小学校6年生の頃から両親はお互いに不倫をして俺を残しそれぞれの相手の所に行ってしまった。どんなに勉強を頑張ってみても見向きもしてもらえなかった。そして行き着いた場所が夜の街だった。気が付いたら蒼い華とあだ名を付けられていた。心にぽっかりと穴が開いている俺の前に現れたのは金色の狼でした。
View More俺の名前は
これでも17歳なんですけど?
実年齢よりも3つか4つぐらい若く見られる。冗談じゃねぇつうの!
そして、この髪と瞳のせいでついたあだ名が蒼い華。
一人残された俺は心が壊れて夜遊びを覚えた。それが中学を上がる少し前のこと。一人、夜の相手を探すように彷徨うからついたあだ名が彷徨う蒼い華。
色んなことを覚えたなぁ。女遊びも、酒も、煙草も。
でも、どれも俺の荒んだ心を満たしてはくれなかった。今でも心は荒んだまま。もう戻れないのかな?
こんな俺でも子供心に色んなことを考えたわけさ。どうやったら両親の心を自分に振り向かせることができるかってね。
で、行きついたのが勉強だったわけ。テストでどんないい点数を取ろうが、どんなにいい成績を取ろうが、両親は俺のことなんて見向きもしなかった。
もう俺の存在なんてあの2人の中には残ってないのかもね。生活費と必要最低限のモノだけを与え続けられてるんだから…。
本当は気が付いてたよ。両親が俺のことを嫌ってるの。俺がこんな姿だから…。 気が付いちゃったんだよね、両親がいなくなってからさ。 だから俺はあの2人にとって存在価値がないんだ。存在価値がないのは俺自身。誰にも必要とされていないんだから…。これでもさ、学校だけはちゃんと行ってる。
俺の通ってる学園は聖青葉学園、県内じゃトップクラスの進学校。偏差値メチャクチャ高い。 それだけあって勉強にはかなり力を入れてる学園だよ。中学校の担任に薦められて決めたんだけどさ、俺がどんなにいい学校に進学しても両親は無関心なまま。ホント笑っちゃうよね。俺ってあの2人にとって何?
こんなんだから俺は一人夜になると街を彷徨う。だからついたあだ名が彷徨う蒼い華。蒼華。
俺は華ってガラじゃないんだけどね。俺はそこまでキレイなヤツじゃない。 この手は薄汚れた血で染まってるんだから…。でも、夜の街を彷徨う俺に危害を加えようものなら夜の街の掟が許しちゃくれない。
俺は夜の街に君臨する暴走族ZEAに守られているから。ZEAの頭とは旧友だからね。しかも幼馴染なんだよね。 この街には夜の掟が存在する。それは不良たちや暴走族の中にだけ決められた掟。 その掟がある限り、誰も蒼華には手が出せない。蒼華に手を出せばそれ相応の報復が待っている。 それが夜の街の掟。さぁ、今宵も一人淋しく夜の街を彷徨おうかなぁ。
どうせ、家にいたって一人だしさ…
「あっ、金狼さんの香り…」部屋に入ってふわりと香る金狼さんが付けていた柑橘系のコロン。さっきまで彼がこの家にいたんだ。夢じゃなくて…あぁ、ヤバいな俺…マジかも…もうあんな思いはしたくないのに…「ダメダメ!考えたらダメぇ~!!!」一人叫ぶとクローゼットの中から制服を取り出し着替える。って言っても右腕は悪化させないために吊るしてあるからブレザー着れないんだよね。まぁ、左腕は通すから着れるけどさ。着替えるだけ着替えて、ノートと筆箱しか入ってないカバンを持って俺は溜め息をつき、学園に行くために家を出た。いつもの時間に、いつものバスに乗り込んだ。バスに揺られながら考えるのは朝まで一緒にいた彼のこと。考えちゃいけないと思ってるのに勝手に頭に浮かんでくる。いつの間には俺の心の中に侵食してきた金の狼。ダメなんだ…俺は好きになっちゃいけない…人を愛する資格がない…だからダメなんだ…学園の前のバス停でバスを降り、いつものように深呼吸をして、俺は自分の教室へと向かった。「蒼樹、お前なんだよそれ!」「どうしたんだよ!」俺が教室に入るなり質問攻め。イヤさ、覚悟はしてたけどさ…。しかもこれ、2時限目までには確実に全学年に広がるからね。昨日の今日でまたケガした俺って何なの?「昨夜、不良どもに不意打ちされてさぁ。あぁ、でも、ヒビが入っただけだから大丈夫」俺はそう答えてから自分の席に着く。そんな俺を翔太が険しい顔で見てた。「大丈夫なのか?」まぁ、言わんとすることはわかるけどさ。「ん、さすがに鉄パイプには勝てません。で、携帯が壊れたから新しいのが来たらデータちょうだい」カバンを机の横に掛けながら答えれば翔太が溜め息をつく。これはちょっとだけ怒ったな。「それはかまわねぇけど…相手は?」翔太のその言葉の意味は嫌というほどわかる。蒼華である俺を不意打ちで狙って怪我をさせたのだから…「ん、イヤ、いいや」「はぁ?なんで?」俺の返事に翔太が本気で驚いた。「あ~、うん。実はさ、偶然なんだけど近くを通った金狼さんが見つけて助けてくれたんだよね。しかも俺がミスって気を失ってる間に相手もボコってくれたみたいでさ…」これは朝教えてくれた話。俺の仇をキッチリとってくれたって。しかも二度と俺に手を出せないように再起不能にしてくれたらしい。「お前、どんだけ彼と会ってんだ
「ありがとう金狼さん」片づけを終えた金狼さんに俺は頭を下げた。お礼はちゃんと言わないとさ。「着替えなきゃいけないから帰るけど大丈夫か?」そんな俺に金狼さんが聞いてくる。それは怪我のこと?それとも昨夜の涙のこと?「大丈夫。金狼さんの作ってくれた美味しいオムライスのおかげでメッチャ元気出たから」ニカって笑って答えた。だってこれは嘘じゃないもん。「そうか、ならいい」俺の言葉を聞きソファに掛けてあった上着を取り袖を通す。「あっ、金狼さん煙草いる?俺さ、あんまり吸わないから余ってるんだけど…いるならもらって帰ってよ」俺はふと煙草の存在を思い出して聞いてみた。金狼さんは意味が分からずキョトンとした顔で俺を見た。「あー、親がさ買ってくれるんだけど、俺ってそんなに吸わないしさ」俺は言葉を濁しながら説明をする。親が自主的に買っておいておくだけ。自分で買ってくれと頼んだわけじゃない。それに俺は止められている。翔太は絶対に吸わないから聞いてない。酒はばかすか飲むけどさ。「もらっても大丈夫ならもらっていくがいいのか?」金狼さんは俺の事情を深く追求することなくいってくれる。やっぱり優しいね金狼さんって。「うん、大丈夫だからもらっていって」俺はリビングにあるテレビの棚の中から煙草を取り出し部屋の中を探し紙袋を見つけてそれに入れた。「はい、ごめんね。金狼さんが吸う銘柄じゃないけど」そのまま金狼さんに渡した。「イヤ、そこまで拘ってるわけじゃないから、もらえるだけで十分だ。本当にいいのか?」金狼さんはそれを受け取りながらも確認するように聞いてくるから俺は頷いた。翔太に止められてるっていうのもあるけど、今は煙草を吸うのをやめてるから。「うん。あっ、金狼さん時間が無くなるよ」俺は時計を見て告げる。まだ6時過ぎだけど、ここから金狼さんの所までどれだけ時間が掛かるのかわからないし、一応この人、生徒会長やってる人だもん。俺みたいに遅刻はまずいでしょ。俺の言葉にそうだなとか言いながら金狼さんは玄関に行く。「金狼さん、昨夜から色々と本当にありがとね」彼の後追い、靴を履く彼に向かってもう一度、お礼を告げた。金狼さんは少しだけ考えるポーズを取り、徐に俺の腕を引くとキスをしてきた。触れるだけの優しいキス。あまりにも突然の事で頭が真っ白になった。「昨夜のお礼ってこと
「んっ」俺が目を覚ますとそこはベッドの上。金狼さんの姿はなかった。「あのまま寝ちゃったんだ俺…」身体を起こし呟く。いつも以上に寝れた気もする。色々と金狼さんに迷惑かけちゃったなぁ。ちゃんとお礼を言わないと…。俺はベッドから降りて部屋を出ようと扉を開けて疑問に思う。下から漂う美味しそうな香り。この家には俺しかいないはずなのになんで?疑問に思いながら1階に降りてキッチンに入って驚いた。「金狼さん!帰ったんじゃないの?」だってキッチンで金狼さんがご飯を作ってるんだもん。俺の声に気付いた金狼さんが振り返り「勝手に作らせてもらった。その手だと料理とかできないだろうと思ってな。オムライスは食べれるか?」俺のケガのことを思って言ってくれる。「大好き!うわぁ~、金狼さんに作ってもらえるなんて俺って幸せじゃん!」ニカって笑いながら椅子に座れば、金狼さんは俺の前に皿を置き「あまり味に自信がないけどな」同じように椅子に座る。「いただきま~す」俺はスプーンを持ち金狼さんが作ってくれたオムライスを食べ始めた。が、動きが止まってしまった。「不味かったか?」心配気に金狼さんが聞いてくる。俺は思いっきり首を横に振った。「ちょっ、なんですかあなた!この美味しさは!!」思いっきり突っ込みを入れてしまった。冗談じゃなくて、金狼さんが作ってくれたオムライスは凄く美味しかったんだ。「それはよかった。久し振りに作ったからな、自信がなかったんだ」クスリと笑って金狼さんも食べ始めた。「ん~美味し~幸せぇ~」俺はいつもだったら残すのに、今日は普通に食べていた。でもね、金狼さん。美味しいのは料理だけのせいじゃないんだよ。金狼さんと一緒に食べてるからなんだよ。誰かと一緒に食べてるから、だから美味しんだよ。「あっ、そういえば昨夜のあいつらどうしたの?」ふと、思い出したことを聞いてみる。場合によっちゃ翔太に報告しないといけなし。「ん?あぁ、あのバカどもな。全員、動けなくなるまでボコった」金狼さんはそんな爆弾発言をしてくれた。「えっ?ボコってくれたの?ありがとう、ごめんね迷惑かけて」俺がドジって招いた失敗だったんだけどね。「あぁいう奴らは気に入らないからな。それに、蒼華が被害にあってるんだ、見逃すわけがない」金狼さんがはっきりと言い切った。なんか嬉し
「…っ…ここは?」目を覚ませば見慣れぬ天井。消毒臭い場所。「病院だ」その声に驚き飛び起きた。そこには金狼さんの姿があった。「えっと…どうして?」思わず聞いちゃった。「お前が帰るときに変な奴らが付いていったからな。気になって追いかけて行ったらこの様だ。俺がもう少し早く気が付いて追い付けらたら良かったんだけどな」金狼さんは少しだけ渋い顔をして教えてくれた。そうなんだ…「ありがとう。俺って帰ってもいいの?」取り合えずどうしていいかわかんないから聞いてみた。「ん?あぁ、殴られた頭は検査して異常がないから大丈夫だ。ただ、右腕はヒビが入ってる。2週間ぐらいで治るからそこまでは酷いケガじゃない。それと、母親が来るぞ。連絡したから」金狼さんの説明に固まった。おふくろが来る?俺のせいで?「…っ…行かなきゃ…」俺は急いでベッドから飛び降りると病室を抜け出してロビーに向かう。「蒼樹、大丈夫なの?」あぁ、遅かった。もう来たのか…「うん、掠り傷だから…。ごめん急がしいのに…」俺はお袋から視線を逸らし謝る。俺と視線が合うのを嫌がる人たちだから…。おふくろはカバンから茶色い封筒を取り出し「これ、お父さんから。今回は振り込みに行けないからって。お金払ってくるわね」俺に渡してナースステーションの方へと行ってしまう。俺は封筒をポッケの中にしまった。やっぱり、こんな時でも俺のことをちゃんと見ようとしないんだな…「帰りましょうか」手続きを終えて戻ってきたお袋が聞いてくる。俺は気付かれないように握り拳を作り「俺は一人で大丈夫だから。あの人が待ってるんだろ?もう、あの人の所に戻っていいよ」小さく息を吐き答える。「でも…いいの?」本当にいいのかと聞いてくるから「ほら、俺は彼が付いててくれるから大丈夫。だから行ってあげなって」俺は後ろの方で様子を見てる金狼さんを指さして答えた。「ごめんね、じゃぁ行くわね」「うん、気を付けて。ありがとう」俺の言葉を聞き、おふくろは急いで病院を出ていった。これでいい。やっぱり…俺を俺としてみないんだね…俺は…必要とされてないんだね…「ごめん金狼さん。ありがとう。帰ろっか?」俺は振り返ると精一杯の作り笑いをして金狼さんに声を掛けた。病院にまで付き合ってくれたんだもん。ちゃんと帰るって声を掛けないと失礼だしね。
「一人暮らしってすっげぇ~」 なんてチャラけてみる。一人の家の中じゃ虚しいだけ。はぁ~逢いたいなぁ。「ん?誰に?」 ふと浮かんだ感情に自分で疑問に思う。一体、誰に逢いたいというのか?「わっかんねぇ」 俺はその感情を無理やりねじ込み自分の部屋へと入った。カバンを机の上に置き溜め息をつき、着替えを済ませて、机の引き出しを漁り新品のノートを探し出す。 「さてと、翔太にコピーさせてもらったノートを書きますかねぇっと」 血でダメにしたノートを開き、自分のノートから書き移せる場所を全部、書き移してからコピーした場所を書いていった。で、やっぱり俺は夜の公園でいつもの場所にいた。 「な~にやってんだ俺…」 自分で自分の行動がわからない。今日の俺は理解不能だ。ただ、淡い期待を抱いてここにいた。 「また、いるのか?」 そんな言葉が飛んでくる。声だけでわかる、金狼さんだ。 「そういう金狼さんもね」 俺が皮肉めいた言葉を返せばククッて笑われてしまった。なんだかこの人といると自分のペースを乱されっぱなしだよホントに。 「俺は散歩だ」 金狼さんはそのまま隣に座った。カチッてジッポの音がしたから金狼さんを見たら煙草に火をつけてた。まぁ、自分もたまに吸うから気にしないからいいけどさぁ。俺は無言のままゴロッと横になり金狼さんの脚に頭を乗せた。所謂、膝枕。自分でもなんでこんな行動に出たのかは謎。金狼さんも文句を言わないから俺はそのまま空を見上げた。 「すっげぇ~。星がキレ~」 こんなにキレイに輝く星空を見たのなんて久し振りかも。金狼さんの細くて長い指が俺の髪の毛を梳いていく。それが気持ちいい。 「傷は大丈夫か?」 不意に聞かれた。 「ん、大丈夫」 俺は目を閉じ答えた。このまま眠りたいな。 「そうか」 金狼さんのホッとした声。俺はそれで我に返った。 「ごめん、帰る。後、明日はここに来ないから」 甘えたらいけない。自分に言い聞かせ立ち上がる。そう、俺が甘えちゃいけない人だから…。 「気をつけろよ」 金狼さんの返事を聞かずに歩き出してる俺に告げてくる。 「女じゃないから大丈夫。じゃぁねぇ」 俺は振り返らずに答えて公園を出る。公園を出て少しして妙な気配に気が付いた。後ろをつけて来てるやつらがいるなって。「俺に何の用だ?」 ある程度の広
授業が終わりHRも終わって帰るだけってなったとき「織田ちょっと付き合え」 俺はやっぱり担任の吉田に呼び出された。行き場所は俺御用達の生徒指導室。ホントめんどくさい。 「なんですか?」 俺は椅子に座って聞いてみる。聞かなくてもわかってるけどさぁ。 「最近、家庭の方はどうなんだ?」 この人、相変わらず直球なんだよね。 「変わらないですよ。冷めたものは冷めたまま。俺のことなんてほかりっぱなしだし」 俺は嘘を見繕うことなく素直に答える。この人に嘘を言っても仕方ないことだし。俺の家庭の事情を一番知ってるのは教師の中でこの人だけだしね。まぁ、理事長とか、校長とかにも話はいってるけどさ。「原因はそれか?」 ホントにストレートだし。こういうところが他の生徒に人気があるんだよねこの人。 「自覚がないんでわかりません。先生、俺ね本当に記憶がないのよ。これをやったときのさ」 手首を見せて何度目かの説明をする。 「最近、両親とは会ってるのか?」 この人嫌い。人の傷抉りすぎ。まぁ、心配してくれてるのはわかってるんだけどさ。 「会ってませんよ。会うわけないでしょ。帰ってこないんですよあの人たち。ねぇ、もういいでしょ?帰らしてよ」 俺は帰りたくて、聞いてみる。吉田は溜め息をつき 「無理はするなよ。ちゃんと相談に来い。帰っていいぞ」 俺を解放してくれる。 「無理なんてしてないっすよ。ただ、今の現状に慣れただけですよ。じゃぁ、さいなら」 俺は立ち上がり逃げるように指導室を出た。教室に戻れば翔太が待っててくれた。「おまたへ」 本を読んでる翔太に声をかければ 「おう、どっか寄ってくか?」 読んでた本をしまい、俺のカバンを一緒に持って傍に来た。 「んー、いいや。どっかに寄りたい気分じゃないし。あっ、でもコピーはしたい」 俺は自分のカバンを受け取り少し考えて答えた。ホント…みんな心配しすぎだよ…俺は大丈夫なんだから…俺なら大丈夫なんだから心配しないで…じゃなきゃ俺が崩れ落ちるから…「わかった。近所のコンビニでいいのか?」 「うん」 俺の言葉にそれ以上深くは聞いてこずに翔太が言うから俺は小さく頷いた。 二人で学校を後にして近所のコンビニによって俺は翔太のノートをコピーさせてもらった。「どうする?」 コンビニを出てから翔太が聞いてくるか
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