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第6話

Author: 神雅小夢
last update Huling Na-update: 2025-06-12 11:27:32

「な、なんですか。なにがおかしいんですか。人が転んでるのがそんなにおかしいんですか?」

私はスカートを必死に降ろしながら、なんとか声を絞り出した。

「まるで見てくださいと言わんばかりに転んだ。コントか?」

は? この人、なに言ってるの? んなわけないでしょう。

「それになんだ。その色気がない、肌色のパンツは。どうせ見せるなら、もっと|唆《そそ》るセクシーなものを|穿《は》いておけよ」

なっ! し、信じらんない。ひ、ひ、ひとのパンツ見ておいて、なにそれ。しかもガン見してんじゃん。

「ほら、立てよ。おまえのそんなパンツ、誰が見たいんだよ」

その男に腕を強引に引っ張られ、起こされた。

よく見ると、雑誌に載っているようなイケメンだった。

さらさらの絹のような髪が揺れて、メガネの奥にははっきりとした綺麗な二重が隠れていて、スッと整った鼻筋、瞳は茶色だった。

背も高く、着ているコートもスーツも上質なものだと私でもわかった。

「い、いたた……」

どうやらお尻を擦ったらしく、痛い。お風呂に入ったら染みるだろうと、嫌な想像をした。

「……どうやら、骨折などはしていないようだな」

その男性がつぶやいた。

そしてそのまま私の手を引いて、近くにあった電話ボックスの影に移動した。

そして私のスカートを捲《めく》ろうとした。

「派手に転んだけど、怪我してないか?」

こいつ、ガチの変態だ!!

かなりの危険人物!! やべぇ奴!!

「い、いえ、結構です……! やめてくださいよ! 警察呼びますよ⁉︎」

私は拒否して、男からすばやく離れた。逃げるようにその場を去ろうとして、自分の赤いスマホが落ちていることに気がついた。

スマホを拾い、慌ててカバンに押し込んだ。

「……おまえさぁ、助けてもらってて、ありがとうございますぐらい言えないの? それに、そんなやましい気持ちで見ようとしたわけじゃねぇよ」

男が呆れたように、私に視線を飛ばす。

なに、こいつ。むかつくんですけど?

「も、元はといえば、あなたがスマホばかり見てて、私とぶつかりそうになって、そ、それで避けたら転んだんですから。あ、あなたも悪いんです」

私はパンツを見られたショックと、今のこいつの行動で頭がパニックだった。

「……そうか。それは
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