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第13話

Penulis: サヨ
翌日、大聖堂にて。

式場は柔らかな白紗と色鮮やかな生花で彩られ、ステンドグラス越しに降り注ぐ陽光が、神聖な光と影のコントラストを描いていた。

正装した招待客たちは談笑しながら、克樹と来幸の登場を今か今かと待ちわびている。

克樹はバルコニーに立ち、紫煙をくゆらせていた。その眼差しは、底なし沼のように深く淀んでいる。

そこへ、純白のウェディングドレスを纏った来幸が歩み寄った。

「克樹、もうすぐ式が始まるわ」

彼は無言で煙草を揉み消し、じっと彼女を見つめた。

来幸は小首をかしげ、不思議そうに瞬きをする。

「克樹、どうしたの?

そういえば、披露宴の席にお義父様の姿が見えないのだけど……電話してみたらどうかしら?」

克樹は首を横に振った。

「すぐに会えるさ」

彼は来幸のドレス姿を品定めしながら、ふと考えた。

もし時乃がこれを着ていたら、どんなに美しかっただろうか、と。

彼女を思うだけで、心臓の奥底から無数の棘が突き出すような激痛が走る。

式が始まり、来幸は父親の腕に寄り添い、しとやかにバージンロードを進んだ。

「岡山家のお嬢さんもやるもんだな、バツイチで梶本家に嫁ぐとは!うちの娘にも試させてみればよかったよ」

「ああ。岡山家は息子を一人亡くしたが、梶本家という後ろ盾を得たんだ。これで安泰だな」

来幸は得意満面だった。

これから先は、雲の上の存在である「梶本夫人」となれる。あらゆる犠牲は報われた。

隣を歩く祐次郎もまた、顔を紅潮させ、来幸の手をポンポンと叩いて満足げだ。

ウェディングマーチが響く中、来幸は胸を張り、克樹の前へと進み出た。

次の瞬間、克樹が乾いた音を立てて手を叩いた。

護衛たちに連れられ、一人の男が壇上に上げられた。

なんと、克樹の実父・幸造ではないか!

克樹は新郎の証であるブートニアを父親の胸に挿すと、その瞳に氷のような冷ややかさを宿した。

「今日、この場の主役である新郎は俺ではない。俺の父、梶本幸造だ!」

その言葉に、会場は騒然となった。

「どういうことだ?婚約したのは克樹さんと来幸じゃなかったのか?」

「まさか、先代の社長が来幸を見初めたとでも?克樹さんも気前がいいな」

祐次郎は顔面蒼白になり、その場で凍りついた。

来幸は父の手を振り払い、早足で詰め寄った。訳が分からないといった表情で尋ねた。

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