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遠くへ嫁いで七年、私は後悔した
遠くへ嫁いで七年、私は後悔した
Author: ちょうどいい

第1話

Author: ちょうどいい
東条理人(とうじょう りひと)のために、私は何不自由ないお嬢様としての暮らしを捨て、はるか遠い土地へ嫁ぎ、彼を中心に生きる妻になった。

七年後、理人は初めて私の実家に一緒に帰ると約束したのに、妊娠した愛人を優先して、あっさり私をすっぽかした。

その若い女子学生はSNSに投稿していた。

【東条先生、パパになるんだよ!】

添えられていたのは、陽性反応が出た妊娠検査薬の写真と、東条家の一家全員と彼女が一緒に写った写真だった。

よそ者の私を何かにつけて煙たがっていた義父母は、彼女を見る目だけがやけに優しかった。

私は何も言わず、ただ「いいね」を押しただけだったのに、理人から問い詰めるような電話がかかってきた。

「朝倉芙美香(あさくら ふみか)、お前いつあいつと繋がったんだ?俺に付きまとってる以外に、やることないのか?

友達も家族もいないのかよ。俺を監視して楽しいのか?

美月ちゃんが怯えてお腹まで張ったの、分かってるのか?お前、本当にやりすぎだ!

なんで俺はあの時、こんな女と付き合ったんだろうな!」

私は静かに答えた。

「だったら、一緒にいなければいいでしょう。

理人、離婚しましょう」

私の口から離婚という言葉が出た瞬間、理人は苛立ったように小さく舌打ちした。

「芙美香、また何を騒いでるんだ?

お前は仕事すらしてなくて、俺に養われるしかないくせに。離婚なんて、お前に何の資格がある?

美月とは、酒の勢いで起きた、ただの事故なんだ。妊娠した以上、堕ろせなんて言えないだろ?

あいつの父親は高橋局長なんだぞ。俺の仕事にもプラスになる。それに、お前はずっと子どもができなくて、親もうるさかったし、俺だって焦ってたんだ!

もうちゃんと話はつけてある。俺たち、本当に何もないんだよ。いい加減、毎日くだらないこと考えるのはやめられないのか?」

彼がそう言い終えたところで、電話の向こうから誰かが彼を呼んだ。

「あなた、お義父さんとお義母さんが、赤ちゃんにどんな名前をつけるのって聞いてるよ?」

理人はまるで一瞬で別人になったみたいだった。あんなに優しい声を、私はもうずっと聞いていなかった。

彼は言った。

「男の子なら東条由貴(とうじょう ゆき)、女の子なら東条唯衣(とうじょう ゆい)かな」

スマホを持つ手が、突然震え始めた。

その二つの名前は、結婚して間もない頃に、私が彼に話していた名前だった。

あの頃の私は、小さな命がやって来る未来に胸を膨らませていた。

なのに今、その名前を彼は、自分と別の女との子どもにつけようとしていた。

それに、私ははっきり聞いてしまった。

高橋美月(たかはし みづき)は彼を「あなた」と呼び、義父母のことを「お義父さん、お義母さん」と呼んでいた。

誰が聞いても、彼女こそが理人の本当の妻だと思うはずだった。

それなのに、理人は否定すらしなかった。

この瞬間、私はただ、どうしようもなく滑稽だと思った。

これが、理人の言う「何もない」だったのか。

子どもまでいて、夫婦みたいに呼び合っていて。

それでも最後には、何もないと言い張って、全部私の考えすぎだと責め立てる。

まだ通話が切れていないことを思い出したのか、理人はわざとらしく二度ほど咳払いした。

「芙美香、俺たちはただ親の前で取り繕ってるだけだ。お前も知ってるだろ、あの人たちはずっとお前のことをあまり気に入ってないんだ。

こっちが片づいたら帰るから、俺のスーツ出しておいてくれ。明日使う」

最初に一応の言い訳をして、そのあとすぐ、この数年ずっと聞き慣れてしまった、私に言いつける時の口調で用事を命じてきた。

以前の私だったら、きっとまたその言葉に丸め込まれていた。

でも、よく考えてみれば、どうしてそんなものを受け入れなければならなかったのだろう。

たしかに私は義父母と特別仲が良かったわけじゃない。

それでも、二人が体調を崩した時、お茶を淹れ、身の回りの世話をして、あれこれ走り回ってきたのは、いつだって私だった。

七年もあれば、氷だって溶けるはずだった。

それなのに、つい先週まで義父母は、近所の人たちに、私はよそから来て東条家に取り入ろうとした女だと陰口を叩いていた。

なのに理人はまるで何も知らないみたいに、すべて私のためだと言わんばかりだった。

美月との間に子どもを作ったのは、私がずっと妊娠しなかったから。

美月と夫婦のように振る舞い、義父母にも会わせたのは、私があの人たちに気に入られていないから。

私はずっと、自分が悪いのだと思っていた。

でも今日、私は急に目が覚めた。

本当に全部、私が悪かったのだ。

人を見る目がなかったこと。そして、理人みたいな男と結婚してしまったこと。

私はため息をついた。胸の奥に積もった疲れが、今にも私をのみ込んでしまいそうだった。

「理人、私は冗談で言ってるんじゃないし、あなたと揉めたいわけでもない。

離婚しましょう。そのほうがお互いのためよ」
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