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第7話

Author: 白瀬桃香
痛い――

心乃は、全身の骨が砕かれたかのような痛みに襲われていた。

重いまぶたをどうにか持ち上げると、そこは病院のベッドの上だった。

自分は死んだのではなく、まだ生きているらしい。

「目が覚めたんですね」

そこにいたのは、人生交換プロジェクトの看護師だった。

看護師は水の入ったコップを差し出しながら、あきれたように言った。

「あと三日で手術だったんですよ。それまで、どうして耐えられなかったんですか」

心乃は口元をわずかにゆるめた。

「すみません。でも……私、こんな状態になってしまったら、もう交換したいなんて思う人はいないんじゃないですか?」

「そこはご心配なく。あなたは最初から、上の方が指名した交換対象ですから」

「指名……?」

心乃は眉を寄せた。

「つまり、今の私がどういう状況か知ったうえで、それでも私になりたがっている人がいるってことですか?」

「そういうことですね」

心乃はさらに問いかけようとしたが、看護師はそれ以上何も話そうとしなかった。

ただ、今はよく休んで、安心して手術を待つようにと言い残し、病室を出ていく。

扉の外を、清香の姿がよぎった。

清香は足早に廊下の角まで進むと、拳を強く握りしめた。

――今、何を聞いたの?人生交換……?

あの愚かな心乃が、まさか本当に人生交換に申し込んでいたなんて。まるで神様まで自分の味方をしているようだった。

心乃がああして飛び降りたせいで、蒼真の中にかすかに残っていた情まで呼び起こされ、彼は心乃のために改めて婚約の席を設けるべきかどうか考え始めていた。けれど、あと三日もすれば、心乃は完全に別人になり、二度と戻ってこなくなる。

そう考えると、清香の口元には笑みがにじんだ。だがすぐに、別の不安も頭をもたげる。

三日――それは長すぎる。

この三日間に、何が起こるか分からない。

後の禍根を残さないためにも、何としてでも手術を早める方法を考えなければならない。

――

病室では、心乃が点滴を受けていた。

そのとき、記者たちがどっと病室へ押し寄せてきた。

「藤崎さん、高梨さんが転落したのは、あなたが恨みから突き落としたからなんですか?」

「高梨さんにチーフデザイナーの座を奪われた腹いせに、殺そうとしたというのは本当ですか?ご自分のしたことを、行きすぎだとは思わないんでしょうか!」

人だかりはたちまち病室を埋め尽くし、身動きも取れなくなる。

中継用のカメラは一斉に心乃へ向けられ、彼女の狼狽も惨めさも、余すところなく映し出していた。

「出ていって!誰が入っていいなんて言ったの!今すぐ出ていって!」

心乃は焦って叫んだ。

マイクが今にも頬に触れそうなほど突きつけられる。

彼女は片手で顔をかばい、もう片方の手で必死に押し返した。けれど、この記者たちは清香から事前に手を回されていた。

役に立つ言葉を引き出すまで、引き下がるつもりなどないのだ。

「あなたと高梨さんは血のつながった親族だそうですが、いったいどれほどの恨みがあれば、自分の従妹を殺そうとするんですか?

それとも、生まれつき残酷な性格で、人の命なんて何とも思っていないんですか?」

鋭い言葉の一つひとつが刃のように心乃へ突き刺さる。

心乃は掌に爪を立てながら、必死に言い返した。

「違います……!清香が先に、私の犬を投げ落とそうとして――」

「嘘ですね!その場にはあなたのお母さま、藤崎澄子さんもいらっしゃったそうですが、あれは明らかな殺意による犯行で、犬を落とそうとした事実などないと証言しています!」

「私が証言するわ!心乃は、最初からわざとやったのよ!」

病室の扉が再び開き、車椅子に乗せられた清香を連れて、澄子と啓介が入ってきた。

澄子は心乃をひと目見ただけで、露骨に嫌悪をにじませて視線をそらした。

「よくもまあ、そんな口からデマカセを並べられるものね。いっそそのまま死んでしまえばよかったのに!」

啓介は記者の手からマイクをひったくると、憎しみをむき出しにして言い放った。

「心乃は、恩を仇で返すことしか知らないどうしようもない子です!清香がうちに来てからというもの、こいつはずっとあの子を目の敵にしてきたんです。

身内の情けなんて、これっぽっちもない!昔だったら、こんな女は川に沈められて当然ですよ!」

母親と実の兄から向けられる悪意を前にしても、心乃にはもう言い争う気力すら湧かなかった。

彼女はもう、完全に諦めていた。

この人たちの理解も、家族としての情も、何ひとつ期待していない。

だから、彼らが何を言おうと、何をしようと、もう自分は傷つかない。

本当はただ、残された最後の三日を静かに過ごし、この場所を去りたかっただけだった。

なのに、今度は記者まで呼びつけた。カメラの向こうには、無数の視聴者がいる。

このまま好き勝手に自分の名を汚されれば、これから自分と人生を交換する相手まで苦しめることになる。

「もう一度言います。先に清香が――」

ぱしん――!

澄子が駆け寄り、心乃の言葉を遮るように頬を打った。

「黙りなさい!

まだ私たちがあんたの言うことを信じると思ってるの?

今のあんたは、私にとってただの人殺しよ!」

「おばさん、もうやめてください」

全身に包帯を巻いた清香が、弱々しく手を上げた。

「私は心乃を責める気なんてありません。

本当に……だって、この家がなかったら、私はとっくに独りぼっちでした。

だから、心乃がどれだけ私にひどいことをしても、恨んだりしません」

「清香……なんていい子なの!」

澄子は彼女を抱き寄せ、目に涙を浮かべる。

「これから先、私の娘はあなただけよ!」

そして次の瞬間、心乃へ向き直ったその目からは、わずかに残っていた情すら消え失せていた。

「今までは、あんたがどれだけ勝手をしてきても罰したことはなかった。

だけど今回は違うわ。あんたは自分の従妹の足を一本だめにしたのよ。きっちり代償を払ってもらうわ!」

そこで初めて心乃は気づいた。

清香の左足には、分厚いギプスが巻かれていた。

おかしい。

落ちたとき、下敷きになったのは自分のほうだった。

それなのに、どうして清香のほうが重傷を負うのだろう。

心乃が黙っているのを見て、啓介は反省する気がないのだと思ったらしい。

彼はそばにあった椅子をつかみ、そのまま彼女へ向かって突進してきた。

「だったら今ここで、お前の足をへし折ってやる!それで清香に償え!」

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