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第476話

Auteur: ぽかぽか
「真奈は少なくとも、私の曾孫を殺したりはしなかった!でも浅井という女は、自分の子どもでさえ手にかけようとしたんだよ!あの女を牢屋に入れなかっただけでも、私は十分に情けをかけてるんだ!それなのに保釈するなんて!司、どうしてそんなに愚かなんだ!私は何年もかけてあなたを育ててきたのに、どうしてこんなに言うことを聞かないんだ!」

冬城おばあさんは怒りと悲しみで胸を痛めていたが、冬城はあくまで冷静だった。ただ黙って、目の前の冬城おばあさんをじっと見つめていた。

大垣さんは一歩前に出て言った。「旦那様、浅井さんのお人柄はご存知でしょう?自分の子どもまで手にかけるなんて……どうしてそこまで……」

冬城は冷たく答えた。「俺はもう決めた。みなみに責任を取る。彼女に冬城家の夫人の立場を与え、婚約し、一生面倒を見る」

その言葉を聞いた冬城おばあさんは、息が詰まりそうになり、そのまま後ろへよろめいた。大垣さんが慌てて体を支えた。

「不孝者め!冬城家にどうしてこんな不孝者が生まれたんだ!」

冬城おばあさんは怒鳴ったが、冬城は振り返ることもせず、無言でそのまま階段を上がっていった。

――同じころ、出雲もテレビでそのニュースを目にしていた。顔色が一変し、次の瞬間、出雲は机を一蹴りしてひっくり返し、歯を食いしばって怒鳴った。「どういうことだ?」

秘書は傍らで慌てて頭を下げた。「出雲総裁、それが……私どもも詳しいことはわかりかねます」

「昨夜、俺はお前に病室の前で見張っていろと言ったよな?何をしていた?二人の会話は聞こえたのか?」

冬城は真奈をあれほどまでに愛していたというのに、どうして浅井のために真奈と離婚しようとする?それどころか、浅井と結婚するなんてあり得るのか――?

この裏には、何かあるはずだ。

「今すぐ調べに行け!これが本当かどうか確認しろ!」

出雲の目は鋭く、怒りと殺気をはらんでいた。彼は長い時間をかけて海城に根を張り、すべてを計画し終えたうえで田沼会長の婿養子となり、田沼家を掌握して出雲家の勢力を海城に広げようとしていた。だが、それらすべてが冬城の一手で壊された。

冬城が、浅井と結婚するだなんて……!

かつて浅井が妊娠していた時でさえ、冬城は彼女と一緒になることを拒んでいた。それなのに今になって心変わりしたというのか。まさか……それも真奈のため?

噂に聞
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