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第60話

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事情聴取を終えた楓が警察署を後にしようとした時、一人の警察官が彼女を呼び止めた。

「木村さん、容疑者があなたとの面会を要求しています。あなたに会うまでは供述を拒否すると頑なでして。どうか、捜査にご協力いただけないでしょうか?」

楓は眉をひそめた。桃奈に何か別の思惑が潜んでいるのではないかと警戒したからだ。

彼女の懸念を察し、警察官は言葉を続けた。

「ご安心ください。分厚い防弾ガラス越しでの面会となりますので、彼女があなたに危害を加えることは不可能です」

楓は不承不承ながら頷いた。

「……分かりました」

面会室に入ると、ガラスの向こう側にはすでに桃奈が座っていた。

桃奈の態度は不気味なほど落ち着き払っていた。どれほど楓を憎んでいようと、今の自分には手出しできないと悟っているのだろう。

楓は受話器を手に取り、氷のように冷たい声で切り出した。

「私に何を言いたいの?」

桃奈は口角を歪めて笑った。

「楓、自分勝ったとでも思ってるわけ?」

楓は無表情のまま、感情の一切こもらない瞳で彼女を見つめ返した。今の彼女にとっては、目の前の女を憎むことすら労力の無駄に思えた。

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