魔天開祖

魔天開祖

last updateLast Updated : 2025-11-11
By:  4時間移動Updated just now
Language: Japanese
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 かつて大地には、高度な文明を築き栄えた国があった。  科学者達は、長く続く争いを無くそうと人々の善と悪の思念を制御する研究を続けてきた。  そしてついに、それらを別の空間に蓄積し隔離する術を生み出した。  しかし、その思念は人の手に負えぬほど膨張、暴走し、二つの異なる次元は全ての生命を飲み込んだ。  二つの次元はそれぞれ「魔」と「天」と呼ばれた。  魔と天のコメディバトルここにあり!

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Chapter 1

第3話「存在理由①」

 時を同じくして、お父様が封印された古城では幹部たちによる会議が開かれていた。

 テーブルの中央には手下が一足先に調達してきた動物や人間が盛られた巨大な皿。

 それぞれ手にはワイングラスを持ち、中には血色の紅い液体が入っていた。

(グルルル・・・)

「辺境の村アルメリアに送った貴様の半身とやらは、未だにエンシェントアイテムを持ち帰っていないそうだが」

 獅子の唸り声とともに一匹が語り出した。

「君が自身の魔力を半分切り離して生み出したヤツ? 裏切り者は処刑だよ」

 全身を黄金色の鎧に包んだ一人があけすけに訊く。

「人間も馬鹿ではない。簡単にはいかぬさ」

 片手に杖を持ち、片腕が干からびた一人が答えた。

「グルル…手ぬるい! 村を襲い人間どもを根絶やしにして奪えば良い。なぜそうしない?」

「長い年月をかけようやく突き止めた天界の装備。必ず繋がりがある。闇雲に滅ぼしてしまうのは愚策だ」

「でもお父様はお嘆きになるだろうなー」

「ふん。その通りだ! 動向が手に取るように分かるそうだが、人間どもに混じり、媚びて情報を探るなど」

「クックックッ……」

 黙って聞いていたヘドロスライムが笑い出した。

「何がおかしい?」

「いえ、つい。お三人とも気の長いことだなと思いまして。失礼」

「ガルルッ! 貴様、何か文句があるのか? グラスも持てないスライムごときが」

「幹部の新参。一番下っ端の分際でちょっと生意気だね。ボクがお仕置きしてやろうか」

「いえいえお詫び致します。私のようなスライムが、お父様に次ぐ力を持つあなた方に敵うはずがない」

「なるほど、素早いお前は既に新しい情報を掴んでいると見える」

「ええ。もちろんです」

「我々はまだ他の武具の所在を探し出せていない。お前の命は預けておこう」

「……さすが冷静かつ賢明なご判断。感謝いたします」

(ニヤニヤ。かつて魔王を滅ぼした天使がどのような"モノ"であったか。魔に染まりきったあなた方には分かるまい)」

 手下のモンスターたちが狩りから帰ってくる。

    ″お父様″と呼ばれた存在がその凶大な力の全てを取り戻すための封印。

 その解放は目前に迫っていた。

    ◆

 城に帰還したバルガを待っていたのはお父様ではなくヘドロスライムであった。

「失敗したようねバルガ」

「……申し訳ございません。人間どもの中になかなか強力な技を持つものがおりまして」

「それで持ち帰ったのがその汚く錆びれた斧だけか。それが天使の斧とでも?」

 ニヤニヤと笑う口元。だがその眼は笑ってはいなかった。

「おっおそらくは! 他にそれらしき武具は見当たらず……」

「そうか。ところで、その手練れの息の根はちゃんと止めてきたんだろうな」

「い、いえ、お父様より伝心が入りましたゆえ、即刻戻って参りました。しかし奴には致命傷を与えており長くは持たないかとおもわr」

≪セバルチュラx≫

 ヘドロスライムの二つの眼から紅蓮の炎が際限なく吹き出し、バルガの全身を包む。

「ぐぎゃあああ! た、助けて、お赦し、お赦しを!!」

「そういうところが詰めが甘いと言っている!」

「あっあっ、ベホ、マ、ベホ……」

 灼熱に飲み込まれバルガは呪文を唱えられない!

 黒焦げとなり床に崩れ落ちるバルガ。

 しかしHPはわずか1残り、まだ息があった。

「クックク。大した生命力だよバルガ。もう一度だけチャンスをあげる。再び村に赴きその手練れを捕らえて城に連れて来なさい。そいつは生きている」

「な……な…ぜ、あん…な…にん、げんを」

「そいつは人間ではない」

 そう言うとヘドロスライムの身体が光り輝きバルガに注がれ、焼け爛れた傷を少しずつ癒していった。

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第2話「襲撃」
 セーラが村にやってきてから数週間が過ぎた。  その間マリアたちに魔法や剣の修業をしてもらったが、残念ながら大きな上達は見られなかった。 「私、何もできない…」  セーラは己のふがいなさに涙を浮かべる。 「大丈夫よ。これから頑張れば」  しかし何の戦力にもならないことが悔しかったのか、いつまでもすすり鳴く声が聞こえた。  そしてまた数週間、セーラの修業は相変わらずであったが、少しの上達は見られるようになった。 そんなある夜、本を読んでいたセーラはふと外が騒がしいことに気がついた。  外の様子を見に行こうと立ち上がった瞬間マリアの声が聞こえる。 「セーラ!起きてる!?」 「は、はい! 外が騒がしいので今見に行こうと」 「どうやら魔物の襲撃を受けているらしいの! あなたも来て!」 「はい!」  いったい私に何ができるのだろうかと考えながらもマリアについていった。 外に出てみると村人たちが大勢の魔物と戦っていた。  ところどころ火の手が上がっている。 「おじいさまの姿が見えない! セーラ、あたしはおじいさまを探してくる! あなたは子供たちを避難させて!」 「わかりました!」  泣き声を頼りに子供を見つけ出し、安全な場所に連れていってやる。  そのうち、とりわけ大きな魔物が村人と戦っているのが見えた。その魔物は青紫色の体毛を身に纏った巨大な虎であった。「セーラ、こっちへ!」 「あっ、カイさん、アレフさん!」 「あそこで戦っているのがオレたちの親父だ」 「ええ!そうなんですか!?」 「多分親父たちの相手が、攻めてきた魔物たちのボスのはずだ」 「俺たちが言うのもなんだが、親父たちはこの村で五本の指に入る強者だ。勝てばいいが負ければこの村は全滅だろう」 「そんな…」 「しかしなんだって魔物たちはこの村を襲ってきたんだ?」 「思い当たるとすれば、この村のどこかにあるという天界の斧だ」 「なぜ魔物がそんな斧を狙うんだ?」 「わからん。だいたい斧の話もただの言い伝えでしかない」 「そうですね…」 「とにかく今は、親父たちが勝つのを祈るしかない」  だが、力の差は歴然であった。  魔物は炎や吹雪を吐き、パーティーのHPを削り取っていく。  反撃する間もなく、パーティーは全滅した。 「親父!」 「父さん!」 「あ
last updateLast Updated : 2025-10-18
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第1話「セーラ」
 気がつくと彼女はそこにいた。  ふとあたりを見渡す。(ここはどこだろう) そこは広々とした草原であった。  だが見渡す限り人がいそうなところはない。  彼女は見覚えのないこの土地で、どこへ向かって歩いて行けばいいのか迷っているうちに、ふと自分が何者かすらわからないことに気がついた。(私…誰?) だが、彼女の記憶のどこにも自分の名前はなかった。  自分が何者か、なぜここにいるのかが抜け落ちている。  思い出せるのは薄暗い城で自分の親らしき闇に包まれた魔と争い、負傷し、逃げ出したこと。  それだけであった。 催した彼女は自分が持っている物を調べてみた。  しかし黒い珠が一つあるだけで、手掛かりになりそうなものは何もなかった。 自分のことを思い出すのをあきらめた彼女は、長く美しい黒髪をかきあげてとりあえず歩き出した。  そこに居続けることに耐えられなかったのである。  ところが運悪く三匹のももんじゃに遭遇してしまった。  ももんじゃはある程度の武具さえ装備していれば、それほど恐ろしい敵ではない。  だが彼女は何の武器も防具もなく、ただの布の服すらない全裸というありさまであった。 彼女は危険を感じ逃げ出そうとしたが、ももんじゃに回りこまれてしまった。  ももんじゃたちは彼女に容赦なく攻撃を加える。  彼女のHPが徐々に減って行く。  しかし彼女にはなす術がなかった。 彼女が死を覚悟した瞬間、何者かが戦闘におどり出た。  一人は剣を持った大柄な戦士風の男、もう一人の男は魔術士のいでたち、そして三人目は法衣をまとった女性であった。  三人は瞬く間にももんじゃたちを倒してしまった。 「あなた大丈夫?」  法衣を着た女性が話しかけてきた。 「このあたりは弱い魔物しかでないけれど、その装備じゃ一人で出歩くのは無謀ね」  そう言いながらその女性は彼女にヒールをかけてくれた。「あたしはマリア、この魔術士はカイ、そしてその剣士がアレフ」 「あ、あの…助けてくれてありがとうございます」 「君の名前は?」  彼女は事情を説明した。 「えー! 記憶喪失で自分の名前も思い出せないの?」 「だったらオレたちの村に来て、ゆっくり思い出せばいい」 「ああ、そうだな」 「じゃあ
last updateLast Updated : 2025-10-18
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第4話「存在理由②」
アルメリアの教会では神父によって治療を受けているセーラを村人たちが取り囲んでいた。 幸運にも軽傷ですんだアレフがカイに話しかけた。「誰も装備できなかった斧をセーラが使えるなんてな」「確かにセーラは村の救い主だよ。しかし、親父たちもジムラ様ももう戻らない」「とにかく早くこの村を出なければならん。またいつ魔物が襲ってくるかわからんからな」「俺は村を離れるつもりはないよ、アレフ」「馬鹿なことを言うな! 殺されるのを待つつもりか?」「まだマリアの意識が戻っていない。それにこの村は俺たち三人が生まれ育った大切な故郷だ。俺にとっての全てだ」「マリアは担いでいけばいい。今の俺たちの力はあいつらに手も足も出なかったが、経験値を積んでレベルを上げればいつか勝てる」「……セーラさえ村に来なければ」カイが呟いたその時、セーラが目を覚ました。 セーラが目を覚ました時、既に夜は明けていた。日の光の下で見ると、改めて村の悲惨な状況が理解できた。 気がつくとマリアが泣いている。「おじいさまが……村が……みんなが……」 セーラはマリアにかける言葉がなかった。 しばらくのち、二人はカイとアレフを探し始めた。 カイたちは放心状態で座っていた。「カイ……アレフ……」「ああ……」「あの、二人ともけがの具合はどうですか」「セーラが手当してくれたんだな。ありがとう。けがは大丈夫だ」 マリアは昨日の出来事をカイとアレフに話し始めたが途中で泣き出してしまった。 後はセーラが説明した。「そうか、やっぱりあいつは力天使の斧を狙ってきたのか」「でも本当にあったんだな。天使とやらが使っていた斧」「何のために持って行ったんでしょうね」「わからんが、相手は魔物。人間の利益になることのためでないことは明らかだ」「なあ、これからどうする?」「どうすると言われてもな」「オレは奴らを追いかける。奴らを倒して天使の斧を取り戻す」「一体どうやって奴を倒すつもりだ? 奴は強い。強すぎる。」「それなら希望はあるわ」 泣き止んだマリアが答えた。「昨日セーラがすごかったの。誰も装備できなかった家宝の斧を装備できたし、その斧が光りだして攻撃はすべて会心の一撃。あいつ……バルガをあと一歩まで追い詰めたんだから」「そうなのか、セーラ」「はい。なぜ会心の一撃ばかりになったのかはわ
last updateLast Updated : 2025-11-11
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第5話「存在理由③」
夜が明け、雨は止んでいた。 マリアとアレフは一晩中セーラを探したが、見つけることはできなかった。 そのためいったん宿に戻り、休むことにした。 どこか見知らぬ場所で、セーラは目を覚ました。 起き上がろうとすると、声をかけられる。「もうよいのか」「あ、あなたは街で会ったおじい! もしかしてあなたが助けてくれたのですか? どうもありがとうございました」「うむ、わしゃオルドという者じゃ。それよりどうしたというのじゃ。夜中に雨の中を一人で出歩くとは」「あの……それは……」「言いたくなければ言わんでもよい。ところでお主が持っている珠を見せてくれんかのう」「これですか?」「おおそれじゃ。ううむ、これはどうやら呪われているようじゃの」「呪い?」「うむ、この珠はな、いわばお主の力の源のようなものじゃ。だからけして壊したりなくしたりしてはならぬ。だが何者かがこの珠に呪いをかけ、お主の力を封じているのじゃ」「それじゃ珠の呪いが解ければ……」「お主が本来持つ力を使えるようになるはずじゃ。どれ、わしが呪いを解いてやろう」 そう言うと、オルドは珠の周りに手をかざし、なにやら呪文を唱え始める。 すると珠の色が徐々に変わり、やがて青く光る珠が現れた。「きれい……」「ほれ。これを持ってみい」 オルドはセーラに碧い珠を渡した。 珠の光に呼応して、床に置いてある家宝の剣も光りだす。「すごい……力が湧き上がってくる……」 なんとセーラのレベルが上がった!「それが現時点でお主が本来持っている力じゃ。今のお主なら魔法も使えよう」「私が魔法……」 セーラは嬉しくなってきた。「じじい! 何から何までありがとう! あっ、私の名前はセーラ。あなたの名前は聞きましたっけ」「わしゃオルドじゃ」「ああ、聞きましたよね。ごめんなさいおじい」「だからわしゃオルド……まあよい。セーラよ、すぐ街に戻りお主がすべきことをするのじゃ!」「はい! おじい、本当にありがとうございました!」 セーラは去って行った。 オルドがぽつりと言った。「あやつ性格まで封印されておったか……」「さてと街はどっちかな」 セーラがさまよっているうちにまたもももんじゃ8匹に遭遇した。「昨日はやられたけど、今日はそうはいかないんだから」 セーラは怒声をあげた。 一撃でももんじゃたちを
last updateLast Updated : 2025-11-11
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第6話「平和は誰がために①」
湖より奥の森の中でバルガは悩んでいた。香箱座りの前足を何度も何度も出し入れしてはいつまでも決断が出来ずにいた。 娘の居所は怨塊目玉の報告により掴んだ。確かに生きていた。与えた傷すらまるで無かったかの如くピンピンしていた。 重度の火傷と凍傷。人間の治癒力で元通りに治る怪我ではない。 我が主ヘドロスライム様は娘を生け捕りにして来いと命じられた。 今度失敗すれば無事ですむはずがなく、恐らく命はない。 主様のお考えは恐らく自らがスライムとして初の魔王となる事。 だがいかに我が主様でも他の幹部と正面から戦って勝ち目は一分もない。主様自身そう話されていた。 幹部たちの戦闘を一度だけ見たことがあるが、あの方々はそれぞれが魔王を名乗るに足る力を持っている。 主様にはいかなる魔法も効かない。 外見だけは可愛らしいスライムなので一時的に人間側につくことも考えられる。 自分だけが何も知らず利用されている。 この場合は、もはや逃げるしかない。 そして逃げるタイミングは今しかない。 事情を話して泣きついたところで保護して頂けるような、幹部はそんな甘い方々ではない。 生き残る手段は他にないではないか。 バルガは香箱座りからすくっと立ち上がり、裏返った声で呟いた。「逃げよう」◆ 一行はミラを出て東へ向かっていた。 故郷のアルメリアが襲われた夜、大勢の魔物たちが東へ飛んで行くのを見たと、ミラで聞いたからである。「このまままっすぐ行っても海しかないぞ。回り道してブランドール城へ行こう」 地図を見ていたカイが提案する。 一行はブランドールに向かうことにした。 途中に湖があり、一行は一休みする。 セーラは水遊びを始めた。 他の三人はそれを見て話をしている。「セーラは本当に明るくなったわね」「明るくっていうかあれじゃ天然だぞ」「俺は別に問題ないと思うが」「ところでセーラって天使様だと思う?」「わからん。天界のものと言われる武具が装備できるか、人間には使えないような専用の呪文を使えるか、どちらも不明だ」「でも攻撃魔法、回復魔法、それに斧が使えるぞ」「それだけなら魔法戦士も同じだろう」「相変わらずアレフは夢がないんだから。もしセーラが天使様なら、あたしたちも選ばれし者になるんじゃない?」「それはともかく、セーラが天使かどうかは、我々が決
last updateLast Updated : 2025-11-11
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第7話「平和は誰がために②」
 一行は梵天の鏡を取りに王家の塔を上って行った。 確かに現れる魔物たちは手強い。 五階建ての塔の最上階が果てしなく遠く感じられた。 そんな中、セーラは新しい呪文を覚えた気がした。 頭の中に浮かんだ呪文を唱えてみるが、何も起こらなかった。 どうやら気のせいらしい。 セーラは特に気にしなかった。 さてあっさりと梵天の鏡を手に入れ、一行は王の下へ戻る。 鏡を渡すと王はセーラたちを褒めたたえた。 そして鏡を兵士長に渡しマネモルを退治するよう命じた。 梵天の鏡で元の姿に戻されたマネモルたちは次々と兵士たちに倒されていく。 たとえ魔物といえども、何の危害も加えていないものたちが倒されて行くありさまを、セーラは見ていられなかった。 やがてマネモルたちは全滅し、ブランドールの人々は喜んだ。 人々が魔物を恐れる気持ちはわかる。 だがセーラには納得しがたい結末であった。 セーラたちはブランドールで、マルドックという街に船があるという話を聞き、そこへ向かっていた。 その途中、森の中で獣用の罠にかかっているスライムの子供を見つけた。 幼きスライムは悲しそうにこちらを見ている。 マリアが罠を外し助けてやると、スライムはうれしそうに駆けていった。「ちょっと、何するんだよマリア!」「魔物を助けるとはどういうことだ」「だってかわいそうじゃない」「あいつが人を襲ったらどうするんだよ」「私は悪い魔物だけじゃないと思うの」「セーラまでそんなことを言うのか。俺は知らんぞ」 四人の雰囲気が悪くなってしまった。 そして一行はマルドックに着いた。 街の中で話を聞くと、船は商人のソクラスが持っているという。ソクラスは人がいい男のようで、街のみんなが褒めていた。「ソクラスさんはいい人でねえ。よく街の仕事を手伝ってくれるんだよ」「本当にあんな親切な人はいないね」「あたしゃ前からやさしい人だと思っていたよ」 一行がソクラスの家へ行くと、ソクラスはにこやかに出迎えてくれた。「やあ、いらっしゃい。皆さんの噂はこの街まで届いています。おお、あなた達は魔物と戦ってくれるまさに勇者ですね。世界の平和をお願いしますよ」 そこに幼い少女がやってきた。 彼女はソクラスの娘でタニアという名前である。 マリアがあいさつをするとタニアもあいさつをし、ありがとうと言う。
last updateLast Updated : 2025-11-11
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第8話「」
 東の大陸に着いた一行は、近くにある祠に入り中の人に話を聞いてみた。 するとこの近くのセテロという街に、エンシェントアイテムに数えられるエデンの盾があるという。 さらにその街には天使のような人外がいるらしいということがわかった。 セーラたちはセテロに向かった。 しかし、魔物たちもエデンの盾がセテロにあることを知り、街に攻めてきていた。だがこの街は、回りを山あいに囲まれた城塞都市であるため守りが固く、魔物たちの侵入を許さなかった。 街へ着いた一行は門兵に中に入れてもらった。だが既にこの街に魔物の一味が入り込んでいたことを、セーラたちは知る由もなかった。 中に入りあたりを見渡すと、街の一角に盾を持った少年がいる。彼が天使と呼ばれる人物のようであった。首から下げた珠は赤く輝いている。「あちらの天使さんは朱い珠なのね」「私の碧い珠と何か関係があるのかな」「まあまず情報収集してみよう」 一行は彼のことを街の人々に聞いてみた。 最近までは気の弱い普通の少年だったようである。しかしある日天使として目覚め、呪文やエデンの盾が使えるようになったという話であった。 人々に話を聞いているとき、一人の男が走ってきてセーラにぶつかった。「おっとごめんよ!」そう言うと男はにやりとして去って行った。「なによ、失礼な男ね。セーラ大丈夫?」「うん、大丈夫」「一通り聞き終わったから彼に話を聞いてみるか」 一行は少年に話しかけてみた。「わての名前はレイ。わてこそが魔王を滅ぼす天の使いや」レイはセーラの方を向いて話しかける。「君も天使と呼ばれている女の子やね。でもヒーローは二人もいらないと思わんか? そこで君が本物の天使であるかどうか試させてもらうよ。このエデンの盾を装備できるかな?」 レイは盾をセーラに渡した。 見ると古ぼけた盾である。 本当に天界産の盾なのか半信半疑ながらも、盾を装備しようとした。 しかし盾は岩のように重く感じられ、装備することができない。 そして碧い珠は何の変化もなかった。「やっぱり装備できないようやね。あとわいはこういう呪文も使えるんや」 レイが呪文を唱えると、あたりに電撃が走る。それは人外の物だけが使える電撃系の魔法、ライオットであった。「君はこの魔法を使えるかや?」 セーラはうつむいて黙っている。「さあみ
last updateLast Updated : 2025-11-11
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第9話「二人の天使②」
街を追い出されたセーラは途方にくれていた。 彼女は天使であることにこだわってはいなかったが、自分の存在理由を否定されたようで悲しかったのである。 誰か相談できる人がいればと考えながら、ふと以前碧い珠の呪いを解いてくれたオルドを思い出した。(そうだ、あのおじいなら助けてくれるかもしれない) セーラはそう考え、オルドの家が近いミラの街へ飛行魔法で飛んで行った。 オルドに会ったセーラは、セテロの街での出来事を話した。「ふむ、事情はわかった。ちとその碧い珠を見せてくれんか」 セーラは珠をオルドに渡す。「ふうむ。よく見ると珠にくすみが見えるのう。多分魔物に細工をされたんじゃろ」「細工?」「以前の呪いのようなものじゃ。この細工をした魔物の近くにいると、碧い珠の力が封印されてしまうようじゃの」 そう言うとオルドは再び碧い珠を浄化してくれた。「ほれ」「おじいさんありがとう!」「あとお主は電撃の呪文を、不完全な形で覚えたようじゃな」「え?」「ちとじっとしておれ」 そういうとオルドはセーラに喝を入れた。 セーラの頭の中で不完全な呪文が消え去り、新しい呪文が浮かび上がる。「これでお主も電撃系の魔法も使えるはずじゃ」「それじゃ私、天使なの?」「そういうことになるかのう。まあ自信を持つことじゃ」 だがセーラには以前から気になっている疑問があった。 それをオルドに聞いてみる。「私、以前の記憶がないの。これも何かの封印なのかな」「おそらくそうじゃろう。だがわしにはその封印の正体はわからぬ。残念ながらわしにはお主の記憶を戻すことはできんのじゃ」「そうなんだ……」 セーラは肩を落とした。「それよりお主の仲間が気になる。早く行ってやるのじゃ」「はい!」 セーラは礼を言って再び飛行魔法を唱えて飛んで行った。「なぜあやつらが動き出したのじゃ」オルドはそう呟いた。 そのころマリアたちはレイと話をしていた。「この街にあるエデンの盾を狙って、以前から魔物たちが攻めて来てたんや」「この街には城壁があるじゃないか」「ああ。ただいくら周りに壁があるといっても、魔物たちを迎え撃つのは大変でな。ちょうどその住処がわかったんで、君らと一緒にやっつけに行こうと思うのや」「その前にセーラを返して!」「セーラ? ああ、あの偽物のことか。彼女のことはいま
last updateLast Updated : 2025-11-11
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第10話「波紋①」
 話をしている間にレイたちは洞窟に着いた。「ここが魔物のボスのすみかやで」 一行は中へ入り、魔物たちを倒しながら進んでいく。だが突然現れた魔物に両腕を取られたレイは、身動きが取れなくなった。 それを見たカイが二人にささやく。「どうする? 逃げ出すなら今だぜ」「で、でもレイが……」「大丈夫さ。あいつはあのぐらい一人で切り抜けられる」 三人が迷っていると、レイが話しかけた。「ええよ、行っても。でも例えわい一人になってもこここの魔物は絶対に倒したる」 三人はレイの目に固い決意を見た。 アレフが魔物を剣で切り裂きレイを助けた。 レイが不思議そうに聞いた。「どうして逃げなかったん?」「ここの魔物退治までは付き合ってやろうと思ってね。逃げるのはそれからだ」 道中でレイがとつとつと話し始めた。「わてはじいさんに育てられた。でもじいさんは魔物に襲われて亡くなってもうたんや。何もできんかったわては悔しかった」 レイは話を続けた。「わては以前から自分がエデンの盾を装備できることを知っていたんや。でも天使の力は何も現れなかった。そんな時、ある人がこの朱い珠をくれたのや。この珠を使えば強くなれるってな。それからや、わてが変わったのは」 三人は黙って聞いている。「わては攻めてくる魔物を倒し続けた。そして呪文を覚え、ライオットまで使えるようになった。望んでいた天使の力を手に入れたんだ。わいはこの珠をくれた人に感謝しているよ」 話を聞いた三人は何も言えなかった。 やがて一行は洞窟の最下層にたどり着いた。 奥にはボスと思われる魔物がいる。 魔物は胡座をかいて象の頭を持っていた。 その不気味な魔物は話し出した。「わたしの名はガネーシャ。おまえたちが来るのを待っていた」 そう言うと突然ガネーシャは沈黙の笛を吹いた。 レイたちの呪文は封じられてしまった。 さらにガネーシャは爆裂呪文を唱え、レイたちに大ダメージを与える。 四人も応戦するが、ガネーシャの爆炎系の魔法によりダメージを受け続け、瀕死状態になってしまった。 勝利を確信したガネーシャは、勝ち誇ったように話しだした。「冥土の土産に教えてやろう。レイよ、おまえにその朱い珠を与えたのはわたしなのだ」「そ、そんなばかな!」「その珠は魔力でおまえの力を増幅している。つまりその珠の力がなくなれ
last updateLast Updated : 2025-11-11
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