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第8話
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私の旦那はメンヘラ 第9話
父と母は命を懸けて私と知紀を守ってくれた。あの年、私を守り続けたひまわりを植えてくれた父、そして愛してくれた母を失った。もちろん、知紀も母親を亡くしたけど、彼は悲しむこともなく、私の悲しみを理解しようともしなかった。それ以来、私は彼の肖像を描くことはなかった。最初は彼を恨んでた。彼が私の家族を奪い、私を家に閉じ込めて、自分の世界に引きこもる原因を作ったんだと思ってたから。さらに、彼は私をおばあさんから引き離し、若松家に閉じ込めて、後にはおばあさんを使って私に結婚を強要してきた。あの頃、知紀は本当に私を愛してくれていて、私はなんとか自分に生きる意欲を持たせ、彼を許そうと努力した。あの時の彼もただの無垢な子供だったのだから。生きるのが辛くなるたびに、庭のひまわりを見に行って、壁に凋むことのない花を描き続けていた。でも、その後、私が必死に生きようとする中で、清香の登場ですべてが壊れた。いや、すべてを壊したのは知紀自身だったのかもしれない。彼は自分の手で、育ててくれた太陽を破壊した。私はもう耐えられなかった......その日、若松の父がやってきた。彼はずっと私を嫌っていた。知紀が厳しく監視していたため、今まで機会を逃してたんだ。「俺には知紀しか息子がいない。何をしても彼の好きなようにさせてきたが、今回はお前のために自分の道を壊しかけた」「この茶番はこれで終わりにしろ。これまでのお前への借りも充分返したはずだ。残りの人生、ちゃんと面倒を見てやる」はっ。あの時、彼が愛人と遊び歩いて迎えに来るのが遅れなければ、こんな悲劇は起こらなかったはずだ。どうして痛くも痒くもない言葉で全てを片付けようとしてるんだろう？まるで私に大きな恩を施したかのような態度を取って。彼らは私を孤児にしたというのに、彼の息子のそばに置くことが恩恵だとでも思っているのか？私はすべてを捨てて、かつて両親と住んでいた家に戻った。そこは今や無人で、危険な建物になっていた。十年ぶりに、私は大人になった知紀の肖像を描き、幼い頃に一緒に寝た小さなベッドに横たわり、目を閉じた。ベッドの上には、私が描いた家族四人の絵が埃を被っていた。幼い手で描いた幸せな家族の絵、それは大人になった紗紀が永遠に手に入れることのないものだった。もしかしたら、小さな紗紀
私の旦那はメンヘラ 第8話
しかし、返ってきたのはさらなる苦痛と折磨だった。その前には、彼女が自分こそが愛人であると認める告白動画を撮影し、ネットに流されていた。それで、世間の非難の矛先は彼女に向かい、かつて私を責めてた人たちが今度は彼女を攻撃し始めた。でも、そんなことには何の意味もなかった。彼女たちがしたことは変わらないし、祖母が亡くなった事実も消えない。知紀もこれで自分の過ちが清算されると思っていたのかもしれないが、間違いは間違いだ。すべての過ちが謝罪だけで許されるわけではない。報復したって、憎しみは消えないし、私の心には彼への恨みが染みついたままだ。彼らの中に無実の者など一人もいない。彼は私に向かって媚びるような表情で言った。「紗紀、君が手を汚す必要はない。全部僕が片付けるから」彼は私に血生臭い場面を見せたくないのか、そっと車に乗せてくれた。になって知ったことだが、彼は彼女たちを別荘に閉じ込め、互いに殺し合わせ、最後には飢えで衰弱死するまで放置していた。発見されたとき、彼女たちの遺体は傷だらけで、見るも無惨な状態だった。外部には、彼はあの別荘は無人で、清香とは別れた後、彼女が勝手に忍び込んだのだと嘘の説明をしていた。まるで彼女が私を悪者に仕立て、別荘に忍び込んで知紀を誘惑しようとした時のように。ネット上では、彼女が愛人になれずに狂気に走り、自分を女主人だと思い込んで勝手に他人の別荘に住み着いた、という話が拡散された。そこには食べ物がなく、彼女は餓死してでも離れたくなかった、どどうしても玉の輿に乗りたかったのだ。清香は死んでもその悪評は広がり続け、整形していた過去や愛人としての生活、さらに夜の店で働いていた黒歴史まで暴かれた。私はタブレットを手に、そのニュースを無表情で眺めていた。知紀は私の膝に頭を置いて、まるで撫でられたい犬みたいに甘えてきた。「紗紀、君はもう僕を認めてくれたんだよね？これまでの間に少しでも僕のことを好きだったこと、あるよね？」「悪かった。許してくれる？もう君とおばあさんの仇も討った。これからはずっと一緒にいよう、僕と一緒に生きていこう？」「紗紀、僕は君を愛してる......」私は彼に微笑みかけた。彼は喜びを浮かべた。次の瞬間、私の一言でまた深い絶望に突き落とされた。「どうして自分が無罪だ
私の旦那はメンヘラ 第7話
私はリハビリに励み、退院後すぐに知紀に連れられて青木の森ヴィラに戻った。彼は私が到着するとすぐに、地下室に監禁されていた清香と彼女の3人の取り巻きを連れ出した。「紗紀、彼女たちが君にしたことは、倍にして償わせるから、僕を許してくれないか？」私の視線は蒼ざめた顔で震えている清香に向かった。彼女に対する憎悪が込み上げてきた。地下室に閉じ込められたこの2週間、彼女たちは食べ物も与えられず、犬のように鎖で繋がれ、悪臭を放つまで汚れきっていた。私と知紀を目にした瞬間、清香は恐怖に震え、地面に跪いて哀願した。「若松社長、若松奥様、もう私が悪かったです。許してください！」他の3人も必死で自分の無実を訴え始めた。「私たちは清香に騙されただけです！全部彼女の指示でやったんです！」「そうです、恨むなら彼女を恨んでください！私たちは関係ないんです！」彼女たちは利益がなくなるとすぐに仲間割れし、傷つき合いながら生き延びようとしていた。私は冷たく笑いながら言った。「自分たちが無実だと思ってる？あの時、全員で手を出したんでしょう？血の代償は血で返す。私が情けをかけるとでも思ってるの？」全員が私に手を出して、動画を撮ってばらまき、おばあさんを死に追いやった。誰一人として責任から逃れることはできない！清香は恐怖に怯えた目で私を見つめていた。「でも、あなたはまだ無事じゃない！私を殺してもあなたにいいことなんてないわ。もう十分苦しんだでしょう？」もう十分だって？どうしてそう思えるの？彼女は自分の命が他人よりも価値があるとでも？私は冷ややかな表情で言った。「でも、おばあさんはあなたのせいで亡くなったのよ。自分が死んで当然だと思わない？私は言ったはずよ、血には血を！」清香は私にすがりつけないと悟ると、知紀の足にすがりつこうとしたが、すぐに護衛によって鎖ごと引きずり戻され、まるで犬のように地面に転がされた。「若松さん、以前は私を愛していたのに、どうしてこんなことをするの？」「彼女は今や醜くなったし、私は彼女より若くて綺麗なのに、何でもあなたのためにするわ」」知紀は彼女を見る目に嫌悪感を浮かべ、一切関わりたくないという様子だった。「お前は何様のつもりだ？紗紀の髪の一筋にも及ばないくせに」「どれだけ似せても、お前は紗紀にはなれない。
私の旦那はメンヘラ 第6話
彼はなおも私たちの関係を修復しようとしていた。まるで引っ越すたびに庭いっぱいに植え直してきたひまわりのように。「紗紀、良くなるよ。君が元気になったら一緒に家に戻って、好きなひまわりを植えて、絵を描こう」私は自分の動かない手を見つめた。この手でまた絵が描けるのか？知紀は緊張した顔で、私の疑問に満ちた視線に応えた。「絶対良くなる、僕が君を治して、傷つけた人たちに償わせる」私が今一番心配しているのはおばあさんのことだった。彼女はすでに退院しているはずだが、迎えに行く約束の時間を過ぎてしまった。今の私の姿では会いに行けないので、知紀に頼んで彼女には知らせず、私が回復してから会えるようお願いした。しかし、ある日私は見知らぬ番号からの動画を受け取った。そこには白髪のおばあさんが囲まれ、腐った野菜や臭い卵を投げつけられている光景が映し出されていた。周りの人たちは汚い言葉で罵りながら、「孫娘が人の夫を誘惑しているのに謝りもしない、引き渡せ！」と叫んでいた。「両親が早く亡くなったからこんな礼儀知らずに育ったのか、なんて醜い存在だ！」「孫娘の醜聞がネットで話題になってるよ。見て見て、正妻に殴られてる様子もある。こんな女、やられて当然だ！」おばあさんは動画を見ながら泣き叫び、周囲の人々に「私の紗紀はそんな人じゃない、そんなことはしない！」と反論していた。その瞬間、私は胸が張り裂けそうな思いに襲われた。あの人は私のおばあさんだ！清香は私を別荘で殴打した動画をネットに公開し、すぐに話題となった。私は特定され、すべてが公になってしまった。両親を亡くした孤児が整形して富豪の別荘に潜り込み、誘惑しようとした「愛人」だと。ネット中の人々が私を非難し、唯一の親族であるおばあさんもネットで中傷され続けた。退院したばかりのおばあさんは、彼女たちに押しのけられ、侮辱され、最後には心臓発作で倒れても誰も助けようとしなかった。私は恐怖に駆られて知紀に電話をかけ、おばあさんの様子を尋ねようとした。電話はすぐに繋がり、私は震える声で聞いた。「おばあさんは？ネットに出ているあの動画、本当なの？」彼は動揺し、普段はビジネスの場で冷静沈着な彼が、今は声を震わせ、言葉に詰まりながら答えた。「ごめん、紗紀......僕の不手際だ。すぐに事態に
私の旦那はメンヘラ 第5話
知紀は護衛の制止を無視して川に飛び込み、私を引き上げ、失意の中で心肺蘇生を繰り返し、人工呼吸を続けていた。彼は何度も「紗紀......僕が間違ってた、何でも君の言う通りにするから、目を覚ましてくれ......」とつぶやいていた。以前は私は死を望んでいたが、今はおばあさんのために生きる決意をしたのだ。私は知紀の腕を掴もうとしたが、指が折れて動かせなかった。彼は私の折れて変形した指を見つめ、目に狂気を宿して叫んだ。「君の手......誰がやったんだ？」知紀は私が絵をどれほど愛しているかを知っていて、この手が傷ついたことが何を意味するのかも分かっている。かつて彼は私に子供の頃のように彼の肖像を描いてほしいと頼み、いつか関係が改善することを願っていた。しかし今、彼の願いは完全に絶たれた。清香は人を連れて追いかけてきて、知紀が私を助けたことに驚愕していた。彼女は傲慢に「私がやったのよ。あいつが私の真似をして絵を描くからよ。整形して私の顔に似せて、ダーリンを誘惑しようとしたから、彼女にはそんな資格はないのよ」と言った。知紀の目は赤く充血し、私の胸を圧迫してようやく水を吐かせることができた。清香は彼が私を心配している様子を見て、怒りで足を踏み鳴らした。彼女は、私が彼女の顔を真似て寵愛を受けている愛人だと信じ込んでいた。彼女は知紀と関係が悪くなるのを恐れて、泣き顔で大人ぶって言った。「若松さん、あなたは私を一番愛しているのよね？まさか私を責めるつもり？私はあなたが唯一公認した恋人よ。みんなが私と結婚すると信じているよ」「私は悲しいし嫉妬しちゃう。どうして私みたいなそっくりな人を探してきたの？あなたは他の人を好きになるなんて許さない、私だけを愛してよ！」彼女は自分の独占欲まじりの甘え方で、彼がすぐに謝って機嫌を取ってくれると思い込んでいた。しかし、知紀の目には殺意が溢れ、私が目を開けたのを確認してようやく安堵の息をついた。清香の取り巻きたちは急いで言った。「若松社長、清香さんとあなたこそが本物の愛で、他の女なんて一時的なものですよ。こんな女のために気を悪くすることないですって！」「そうそう、こんな女なんかさっさと追い出しちゃいましょうよ。清香さんも若松社長には気にしてませんから！」知紀は私を抱き上げ、四人を見
私の旦那はメンヘラ 第4話
清香は蝶のように知紀の胸に飛び込み、ついさっきまで私を拷問していた悪女とはまるで別人のようだった。甘い声で言った。「ダーリン、どうして今やっと戻ってきたの？私が来なかったら、この女が潜り込んでダーリンを誘惑してたかもね」「ダーリンも知らないでしょ、この女がこっそりここに入って何をしてたのか。ほら、家中がこんなふうになってる。だから、もう懲らしめておいたよ」そう言って、彼女は私の散切りにされた髪を掴み、知紀の足元に引きずり出し、さらには私を蹴りつけた。「見て、この女はすでに反省してるの。お金を払わせて終わりにしましょうよ」彼女は純真そうな顔で無邪気を装い、とびきりの笑顔を浮かべていた。知紀は血と泥で汚れた私を見て、まるで私が誰か分からないかのようだった。今の私は、彼が心に思い描いていた純白の花とは全くの別人だった。知紀はすべてが私という侵入者によって壊されたと思い込んでおり、その目には狂気と怒りが渦巻いていた。「こいつを始末しろ。ただし、苦しまずには死なせるな」護衛が近づき、私を引きずり去ろうとした。彼らの手を掴もうとしたが、折れた指は思うように動かず、喉も「フー......フー......」というかすかな声しか出なかった。その場にいた全員、清香も含めて、一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに勝ち誇ったような微笑みを浮かべた。彼女の表情はまるで「見たでしょ？やっぱり私が彼に愛されているのよ。さっきの手加減が甘かっただけ」と言わんばかりだった。その時、松田さんが食材を手に戻ってきて、驚きの声を上げた。「何でこんなことに......もし紗紀さんが見たら、びっくりするでしょうに......」そう言いながら、いつものように「夕食は何がいいか」と尋ねるために家の中に入っていった。私は「奥様」と呼ばれるのが好きではなく、知紀との関係を表に出すのも嫌だったため、彼らは私を「紗紀さん」と呼んでいた。しかし、松田さんが中に入った時、荒れ果てた光景しか目に入らず、私の姿が見当たらなかった。彼女は慌てて外に飛び出し「若松社長！紗紀さんがいません！」と叫んだ。知紀の目には動揺が走り、清香を突き放して青ざめた顔で別荘中を探し回り、完全に取り乱していた。彼は私がまた逃げ出したと思い込んでいたに違いない。ひまわりが破壊されても私
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