FAZER LOGIN【ピコン!】
【危険を検知しました、宿主。】 飛んできた石は、私の頭をかろうじてかすめた。代わりに、リヴェンが伸ばした手に当たり、床に落ちる前に止まった。 一方、私はそう幸運ではなかった。 彼に首をつかまれたまま宙ぶらりんになっていた私は、彼が何気なく手を離した瞬間、そのまま落下した。 ドサッ! 私は顔から冷たい石の床に激突した。 「痛っ!」 私は上半身を起こし、痛む背中をさすった。 「この世界の人たち、いい加減、人を安物のジャガイモ袋みたいに放り投げるのをやめてくれない?」 誰も答えなかった。 その場にいた全員の視線が、大広間の入り口へと向けられた。 深紅の髪をした長身の男が、堂々と中へ入ってきた。彼の足音が、磨き上げられた石の床に響き渡る。 ほかの者たちとは違い、彼は頭を下げることも、入室の許可を求めることもしなかった。 まるで、この大広間そのものが自分の所有物であるかのように歩いていた。 リヴェンでさえ恐ろしいと思ったのに……この男は、さらにひどそうだった。 鋭い深紅の瞳が室内を見渡し、やがて私のところで止まった。 ほんの一瞬、私は呼吸の仕方を忘れた。 リヴェンの冷たい怒りとは違い、ネリエンの存在感は静かだった。 人々が息をすることさえ忘れてしまうほどの、静けさ。 彼は声を荒らげる必要もなかった。 眉をひそめる必要すらない。 彼に一瞥されるだけで、大広間全体の空気が冷え込むようだった。 「リヴェン」 赤髪の男が、軽く頷いて挨拶した。 「ネリエン」 リヴェンも同じように頷き返した。 赤髪の男の視線が、ゆっくりと下へ降りていき、私のところで止まった。 私は即座に目をそらした。 「こっちを見ないでよ」 私は小声で呟いた。 「彼女がいるな」 彼は淡々と言った。 「そりゃいるわよ」 私は鼻を鳴らし、痛むお尻をさすった。 「親切な誰かさんが、私をここに放り投げてくれたんだから」 数人の使用人が、聞こえなかったふりをするように顔を伏せた。 リヴェンの表情が険しくなった。 「なぜ処刑を先延ばしにする?」 ネリエンが続けた。 その言葉によって、大広間は一瞬にして静まり返った。 エララのウサギ耳まで、しゅんと垂れ下がった。 彼女は両手をもじもじと組み合わせながら、慎重に一歩前へ出た。 「ネリエンお兄様……お姉様は変わったとおっしゃっていました。お願いです、どうかお姉様を信じてあげてください」 彼女は小さな声で訴えた。 ネリエンは答えなかった。 ただ、私に向かって一歩近づいてきた。 この家族には、人を威圧する能力が遺伝しているらしい。 ネリエンが大広間に足を踏み入れた瞬間、空気が一変した。 使用人たちは背筋を伸ばし、深く頭を下げた。 オレンジ色の髪の男は笑うのをやめ、茶髪の男は黙って脇へ退いた。 リヴェンでさえ、明らかに表情を引き締めていた。 うん。 この男が、間違いなくこの家族の中で最も権力を持っている。 【宿主!】 【新しいターゲットを検出しました:ネリエン・ゴールドメイン】 【信頼度:不明】 【関係:義兄妹】 【憎悪度:不明】 【好感度:0】 「不明? ちょっと、本気で言ってるの? 無能すぎない?」 【私のせいではありません、宿主。彼は石像と同じくらい感情表現が乏しいのです。】 【危険度:99.5%】 【現在の生存率:0.5%】 「は? ちょっと待って、私……」 言葉が喉につかえた。 冷たい金属が、私の首筋にそっと押し当てられたからだ。 視線を落とすと、銀色の短剣が私の肌に触れていた。 ほんの少し動くだけで……ほんのわずかに刃が滑るだけで……血が首筋を伝って流れ落ちるだろう。 よし……落ち着いて。落ち着くのよ。 パニックになっても、何もいいことはない。 いや、それは嘘ね。人間はいつだってパニックになるもの。 ただ、たいていの場合、死ぬ前にパニックになるだけ。 私はゆっくりと目を上げた。 ネリエンの表情は、少しも変わっていなかった。 「ねえ、お兄様……でいいのかしら?」 私は慎重にため息をついた。 「人違いよ。私は今日の生贄じゃないわ」 【厳密に言えば、宿主は生贄です。知能指数がそれほど低いのに、処刑を免れたと思い込まないでください……】 「今は黙って!」 私は即座にシステムの言葉を遮った。 【分かりました。それでは、その刃を取り除けるよう幸運を祈ります。】 私は唇を尖らせながら、ネリエンを見上げた。 そして、絶対に存在しない長年の図々しい演技経験を総動員し、無理やり目に涙を浮かべた。 【宿主。心拍数が42%上昇しています。】 「これは生存本能っていうのよ」 【いいえ。ようやく脳を使い始めたということです。】 一筋の涙が頬を伝った。 ネリエンは数秒間、私をじっと見つめていた。 そして……短剣を下ろした。 「……興味深い」 大広間にいた全員が息を呑んだ。 リヴェンでさえ驚いたようだった。 「なぜ泣いている?」 彼の声は落ち着いていた。 なぜか、それが余計に恐ろしかった。 「どうして泣かずにいられるのよ?」 私は歯を食いしばり、彼を睨みつけながら言い返した。 けれど、ほとんど瞬時に、私は再び哀れっぽい表情へと切り替えた。 一筋の涙が、また頬を伝った。 「今日はもう、十分すぎるほどひどい目に遭ったの……」 長い間、ネリエンはただ私を見つめていた。 「……茶番はもういい」 彼はついに口を開いた。声には感情がまったく感じられなかった。 「この勅令の審議は明日に持ち越す」 短剣が鞘へと戻された。 刃が離れた瞬間、私は首をさすった。 「……まだ、ちゃんとつながってる」 喉の感覚を確かめながら、私は呟いた。 「よかった」 私は唾を飲み込んだ。 「できれば、頭は本来あるべき場所に置いておきたいのよね」 【宿主、頭というものは、一般的にそうあるべきものです。】 「何の助けにもなってないわ」 大広間を覆っていた息苦しい圧迫感が、瞬く間に消え去った。 私は安堵の息を長く吐き出した。 生き延びた。 本当に、かろうじて。 ネリエンは何も言わず、ゆっくりと出口へ向かって歩き始めた。 使用人たちは慌てて道を空け、彼が通り過ぎるたびに頭を下げた。 リヴェンでさえ、一言も発することなく、彼が去っていく姿を見つめていた。 「ほらね?」 私は小声で呟いた。 「彼こそが、恐ろしいラスボスってやつよ」 やった! 私は生きている! もしかすると、異世界転生もそれほど悪くないのかもしれない。 ひょっとしたら、この小説の中で本当に生き残れるかもしれない――。 【宿主、どうか早まって喜ばないでください。】 【このくらい、喜ばせてくれてもいいでしょう?】 【いいえ。あなたは死を先延ばしにしただけです。私の助けがなければ、成功していなかったでしょう。まったく……。】 エララが慌てた様子で駆け寄ってきて、セレナの袖を不安そうにつかんだ。 「お姉様……大丈夫ですか?」 私は彼女を見た。 「……私が大丈夫そうに見える?」 エララはためらい、それからゆっくりと答えた。 「……いいえ」 「でしょうね」 私はそう言って顔を背けた。 まだまだ、生き延びた喜びに浸っていたかったのに……。 【ピコン!】 聞き覚えのある機械的な声が、再び頭の中に響いた。 【新しいミッションが発動しました!】 【ネリエン・ゴールドメインと一晩を過ごしてください。】 「……」 私は凍りついた。 「……もう一度言ってくれる?」 【ミッションの制限時間は、夜明けまでです。】 私の足から力が抜けた。 私はよろめきながら後ずさりし、危うく床に倒れそうになった。 ただ虚空を見つめることしかできなかった。 「……あんた、私のことが嫌いなの?」 【みんな嫌っています。私だけ違うなんて思われたくありません。】 「……え?」 【聞こえたでしょう?】 「……冗談よね?」 【そうかもしれません。】 「今まで作られた中で、あんたが史上最悪のシステムよ」 【ありがとうございます。】 【一体どこまで恥知らずなシステムなのよ!?】 私は心の中で叫び、それから振り返った。 「わ、私が彼と一晩を過ごすですって!?」 無意識のうちに指を伸ばし、ネリエンを指さしていた。 その場にいた全員が、一斉に私を見た。 リヴェンは眉をひそめた。 エララは顔をイチゴのように真っ赤にして、恥ずかしそうに頬を染めた。 ネリエンの足が止まった。 彼は振り返ることなく、口を開いた。 「……今、私と一晩を過ごしたいと言ったのか?」 大広間は、死んだような静寂に包まれた。 私はぎこちなく笑った。 ネリエンはゆっくりと肩越しに振り返った。 「……私?」 私は自分を指さしながら尋ねた。小屋の入り口が開いた瞬間、私は慌てて紙を放り投げた。愚かな判断だった。自分でもわかっている。レインがドアの陰から顔をのぞかせた。「ずいぶん外を楽しんでいるようだな」彼は意味ありげにそう言って、くすくすと笑った。私は苛立ちに顔をしかめた。「だったら、あなたも一緒に楽しんだらどう?」私はドアをさらに押し開け、小屋の中へ入った。何時間も立ったりしゃがんだりしていたせいで背中が痛んだが、それでもなんとか木製のベッドによじ登った。体重がかかると、ベッドが小さくきしんだ。「この子、かわいいと思わない?」「全然。意地悪で失礼な子よ」子供の声が、明らかに不満そうに響いた。私はゆっくりと目を覚まし、体を起こして目をこすった。両手を頭上に伸ばして大きく伸びをする。顎の力が抜け、口が自然と開いた。その瞬間、一匹のハエが勢いよく口の中へ飛び込んできた。私は激しく咳き込んで吐き出そうとしたが、ハエは喉の奥に引っかかってしまった。まぶたをぎゅっと閉じ、ためらいながらも、私は虫を飲み込んだ。隣からくすくすと笑う声が聞こえた。私は顔を横に向けた。地面に座り、小さな女の子を腕に抱いていたのはエララだった。女の子は私を見ると鼻で笑い、顔をそむけた。目には軽蔑が浮かび、鼻にはしわが寄っている。「おはよう、お姉ちゃん」エララは微笑みながら、そっと頭を下げた。それから、女の子にも同じように挨拶するよう促した。「おはよう、虎のセレナ」女の子は言った。その声には、必死に抑え込んだ怒りがにじんでいた。私は首を傾げた。こんな朝早くから、二人は私の部屋で何をしているのだろう?誰かの存在を思い出したかのように、私は突然顔を上げた。
「……今、一体何が起きたの?」私はつぶやきながら、立ち上がった。「セレナ、大丈夫か?」レインが慌てて駆け寄り、私の肩をつかんだ。まるで怪我がないか確かめるように、あっちへ向けたり、こっちへ向けたりする。「ちょっと! やめてよ、目が回るでしょ!」私はうめきながら、彼の手を払いのけた。レインは咳払いをして一歩下がり、ローブをいじった。私は目をぐるりと回し、また元に戻した。「どうしてあんなことをした?」彼は落ち着いた、揺るぎない声で尋ねた。私は首の後ろを指でこすりながら、彼と目を合わせないように視線をさまよわせた。「知らないわよ……」私は小さくつぶやいた。「お願い……信じてよ」一歩前に進んだが、彼は後ろに下がった。喉が締めつけられた。胸の奥に、何か重たいものが沈んでいく。涙が目の奥に込み上げ、今にもこぼれ落ちそうだった。どうして……レインに信じてもらえないことが、こんなにもつらいの?「レイン……」私の声が震えた。けれど、彼はさらに一歩後ずさった。今度は足元までふらついた。それでも、自分の無実を訴えることを諦めるつもりはなかった。そのとき、私の視線が手首に留まった。そこには、何事もなかったかのようにブレスレットが収まっていた。覚えているのは、これを身につけて、そのまま意識を失ったことだけ。私は向きを変え、誰にも何も言わずにその場を立ち去った。足元の砂は柔らかく、ほんのりと温かかった。私はひたすら前へ歩き続けた。やがて水が足を覆うと、その場に腰を下ろし、水の中に体を沈めた。地面からは、淡く光る草が生えていた。本当に美しい場所だった。心が穏やかになるような場所。か
まぶたが異様に重く感じた。頭がズキズキと痛んだ。目を覚まして最初に気づいたのは、部屋ではなかった。薬草と新鮮な粘土、そして焦げた木の匂いだった。「……私の部屋じゃない」もう一度目を開けると、そこは見知らぬ部屋だった。周囲から突き刺さるような視線が向けられている。私は弱々しい体を無理やり起こし、辺りを見回した。エララが慌てて私のそばに駆け寄り、しゃがみ込む。そして、私の手を両手で包み込んだ。「お姉ちゃん、大丈夫?」心配そうな声で尋ねてきた。「ええ、大丈夫よ」私は彼女の手を振り払った。エララは後ろによろめき、すぐにリヴェンが前に出て彼女を受け止めた。「気をつけて」彼は小さくそうつぶやいてから、いつもの冷たい目で私を見上げた。私は目を回しながら立ち上がった。「何なの、あの子。紙でできてるわけ? ちょっと押しただけで吹っ飛ぶなんて」鼻で笑ってやった。エララは手首をさすった。それなのに、怒るどころか……彼女は微笑んだ。「……でも、お姉ちゃんが目を覚ましてくれて、本当によかった」私は顔を上げた。レインが私を見つめていた。その顔には、ありありと失望が浮かんでいる。「何よ? 誰かを殺したわけでもないのに」一歩踏み出した瞬間、再び映像が脳裏にあふれた。私のものではない記憶。それなのに、確かに私の記憶でもあった。私は川辺に座り、楽しそうに粘土を器に詰めていた。ところが、誰かに触れられた途端、動きを止めた。そして、かっとなって、その人物を川へ突き落とした。ほんの一瞬の断片。私が生きたことのない人生の記憶……いや、元のセレナが生きた人生の記憶だった。「システム」呼びかけたが、返事はなかった。
【ペナルティ選択:感電】私は空を見上げ、雷が落ちてくる気配がないか探した。何もない。私は眉をひそめ、一歩前に踏み出した。それから、もう一歩。ゆっくりと歩き始め、足取りを数えながら、その場を離れようとした。その瞬間、電撃が全身を貫いた。私はその場に凍りつき、体を激しく震わせた。電流が全身の筋肉を駆け巡る。指が硬直した。歯がガチガチと鳴った。視界さえも真っ白になった。それは永遠とも思えるほど長く続いた。脳がショートしたようだった。顔から血の気が引いていく。遠くから、かすかにシステムがカウントダウンする声が聞こえた。【3、2、1】そして……。すべてが静止した。ようやく電撃が止まると、私は勢いよく体を起こした。髪はボサボサに逆立ち、肌は青白くなっていた。私は左を見て、それから右を見た。幸い、こんな姿を目撃した人はいなかった。私は地面に崩れ落ち、大げさに泣きわめいた。「私がいったい何をしたっていうの!? 私はただ、何不自由なく暮らしていた金欠の女子大生だったのに!」私はすすり泣いた。そのとき、足音が聞こえた。一歩、二歩、それからもう一歩。目の前に一組の足が現れた。私はゆっくりと視線を上げた。そこに立っていたのは、エララだった。昇り始めた赤い太陽を背に、彼女のウサギの耳は垂れ下がっていた。エララは息をのんだ。垂れていた耳がピンと立ち上がり、それから再び力なく垂れた。彼女は慌てて私のそばへ駆け寄った。「お、お姉ちゃん……」今にも泣き出しそうな顔だった。「……誰がこんなことを?」
セレナ私はゆっくりと顔を上げた。運がいいのか悪いのか、そこにいたのはオレンジ色の髪をしたキツネ族の男だった。彼は私の顔を見るなり、腰に回していた手を離した。そのせいで、私は地面に倒れ込んだ。「ああっ!」私は悲鳴を上げた。まだ朝なのに、どうしてこんなに痛い目に遭わなきゃいけないの? あなたたち、わからないの? 私、こんな仕打ちを受けるようなことしてないんだけど!【ええと、宿主様。私が謝るべきだったのでしょうか? いいえ、謝罪は未来の自分のために取っておきます。でも宿主様、あなたは別です。盗みを働いたのですから、自業自得ですよ】「いつか絶対に殺してやる……」【そんなことより、まずはご自身の命を守ってください、宿主様】システムの耳障りな笑い声が再び頭の中に響いたかと思うと、完全に消えてしまった。「レインお兄ちゃん、あの意地悪なトラのお姉ちゃんが、ウサギ族のエララをいじめようとしてるの!」小さな女の子が泣きながら訴えた。「……私?」私は目を見開き、自分自身を指さした。オレンジ色の髪の男は私をにらみつけたあと、小さな女の子の頭を優しくなでて安心させた。「レイン様、どうか妹さんをきちんと見ていてください。私たちのような罪のない村人を傷つけるために、あのように暴れ回るべきではありません」女性は恭しく頭を下げると、そそくさとその場を去っていった。女性が立ち去った途端、彼の冷たい視線が私に向けられた。私は反射的に一歩後ずさった。その眼差しは、身も凍るほど冷たかった。この兄弟たち、いったいどこかで冷酷さの特訓でもしているの?私は突然、何事もなかったかのような顔をして一歩下がり、女の子が教えてくれた方向へ歩き始めた。私の小屋があるのは、そちららしい。前へ進めたのは、わずか五歩だった。「セレナ」
【システム、彼の隣でひざまずいているだけでも、一緒に一晩過ごしたことになるよね?】【はい、宿主様。まったく、ネリエンは本当に残酷ですね】私は目を回し、彼の木製ベッドの横にひざまずいた。数分後、彼は何も言わずにベッドへ上がった。私は彼を見ないように、視線をあちこちへ向けた。空中を漂う、ほんの小さな埃の粒までじっと見つめていた。この部屋には時計が一つもなかった。もしかすると、この世界全体に時計というものが存在しないのかもしれない。だから、どれほど時間が経ったのかも、あとどれくらいひざまずいていなければならないのかも、まったくわからなかった。ただ、一つだけ確かなことがあった。私の膝は腫れ始めていた。そして、凍えるほど冷たい木の床にひざまずき続けるのは、耐え難くなっていた。一秒ごとに、針を皮膚へ突き刺されているような痛みが走る。それでも、私は眠ることを拒んだ。もし意識を失ったら、この赤毛の男が何をするかわかったものではない。だから、重くなったまぶたを無理やり開けていた。疲労のせいで、体は時折ふらりと揺れた。眠気で目が焼けるように痛かったが、目を閉じる勇気はなかった。突然、ネリエンが寝返りを打った。彼の顔が、私の顔からほんの数センチのところで止まった。息が喉に詰まった。近くで見ると……。彼はとんでもなくハンサムだった。深紅の眉の下には、赤みを帯びた琥珀色の瞳が輝いていた。長いまつげが、普段の冷たい表情をわずかに和らげている。透き通るような白い肌には欠点一つなく、そして、あの一見柔らかそうな唇……。彼の規則正しい呼吸が私の顔に触れた。温かな息に、背筋がぞくりと震えた。どうして、こんなにも恐ろしい人が、こんなに美しくなければならないの?不公平すぎる。私は思わず、あの冷たい唇がどんな感触なのか想像してしまった。







