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第4話

مؤلف: 青山輝
颯真はソファに深く身を預け、すっかりくつろいでいた。その隣には、玲奈がいる。

澪の足が、ほんの一瞬だけ止まった。

けれど何も見なかったように窓際の席へ向かい、近くの同級生と何気ない言葉を交わす。

ほどなくして、今度は颯真がやってきた。迷う様子もなく澪の隣へ腰を下ろし、少し顔を覗き込む。

「澪、この2日、メッセージ送ってもほとんど返さないけど、何してたんだ?」

澪が黙っていても、颯真は気に留めた様子もない。

「お前も、こういう集まりにはもう少し顔を出したほうがいい。玲奈は誰とでもすぐ仲良くなれるだろ。少し見習ったら?」

澪は目を伏せ、こみ上げた皮肉を飲み込むように、唇の端だけをかすかに上げた。

「そうだね」

食事も半ばを過ぎたころ、誰かが場を盛り上げようと、二択の質問に即答するゲームを始めようと言い出した。

何人かが順番に答え、笑い声が重なっていく。やがて次の回答者に颯真が選ばれると、玲奈が楽しそうに身を乗り出した。

「じゃあ颯真。猫と犬なら?」

「犬」

「鍋とお寿司?」

「寿司」

「夏と冬?」

「冬」

どの問いにも、颯真はほとんど考える間を置かない。

そのうち、近くで見ていた誰かが不思議そうに首を傾げた。

「あれ?澪って猫派じゃなかった?」

「うん。生ものが苦手で、お寿司もあまり食べないって言ってたよね。好きなの、玲奈じゃなかった?」

「冬が好きなのも玲奈だった気がする」

声を潜めたやり取りが、聞くつもりのない澪の耳にも届く。

澪はグラスに添えた指を動かすこともなく、表情にも何も出さなかった。

玲奈だけが、楽しげな笑みを崩さない。

「じゃあ最後。澪と玲奈なら?」

「玲奈」

あまりにも自然に、その名前がこぼれた。

さっきまで笑い声に満ちていた個室が、ほんの一瞬だけ静まる。

颯真自身も口にしてから気づいたらしい。すぐに笑って片手を振った。

「今のなし。名前を続けて聞かれて、つられただけ。もちろん澪だよ。俺の彼女なんだから」

それで場の空気もほどけ、周囲からまた笑い声が上がった。

「篠崎、こういうの弱いな」

「危なかったね。彼女の前でそれはまずいでしょ」

誰も本気には受け取っていない。

隣に座っていた友人だけが、そっと澪へ顔を寄せた。

「澪、大丈夫?」

澪は小さく笑い、何でもないと首を振る。

けれど、自分だけは分かっていた。

さっきの答えは、考えるより先に颯真の口からこぼれたものだ。

澪はグラスから指を離し、そのまま席を立った。

気づいた颯真が眉を寄せる。

「どこ行くんだ?」

「ちょっと飲みすぎた。洗面所」

個室を出ると、背後で扉が閉まり、笑い声が一気に遠のいた。

静かな廊下を歩くうち、ふいに昔の颯真が脳裏に浮かぶ。

澪の家では、何をするにも玲奈が先だった。

玲奈なら少し熱を出しただけですぐ病院へ連れていってもらえるのに、澪はよほどの高熱やけがでもない限り、「そのくらい大丈夫」と片づけられる。

そんな扱いにも慣れていたから、中学生の頃から手首に力が入りにくいことがあっても、誰にも言わなかった。

話したところで、気に留めてもらえないと思っていたのだ。

けれど、颯真だけは気づいた。

半ば強引に澪を病院へ連れていき、受付から検査まで、午後いっぱい付き添ってくれた。

医師の説明では、先天的に手首が弱く、力が入りにくくなることがあるものの、日常生活に大きな支障はない。ただ、改善には時間をかけてリハビリを続ける必要があるという。

「困ってないから、大丈夫」

そう言った澪に、颯真は迷わず首を横に振った。

「大丈夫じゃないだろ。少しでもつらいなら、ちゃんと治そう」

それからは毎日のように手首を温め、マッサージをし、リハビリを忘れないよう声までかけてくれた。

家ではいつも「そのくらい」で済まされてきた澪にとって、ささやかな不調まで見逃さず、真剣に向き合ってくれたのは颯真だけだった。

だからこそ、その後どれほど人違いをされようと、澪はそのたびに彼を許した。

かつて、こんなにも自分を大切にしてくれた人だったから。

あの頃の優しさは、この先もずっと変わらない――そう信じていた。

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