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第4話

Auteur: 知念夕顔
折原家の実家のお屋敷は、江城市の中で最も閑静な西区に佇んでおり、半径数十キロの範囲に人影はなく、家はただここの一軒だけだった。

この広大な家はまるで昔の荘園のような風格を漂わせ、長い時の積み重ねが、実家のお屋敷の象徴としてその佇まいを輝かせている。

承平の父親はダイニングの上座に座り、左手側には承平の祖母、右手側には承平の母親がいた。郁梨は承平の祖母の隣に座り、承平は郁梨の向かいに座っていた。

ダイニングの空気は異様に重く、郁梨が折原家に嫁いで既に3年になるが、この嵐の前のような静けさはほとんど経験したことがなかった。

郁梨はうつむいて静かに食事をし、自分の存在感をできるだけ消そうとしていた。

突然、承平の父親がお箸を置いた。針の落ちる音さえ聞こえるほど静かなダイニングでは、その音がひときわ澄んで響いていた。

「承平、郁梨、君たちはいつ子供を作るつもりなんだ?」

折原栄徳(おりはら えいとく)はすでに表舞台から退いていたが、その威厳は依然としてあり、承平とよく似た顔は、歳月の重なりがより一層の落ち着きと内面の深さを感じさせていた。

名指しされた郁梨は、無意識に向かい側に座る承平を見た。

承平もちょうど目を上げた時に郁梨と視線が合ったが、郁梨は承平の目の中にある疑いの念をはっきりと見てとれた。

もしかして、承平は郁梨が子供の話をわざと家族の前で持ち出すことで、子供を使って自分を束縛しようとしていると疑っているのか?

承平の目には、郁梨がそんな人間にしか映っていないのか?

もし郁梨が本気でそうしたいなら、結婚して3年も経っているんだから、その間にコンドームに穴を空けることぐらいできたはずではないか?

郁梨は避けるどころか、むしろ承平の視線をまっすぐ受け止め、彼を睨みつけた。

承平は少し驚いたように、視線をそらした。

折原蓮子(おりはら れんこ)も夫の言葉に続いて言った。「承平、あなたと郁ちゃんは結婚してもう3年になるんだから、そろそろ子供を作るべきよ。おばあちゃんも年だし、ひ孫が抱きたいのよ。そうでしょう、お母さん?」

承平の祖母も合わせてうなずいた。「もちろんよ、もう3年も待っているのよ。早く子供を作ってちょうだい、でないとこの年老いた体では、もう赤ちゃんを抱き上げられなくなるわ」

郁梨はお箸を置き、両手をテーブルの下でぎゅっと握りしめた。

郁梨は何もしていないのに、なぜ承平から疑われなければならないのか?

郁梨は何かを決意したかのように、真っ直ぐな眼差しで折原家の親族たちを見て言った。「実はお伝えしなければならないことがあります。私と承平はもう……」

「何をそんなに急いでいるんだ?」郁梨が話し終える前に、承平に遮られた。「私たちはまだ若いんだから、子供のことは急がなくていい」

栄徳は承平を見て、不意に鼻で笑った。「お前は本当に急いでいないのか、それとも最初から子供を作る気がないのか!」

「お父さん、それはどういう意味ですか?」

「承平、清香が戻ってきたことを私が知らないとも思っているのか。あの女には一生我が家の敷居を跨がせないと警告したはずだ。清香に絶対近づくんじゃない、絶対だ!」

承平はお箸をパチンと音を立てて置き、向かい側に座る郁梨を睨んだ。「お前が言ったのか?」

郁梨の顔が青ざめた。

「郁梨から聞かなくてもわかる。毎日ニュースで持ちきりなんだよ!」栄徳は言った。

「承平」蓮子は普段から穏やかだが、今日は険しい表情をしていた。「この件に関しては、私もあなたのお父さんと同じ考えよ。それに、あなたはもう結婚しているんだから、郁ちゃんはこんなにも素敵な人なのに、郁ちゃんを失望させないで」

「そんなことは絶対させない!」栄徳がたたみかけた。

承平と郁梨が結婚した後、郁梨は重い病にかかった承平の祖母を気遣い、毎日病院へ通って看病した。長い時間を共に過ごすうちに、二人の間には親子のような深い情愛が育まれ、承平の祖母の病状も日ごとに回復し、やがて健康を取り戻した。

そのため、折原家で最も郁梨を可愛がっているのは、他の誰でもなく承平の祖母なのだ。

承平の祖母は郁梨の冷たい手を握って慰めた。「郁ちゃん、心配しないで。おばあちゃんが承平にあなたを裏切らせたりしないから、怖がらないで」

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