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第2話

Auteur: ちょうどいい
交際八年目の初め、蒼真の仕事は異常なほど忙しくなった。

しかし、私たちの一日に数えるほどしかないメッセージのやり取りには、いつも別の女の子の影がちらついていた。

蒼真に「ご飯食べた?」と聞けば、「後輩がご飯を取ってきてくれた。すごく辛かった」と答えた。

「映画でも見に行かない?」と誘えば、「後輩の論文発表のお祝いだから、みんなで食事会なんだ」と返ってきた。

その後、私が病気になった時、「少しでいいから帰ってきてくれない?」と頼むと、「後輩が実験を失敗して叱られたから、後始末のために残らないといけない」と言った。

私はこれらの言葉の端々から、微かな違和感を覚えた。

そしてすぐに、私の直感は確信に変わった。

毎月決まったデートの日、私は蒼真の好きなコンサートのチケットを人づてに手に入れた。

けれど、この貴重な二人きりの時間でさえ、蒼真は頻繁にスマホに目を落とし、メッセージに返信していた。

少し不満だったけれど、彼がずっと仕事で忙しいのだから、仕方ないとも思った。

だから、そっと尋ねてみた。「休日にまで邪魔してくる人って、誰なの?」

蒼真は、何気なく答えた。

「杉本絵美里が僕の実験をコピーして、データが間違ってたから、質問してきてるんだ」

絵美里。それが、蒼真の同じゼミの後輩だった。

あの時の自分がどんな気持ちだったのか、よく覚えていなかった。

ただ、せっかく手に入れたチケットなのに、二人とも真剣に見ていなかったことが残念でならなかった。

帰り道、蒼真は再びスマホを取り出し、メッセージに返信し始めた。

私は我慢の限界で、彼の手に自分の手を重ねて覆い隠した。

蒼真は眉をひそめて私を見た。

私はじっと彼を見つめ、冗談めかした口調で言った。

「月に一度のデートなのに、この前も会えなかったでしょう。やっと会えたと思ったら、あなたはスマホばかり......

いつもその後輩の方の話ばかりされると、さすがの私だって、少しは妬いてしまうわ」

この二言を口にすれば、蒼真も空気を読んで、絵美里の話を控えるだろうと思っていた。

しかし、まさか蒼真がこの言葉で怒り出すとは、夢にも思わなかった。

彼は一瞬で顔を凍らせた。

「メグミ、いつからそんな恋愛脳になったんだ?

彼女を助けるのは、ただ早く成長してほしいからだ。それだけだ」

その夜以来、蒼真との間には見えない壁ができてしまった。

私が送ったメッセージに、彼は一言も返してこない。

三日目、私は蒼真からのメッセージを受け取った。

【食欲がない。何かあっさりした料理を作って、研究所まで持ってきてくれ】

この言葉は、私にとって仲直りの合図に他ならなかった。

私は仕事を休み、すぐに八百屋へ野菜を買いに行った。

料理が完成すると、私は休む間もなく研究所へ届けに行った。

だが、ドアを開けた瞬間、蒼真が女の子の前にしゃがみ込み、優しく彼女のお腹を揉んでいるのが見えた。

私がかつて何度も褒め称えた、あの澄んだ声が、今は限りなく優しかった。

「どう?少しは楽になったかい?」

「はい、先輩。だいぶ良くなりました」

その光景を目にした瞬間、私の頭は爆発しそうになり、無数の思考が押し寄せ、胸が締め付けられるように痛んだ。

女の子は突然顔を上げ、すぐに恥ずかしそうに蒼真を押し退けた。

「先輩、もうやめてください。誰か見てます」

蒼真はそこで初めて、ドアの前に立つ私に気づき、立ち上がって眉をひそめた。

「メグミ、ここは研究所だ。どうしてノックしないんだ?」

私は無表情で彼を見つめ、嘲るように笑った。

「ノックしたら、今の光景を見逃してしまうところだったじゃないかしら?」

女の子は蒼真の傍に立ち、ぺろりと舌を出して、小声で説明した。

「あの、誤解ですよ。私、生理痛で実験ができなかったから、桐生先輩が仕方なくお腹を揉んでくれただけなんです」

蒼真は私の前に歩み寄り、弁当箱を受け取ろうとした。

「今、研究所は人手不足なんだ。絵美里は体調が悪くて食欲もないし、まだ何も食べてない。弁当箱を渡してくれ」

彼は何でもないことのように、当然だとばかりに言った。

まるで、それがごくありふれた些細な出来事であるかのように。

この時の私はただ笑いたかった。一人で空回りして、馬鹿みたい。

胸の刺すような痛みが、私に思わず口走らせた。

「あら、お腹が痛いと言えば、あなたはしゃがんでお腹を撫でてあげるのね。

食欲がないと言えば、あなたは私に頼んで、彼女のために料理を作らせるのね。

蒼真、いつからそんなに優しくて気配りができるようになったの?」

自分では張り裂けんばかりに叫んだつもりだったが、喉から漏れ出たのは、自分でも驚くほどか細く、掠れた声だった。

向かいの蒼真は、自分が少しも間違っているとは感じていないようで、淡々とした口調で言った。

「絵美里はチームに欠かせないメンバーだ。彼女の調子が良ければ、僕たちの研究も進む。君のその複雑な男女間の考え方を、僕たちに押し付けないでくれるか」

私はじっと彼を見つめ、弁当箱を持ったまま踵を返した。

この料理、肥料にでもした方がマシだわ!

次の瞬間、手に持っていた弁当箱が、蒼真に乱暴に引っ張られた。

私は一瞬でバランスを崩し、体ごと弁当箱もろとも地面に倒れ込んだ。

二時間かけて丹精込めて作った料理は、一瞬にしてゴミと化した。

蒼真は顔色を曇らせ、冷たく叱責した。

「真昼間からこんな騒ぎを起こして、君は満足か?」

私は黙って地面に膝をつき、手のひらは砕けた陶器の破片で刺され、激しい痛みに血が流れていた。

彼は一瞬呆然とし、無意識に私に手を伸ばし、助け起こそうとした。

私は彼の手を振り払い、痛みに耐えながら自力で立ち上がり、その場を去った。
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