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第4話

作者: 逆立ちネズミ人間
それを聞いて、慎也の顔に一瞬だけ微妙な情緒が浮かんできたが、すぐに緩んだ。その後は迷いもなく車を走らせ、私を視界から外した。

遊園地は大変な賑わいで、訪れる人々の列が絶えることがなかった。

私たちがメリーゴーラウンドに乗った時、機械が突如として暴れ出したみたいに制御を失い、狂ったような速度で回転し始めた。

その時アトラクションに残されたのは、他の客と、私と沙耶香だけだった。

私は必死に手すりを握りしめ、振り落とされまいとした。

しかし機械の回転速度は想像を遥かに超えていた。頭の中がぐらぐらし、私は一瞬で手が滑り、機械から転落した。

同時に沙耶香も転落し、彼女の絶叫が裂けるように空を引く。

危機一髪の瞬間、慎也は沙耶香を自分の懐に引き寄せた。しかし私は不運で、機械から振り落とされた後、一個の木馬がまっすぐ私めがけて倒れてきた。

足からは骨の砕ける乾いた音が響き、破片が私の目に飛び散った。激しい痛みに、私は声さえ失っていた。

……

「里帆!」

沙耶香を落ち着かせると、慎也は急いで私の元へ歩み寄った。彼の目には初めて慌てた色が浮かんでいた。

慎也の薄い唇は少し白っぽくなり、鼻先に細かい汗の粒が浮かんでいる。彼が私のことでここまで動揺した姿を、見たことがなかった。

「泣くな、今すぐ病院へ…」

私は彼を見上げた。痛みが全身に広がり、唇を震わせるだけで、一言も話せなかった。

「沙耶香さん、大丈夫ですか!? 顔が真っ白です!」

その一言で、慎也は私の腕を放した。焦りで足をもつれさせながら、真っ直ぐ沙耶香の方へ走り出した。

沙耶香の雪のように白い腕には、ほんの少し擦り傷がついているだけ。私の負傷と比べれば取るに足らないものだった。

慎也は痛むように彼女の患部を見つめた。沙耶香の目には涙が光った。彼女は強情に慎也を押しのけた。

「私は平気です。浅野さんを先に病院へ」

沙耶香のそんな様子に、慎也の愛おしさが募り、さっさと彼女を抱き上げて遊園地を去った。

後ろに残された無残な姿の私のことなど、忘れ切ったかのように。

スタッフの憐れむ視線が私に注がれ、それらの傷はますます痛んだ。

その場で応急処置を受け、私が一人で病院に向かった時だった。たまたま看護師たちの世間話が耳に入った。

「五十嵐さん、樋口さんにとっても優しいね。擦り傷だけであんなに取り乱すなんて」

もう一人の看護師も笑って同意し、慎也を良い男だと褒めた。

手当てを施された後も尚無残な傷口を見つめ、私は嗤った。

重傷を負った妻を置き去りにし、元恋人を気遣うとは、確かに「良い男」だ。

家に帰ってから、私は細々とした荷物の整理を続けた。

時は静かに流れ、私が去る日も刻々と近づいていた。

ある日、慎也が突然オートクチュールのドレスを送りよこし、母の誕生日パーティーに一緒に出席するよう求めてきた。

慎也の母から受け取るべき書類がまだいくつか残っているため、私は服を着替えるとパーティーに赴いた。

パーティーの会場は明るく照らされた。賓客の歓談が飛び交う中、沙耶香は人々の中央に立ち、令嬢たちに囲まれている。

会場に入るとすぐに、慎也の母が私を呼び寄せ、書類を手渡した。

「ここ数年、あなたはずっと慎也のために家のすべてを支えてきた。五十嵐家を誰より整えてきたのに……あの子ったら、最初から最後まであなたを気にかけないなんて。

今回海外に行ったら、次にいつ会えるかわからない。里帆、本当にそれでいいの?」

私はほのかに微笑み、彼女の目を見つめた。

「お母様、もうすべて終わりました。私もそろそろ前へ進みます」

彼女は長いため息をつき、私の肩をポンと叩いた。一瞬だけ、悔やむような表情が彼女の顔をよぎった。
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