をなすりつけるなんて!」

私はただ、その場に呆然と立ち尽くした。

昔、勲が施設に来た時のことを思い出す。

彼は自分の名前も出身も忘れていた。

私たちはすぐに離れられない友人になった。

勲は私をいじめる子供から何度も守ってくれた。私が部屋に閉じ込められたときも、深夜に鍵をこじ開けて助け出してくれた。

ある日、木村家の人間が施設に現れた。

彼らは長い間失踪した跡継ぎが勲だとわかり、引き取りに来たのだ。

勲が去る日、私の手を握って言ってくれた。「凪、必ず戻ってくる。ちゃんと力を持ったら、ここから連れ出してやるから」と。

そして、勲は本当に戻ってきた。

彼は木村家の財力をもって私の学費も生活費もすべて出してくれた。

週末にはいつも会いに来て、美味しいものを食べさせ、本を買うお金を出し、勉強にも付き合ってくれた。

周囲はみんな、「木村さんは良い人で、凪は運良く立派な人に巡り会えた」と言った。

私もそう思っていた。

だから、まさか勲が私を裏切るなんて思いもしなかった。

それも柚のために、なんて。

私は心にぽっかり穴があいた状態で職員室を後にすると、ふと一枚の掲示板を目にした。

ガラス窓付きの掲示板の中に、校内模試トップの10人の顔写真が貼ってある。

私の写真は一番上にあった。

【第一位:増田凪】

写真の中の私は目を細めて笑っていて、ようやく希望を見つけたような表情をしていた。

それなのに今の私は、自分の写真の前で、ギプスをしてボロボロになっている。

「凪?」

後ろから名前を呼ばれて、体が強張った。

振り向くと、勲の腕に柚がしがみついて立っていた。

私の姿を見ると、柚はすぐ勲の背後に隠れるように縮こまった。

「凪、どうして勝手に外に出てきて、勲くんが自分の受験票を燃やしたって酷い噂を広めているの?」

通りがかった生徒たちが足を止め、好奇の目でこちらを見ている。

「あれって、例の増田さん?事故に遭ったはずじゃなかった?」

「木村さんにこれほど助けてもらっているのに、恩知らずな」

怒りで全身が震えた私は、持っていた松葉杖を柚に向けて振りかざした。

しかし松葉杖が振り下ろされるよりも早く、勲に掴まれた。

彼が力任せに松葉杖を奪うと、私は後ろに倒れ込み、背中を激しく掲示板のガラスに打ちつけた。

ガラスが粉々に砕ける音が響き渡る。

破片が背中に突き刺さり、温かい血が背中を伝って流れた。

仰向けに倒れた私の上を、砕け散ったガラスが覆い、肌のあちこちから激痛が走った。

顔を上げると、自分の写真と目が合った。

写真の中の私はまだ笑っている。

「勲、15年の絆さえも無視するの?」

横たわる私の声はかすれて、自分でもほとんど聞き取れなかった。

「あの施設で、あの日、私を助け出してくれたあなたは……」

背中からあふれる血が、地面を赤く染めていく。

「この苦しみから連れ出すと言ってくれたじゃないか……」

しかし、勲は鼻で笑った。「15年の絆だと?」

彼はしゃがみ込み、私の顔を覗き込んだ。

「凪、そもそも俺がなぜあそこにいたのか、少しは考えないのか?

なぜ、誰でもないお前を助けたと思う?」

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