LOGIN高校生の草薙智也は、幼馴染の蓮と妹のモモと共に、謎のノートによって異世界へ飛ばされてしまう。目覚めた智也を待っていたのは、女体化して裸という最悪の状況だった。元の世界に戻る条件は「愛する人とセックスすること」。山賊に襲われ、王族の騎士に救われ、様々な出会いと危機を乗り越えながら、智也は自分の中で育っていく蓮への想いに気づき始める。果たして智也は元の世界に戻れるのか? 笑いとエロスと切なさが交錯する、異世界女体化ファンタジー! 月曜日/週4 更新
View More草薙智也(くさなぎ・ともや)は、妹の草薙モモ(くさなぎ・もも)、そして幼馴染の五十嵐蓮(いがらし・れん)と──
よく分からないまま異世界へ飛ばされることになる。
◇◇◇
事の発端は、蓮が路上で妙なノートを拾ってきたことだった。
放課後、蓮は当然のように智也の部屋へ入り、モモも当然の顔でくっついてくる。
蓮のファンである中学生のモモは、すばやく彼の隣へ陣取り、ひたすら「蓮ちゃん」と距離を詰めている。智也は鬱陶しげに眉を寄せるが、この賑やかさが嫌いなわけでもない。幼馴染と妹がそばにいる──それだけで、空気はどこか明るい。
その明るさを、わざと冷やすように智也が皮肉を投げた。
「金持ちの五十嵐家の御曹司が、路上で知らないものを拾っちゃいけませんって教わらなかったのか?」
蓮はたいして気にした風もなく肩をすくめる。
「いや、我が家の家訓は、何でも拾え。何でも奪え。欲しい物は強引にでも手に入れろだ」
――なんだその教育。
智也の口が尖る。
「……なるほど、そうやってお前の家は金持ちになったんだな」
横でモモが手を叩いてはしゃぐ。
「蓮ちゃんのお嫁さんになるモモは、お金持ちの夫人になるのね。智也お兄ちゃんが路頭に迷ったら、私専用の運転手に雇ってあげてもいいわよ、ねー、蓮ちゃん!」
蓮は腕を組み、くすっと笑った。
「ペットの世話係で十分だろ、智也には」
智也はむっとする。だが、蓮がからかい半分で言っているのが分かる。この軽口の応酬は、高校入学前から続いているいつものことだ。
「モモも蓮も、僕の部屋から出て行ってくれ」
つい言い出したものの、智也に本気で追い出す気はなかった。口先だけの抵抗だ。
蓮は智也の抗議を軽く流し、ノートを取り出してページを捲る。そこには、汚い字で謎めいた文が記されていた。
『新たな世界に旅立つ勇気のあるものは、このノートに思い通りの物語を紡ぐがよい』
智也は思わず鼻で笑う。
「はぁ……これ絶対小学生の悪戯だろ。字は汚いし。デスノートの真似事か?」
「まあそう言うな。小学生の悪戯かどうかは書き込んでみれば分かる」
蓮は楽しげだ。こういう冗談にいちいち乗ってくる性格なのは昔からだ。
モモが身を乗り出す。
「うん、うん。蓮ちゃん、何か書き込んで」
彼女は智也の机から勝手にボールペンを拝借し、蓮へ差し出す。智也は止めようとしたが、この勢いはいつものことで、つい見守ってしまう。
蓮はさらさらとノートに文字を書き、ページをこちらへ向けてきた。
『俺たち三人は今から一分後に異世界に行く。草薙智也は女体化して、草薙モモは猫耳娘になり、五十嵐蓮は最強の魔法使いとなる。彼らの目的は、愛する人と出逢いセックスすること。それでこの物語は完了して、元の世界に戻ってくることができる。以上。』
智也の目が飛び出そうになる。
「げっ! 何で僕が女体化なんだよ!」
モモは跳ねるように歓声をあげた。
「きゃー、蓮ちゃんは最強の魔法使いなのね。カッコイイ!」
「モモ、僕の女体化を心配してくれよ!」
蓮は落ち着いた様子で言う。
「落ち着け、草薙兄妹。とにかく、一分待つとしよう」
唐突すぎる提案だが、その冷静さが逆に馬鹿らしくて、智也は笑い出しそうになった。
◇◇◇◇
そして一分後──
空気がふっと抜け、世界が歪んだ。
目を開けば、三人は見知らぬ森の中に立っていた。背の高い木々。奇妙な形をした葉。湿った土の匂い。
智也は目を瞬かせる。モモは頭を撫で、自分に生えている猫耳を見てぴょこぴょこ跳ねる。蓮はいつの間にか立派なマントをまとい、"魔法使い"らしさを全力で醸し出していた。
……いや、それどころではない。
智也は自分の姿に気づき、絶句する。女になっていた。しかも──
「ぎゃぁあああーーーー、何で裸なんだよぉおおーーーーーー!!」
智也の悲鳴が森に響き渡る。揺れる胸が、視界の端でぶんぶん主張してくる。羞恥で頭が混乱し、森に不釣り合いな叫びが木霊した。
――いやいや、なんでだよ!
智也の思考が空回りする。高校二年生の男子が、異世界で裸の女になっている。全てが、悪ふざけの延長にしか思えない。
ただ一つ、確かなことがあった。
三人は、本当に異世界に来てしまったのだ。
リリカの家を出るとすぐに、獣族の村中に雄たけびや咆哮が響きわたるのが智也の耳に届いた。智也は、アベルの早足にほぼ駆け足で速度を合わせながら彼の後に付いていった。彼が進む方向は村の入り口に当たるところらしく、そこには獣族の人垣ができていた。「おい、皆どいてくれ!! 大事な人質のお通りだ。」アベルがそう人垣に向かって叫ぶと、獣族の人々はざわつきながら人垣を左右に分けて、彼と智也のために通り道を作った。獣族の人々は男女問わず体が大きく、艶やかな毛並みの狼の耳が生えていた。その彼らが、人質であるカインの側室の智也を耳をぴくぴくさせて興味深そうに見下ろしていた。智也は恥ずかしくなって俯いていると、自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。「トモヤ!!」「智也!!」名前を呼ばれて、思わず顔を上げた。木を組んだ垣根が村の周りに張り巡らされ、その周りには堀が掘られていた。唯一の入り口だろう木の門は開かれ、堀には橋が架かっていた。その橋の向こう側に、馬に乗ったアーサーと蓮が見えて、智也は思わず叫んで駆け出していた。「アーサー!! 蓮っーー!!」獣族の人々が開けた道を駆け出し、アベルの横を通り抜けようとした時、不意に彼に腕をつかまれ、体を引き寄せられて抱きしめられた。アーサーと蓮がその様子を見て顔色を変えるのが分かった。アベルは真剣な顔でアーサーたちに向かって口を開いた。「人質を救出するには兵の数が少なすぎるな。どこかに兵を隠してこの村を襲うつもりじゃないだろうな? 村のものに周辺を確認させる。隠れた兵がいないことを俺たちが確認した後で、長のナギ様を解放しろ。ナギ様がこちら側に来てから、トモヤを解放する。」「伏兵などいない。俺たちはお前たちを攻撃する意図が無いことを示す為に数人の兵だけを伴いここに来たのだ。それを信じてもらえないのは心外だな。」アーサーは続けた。「それに、人質は同時に解放することが常識だろう。俺たちは、長のナギを橋の前で解放する。側室のトモヤ様も橋の前で同時に解放してくれ。」「王宮の人間の言葉など信じられるか!!」アーサーの言葉にアベルはそう返事すると、急に右腕を智也の目の前に出した。アベルは獣の咆哮を上げると、見る間に右手が荒々しい獣の腕となり、その爪は鋭くとがった。その彼の爪が、智也の咽元に押し当てられる。智也は顔面蒼白になってしまった。アーサー
「獣の勘ではぴくぴくっとそんな感じなのよね。そうでなければ、アーサーから引き裂かれてカインに無理やり側室にされたのなら、彼のことをもっと憎んでいるはずだよね?」リリカは続けた。「でも、二回目のセックスは同意の下だったんだよね。それで妊娠した。つまりは……」「つまりは?」「あなたって、自分を庇護してくれる人を探して渡り歩いているひな鳥なんだよ。」智也はがくっと肩を落として呟いた。「ひな鳥ですか……なんか、元男として情けない感じ。つまり、アーサーもカインも私にとっては庇護者で親鳥って訳だ。だから、私のアーサーへの愛は本物じゃない? 親鳥を慕うひな鳥の気持ちって事?」そう言われると、なんだかそんな気もしてきた。「私って、男を渡り歩く軽い女つうか……ひな鳥ってことだよね。かなり情けない感じ……」「確かにあなたからは、ひな鳥で流されて生きているってかんじを受けるわ。アーサーが好きなのに、カインが結構いい人だと解れば彼の事も受け入れようとしている。つまりは親鳥を変えようとしているんだよ。」リリカは耳をわずかに伏せて言った。「そのひな鳥のあなたが、本物のひな鳥を生もうとしている。母親になる自覚はあるの、トモヤ?」元男の自分に母親になる自覚を聞かれても、正直……あまり無い。「無いかも、親になる自覚。」「でしょうね。だったら、その子を生む前に本当に心から信頼できる人を見つけておく事ね。」リリカは静かに続けた。「もし、あなたが生んだ子があなたにとって『愛する人』になったとしたなら、その子を託す事ができる人こそあなたにとって、本当に『愛する人』じゃないかな?」リリカの言葉を聞きながら、智也は思わず自身のまだ膨らんでもいないお腹をさすっていた。「この子を託す事ができる人?」智也の言葉に、リリカはすこし申し訳なさそうな顔をして口を開いた。「ごめんなさいね、トモヤ。どうしてかな、獣の勘なのかな……あなたが、その子を誰かに託して消えてしまいそうな気がするの。」「私が、この子を置いて消える?」「ごめんなさい。不吉なことを言って。もうこの話はよしましょう。長のナギ様が帰ってくるまで眠っておくといいわ。妊娠しているのに、誘拐なんか荒っぽい事に巻き込んでごめんね。」リリカはそう言うと、智也をベッドに横になるように促した。智也は素直に従い、すこし堅いベッドに
「前の長老は、今の長のナギさんの祖父だったの。でも、おじいさんが亡くなってナギさんが跡目を継いだのよ。」リリカは智也のために、長のナギのことを丁寧に説明してくれた。「獣族では年齢性別関係なく強い人が長になるの。この村では、彼女が一番強いから、彼女が長になったのよ。」智也は、まだ見ぬ長のナギの姿を思い浮かべながら口を開いた。「じゃあ、アベルは愛する人を救う為に自ら牢獄塔に侵入しようとしていたのね。なんか、愛を感じるわ。」少し考えてから、続けた。「うん、なんかアベルに好感持ったかも。最初は獣の爪や牙を見て怖い奴って思ったけど、結構可愛いとこあるじゃん!」「うん、アベルはいい人だよ。この村の獣族のみんなだって皆いい人だよ。」リリカの声が、わずかに沈んだ。「でも、人間は……自分と姿が違うだけで私たちを嫌う。今は、獣族の大部族が王家に忠誠を誓っているから理由無く狩られる事は無いけど、昔はよく理由無く人間に狩られたと聞くわ。もちろん、反撃もしたけど……結局、王国に服従する事になった。」リリカは耳を少し伏せて言った。「でも、それを嫌って大部族を離れる獣族も出た。それが、私たちの先祖なのよね。」智也は、異世界の歴史をよく知らない。だがきっと獣族も、ギルミット族と同じように王国から酷い目に遭わされた歴史があるのだろう。そして彼らはギルミットとはまた違う道を選び、生き残った。王家に服従を誓うことで生き延びた。それでも人に支配される屈辱に耐えられず離れていった部族のひとつが、この村の人々なのだろう。誇り高き狼の一族には、その生き方がよく似合っているように思えた。それにしても、彼らにとってみれば王位継承者の側室である自分は憎むべき存在だろうに、こんなによくしてくれている。智也はただお礼を言うことしかできなかった。「ありがとうね、リリカさん。薬草入りパンすごく美味しかった。つわりも治まってきたみたい。」智也がそう言って笑いかけると、リリカは耳をぴくぴくとさせながら身を
それにしても、蓮はあの後どうなったのだろう。まさか、本当に『トモ』の祖母を殺したりしてなければいい——智也はそう思った。蓮が『トモ』の生まれ変わりなら、あの老婆は彼の祖母になる。元の世界では家族の愛情に恵まれなかった蓮だからこそ、この世界で出会った祖母との繋がりを大切にして欲しかった。昔から蓮は何でも一人で背負ってしまうところがある。心配でたまらない。智也はぼんやりと考え事をしながら、カインとの契約の証である側室の指輪を見た。カインから逃げ出した時に側室の指輪の呪いが発動すると聞いたが、呪いが発動している感じは無い。誘拐は、「逃げ出した」とは判断されなかったということだろうか。だが、カインが自分のために動いてくれたのは意外だった。アーサーとの確執から自分を彼から奪ったのだろうけど、少しは愛してくれているということなのだろうか。それとも、自分がカインの子供を宿していることが伝わったからこそ、取引に応じたのか。この取引が、王家の威信を損なうことにならないのかと心配になる。カインの呪いを解くために牢獄塔に行ったのに、かえってカインをピンチに追い込んだのではないかと思うと、申し訳ない気がした。もともとは、アーサーから引き裂かれ乱暴された身で恨みもしたが、今は彼の子供を宿している。この子を産めば、カインが父親になるのだ。そう考えると、子供のためにも彼を受け入れるべきだと思えた。元男の自分が母親になるなんて信じられないことだけど、それが紛れもない事実なのだから。「そんな暗い顔するなって。お前はすぐに解放される手はずになっている。」智也が暗い顔をして側室の指輪を見つめていることに気づいたアベルが、肩を優しく叩いた。「アーサーとレンという男が長を連れてこの村を訪れる事になったと、この村に王宮から知らせがきた。」智也ははっとしてアベルの顔を見た。「アーサーと蓮が迎えにきてくれるの!!」一気に表情を明るくさせた。その様子を見ていたリリカが、さっき急に耳を触ったお返しとばかりに質問をぶつけてきた。「すごく嬉しそうな顔をしたわね、トモヤ。そんなに、アーサーやレンという人に逢いたいの? まるで恋人が迎えに来てくれるような顔をしていたわよ!!」「恋人!!」智也は思わず顔を赤めてしまった。リリカは楽しそうに獣の耳をぴくぴくさせながら口を開いた。「ねえ、どち