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第1213話

作者: 風羽
九条津帆はゆっくりと近づいて行った。

彼の視線は成田栄治と、小川澄香という女に注がれた。小川澄香は成田栄治の腕に抱きつき、今にも泣き出しそうな顔をしていた。事情を知らない人が見れば、二人は愛し合う夫婦に見えるだろう。

「津帆」

成田栄治は少し慌てた様子だった。九条津帆は藤堂言の従弟だ。もし誤解されて藤堂言に話でもされたら、小川澄香が妻に何か言われてしまうかもしれない。そんなことになったら、成田栄治は胸が痛むだろう。

陽菜を連れて、小川澄香はもう十分苦労している。

成田栄治はすぐさま説明した。「澄香は大学の同級生なんだ」

九条津帆は冷たく笑った。「昔の恋人じゃないのか?」

あまりにも単刀直入な言葉に、二人はいたたまれない気持ちになった。特に小川澄香は顔が真っ青になり、唇を何度も動かしたが、何も説明できなかった。それを見た成田栄治はたまらなくなり、九条津帆に向かって言った。「それはもう過去のことで、余計なことを言わないで」

陽菜は、成田栄治の脚にしがみついた。

母親にそっくりな陽菜は、九条津帆を見つめていた。その瞳には、どこか怯えた様子が浮かんでいた。見ているだけで可哀想
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