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私は空へ、あなたは後悔の中へ
私は空へ、あなたは後悔の中へ
작가: 鍋ちゃん

第1話

작가: 鍋ちゃん
葉酸を飲み続けて2年。だが、それが避妊薬にすり替えられていたと知ったその日、神谷遥(かみや はるか)は雷に打たれたような衝撃を受けた。

すぐさまタクシーを拾い、神谷怜(かみや れい)に真相を問いただそうとバーへ向かう。

個室の前までたどり着いたその時、中から神谷汐里(かみや しおり)の責めているような声が聞こえてきた。

「怜!どうして何の理由もなく私の彼氏を殴ったの?彼は今も病院にいるんだよ。今すぐ謝りに行って!」

そんな汐里を見つめながら、怜は険しい表情のまま黙り込んでいる。

気まずい空気に耐えきれなくなったのか、怜の友人がかわりに口を開いた。「その男の浮気現場を見たんだ。だから、怜はお前のためを思って……」

それでも納得できない様子の汐里は、やはり怜に対ししつこく謝罪を強要し続け、最後には悔しさのあまり目を赤く潤ませた。

汐里の泣き顔を見た瞬間、怜の心は揺らいだ。

険しい表情のまま、汐里の携帯を取る。

電話が繋がった途端、受話器の向こうからは、おどおどとした男の声が聞こえてきた。

「怜さん、すみませんでした。二度とあんな真似はしませんから」

相手の声に不快感を露わにしながらも、涙を浮かべる汐里を見て、怜は怒りを押し殺し、渋々謝罪の言葉を並べた。

「手を出して悪かったな」

「あ、え?い、いえ……骨折だけだから、すぐに退院できるって言われたので大丈夫です」

骨折していると聞いた汐里は、慌て始める。

怜の手から携帯を奪うように取り返すと、電話の相手にすぐ行くと言い、個室を飛び出していった。

汐里の姿が見えなくなるや否や、怜の友人たちは一気に不満を爆発させた。

「怜、なんで謝ったりなんかしたんだよ?浮気してたのは汐里の彼氏の方だぞ。それに、お前は汐里のために殴ったのにさ」

「ったく、汐里のやつ。お前の家に養子で迎えられたとはいえ、本当に昔から何一つ変わってないな。いつだって自分のことしか考えていない。あの頃、お前たちは確かに両想いで、お前があいつのために家に逆らった時だって、何も言わずに黙ってた。

それだけじゃない。お前が汐里を助けるために視力を失ったというのに、別れを切り出したかと思えば、あっさり別の男と海外へ行ってさ。このままあいつのわがままを聞いてたら、お前が駄目になっちまうぞ?」

「もう汐里のことなんか、ほっとけよ。それより、そばにいてくれる遥さんのことを大切にしたら?ずっと支えてくれているし、二人の子供を一番望んでいるのは彼女なんだぞ。それに2年間、お前が避妊薬を飲ませてることを知ったら、遥さん絶対に悲しむからな」

友人たちが怜のことを思っていくら言っても、怜は押し黙ったまま動かない。

すると一言、怜が静かに口を開いた。

「好きでもない相手と結婚しただけでも十分な苦痛なんだ。そこに子どもまでできれば、苦しみが増えるだけで、何一ついいことはないんだよ」

ドアに手をかけていた遥の手は激しく震え、心臓は刃物でえぐられたかのように痛み、立っているのもままならなくなった。

ふらつく足でその場から駆け出す。しかし、どこへ向かえばいいのかすら分からない。

冷たい夜風に吹かれ、記憶の奥に仕舞い込まれていた日々が蘇ってきた。

バスケットコートで一際輝いていた怜。彼を見た瞬間、遥は恋に落ちた。

その後、怜が数え切れないほどの女子から憧れの眼差しを向けられながらも、誰とも特別な関係を持たないことを知り、遥はある方法でアプローチすることに決めたのだ。

髪をショートカットにし、バスケ部に入部して怜との距離を縮める。

そうやって時を重ねるうちに、遥は怜にとって「友人」のような存在になった。

高校卒業後も、彼を追いかけ航空大学に入学し、その後も同じ航空会社に入社して養成訓練を受け、何年にも及ぶ努力の末、怜の副操縦士というポジションを掴んだ。

いつかは怜の心を自分に向かせることができると信じていた。

しかし、怜には愛する女性がいることを、ある日偶然にも知ってしまったのだ。

それは怜の家に養子として引き取られた、汐里。

怜は汐里のために、女性からの好意を一切受け入れなかった。それどころか、汐里と共にいるために家の後継者の地位さえ捨て、自ら航空業界の道へと飛び込んだ。

このことを知った時、遥は打ちのめされ、いっそもう諦めてしまおうかと考えた。

しかし、遥が怜から離れることを決意しかけた時、ある事故が起きて、怜は汐里を救うために視力を失ってしまったのだった。

それでも、怜が愛していた汐里はそんな彼を見捨て、海外へと旅立っていった。

だから、遥は怜の隣で、彼の人生で一番辛い時期を支え続けた。

ある時、酔いつぶれた怜が、遥をあろうことか汐里と勘違いして、遥に唇を重ねた。

そしてその夜、何度も耳元で繰り返される「汐里」という甘い囁きを聞きながらも、遥は幸せな夢の一部として噛み締めていた。

翌朝、後悔を浮かべた瞳でベッドに呆然と座る怜。

「ごめん、遥。昨晩は……その、勘違いしていて。この責任は、金で取るか?それとも籍を入れるか。お前はどうしたい?」

心臓の高鳴りを抑え、遥は迷わず後者を選んだ。

そうして二人は結婚し、夫婦となった。

その後、遥は名医を見つけ、怜の瞳に光を取り戻す。

怜は再びエリートの道へと返り咲き、二人の日々もようやく穏やかさを取り戻していった。怜がずっと自分を「親友」としか見ておらず、恋愛感情を抱いていないことは分かっていたが、それでも遥は不満を抱くことなく、いつか必ず彼の心を振り向かせられると信じ続けていた。

しかし、汐里が恋人を連れて帰国してから、嫌というほど思い知らされた。怜の視線は無意識に汐里を追い、彼女のためなら自分との約束だって簡単に後回しにした。

さらには、これまで怜が何より大切にしてきた信念や誇りさえも、汐里の前ではどうでもいいものらしかった。そのたびに胸を締めつけられながら、遥はようやく気づいた。怜の心には、ずっと汐里しかいなかったのだと。

それでも、遥は怜に対しての気持ちが捨てられず、諦めきれなかった。

だが今日、ようやくあきらめる決心がついた。

一晩中冷たい風に吹かれた遥は、空が白んできた頃、魂が抜けてしまったかのような姿で帰宅した。

怜は一足先に帰ってきており、遥を見て少し驚いた表情を浮かべる。「こんな時間に帰ってくるなんて珍しいな。どこ行ってたんだ?」

「友達との食事会」頭の中が整理できず、遥は適当な嘘で誤魔化した。

怜はそれを怪しむことなく、軽く遥を抱き寄せた。「お前のカレンダーを見たら、今日は排卵日だった。今晩、試してみるか?」

2年間、考えられるすべての妊活を試してきた遥だったが、一向に兆しはなかった。

自分の身体のせいかと、自責の念で泣いた日々。

でもまさか、すべて怜の仕業だったなんて。

そして今この瞬間でさえ、彼は笑顔で嘘をつき続けている!

遥は悲しく微笑むと、体調が優れないからと言って、やんわりと断った。

怜も疑うことはなく、遥の額に一度口づけを落とすと、書斎へと入っていった。

ドアが閉まると同時に、遥の携帯が震えた。

相手は運航部長で、遥の上司。

「お疲れさま。もうすぐ毎年恒例の昇進審査が始まる。遥副機長はずっと神谷機長の副操縦士としてやってきたから、実績は十分だ。今の君なら十分昇進の可能性があるし、そろそろ一人立ちを検討してみないか?」

これまでの日々を思い返しながら、遥はどうしようもない疲労感に襲われた。そして、かすれた声で口を開く。

「部長、挑戦します。でも、航路はA980でお願いできますか?」

一瞬沈黙が流れた後、驚いた部長の声が返ってきた。

「A980と神谷機長の担当するY628じゃ方向は真逆だし、海外常駐になるよ?それでも、A980を選ぶってなると、怜くんとは会えなくなると思うけど……本当にそれでいいの?」

「問題ありません」

遥の固い決意に、部長は溜息をつきつつも、それを受け入れてくれた。

「わかった。なら昇進の手続きを進めておくよ。決まり次第出発できるように、準備しておいてね」

遥は返事をすると、通話を切った。

寝室に戻り、クローゼットの奥に隠していたファイルを取り出す。

中には離婚協議書と離婚届。どちらも怜の部分は記入済みだった。

怜は視力を取り戻した日、SNSに投稿された汐里と恋人の写真を見てしまい、そのまま酒を浴びるように飲み酔いつぶれ、これを遥に突きつけてきたのだった。

今でもあの瞬間を、遥は鮮明に覚えている。酔いで意識が朦朧とし、目を赤くした怜が言った言葉……

「遥、俺は後悔してるんだ。でも、お前はこの数年間、俺のそばで支えてくれただろ?だから、せめてもの償いとして6億お前にやる。

それに、あの夜の責任としても……6億。合わせて12億お前にやるから、離婚してくれないか?お願いだよ……俺は、汐里に会いに行く。なあ、お前も知ってるだろ?俺には汐里がいないと駄目なんだよ……」

その夜、遥は一晩中泣いた。

次の日、怜は一切このことについて言ってこなかった。おそらく、完全に忘れていたのだろう。

ファイルを手に持ったまま彼女は小さく微笑む。怜、あなたの望み通りにしてあげる。

震える手でペンを走らせ、自分の欄を埋めていく。

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