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第68話

Auteur: 青葉凛
松田は声を潜め、嬉しそうに続ける。「先日、朱美様がいらっしゃいました。紫音様にたくさんの手土産をお持ちになって……お二人とも楽しそうに過ごされていましたし、朱美様もたいそう気に入られたご様子でした」

律は片眉を上げた。母の訪問は想定外だったが、悪い話ではないらしい。

彼は足を止めることなく、そのまま紫音の部屋へと向かった。

軽くノックをして扉を開けると、紫音は目を丸くして彼を見上げた。

「……帰ってたのね」

「ああ。母さんが来ていたようだね」律の声はいつも通り穏やかだった。

母と婚約者のいざこざでも心配しているのかと思い、紫音は慌てて付け加える。「朱美様には、とても良くしていただいたわ。だから心配しないで」

律の静かな視線に耐えきれず、紫音はさらに言葉を継いだ。「そうそう、紹介してくれた会社のことだけど、いくつか連絡を取ってみたの。どこも私の特許に興味を持ってくれて、近いうちに面談することになったわ」

矢継ぎ早にそう報告したのは、律と二人きりの空間に居心地の悪さを感じていたからだ。沈黙が怖くて、あえて話題を探してしまう。

政略という形だけの絆で結ばれた他人同士。ふとし
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