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44話

Penulis: 東雲桃矢
last update Tanggal publikasi: 2026-08-28 15:23:41

「当時の証拠はありませんが、結花さんは私に、『醜いから視界に入るな』とか、『鈍臭いブス』とか、暴言を吐き、まだ小学1、2年生の私に、家事を強要しました。父に助けを求めましたが、結花さんはベテラン女優で忙しいとか、赤ちゃんがいるから助けろとか言われました。資料をめくってください。そこに、私が虐げられていた証拠が載っています」

 記者達はページをめくる。数枚の写真が載っており、肌にあざがあった。どの写真も、ヒカリと分かるように、顔も写してある。

「父は、現場などで私を勇気づけるふりをして、暴力を振るっていたんです」

「現場ということは、人の目があったと思うんですけど、具体的にはどういった暴力を?」

「私の肩に手を置いて、『今日も頑張ろう』、『いつも通りやればうまくいく』といった励ましの言葉をかけながら、肩を強く掴んでくるんです。2枚目の写真が、その時に出来たあざです」

 2枚目の写真には、タオルを巻いて胸を隠してるヒカリが写っており、肩には青紫色のあざがあった。

「父の車で移動する時は必ず助手席に座らされ、暴力を振るわれました。今から映像を見てもらいます」

 ヒカリはパソコンを操作し、壮
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     1ヶ月後。少し日に焼けたヒカリは、バラエティ番組の収録に参加していた。「本日のゲストは、海原ヒカリさんです」 拍手と歓声を浴びながら、スタジオに入る。もう誰も、ヒカリを憐れんだりしていない。「いやぁ、大変でしたね。色々と。まぁ、詳細は省きますけど」「ふふ、そうですね」「もー、しれっと苗字まで変わっちゃって。元々美人でしたけど、更に美人になりましたよね。皆さん見てくださいよ、ほら。見違えましたよねぇ?」 カメラがヒカリに寄り、アップで顔を映す。ヒカリはカメラに向かって手を振った。「ちょっと前までは、薄幸ヒロインだとか、奪われヒロインだとか言われてましたけど、そんな雰囲気、今じゃ欠片もありませんよ。お幸せそうで、ねぇ。国民のヒロインに返り咲きましたねぇ」「返り咲けましたかね? ちょっと、自分じゃよく分かりませんけど」「まぁ謙虚! 美人で謙虚! これぞ大和撫子! 旦那さんが羨ましい! 式はいつ挙げるんですか?」「実はまだ、籍入れてないんですよ。お互い忙しくて。結婚式と旅行終わったら、一緒に市役所に行こうねって約束してます」「はー、芸名だけ新婚気分ってことですか。いいなー。僕なんて40手前なのに、まだ独身ですよ? 誰か紹介してくださいよ」 司会の芸人に、スタジオも会場の笑いに包まれる。ヒカリは今、初めてバラエティが楽しいと思えた。 収録が終わり、楽屋で身支度をすると廊下に出る。女優仲間が何やら騒がしい。「どうしたの?」「あ、ヒカリちゃん! お疲れ様。外にリムジン停まってるんだよね」「え? リムジン?」「そーそー。誰だろうねーって話てたところ」「確かに、気になるかも……」 ヒカリは過去に、役でリムジンに乗ったことがあるが、快適だった。レンタルできると知って、いつかレンタルして豪遊してみようと思っていたことがあったのを、ふと思い出す。「私、これから帰るし、ついでにちらっと見てみようかな」「なにか分かったら教えて」「うん、分かった。お疲れ様」「お疲れ様、またねー」 女優仲間と別れて外に出ると、真っ白なリムジンが停まっていた。中をちらりと確認しようと思ったが、窓に目隠しシールでも貼ってあるのか、黒くて見えない。 リムジンを横切ろうとすると、ドアが開いた。リムジンから出てきたのは、スーツを着こなした壮介だった。「壮介さん!?」

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     その日の夕方、ニュースはヒカリ達の記者会見で持ち切りだった。号外まで出回り、世間が四葉家族と香坂蒼斗の闇に驚き、ヒカリに同情した。 記者達に渡していた資料の最後のページに、SDメモリが貼り付けてある。SDメモリの中には、資料に載っている動画や、記者会見で見せた動画や音声のデータが入っている。 ネットニュースでは動画や音声が使われ、ヒカリを除く四葉家族と香坂蒼斗は、世間に袋叩きにされた。もちろんそれだけでは終わらず、4人は暴行罪や詐欺罪、侮辱罪など、様々な罪で起訴され、刑務所暮らしが確定した。 もちろん、香坂蒼斗のハリウッド行きも白紙である。それどころか、「お前はもう舞台に立つ資格はない」と、キツイ言葉を浴びせられたそうだ。 ヒカリがいた事務所の社長や副社長も、四葉拓也と一緒に気に入らないマネージャーや若手を追い込んでいたことが発覚し、事務所は解体した。 その代わり、西野が新たに芸能事務所を起ち上げ、『どこよりもクリーンに』をスローガンにし、始動しだした。ヒカリも西野の芸能事務所に所属することにした。他の事務所からもスカウトは来たが、もう一度西野と仕事したい気持ちが強く、彼女の事務所を選んだ。 更に、西野とアリサは四葉と蒼斗の被害者の会を設立し、彼らに傷つけられた俳優やマネージャーなどを集め、彼らを訴える準備をしているという。 ヒカリも被害者の会に入ってはいるが、西野、アリサ、金田の強いすすめで、休暇を満喫している。「青い海と空。そして白い砂浜……。こんなところでゆったりできるなんて、夢みたい」「あぁ、本当に……。幸せだね」 ヒカリと壮介は微笑み合う。 ふたりはハワイに来ていた。四葉家族の闇で世間が騒がしくなり始めた頃、パーティー好きの大御所がヒカリに連絡し、ハワイにあるプライベートビーチを貸すから休んできなさいと、別荘の鍵をくれた。 2階建ての別荘を出てすぐに、このプライベートビーチがある。ふたりは大きなテントを組み立て、そこから海を眺めていた。「僕、海外なんて初めてだ。リモートワークができる時代に感謝しないとね」 壮介は海を眺めながら、眠そうに言う。 ヒカリがハワイに行くと聞いて、自分も行くと駄々をこねた壮介だが、荻原がそれを許さなかった。話し合いを重ね、リモートで会議に参加するならいいということになり、今に至る。「私も、ある意

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    「当時の証拠はありませんが、結花さんは私に、『醜いから視界に入るな』とか、『鈍臭いブス』とか、暴言を吐き、まだ小学1、2年生の私に、家事を強要しました。父に助けを求めましたが、結花さんはベテラン女優で忙しいとか、赤ちゃんがいるから助けろとか言われました。資料をめくってください。そこに、私が虐げられていた証拠が載っています」 記者達はページをめくる。数枚の写真が載っており、肌にあざがあった。どの写真も、ヒカリと分かるように、顔も写してある。「父は、現場などで私を勇気づけるふりをして、暴力を振るっていたんです」「現場ということは、人の目があったと思うんですけど、具体的にはどういった暴力を?」「私の肩に手を置いて、『今日も頑張ろう』、『いつも通りやればうまくいく』といった励ましの言葉をかけながら、肩を強く掴んでくるんです。2枚目の写真が、その時に出来たあざです」 2枚目の写真には、タオルを巻いて胸を隠してるヒカリが写っており、肩には青紫色のあざがあった。「父の車で移動する時は必ず助手席に座らされ、暴力を振るわれました。今から映像を見てもらいます」 ヒカリはパソコンを操作し、壮介が室内の電気を消しに立ち上がる。部屋が暗くなると、壮介と西野は記者達がスクリーンを見やすいように、部屋の隅に移動した。ヒカリも動画を再生すると、壁際に移動した。 スクリーンには、運転席に座る拓也が映し出される。これは料亭へ向かう途中に撮られたものだ。 拓也はヒカリに暴言や暴力を浴びせ、ヒカリはいつもより少しオーバーに悲鳴を上げる。その少しオーバーな演技が、記者達に虐待の凄惨さを伝えた。ヒカリは一旦動画を停止する。「次のページを御覧ください。私はこの後、料亭に連れて行かれましたが、私がいつも、食事をさせてもらえません。バラエティでは、よく家族と皆で旅行やごはんに行くと話していますが、あれもすべて嘘です」 ページをめくると、バラエティ用の台本と、家族のグループトークのスクショがあった。台本の内容は、家族全員の旅行の思い出。グループトークには、ヒカリを除いた家族が旅行や食事に行く写真と、合成でヒカリを追加した写真が並んでいる。「家族の誰かが誕生日の日は、全員でお祝いするというのも嘘です。彼らは、わざわざ私の偽物のラインアカウントを作り、そのページとは別のグループトークを作ったりも

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     それからヒカリ達は、達郎と証拠や事件の擦り合せをし、これからどう動くか作戦会議をした。そして作戦会議を終えると、ヒカリはずっと既読スルーしていた家族のグループトークに、チャットを送った。『打ち合わせで返事が遅くなってごめんなさい。舞花の件、私がどうにかしてみる』 そう送ると、金田を呼び出して記者会見の準備をさせた。 翌日、ヒカリ、壮介、西野は、記者会見の会場裏で待機していた。会場には、特にスキャンダルが大好きな大衆雑誌の記者を多めに招いていた。記者は全部で6人。これが記者会見を開く条件だった。 数が少なければ、嘘を書かれても、どこが嘘を書いたのか分かる。そのために、ヒカリ達もカメラとボイスレコーダーを用意しておいた。「それじゃあ、行きましょうか」「えぇ、そうね」「ふたり共、無理はしないで」 3人はお互いを励まし合うと、会場に出た。まばらなフラッシュに、カメラ慣れしてない壮介の西野は目を覆う。特にアルビノの壮介には、負担がかかるだろう。「すいません、私はともかくおふたりはフラッシュになれてませんし、強い光が苦手なんです。フラッシュはご遠慮ください」 ヒカリが深々と頭を下げると、彼らは渋々フラッシュをやめた。「記者会見の前に、資料を配ります」 西野は6人の記者に、冊子を配った。これは証拠をまとめた冊子で、逹瑯に世間に出しても問題ないと言われたものだ。「まずは自己紹介をさせていただきます。私は四葉ヒカリ。女優をやらせていただいています。こちらの男性は海原壮介さん。私の恋人で、今出回っている動画にもあるように、舞花を助けた人です。そしてこちらは西野真由美さん。私が高校2年生になるまで、マネージャーをしてくれました」「ヒカリさん、どうして元マネージャーが記者会見にいるんですか?」「今回は、四葉家族が偽りの家族であることを、皆様にお伝えするためです」 ヒカリの言葉に、記者達はどよめく。四葉家族は理想の家族だと話題になっているのだ、無理もない。「では、資料1ページ目をごらんください」 ヒカリがアイコンタクトを送ると、西野が口を開き、自分の手元にある資料をめくる。ヒカリ達と記者も、資料をめくる。「資料にもあるとおり、ヒカリさんは3歳の頃から芸能界で活動をしてきました。3歳から5歳まで、ヒカリさんのギャラの一部は彼女のために使われ、大半は将来

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     動画には舞花が映っている。場所はどこかの楽屋らしく、シンプルな部屋だ。『アリサちゃんはさー、なんでヒカリなんかと仲良くしてるの?』「なんで?」『だってヒカリってさー、ぶっちゃけブスじゃん。不幸移りそうだし。異分子なんだから早く消えろって感じ』「異分子?」『ヒカリって前妻の子じゃん? パパはもうママと結婚して、舞花が産まれたんだから、ヒカリなんかいらないんだよねー。前はお小遣いになったから、まぁまぁよかったけど、今はアイツの金入らないし』「お金って、ヒカリちゃんの?」『そーそー。あいつ、ブスのくせに子供の頃からずっと女優やってたじゃん? そのお金で前は遊べたけど、当時のマネージャーが、勝手にあのブスの通帳作っちゃってさー。いい迷惑だよね。ま、パパがクビにしたんだけど』「舞花ちゃんのお父さんってすごいね。そのマネージャーさん、なんて人?」『えー、いちいち覚えてないよ、そんなの。確か、西野だか東野。どっちかはしらなーい』「そっか」『それよりさー』 動画はこれで終わった。「この後はしょーもない雑談だったから、カットしといたんだ。どう? これでヒカリがあの家族にひどいことされてたことも、西野さんが無理やり辞めさせられたことも証明できるでしょう?」 アリサは得意げに胸を張る。確かにこれなら、証拠になりそうだ。「えぇ、なると思いますよ」「やった!」 荻原の回答に、アリサはガッツポーズをする。「じゃあ、次は私ね。これはマネージャー仲間からもらったものなんだけど……」 そう言って西野は、数枚の写真を出した。そこには若いマネージャーや、テレビに出る実力のない若手俳優達が、結花に虐げられているところが写っていた。「四葉結花は、立場が弱い人達をこうやっていじめてたみたい。訴えようと思って写真を撮ってたんだけど、怖くてなかなか行動に移せなかったって言ってた」「どれも素晴らしい証拠です。まもなく私の父が来ますので、私から説明します」「荻原の父親は、どこまで知ってる?」「私が父に伝えたのは、社長から聞いたことのみです」「てことは、ヒカリさんが裏で家族にいじめられたり、香坂蒼斗にはめられたことくらいか」「そうですね」 荻原のスマホが鳴る。彼は神経質そうにディスプレイを確認すると、父親を迎えに行った。ヒカリはその間、スマホを確認する。マナーモー

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