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第4話

Author: 落葉
麻酔から目覚めると、茉優は自分の身体から大切な何かがすっぽりと抜け落ちてしまったような、言いようのない喪失感に襲われた。さらに傷口を走る激痛が容赦なく襲いかかり、彼女は再び意識を失いそうになった。

それなのに、息をつく暇さえ与えられず、正宏と芳美が押し入ってきて、病床から茉優を無理やり引きずり出そうとした。

「さっさと美月に謝ってきなさい!ひざまずいて許しを乞うのよ!」芳美の鋭い怒号が病室に響く。

俊輔はその脇に立ち、口を動かそうとしたものの、結局何も言わずに視線をそらした。

見かねて司は前に出て言った。「茉優はまだ手術が終わったばかりです。そんなことは……」

「司くん!」芳美は激しく一喝した。「あなたが茉優を好きなのは知っている!でも、忘れないで、本来あなたと婚約を結んでいたのは、陣内家の真の令嬢である美月の方よ!そんな偽物ばかり庇うなら、もういいわ。すぐにでも婚約相手を美月に戻してもらうから!」

それを聞いて、司の体は一瞬ビクッとした。息も絶え絶えで弱々しい茉優と、まくし立てる芳美の間で、彼は葛藤と戸惑いで目線を彷徨わせた。

結局、司は茉優の縋るような視線を避け、押し殺したような声で告げた。「茉優……謝っておいでよ……大したことじゃないからさ」

大したことじゃない……

その一言で、茉優に残された最後の希望が、跡形もなく崩れ去った。

彼女はもはや抵抗することもやめ、魂を抜かれた人形のように、両親に引きずられて美月の特別病室へと向かった。

一方、病室では美月が青白い顔でベッドに横たわっていたが、その目の奥には得意気な光が隠されていた。

そんな彼女を目の前にして、詫びの言葉が茉優の喉につかえ、どうしても出てこなかった。

美月は茉優を見ると、わざとらしく泣き声をたてて言った。

「お父さん、お母さん……茉優さんに無理やり謝らせようなんてしないで。私が戻ってきたのがいけなかったの。茉優さんの場所を奪ったから……刺されたのも、憎まれるのも当然よ。消えるべきなのは、私の方だから……」

そう言って、美月は無理にでもベッドから降り、窓の外へ飛び降りようとする素振りを見せた。

「美月!そんなバカなことはしないで!」芳美は悲鳴を上げて駆け寄り、慌てて周囲に美月を押さえさせた。

それを見て、正宏も怒りに駆られ、ぱっと振り向いて殺意に満ちた目線で茉優を睨みつけた。「自分が何をしたか、全く理解していないようだな!よし!こいつの爪を剥げ!自分から詫びを口にするまで、容赦はするな!」

指の爪を、剥ぐ?

茉優の顔から最後の血の気が引き、真っ青になった。

司と俊輔も驚愕し、止めようと割って入った。

「父さん!それはあんまりよ!」俊輔が声を荒げる。

「どうか、それだけはやめてください!」司も茉優を庇うように立ち塞がった。

「黙りなさい!」芳美は二人を指さして叫んだ。

「忘れたの?美月は俊輔の妹よ!あなたにとっても彼女こそが元々婚約者なんだから!それ以上この偽物を庇うなら、今すぐこの子を陣内家から追い出して二度と面倒を見ないようにするからね!」

司と俊輔は同時に固まった。頑なな姿勢の陣内夫婦と、ベッドで弱々しく振る舞う美月を見比べた末に、二人はついに、堪えるようにゆっくりと手を引き、黙って後ろへ下がった。

茉優はその場で下がった二人の姿と美月の目に浮かぶ勝者の光を見て、心の中で何かが完全に砕け散った。

そして、ボディーガードたちが無造作に茉優の手を掴んだ。

冷たい器具が、その繊細な指の爪に食い込み、力いっぱい引っ張られた――

「ああっ!」

指先から脳天へ突き抜けるような激痛が走り、痛みに耐えかねて、茉優はそのまま気絶しそうになった。

一本、二本、三本……

指先から赤い血が溢れ出し、シーツを真っ赤に染め上げた。

全身をけいれんさせ、病衣を冷や汗でびしょ濡れにして、茉優の視界は歪んでいった。

5本目の指が剥がされたとき、茉優は最後の力を振り絞り、掠れた声で叫んだ。

「分かった!謝る!

この家に生まれたのが……過ちだった……陣内家の娘として生まれるべきじゃなかった……

お兄ちゃんの妹として生まれたこと……

そして何より……司と婚約していたことこそが、私の罪なのよ……」

言い終わると同時に、凄まじい痛みと絶望に飲み込まれ、茉優は意識を完全に失った。

意識が暗闇へ沈んでいく最中、怒りに震える陣内両親の罵声がだけが遠くに響いた。

「陣内家の娘として生まれるべきじゃなかったって?あんた、元々うちの子供じゃないわ!」

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