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記憶を失った日、私は真の愛を間違えた
記憶を失った日、私は真の愛を間違えた
Author: 匿名

第1話

Author: 匿名
彼氏の命を救うために、私、清水梨華(しみず りか)は脳震盪を起こし、そのまま入院することになった。

お見舞いに来た彼の顔を見た瞬間、ふといたずら心が湧いてきた。

「あんた、誰?」

佐久間優斗(さくま ゆうと)の表情が一瞬固まる。それを見て、私は思わず噴き出しそうになった。

すると、優斗はそばにいる親友の俊輔を指さしてこう言った。

「俺はお前の婚約者の友達、佐久間優斗で、こっちがお前の婚約者、伊東俊輔(いとう しゅんすけ)だ」

私は思わず顔をこわばらせた。

その時に、俊輔が一歩前に出てこう言った。

「そうだよ、俺が伊東俊輔、お前の婚約者だ」

私は口元をひきつらせながら言った。

「じゃあ、家に帰ろう」

俊輔に連れられて、私は彼の家へ向かった。

見知らぬ家だった。しかも、そこには私が暮らしていた痕跡がどこにも見当たらなかった。

そして、俯きながら黙ってスマホをいじり始めた。

「少し休むか」

俊輔の声は穏やかで、優しく聞こえる。

まるで私ととても仲のいい人のようだ。

「うん」

私は軽く頷き、記憶を失ったフリをして、彼に部屋まで案内してもらった。

私が安心して横になったのを見て、俊輔はほっと息をついた。

目を閉じると、鼻先に漂ってくるのは、俊輔の匂いばかりだった。知らないはずなのに、不思議と落ち着く匂いだった。

しばらくして、私が聞き慣れた男性の声が聞こえてきた。

「俊輔、お前は俺の一番の親友だから、ちょっと彼女の婚約者のフリをしてくれないか」

優斗だ。

その声が響くと、私は体を起こし、少し開いたままの寝室のドアのほうへ目をやった。

「万が一、彼女が記憶を取り戻したらどうする?」

俊輔が尋ねる。

どうやら私が寝ていると思っているらしい。

今、二人は全く遠慮せずにスピーカーフォンで話している。

「まあ、記憶が戻ったって、適当に宥めて、抱きしめて、キスでもしてやれば済むよ。彼女はあんなに俺を愛してるんだから、きっと俺から離れられないさ」

優斗の声はだるく響くが、鋭い刃のように私の心に深く刺さった。

そうか、彼にとって私はどうでもいい存在だったのか。

あまりに彼を愛し過ぎたせいで、かえって勝手に捨ててもいいゴミのように思われていたのかもしれない。

「なんか、彼女と一緒にいる時間が長すぎて、ちょっと飽きただけなんだよ。少し気分を変えたいだけだし、時間なんてすぐ過ぎるって」

「お前が梨華を嫌ってるのは分かってるって。でもさ、今回はちょっとだけ協力してくれよ」

俊輔はどんな返事をしたのか、私は聞き取れなかった。

彼はスマホを持ってゆっくりと離れていく。

私は体を起こし、ドアを開け、ゆっくりとベランダにいる彼の方へ歩み出した。

こんな時に、私が突然現れたら、彼はびっくりするだろう――

私は心の中で、少し意地悪な気持ちを抱いた。

だが、俊輔はまるで何かを察したかのように、こちらを振り向いた。

ちょうど私と目が合う。

彼は慌てて電話を切るとこちらへ歩いてきて、そのまま腰を抱いた。

「休むって言ってたじゃないか。もう起きたの?」

そう言いながら、甘えるように私の胸元へ額をすり寄せた。

まるで長く連れ添った婚約者同士のようだった。

「ちょっとお腹空いた」

私は微笑んだ——が、目にはきっと笑みの影すらなかっただろう。

だが、俊輔はまったく気づいていないようだった。

「じゃあ、何が食べたい?チャーハンとか?」

その言葉に、私は思わずハッとした。

チャーハンが私の大好物だということは、優斗にも知られていないのに。

「うん」

私は頷き、少し気まずそうに彼の手を押しのけ、テーブルの方へ歩いて座った。

俊輔は特に反応せず、そのままキッチンに入っていった。

手慣れた様子でエプロンをつけて料理をする彼を、私は顎に手を当てながらじっと見つめ、まるで別世界に迷い込んだような気分になった。

これって、まさに私が憧れていた結婚後の生活……

まさか、それが婚約者の友達の背中から見えるなんて、夢にも思わなかった。

ほどなく、香ばしい香りのチャーハンがポンと目の前に置かれた。

俊輔はあごを支え、微笑みを浮かべながら私を見つめる。

胸がぎゅっと締め付けられ、私は慌ててうつむき、一口すくって口に運んだ。

思っていた以上に美味しかった。

「美味しい?」

私は何も答えなかった。

体の反応の方が、言葉よりも正直だった。

私が焦っているのを見て、俊輔はそっと近づき、指先で私の口元のご飯粒をつまんで取った。

「そんなに慌てなくても誰も取らない。これじゃ、俺がちゃんと食べさせてないみたいだろ」

その突然の親密な接触に、私は気まずそうに唇を噛み締めた。

目が合った瞬間、心臓が狂ったようにドキドキする音が聞こえてきた。

これは、誰の心臓の音……?

分からなかった。

私は視線をそらし、頭を不自然に後ろへ反らせた。

まだ少し抵抗している私の様子を見て、俊輔は微笑む。

そして唇をそっと私の額に落とした。

「大丈夫だよ。今は俺のことを忘れてしまったかもしれないけど、ゆっくりでいいから、少しずつ付き合っていこう。いい?」

彼の優しい瞳にぶつかった瞬間、私は思わず頷いた。

しかし、私には分からなかった。

これまで何年もの間、俊輔は私に特別な思いなど持っていなかったはず。

むしろ、彼の言動を見る限り、優斗が言っていたように、私のことを嫌っているようにさえ見える。

私はじっと彼を見つめた。

一体どっちが、本当の俊輔なの……?

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