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第7話

Auteur: シチリア
ちょうどその時、彩羽から電話がかかってきた。

辰一は凛々を支え、一目見ただけで電話を切った。

「凛々、なぜもっと早く言わなかったんだ?今すぐ病院に連れて行く!」

彼がそう言い終わると、また電話が鳴り始め、二人の心に急迫した着信音が響き渡った。

辰一はもう一度電話を切った。

「大丈夫、病院に行かなくていい、少し休めば治る……」

凛々がそう言い終わらないうちに、辰一のスマホがまた光った。彼女は彼の手を押しのけた。

「出て。会社からの緊急連絡かもしれない」

「凛々、まずは座って少し休んでて」

辰一は凛々をソファに座らせると、ようやくそばを離れて電話を取った。

だが、今回はいつもの優しい声ではなく、どこか冷たい声だった。

「どうした?なぜ何度も電話をかけてくるんだ?お父さんの方は最高の医者と介護士を手配してある。そんなに心配しなくていい」

またもや彩羽だった。

凛々はソファに寄りかかり、疲れて目を閉じた。

辰一はすぐに電話を切り、そばに戻って彼女の世話をした。

その後数日間、辰一は会社に行かず、ずっと家にいて結婚式の準備をしていた。

特注のタキシードを着た彼が目の前に現れ、楽しそうに服をいじる姿を見ると、凛々の眼差しはどこか曇り、何を考えているのか分からなかった。

「凛々、明日ついにお前と結婚できるんだ。とても嬉しいよ」

辰一の笑顔を見ても、凛々の視線はずっとそのドレスに留まっていた。

なぜなら、三時間前に凛々は一つの動画を受け取っていたからだ。

動画の中で、彩羽はそのドレスを着て、辰一と離れがたく絡み合っていた。

「凛々、今夜は早く休んでくれ」

凛々は眠ったふりをして、辰一がこっそり家を出るのを感じ取った。

辰一が新婚の前夜を彩羽に捧げるつもりだと、彼女は知っていた。

彼女は静かに起き上がり、少ないながらも大切なものをまとめた。

辰一がこれまでに贈ってくれたプレゼントは、一つも持って行かなかった。

すべて終えると、彼女は朝まで静かに待ち、結婚式会場へ向かった。

ゲストはほぼ揃っていた。

凛々は入口で自分と辰一のウェルカム写真を、彩羽と辰一の写真に差し替えた。

その時、辰一が急いで車から降りてきた。

「凛々、道が渋滞してて遅れた。早く中に入って着替えよう」

その後ろには、新婦と変わらない服装をした彩羽がいた。

凛々の視線と合うと、彩羽の目には挑発的な光が宿っていた。

慌てふためく辰一は、入口のウェルカム写真に気づかなかった。

彼は腕を組みながら更衣室へ向かった。着替えている時、凛々は彼の頸に、厚く塗ったファンデーションでも隠しきれない赤い痕を見つけた。

「凛々、まだ着替えないのか?結婚式がもう始まるさ」

凛々は笑いながら彼を見て、首を振って静かに言った。

「急がないよ」

凛々の笑顔を見て、辰一は少しぼんやりした。

彼女が優しく笑っていたが、彼の心のどこかで不安を感じていた。

着替えとメイクが終わった頃、辰一は凛々が何も準備していないことに気づいた。

戸惑っていると、凛々が手を差し出した。

辰一がその手を取ると、凛々は彼を連れて外に出た。

たくさんのゲストの注目を浴びながら、彼女は辰一の手を離し、動画の再生ボタンを押した。

辰一は少し恥ずかしそうに振り返り、スクリーンに映る自分と彩羽の顔を見ると、全身が凍りつくような寒気を感じた。

彼は慌てて凛々を見つめ、何か言おうとしたが、凛々は先に口を開いた。

「今日は、友人としてあなたと高木さんの結婚式に出席する」

辰一の足がふらつき、倒れそうになった。

彼はようやく、なぜさっきから不安だったのか理解した。

凛々は笑っていたが、その目は冷たくて温もりがなかった。まるで見知らぬ人を見ているようだった。

「凛々、何を言ってるんだ?今日は俺たちの結婚式だ」

彼は凛々の前に歩み寄ると、彼女の手首を掴んで、最後のあがきを続けた。

「違う、今日はあなたと高木さんの結婚式よ」

彼女は場内の写真と招待状を示した。

辰一はそこにある名前と写真がすべて彩羽のものに変わっているのを見て驚いた。

「そんなことはない、違う……凛々……」

しかし彼の声は、動画の音声にかき消された。

それは婚約の日に、車の中で彩羽に言った言葉だった。

「彩羽、たとえ俺があいつと結婚しても、好きなのはお前だけだ……」

その瞬間、辰一の頭は真っ白になった。凛々はずっと前から知っていたのだ。

目の前の凛々を見つめ、彼は必死に彼女の腕を掴んだ。

彼の心の中には、凛々を決して離したくないというただ一つの想いだけがあった。

凛々は彼の手を押しのけ、穏やかで優しい笑みを浮かべた。

「辰一、私たちは終わったわ。ご結婚、おめでとう」

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