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36.二人の世界の密度

Penulis: 中岡 始
last update Terakhir Diperbarui: 2025-12-23 16:39:21

夜がふたりを包むように深くなったころ、部屋の灯りは柔らかく床に落ち、壁に寄り添う影が揺れていた。日々の暮らしが、知らぬ間にすべて「ふたりでいること」を中心に回り始めている。意識したわけではない。気づいたときには、他の何よりも優先されていた。

朝の光が薄く差し込む時間。目を覚ますと、隆寛の視界にはいつも浩人の肩がある。シーツに残された体温、洗い立ての香りよりも強い、互いの肌の匂い。その全てが朝の空気に混ざり、ふたりだけの世界をつくる。

隆寛はゆっくりと起き上がり、横で眠る浩人の額にかかる髪を指先で払った。触れた瞬間、浩人のまぶたが小さく震える。その反応に、胸の奥が静かに疼く。毎日見ているはずなのに、その小さな反応だけで心が満たされてしまう。

「…起きたのか」

低い声が布団の中からこぼれる。隆寛は頷き、髪に触れたまま囁くように言った。

「まだ寝てていい」

浩人はその言葉に、薄く笑みを浮かべて腕を伸ばす。迷いなく隆寛の腰を引き寄せ、額を胸元に押し付けた。朝の抱擁は必須の儀式になっていた。それがないと一日が始まらない。

「……もう少しだけ」

「浩人…」

呼ばれただけで、浩人は腕を強くした。名前を呼ばれるたび、身体の奥が反射的に反応する。それは互いにきちんと噛み合った依存の歯車のようだった。

朝のコーヒーの香りが立ち上るときも、視線は互いから離れない。カップの縁に指が触れる瞬間すら、どちらかのことを考えている。テレビの音も街の喧騒も、もう遠い世界のものだ。

大学に向かう道。隆寛は講義が始まっても、ふとした拍子に浩人の横顔が頭をよぎる。授業の声が耳を通り抜けていくのに、心は別の場所に置き去りのままだった。ペンを握る指先に、昨夜触れてきた浩人の手の温度が蘇る。それだけで集中が崩れる。

浩人も同じだった。資料を開き、教授の言葉をノートに写し取ろうとするたび、意識のどこかで隆寛の声が響く。あの呼び方、あの息遣い、あの温度。五感が記憶してしまっているから、簡単に忘れられるはずがない。

(次に会うまで、どれだけ時間がある)

そのことが

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