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第5話

작가: 鍋ちゃん
怜が中身を確認する前に、遥は素早くそれを奪い取った。

「前の契約書の期間が切れちゃって。これは更新契約書」

一瞬の出来事で、怜はその書類が何なのか確認することはできなかったが、遥のあまりに素早い動作に、彼はふと疑念を抱いた。

「本当?」

遥は努めて冷静にうなずく。

なんとなく腑に落ちなかった怜は、さらに問い詰めようとしたが、その時、汐里からメッセージが届いた。

【怜、週末空いてる?チャリティーパーティーがあるんだけど、一緒に参加してくれないかな?】

疑問などどこかへ消え、怜は夢中で返信を打ち始めた。

汐里とのやり取りに30分を費やして、怜がようやく顔を上げると、遥はすでに自分で手当てを終えていた。

「自分でできるから、怜は怜のことをして」

その声はあまりに静かで、かえって怜の胸にどっしりとした重みを与える。

蹴られたところが赤く腫れあがっている遥の顔を見て、ようやく口を開いた。「遥、俺たちは夫婦なんだから、そんなに遠慮することなんてない」

「すぐに、夫婦じゃなくなるから」

と、遥は思わずつぶやく。しかし、怜には聞き取れなかったようで、彼女のために包帯を巻きながら、聞き返した。

「今、何か言ったか?」

優しい彼の手つきに、遥はまつ毛を伏せ、話をそらした。「何でもない。あのさ、2日後は祖父の命日だから、時間があれば最後にお墓参りに付き合ってくれる?」

怜はうなずいた。

その後の数日間、二人はいつも通り出勤し、飛行任務をこなした。

退社後は一緒に帰宅し、たびたび同僚から仲睦まじいとからかわれ、怜はいつも笑顔で応えていたが、遥は反応することはなかった。

しだいに怜もそんな遥の違和感に気づき、キャンドルディナーを用意して、彼女の機嫌をとることにした。

「父さんと母さんからの催促は今に始まったことじゃないだろ?それに、俺たち二人の問題なんだし、子供がいようといまいと俺は気にしないから、プレッシャーに思うことはないよ。運命に任せよう」

揺れるキャンドルの明かりが、彼の凛々しい顔を照らしている。

遥はふと、バスケコートで眩しく輝いていた少年の姿を思い出した。

ナイフとフォークを置き、静かに口を開く。「なら、もう産むのをやめるし、薬ももういらない」

その言葉に怜は固まり、彼の表情が引き攣った。

「そんな……諦めるなよ。薬は続けて飲んで。もしかしたら何か奇跡が起こるかもしれないだろ?」

遥は静かに彼を見つめ、力なく微笑んだ。「うん、奇跡……ね。起こるかもしれない……」

とびきり大きなサプライズを用意してあげる。

あなたに自由というプレゼントを、ね?

その夜は一睡もできなかった。

翌日、遥は朝早くに目覚め、菊の花を注文した。

怜の車で墓地に着いた直後、怜に汐里からの着信があった。

「怜、一緒に盛沢市に行く約束をしたじゃん。今どこにいるの?」

「出発は明日じゃないの?」

怜が眉を寄せると、受話器越しに苛立った不満の声が聞こえてきた。「今日行きたいの!30分以内に空港へ来て。もし、来なかったら……わかってるよね?」

その脅し文句に、怜は眉間を揉む。

遥に相談しようと横を見ると、彼女は祖父の遺品である懐中時計を黙って撫でていた。

その瞬間、遥の祖父が亡くなる前に「孫娘をよろしく頼むぞ」と何度も言っていたことを思い出した。

言い訳しようとした言葉が喉につかえる。

時計を見て、別の言い訳を絞り出した。「ちょっと仕事で急ぎの連絡があったんだ。急いで墓参りを済ませて、10分後にはすぐ出発してもいいかな?」

遥は頷いた。

しかし、墓石の前に立った時、またもや怜の携帯が鳴った。

インスタの通知音。

怜が開いた画面には、汐里のアカウントで航空券の写真が投稿されている。

「急に盛沢へ行きたくなったんだけど、誰か付き合ってくれないかな?」

その直後、樹がそれに「いいね」を押した。

怜は焦燥感に駆られ、もう後のことなど考えられず、遥に背を向けて走り出した。

「遥、悪いけど先に行くよ。あとは自分で帰れるよな?」

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