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クラウスとの決戦、真実の暴露

Author: 吟色
last update Last Updated: 2025-08-25 14:40:43

白の尖塔最上階で、ついに真の戦いが始まった。

「『統合契約術・七重展開』」

リリスが両手を広げると、七つの契約核すべてが共鳴を始めた。快楽、忠誠、記憶、痛み、幻影、魂、感情——それぞれが異なる色の光を放ち、彼女の周囲を旋回する。

「これが……新たな黒契王の力」

クラウスも警戒を強める。十年前のリリスとは明らかに次元が違う力を感じ取っていた。

「だが、統律の塔の技術も進歩している」

クラウスが胸元から小さな水晶を取り出す。それは血のように赤く、不気味な脈動を繰り返していた。

「『魔女封じの石』——君の力を無効化する究極の対魔女兵器だ」

水晶が光ると、リリスの周囲の光が一瞬揺らいだ。確かに、核の力が抑制されているのを感じる。

「厄介ね……」

リリスが眉をひそめる。完全に無効化されるわけではないが、力の出力が著しく制限されている。

「その隙に!」

カインが立ち上がり、クラウスに切りかかる。魔導剣との激しい剣戟が部屋に響いた。

一方、ヴァルナとティセは連携してクラウスの側面を狙う。四人がかりの攻撃に、さすがのクラウスも押され気味になる。

「くっ……」

クラウスが後退しながら、腰に下げた小型の魔導具を起動する。すると、部屋の四隅から黒い影が立ち上がった。

「『影の守護者』召喚」

影は人型に形を変え、それぞれが武器を持って襲いかかってくる。人工的に作られた魔物だが、その戦闘力は本物の戦士並みだった。

「分散されたか」

カインが舌打ちする。四人はそれぞれ影の守護者と対峙することになり、クラウスへの攻撃が分散してしまった。

「これで一対一だ、リリス」

クラウスがリリスに向き直る。

「昔のように、決着をつけよう」

「昔のように……?」

リリスの目に複雑な光が宿る。

「あなたとは、本当に戦ったことなんてなかった。すべて演技だったのでしょう?」

「そうだ。だが、君への感情は本物だった」

クラウスの告白に、リリスは息を呑む。

「私は君を愛していた。今でも愛している」

「嘘よ」

「嘘ではない。だからこそ、君を統律の塔に引き渡すことはできなかった」

クラウスが魔導剣を下ろす。

「君の失墜も、実は私が仕組んだことだ。塔に捕らえられるより、自由でいてほしかった」

リリスは混乱した。すべてが裏切りだと思っていたのに、実は愛ゆえの行動だったというのか。

「でも……仲間たちは死んだ」

「それは……すま
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