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第4話

Penulis: ちょうどいい
理人が知るはずもない。

彼と美月がまだ一夜の過ちを犯す前から、私と美月はすでにやり取りをしていた。

あれは確か、大雨の日だった。

学食が停電して、理人から電話がかかってきた。

学校まで食事を届けてくれ、と。

私は彼の大好物のスープを煮込み、おかずを二品準備して、土砂降りの中を学校まで向かった。

けれど、彼の研究室の前で、美月に呼び止められた。

彼女は私を上から下まで値踏みするように眺め、その目には隠しようもない軽蔑が浮かんでいた。

「あなた、誰ですか?東条先生の部屋に勝手に入っていいわけないでしょう?」

私はたしかに、長いこと学校には来ていなかった。

結婚して間もなく、まだ夫婦仲がそこそこ良かった頃に何度か来たきりで、その後はずっと、あれこれ雑事に追われて足が遠のいていた。

理人の受け持つ学生も次々と入れ替わり、最初の頃に私を「先生の奥さん」と呼んでいた子たちが、今どこで何をしているのかももう分からない。

そして、若くて華やかに着飾った美月を前にした私は、自分でも情けなくなるほど気後れしていた。

私が自分の身分を明かすと、彼女はすぐに態度を変えた。

理人は今、手が離せないから、スープは自分に渡してくれればいいと言った。

そうして美月は私の連絡先まで聞き出した。

考えてみれば、もう一年近く前のことになる。

最初のうちは、彼女が写真や意味深な言葉を送りつけてきて挑発してきても、私はそこまで気にしていなかった。

私と理人は長い間ずっと一緒にいたのだから。

見た目もよく、物腰も柔らかい彼には、恋に浮かれた若い子たちが気持ちを打ち明けてくることも一度や二度ではなかった。

それでも彼はきちんと一線を引く人だったから、私はずっと彼を信じていた。

美月から、彼女と理人のベッドでの写真が送られてくるまでは。

頭を鈍器で殴られたみたいだった。

どうして七年も積み重ねてきた関係が、こんなふうにあっさり踏み荒らされてしまうのか、私には分からなかった。

それ以上に分からなかったのは、家に帰った理人がどうして何事もなかったみたいな顔で、私に洗濯だの食事の支度だのを言いつけてこられるのかということだった。

離婚を考えたことは何度もあった。けれど、どうしても踏み切れなかった。

もしかしたら、と何度も思ってしまったからだ。

あの写真は加工かもしれない。全部、私の思い過ごしかもしれない。

そうやって私は慎重に、自分で自分を騙し続けていた。そうしていれば、あの疑いも不安も、最初から存在しなかったことにできるような気がした。

けれど、理人の口から美月という名前が出る回数はどんどん増えていった。理由のはっきりしない残業も、夜中の外出も、次第に増えていった。

そしてあの投稿を見た時、私はとうとう、もう自分をごまかしたくないと思った。

私を止めようとする人たちをかき分け、私は腕を振りかぶって、もう一度美月の頬を張った。

さっき叩かれてまだ呆然としていた理人も、今度はすぐに反応した。

とっさに私を突き飛ばし、美月をかばった。

「芙美香、本当に頭がおかしいのか?妊婦にまで手を上げるのか!」

さっきまで私をなだめようとしていた近所の人たちも、今度は露骨に私を責め始めた。

「ちょっと、どこの気狂いなの、この人。妊婦を殴るなんて」

「東条先生のことが好きで好きで仕方ないのに相手にされなくて、逆恨みしてるんじゃないの?」

「東条先生の奥さんはもう妊娠してるし、二人とも仲良くやってるのよ。この部屋だって東条先生が奥さんのために買ったって聞いたわよ。どの面下げてこんなことできるのかしら」

「ほんとよ、厚かましいにもほどがあるわ。最低」

怒りの矛先が一気に私へ向き、場の空気は険悪になった。

事情を一通り見ていた警察官たちは慌てて前に出て場を抑え、私の前に立って人垣を止めてくれた。

まだ罵ろうとする人もいたが、警察がいるせいで、不満そうに口をつぐむしかなかった。

私はようやく立ち上がり、美月の手首のブレスレットを指さした。

「理人、高橋さん。十分だけ待つわ。私の物を全部返して」

「何があなたの物なの?」

美月はとぼけ始めた。

「これ、全部東条先生が私に買ってくれた物ですけど?

っ……お腹、痛い……」

彼女はお腹を押さえてしゃがみ込み、いかにもお腹の子に障ったみたいなふりをした。

その場にいた人たちはみんな慌てふためいた。

けれど、私はただ黙って、その芝居を見ていた。

私が何の反応も見せないのを見て、理人はさらに怒鳴った。

「芙美香、お前って本当に冷たい女だな!美月ちゃんがこんなになったのはお前のせいだろうが。それなのに、ただ突っ立って見てるだけか?」

その言葉を聞いて、私は本気で思った。

この人、ここまで厚かましくなれるなんて、ある意味大したものだと。

まさか私に美月に謝らせたうえで、甲斐甲斐しく世話までしろとでも言うつもりなのか。

急に吐き気がした。

こんなに大勢の前で、理人がここまで臆面もなく振る舞えるのは、結局のところ、私が彼から離れられないと高をくくっているからだ。

そして、私が真実を口にしないと信じ切っているからだ。

たしかに、昔の私は彼を愛していた。外では彼の顔を立て、家では彼の好みに合わせてきた。

でも、私の愛が彼に好き放題傷つけられ、踏みにじられるための拠り所になっていいはずがない。

私は深く息を吸った。

「その子の腹の子が、たとえ死んだとして、私に何の関係があるの?

それに、そんなに自信満々でいられるの?本当にその子のお腹の子が、あなたの子どもだって」

私はずっと美月を見据えていた。その言葉を口にした瞬間、彼女の顔にはっきりと動揺が走った。

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