FAZER LOGIN【ペナルティ選択:感電】
私は空を見上げ、雷が落ちてくる気配がないか探した。 何もない。 私は眉をひそめ、一歩前に踏み出した。それから、もう一歩。 ゆっくりと歩き始め、足取りを数えながら、その場を離れようとした。 その瞬間、電撃が全身を貫いた。 私はその場に凍りつき、体を激しく震わせた。 電流が全身の筋肉を駆け巡る。 指が硬直した。 歯がガチガチと鳴った。 視界さえも真っ白になった。 それは永遠とも思えるほど長く続いた。 脳がショートしたようだった。顔から血の気が引いていく。 遠くから、かすかにシステムがカウントダウンする声が聞こえた。 【3、2、1】 そして……。 すべてが静止した。 ようやく電撃が止まると、私は勢いよく体を起こした。 髪はボサボサに逆立ち、肌は青白くなっていた。 私は左を見て、それから右を見た。 幸い、こんな姿を目撃した人はいなかった。 私は地面に崩れ落ち、大げさに泣きわめいた。 「私がいったい何をしたっていうの!? 私はただ、何不自由なく暮らしていた金欠の女子大生だったのに!」 私はすすり泣いた。 そのとき、足音が聞こえた。 一歩、二歩、それからもう一歩。 目の前に一組の足が現れた。 私はゆっくりと視線を上げた。 そこに立っていたのは、エララだった。 昇り始めた赤い太陽を背に、彼女のウサギの耳は垂れ下がっていた。 エララは息をのんだ。 垂れていた耳がピンと立ち上がり、それから再び力なく垂れた。 彼女は慌てて私のそばへ駆け寄った。 「お、お姉ちゃん……」 今にも泣き出しそうな顔だった。 「……誰がこんなことを?」 私は首をかしげ、彼女の顔をじっと見つめた。 脳が彼女を認識するまで、少し時間がかかった。 「エララ……」 私は、今にも泣き出しそうな声でどうにか名前を絞り出した。 「どうして私ばっかり……?」 すすだらけの顔を涙が伝い落ちた。 エララはしばらく私を注意深く見つめていたが、やがて私と目線が合うように身をかがめた。 「お姉ちゃん、何があったの?」 彼女の顔には心配の色が浮かんでいた。 両手を私の肩に置き、怪我がないか確かめるように私の体を調べた。 私はただ、ぼんやりと彼女を見つめていた。 また頭がぼうっとしてきた。 最近、こういうことが頻繁に起こる。 「エララ、私を小屋まで連れていって」 私が頼むと、彼女はうなずき、何も聞かずに私を抱き起こした。 私は彼女に体を預け、支えてもらいながら歩き始めた。 【宿主様、情けない姿ですね】 聞き覚えのある声が頭の中に響いた。 「わかってるわよ……」 私は前を見つめながら、小声で返した。 それから、何時間も経ったように感じられた頃、エララは私を一軒の小屋へ連れていった。 中はきちんと整えられていた。 外観も清潔で、さまざまな種類の花が美しく飾られていた。 入口のそばには木製の椅子が置かれている。 だが、中はさらに美しかった。 持ち主の雰囲気を反映するかのように、上品で、隅々まで丁寧に飾りつけられていた。 即席の棚には、粘土で作られた工芸品がきれいに並べられていた。 私は無意識のうちに指を伸ばし、粘土の器の表面をなぞった。 ほんの一瞬……。 記憶が脳裏をよぎった。 濡れた粘土を形作る手。 誰かの笑い声。 そして……。 消えた。 「……今の、元のセレナの記憶?」 部屋の中は、どこもかしこも磨き上げられ、きらきらと輝いていた。 持ち主が相当なきれい好きなのは明らかだった。 【それは宿主様自身ですよ!】 「私? つまり、ここが私の小屋なの?」 【はい。元のセレナは陶芸家でした】 「へえ……。性格がまるで違うじゃない。私は間違いなく、散らかし放題で整理整頓なんて大嫌いなタイプよ。それに、何よりも怠け者だし」 私はため息をついた。 【ほ……】 「その『ほ……』は何よ。いいこと? 私の性格も生活習慣も正反対の人間の体に私を転生させて、人生をさらに面倒にしてくれたことについて、感謝の言葉を述べさせてもらうわ」 【お褒めいただき、ありがとうございます、宿主様。ちなみに、元のセレナは日の出前に起きていました】 【宿主様は正午前に起きることすら、ほとんどありません】 「私たちは別人なのよ」 【セレナの評判にとっては、残念なことですね】 私は目を回し、そのままベッドに倒れ込んだ。 「お姉ちゃん、髪を整えてあげようか? 私、髪のセットなら少しできるよ」 エララが申し出た。 私が落ち着かない様子なのに気づき、少しでも気を紛らわせようとしてくれているのだろう。 私はぼんやりしたまま、うなずいた。 エララは慣れた様子で部屋の中を動き回った。まるで、ここで過ごす時間が長かったかのようだった。 私は気にしなかった。 彼女がいちいち私に尋ねることなく動けるなら、そのほうが私にとっても楽だ。 エララは一本一本、丁寧に髪のもつれをほどいていった。 私を痛がらせないよう、慎重に作業していた。 骨製の櫛が髪に引っかかるたびに、彼女は申し訳なさそうに謝った。 「……ごめんね」 「……また引っかかっちゃった。ごめん」 私は磨き上げられた青銅の鏡に映る彼女の姿を見つめた。 「……どうして、そんなに私に優しくしてくれるの?」 彼女の手が一瞬止まった。 注意深く見ていなければ、気づかなかったかもしれない。 彼女は小さく笑い、気にしないでというように首を振ると、再び作業を続けた。 その間、聞いたこともないような歌を鼻歌で歌っていた。 私は目を閉じた。 地球で過ごした、平穏だけれど騒がしかった日々の光景が頭の中に浮かんできた。 「……家に帰りたいな」 私は小さくつぶやいた。 その瞬間、自分が口を滑らせたことに気づいた。 「家……?」 エララは首を少し傾け、目に涙を浮かべた。 私はニヤリと笑い、くすくすと声を漏らした。 「大したことじゃないわ」 そう言って、私は適当にごまかした。 ちょっとした仕返しだ。 エララは私のいたずらっぽい態度に気づいたようで、微笑んだ。 「ああ、もう……。お尻がぺちゃんこになっちゃう! あとどれくらいで終わるの?」 私は体を動かしながら、うめいた。 「もう少しだけだよ」 彼女が答えたので、私は鼻を鳴らした。 すると、彼女の手が再び止まった。 エララは少し身を引き、驚いたように私の目をまっすぐ見つめた。 「……何?」 私が尋ねた。 「今……お姉ちゃん、私のことを『妹』って呼んだよね……」 彼女は、私の頭に突然角でも生えてきたかのような顔で私を見つめていた。 私は目を細めた。 「……呼んじゃいけないの?」 「ううん、そんなことないよ。ただ、びっくりしただけ……」 彼女の声が震え始めた。 「お姉ちゃんが、私を妹だって認めてくれたの、これが初めてだから……」 そう言い終えると、彼女の頬を涙が伝い落ちた。 そして、その場に崩れ落ちた。 「……は?」 【宿主様! あなたは悪役令嬢でしょう、このクソ女! 一瞬、本当に少しはまともになったのかと思ってしまいましたよ。まったく……】 「泣かないでよ。うっかり口が滑っただけ。どうして私があんたを妹なんて呼ばなきゃいけないの? そんな価値、あんたにはないわ」 私はシステムを無視した。 エララは勢いよく顔を上げた。 「今度は何なの? 妹って呼んだら泣くし、取り消したら……。いったい、その反応は何なのよ?」 彼女は何も答えず、ただ私を見つめていた。 「はあ……」 私は目を回し、彼女を押しのけて立ち上がった。 「まあ、髪はなかなかいい感じね」 エララはそっと微笑んだ。 まるで、笑いすぎたら私に怒鳴られるとでも思っているかのような、遠慮がちな笑みだった。 「これからはエララって呼ぶことにするわ。今は誰かの感情の面倒まで見る余裕なんてないもの」 彼女はうなずき、小さく鼻歌を歌った。 それから、耳がピンと立ち上がったかと思うと、ゆっくりと再び垂れ下がった。 「今度は何?」 私は体ごと彼女に向き直った。 「えっと……今日、粘土を採りに行くとき、一緒についていってもいいかなって思って……。迷惑はかけないから」 彼女はうつむきながら言った。 「システム?」 私は心の中で呼びかけた。 「システム、これって小説の展開の一部なの?」 【はい、宿主様。元のセレナは粘土がなくならないように、毎朝採取しに行っていました】 「別に、絶対に行かなきゃいけないわけじゃないわよね? 私、行かなくても……」 【ピコン!】 【新規ミッション発動:エララと一緒に池のほとりで粘土を採取する】 【ミッション報酬:+10SP】 「このクソ……!」 私はうめいた。 システムは耳障りな笑い声を上げると、姿を消した。 私は器を一つ手に取り、エララを振り返った。 「行きましょう」 そう言うと、彼女の耳がピンと立ち、顔いっぱいに明るい笑みが広がった。 「本当に?」 念を押すように、彼女は尋ねた。 「も、ち……」 その瞬間、器が私の手から滑り落ちた。 幸い、エララがすぐに受け止めてくれた。 「……セレナ?」 「セレナ!」 彼女のウサギの耳が、恐怖に震えた。 私の視界がぼやけた。 小屋が消えていく。 最後に見えたのは……。 エララではなかった。 別の女性だった。 川のそばに立ち、粘土をこねている。 彼女はゆっくりとこちらを振り返った。 その顔は―― 私と同じだった。小屋の入り口が開いた瞬間、私は慌てて紙を放り投げた。愚かな判断だった。自分でもわかっている。レインがドアの陰から顔をのぞかせた。「ずいぶん外を楽しんでいるようだな」彼は意味ありげにそう言って、くすくすと笑った。私は苛立ちに顔をしかめた。「だったら、あなたも一緒に楽しんだらどう?」私はドアをさらに押し開け、小屋の中へ入った。何時間も立ったりしゃがんだりしていたせいで背中が痛んだが、それでもなんとか木製のベッドによじ登った。体重がかかると、ベッドが小さくきしんだ。「この子、かわいいと思わない?」「全然。意地悪で失礼な子よ」子供の声が、明らかに不満そうに響いた。私はゆっくりと目を覚まし、体を起こして目をこすった。両手を頭上に伸ばして大きく伸びをする。顎の力が抜け、口が自然と開いた。その瞬間、一匹のハエが勢いよく口の中へ飛び込んできた。私は激しく咳き込んで吐き出そうとしたが、ハエは喉の奥に引っかかってしまった。まぶたをぎゅっと閉じ、ためらいながらも、私は虫を飲み込んだ。隣からくすくすと笑う声が聞こえた。私は顔を横に向けた。地面に座り、小さな女の子を腕に抱いていたのはエララだった。女の子は私を見ると鼻で笑い、顔をそむけた。目には軽蔑が浮かび、鼻にはしわが寄っている。「おはよう、お姉ちゃん」エララは微笑みながら、そっと頭を下げた。それから、女の子にも同じように挨拶するよう促した。「おはよう、虎のセレナ」女の子は言った。その声には、必死に抑え込んだ怒りがにじんでいた。私は首を傾げた。こんな朝早くから、二人は私の部屋で何をしているのだろう?誰かの存在を思い出したかのように、私は突然顔を上げた。
「……今、一体何が起きたの?」私はつぶやきながら、立ち上がった。「セレナ、大丈夫か?」レインが慌てて駆け寄り、私の肩をつかんだ。まるで怪我がないか確かめるように、あっちへ向けたり、こっちへ向けたりする。「ちょっと! やめてよ、目が回るでしょ!」私はうめきながら、彼の手を払いのけた。レインは咳払いをして一歩下がり、ローブをいじった。私は目をぐるりと回し、また元に戻した。「どうしてあんなことをした?」彼は落ち着いた、揺るぎない声で尋ねた。私は首の後ろを指でこすりながら、彼と目を合わせないように視線をさまよわせた。「知らないわよ……」私は小さくつぶやいた。「お願い……信じてよ」一歩前に進んだが、彼は後ろに下がった。喉が締めつけられた。胸の奥に、何か重たいものが沈んでいく。涙が目の奥に込み上げ、今にもこぼれ落ちそうだった。どうして……レインに信じてもらえないことが、こんなにもつらいの?「レイン……」私の声が震えた。けれど、彼はさらに一歩後ずさった。今度は足元までふらついた。それでも、自分の無実を訴えることを諦めるつもりはなかった。そのとき、私の視線が手首に留まった。そこには、何事もなかったかのようにブレスレットが収まっていた。覚えているのは、これを身につけて、そのまま意識を失ったことだけ。私は向きを変え、誰にも何も言わずにその場を立ち去った。足元の砂は柔らかく、ほんのりと温かかった。私はひたすら前へ歩き続けた。やがて水が足を覆うと、その場に腰を下ろし、水の中に体を沈めた。地面からは、淡く光る草が生えていた。本当に美しい場所だった。心が穏やかになるような場所。か
まぶたが異様に重く感じた。頭がズキズキと痛んだ。目を覚まして最初に気づいたのは、部屋ではなかった。薬草と新鮮な粘土、そして焦げた木の匂いだった。「……私の部屋じゃない」もう一度目を開けると、そこは見知らぬ部屋だった。周囲から突き刺さるような視線が向けられている。私は弱々しい体を無理やり起こし、辺りを見回した。エララが慌てて私のそばに駆け寄り、しゃがみ込む。そして、私の手を両手で包み込んだ。「お姉ちゃん、大丈夫?」心配そうな声で尋ねてきた。「ええ、大丈夫よ」私は彼女の手を振り払った。エララは後ろによろめき、すぐにリヴェンが前に出て彼女を受け止めた。「気をつけて」彼は小さくそうつぶやいてから、いつもの冷たい目で私を見上げた。私は目を回しながら立ち上がった。「何なの、あの子。紙でできてるわけ? ちょっと押しただけで吹っ飛ぶなんて」鼻で笑ってやった。エララは手首をさすった。それなのに、怒るどころか……彼女は微笑んだ。「……でも、お姉ちゃんが目を覚ましてくれて、本当によかった」私は顔を上げた。レインが私を見つめていた。その顔には、ありありと失望が浮かんでいる。「何よ? 誰かを殺したわけでもないのに」一歩踏み出した瞬間、再び映像が脳裏にあふれた。私のものではない記憶。それなのに、確かに私の記憶でもあった。私は川辺に座り、楽しそうに粘土を器に詰めていた。ところが、誰かに触れられた途端、動きを止めた。そして、かっとなって、その人物を川へ突き落とした。ほんの一瞬の断片。私が生きたことのない人生の記憶……いや、元のセレナが生きた人生の記憶だった。「システム」呼びかけたが、返事はなかった。
【ペナルティ選択:感電】私は空を見上げ、雷が落ちてくる気配がないか探した。何もない。私は眉をひそめ、一歩前に踏み出した。それから、もう一歩。ゆっくりと歩き始め、足取りを数えながら、その場を離れようとした。その瞬間、電撃が全身を貫いた。私はその場に凍りつき、体を激しく震わせた。電流が全身の筋肉を駆け巡る。指が硬直した。歯がガチガチと鳴った。視界さえも真っ白になった。それは永遠とも思えるほど長く続いた。脳がショートしたようだった。顔から血の気が引いていく。遠くから、かすかにシステムがカウントダウンする声が聞こえた。【3、2、1】そして……。すべてが静止した。ようやく電撃が止まると、私は勢いよく体を起こした。髪はボサボサに逆立ち、肌は青白くなっていた。私は左を見て、それから右を見た。幸い、こんな姿を目撃した人はいなかった。私は地面に崩れ落ち、大げさに泣きわめいた。「私がいったい何をしたっていうの!? 私はただ、何不自由なく暮らしていた金欠の女子大生だったのに!」私はすすり泣いた。そのとき、足音が聞こえた。一歩、二歩、それからもう一歩。目の前に一組の足が現れた。私はゆっくりと視線を上げた。そこに立っていたのは、エララだった。昇り始めた赤い太陽を背に、彼女のウサギの耳は垂れ下がっていた。エララは息をのんだ。垂れていた耳がピンと立ち上がり、それから再び力なく垂れた。彼女は慌てて私のそばへ駆け寄った。「お、お姉ちゃん……」今にも泣き出しそうな顔だった。「……誰がこんなことを?」
セレナ私はゆっくりと顔を上げた。運がいいのか悪いのか、そこにいたのはオレンジ色の髪をしたキツネ族の男だった。彼は私の顔を見るなり、腰に回していた手を離した。そのせいで、私は地面に倒れ込んだ。「ああっ!」私は悲鳴を上げた。まだ朝なのに、どうしてこんなに痛い目に遭わなきゃいけないの? あなたたち、わからないの? 私、こんな仕打ちを受けるようなことしてないんだけど!【ええと、宿主様。私が謝るべきだったのでしょうか? いいえ、謝罪は未来の自分のために取っておきます。でも宿主様、あなたは別です。盗みを働いたのですから、自業自得ですよ】「いつか絶対に殺してやる……」【そんなことより、まずはご自身の命を守ってください、宿主様】システムの耳障りな笑い声が再び頭の中に響いたかと思うと、完全に消えてしまった。「レインお兄ちゃん、あの意地悪なトラのお姉ちゃんが、ウサギ族のエララをいじめようとしてるの!」小さな女の子が泣きながら訴えた。「……私?」私は目を見開き、自分自身を指さした。オレンジ色の髪の男は私をにらみつけたあと、小さな女の子の頭を優しくなでて安心させた。「レイン様、どうか妹さんをきちんと見ていてください。私たちのような罪のない村人を傷つけるために、あのように暴れ回るべきではありません」女性は恭しく頭を下げると、そそくさとその場を去っていった。女性が立ち去った途端、彼の冷たい視線が私に向けられた。私は反射的に一歩後ずさった。その眼差しは、身も凍るほど冷たかった。この兄弟たち、いったいどこかで冷酷さの特訓でもしているの?私は突然、何事もなかったかのような顔をして一歩下がり、女の子が教えてくれた方向へ歩き始めた。私の小屋があるのは、そちららしい。前へ進めたのは、わずか五歩だった。「セレナ」
【システム、彼の隣でひざまずいているだけでも、一緒に一晩過ごしたことになるよね?】【はい、宿主様。まったく、ネリエンは本当に残酷ですね】私は目を回し、彼の木製ベッドの横にひざまずいた。数分後、彼は何も言わずにベッドへ上がった。私は彼を見ないように、視線をあちこちへ向けた。空中を漂う、ほんの小さな埃の粒までじっと見つめていた。この部屋には時計が一つもなかった。もしかすると、この世界全体に時計というものが存在しないのかもしれない。だから、どれほど時間が経ったのかも、あとどれくらいひざまずいていなければならないのかも、まったくわからなかった。ただ、一つだけ確かなことがあった。私の膝は腫れ始めていた。そして、凍えるほど冷たい木の床にひざまずき続けるのは、耐え難くなっていた。一秒ごとに、針を皮膚へ突き刺されているような痛みが走る。それでも、私は眠ることを拒んだ。もし意識を失ったら、この赤毛の男が何をするかわかったものではない。だから、重くなったまぶたを無理やり開けていた。疲労のせいで、体は時折ふらりと揺れた。眠気で目が焼けるように痛かったが、目を閉じる勇気はなかった。突然、ネリエンが寝返りを打った。彼の顔が、私の顔からほんの数センチのところで止まった。息が喉に詰まった。近くで見ると……。彼はとんでもなくハンサムだった。深紅の眉の下には、赤みを帯びた琥珀色の瞳が輝いていた。長いまつげが、普段の冷たい表情をわずかに和らげている。透き通るような白い肌には欠点一つなく、そして、あの一見柔らかそうな唇……。彼の規則正しい呼吸が私の顔に触れた。温かな息に、背筋がぞくりと震えた。どうして、こんなにも恐ろしい人が、こんなに美しくなければならないの?不公平すぎる。私は思わず、あの冷たい唇がどんな感触なのか想像してしまった。







