Masuk第五十九話戦う時はさっきの記憶を使う、そうすれば必ず最大火力で戦える。本当は朱莉の死を利用してるのが心底嫌だけど、さっきのが一番の恐怖であることに変わりはない。ならばもう二度と朱莉を死なせないためには…………使うしかない。「最大限に魔法を使う際に朱莉の死を使わせてもらうけどいい?」朱莉は震えながらも、僕に許可をくれた。朱莉の手を握ろうとすると、どうしてもさっきのことを思い出してしまい……握れなかった。だけど、ここで握れなくては咎を殺せず朱莉も守れない。そう言い聞かせて震えながらも僕は朱莉の手を握った。「風香ちゃん、無理しなくていいんだよ」「それをいうなら朱莉だって…………正直あの時恐怖じゃ言い表せないぐらいだった。信じたくなくて香取雛の夢だと……そう信じたかったんだ」『相方に隠し事は出来る限りしないこと』愛海さんの言葉が蘇るばかりだ。……朱莉に隠し事をされてショックを受けていたというのに、僕自身が蘇生魔法を自分に使うことを口に出していない。正式になるためという言い訳はなしだ。言い訳し続ける以上恋人としても誠実じゃない。これ以上、僕は獣にはならない、なるわけにはいかないんだ。「朱莉はもう知ってると思うけど、咎を殺すために蘇生魔法を僕に使って死に続けようとしていたんだ。だから、その時は僕を連れ戻してほしい……多分その状況になったら僕はおかしくなってると思うから」朱莉にはもう二度あんな姿にはさせずに母さんの記憶戻す。これを二年以内にしなければならない、いいや必ず達成させる。不可能だと言われても僕たちは咎を殺して必ず元の生活に戻る。恐怖の中で生まれた咎への明確な殺意がより僕を強くさせる。「朱莉、一緒に人間に戻ろう。魔葬少女をやめて人間としてたくさんデートしよう」そう決意した時、身体の震えは少し収まった。「その時には今日のことを笑い合おうね風香ちゃん」朱莉の言葉に応えるために僕は改めて決意した。「絶対に笑い合おう、母さん含めて……みんなで」たとえしつこいと言われても僕はこの手の温もりを失わないために強くなるんだ。すると口笛の音と共に時間が止まった。「風香ちゃんには悪いけど、ちょっと光莉の発散に付き合ってもらうね」僕が振り返ると目の前には理性を無くし鬼化したお姉さんがいた。今までの僕なら殴られるだけだけど、今回はそ
第五十八話朱莉と順序を話している最中に……アイツの邪魔が入った。なぜ毎回アイツは僕たちの邪魔をするんだ。「良い具合に成長したな風香、私の見込んだ被験体なだけはある」アイツは普段私なんて使わないし僕たちのことは雛と呼ぶはず、おかしい。本当に中身はアイツ……なのか?『朱莉、さっきはごめん。ちょっと提案なんだけど、中身がアイツなのか確かめたいから手伝ってくれない? もし……もしも予想が当たってしまったらすぐに逃げるよ』『ならすぐにお姉ちゃんに魔法で伝えるよ!』朱莉にはそう言ったけど、予想が当たった時点で逃げる素振りをする前に殺されるのは目に見えている。契約霊と中身を入れ替えるなんて馬鹿げた芸当をするのは、指揮をしている者だけだ。それに人間を魔物に変えられる人を僕は一人知っている。僕の前の子供を魔物に変えていたあの記憶が事実なら父さんだ。それに父さんの本名が荒川咎なら香取雛に魔法を教えた人物ということになる。香取雛、源綾音、冴木満の三人が咎様と呼んでいる。そして三人とも咎様に報告をするために僕と朱莉を殺さずに生かしている。ならば荒川咎は上位の存在であることは予想出来る。アイツは突然今までに見たことのないほど歪んだ笑みを見せ……僕は恐怖で身体が凍ったかと錯覚するぐらい動かなかった。「風香、良い線行っている。ここまで至った被験体は久しぶりだ」……まさか、心を読まれているのか。いや、母さんの時も読まれていたじゃないか…………当たるな、当たるな……当たらないでくれ!朱莉は僕の手を握り安心させようとしてくれた、朱莉だって震えているのに。あの時作った探知魔法を改良して転移に使えるようにしないと、待っていては僕のせいで朱莉が殺される。「それだけは絶対に嫌だ!!! 朱莉逃げ…………」その時世界が地獄であることを理解した。僕が握っていた手の先がなくなっていた。「…………これは夢だ。夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ……こんなのが現実なわけが無い!! 香取雛、いるんだろう!! 記憶を消すならなんなりしてみせろ!!」どれだけ叫んでも周囲を見渡しても朱莉を蘇らせようとしても…………何も、何も出来なかった。膝から崩れ落ちた僕をアイツは…………いいや咎は嘲り笑った。「その表情が見たかったんだ!! だから、あと二回は特別枠として朱莉を蘇らせてあげるよ。
第五十七話謝罪を受け入れてもらえず、朱莉がデートを誘ってきたが、お姉さんからそのデートは明日にしてと連絡があり翌日に繰り越されることになった。僕と朱莉の目的はお姉さんだというのに、デートという言葉に躍ってしまい後回しにしてしまった。こんなので、よく母さんのためとかほざけるよな……こんなの側から見れば全部自分のためじゃないか。帰宅後、一人になった僕は罪の意識で押し潰されそうになった。「このまま僕が僕じゃなくなったらどうしよう、それに次におかしくなって誰かを殺したら……その誰かに朱莉も含まれていたら」そのことを考え始めたら、止まらなくなり……結局朝になってしまった。それから朱莉から連絡があった。『似合う服で行きたいから十八時に学校で集合だからね、風香ちゃん』そのメッセージを見た僕は、朱莉に会いたい気持ちを押し殺した。「正直デートがなくても毎日会いたい」刺された翌日に僕は何を言っているんだ。そして僕は出来るだけ考えたくなかったので、眠ることにした。逃げたのだ、思考することから……怖いというそんな理由で僕は!!朱莉がデートと称して向かったのが、アイツと契約した森だった。森で朱莉に会ってから僕の内心はぐちゃぐちゃになっている。やはり考えすぎて寝不足だからだろうか。朱莉はそんな僕を見越してか森に来た理由を説明してくれた。「風香ちゃんとここに来たら二人で色々思い出せるかなぁって思ってね」幼少期を思い出せるかは別として思い出しはするだろうなとは正直考えた。「ここで朱莉が亀甲縛りで吊るされてる時は正直この子は何してるんだって思ったよ」「酷いけど、振り向いてもらおうと必死だったから……結構凄いことしてた自信があるっ!」腰に腕を当ててドヤる朱莉に僕は改めて思ってしまった。「やっぱり朱莉のこと好きだな」口に出てしまったのは仕方ないと強がりながらも今回は声の裏返りがなかったことに心が躍った。こう考えられるってことは、まだ朱莉と一緒にいられると思ってもいいんだよね……不安になる。「私も好きだよ、風香ちゃん。ここでこの言葉を伝えるのってなんだか不思議な気分だね」「本当にそうだね。……僕の初恋が朱莉で良かったと心の底から思うよ」朱莉と歩いているなかで、様々な思い出が蘇ってきた。「僕の人生が彩られたのはやっぱり朱莉と出会えたからだよ。……出
閑話その16父さんを壊すのは私なのに……先に、あの女が壊しやがってぇぇ!!「父さん、聞いてる? 私に母さんがいないのは父さんのせいだって……未だ理解していないの? 年長の私に言われるとか、馬鹿なんだね」父さんが母さんの話をする際に名前を言わない。言うのはただクソビッチとだけ……私にだって分かるっていうのに、父さんと来たら脳がないのか虐めが犯罪だということを理解していない。母さんを虐めた奴を皆殺しにするまで死ねない。せっかくもうすぐ父さんを殺す計画が上手くいきそうだったのに、先に壊されたら面白くない。たとえ母さんが帰ってこなくても、勝手に動く……趣味も兼ねているからね。「父さん、じ~っくり楽しんでね」反応つまんないな。もうすぐ小学生になるんだから年長さんの間に出来る限り楽しまないとね。良い子ちゃんの演技も大変なんだから……今なら演じなくても楽しめるってものよ!!「ギャハハハハハハハハ!!」あの女も師匠と同じ魔葬少女なのは、あの治癒力を見れば分かる。私には魔法とやらは使えないけど、師匠の眷属として……身体能力で負けるわけにはいかない。回想「魔葬少女の眷属はどうなるのかを君たちで試させてほしい。蛍ちゃんの娘と日暮さんの弟さん。日暮さんの弟さんには時間加速で君と同じ歳にするから、きょうだいとでも思ってこれから過ごしてほしい」これが師匠との出会いで真の家族との出会いでもある。弟は加速で歳を取っただけなので、記憶自体はない。師匠と弟の時間は最上で父さんなぞとは比べ物にならないほどだった。師匠の名前は時貞美里(ときさだみさと)だ。とは言っても、魔葬少女時代のという言葉はつくけれど。師匠の魔法は時の支配らしく、いつでも魔葬少女時代に戻ることや魔物という姿になることも出来るという。私は魔葬少女候補の卵と呼ばれ、弟の玲司(れいじ)は魔人と呼ばれる存在になった。師匠曰くこのことは上層部も知らないことだという。私と玲司は特別な存在なのだと……そう言ってもらえた時は生きる意味を与えてもらえた気がした。それと同時に母さんの復讐を代行出来るという慢心さえ生まれた。だがそれが計画の始まりでもあった。当時四歳の出来事である。回想終わり残りは父さんだけなのに、楽しみが潰されるなんて屈辱だ。するといつもと違う猫の姿の師匠が転移してきた。「
第五十六話朱莉を助けるために恐怖を利用するために傷つけた人たちに謝るために家の前についた。「どうしよう朱莉……インターホンを押す指が動かない」自分の行ったことの重さを理解したが故だとしても相手からすればそんな言い訳通用しない。僕だって朱莉を傷つけられて言い訳されたら激怒するだろう。己の罪の重さに押しつぶされそうになり震える手に朱莉はそっと手を添えてくれた。「風香ちゃんだけに背負わせないから」朱莉の力強い言葉は僕の魂が震えた感覚で涙が止まらなかった。「朱莉……本当にありがとう。それと朱莉、僕が何をされても我慢してほしい」「出来る限りは頑張るけど、無理そうなら止めるからね」「その時は頼むね朱莉」ピンポーン「はーい、だ……れで」少女はインターホン越しに僕を見るなり走っていった。一分程経った時、玄関が開いた。そこで見たのはナイフを持ち、僕へ殺気を向けて涙をこぼして走ってくる少女だった。「お前のせいでぇぇぇぇ!!」その瞬間の僕には避ける選択肢はなかった。ズブ僕にナイフが刺さるなり、少女は僕を押し倒し何度も刺した。「待って、それじゃあ風香ちゃんが!!」僕は首を横に振った。「お前のせいで父さんが、おかしくなったんだ!! 私にさえ怯えて……部屋から出てこない! お前が……お前が…………」少女は冷静になったのかナイフを落とした。「……なんで、父さんなんだ。……父さんが何をしたって言うんだよ、答えてくれ!!」少女の問いかけに僕は包み隠さず話した。「……誰でも良かったってことか。それなら……なんで私たちなんだ!! 別の誰かでも良かったじゃないか……日常を返してよ」この光景に胸が苦しめられ胸の高鳴りなど一切しなかった。これは僕の……いや、今は僕と朱莉の罪なんだ。「もう二度と私たちに顔を見せないで……次に来たら絶対に許さない」結局僕たちは追い返された。そこは予想通りなんだけど、少女はなぜ僕の治療を見てなんとも感じていないんだ?あの少女のナイフは全て臓器にまで達していた。確実に殺す覚悟で刺していたにも拘わらず僕は目の前で治療しているというのに、顔色ひとつ変えていない。見た目的に六、七歳だというのに顔色ひとつ変えずに僕の目の前にいた。その事実が涙を流して僕を刺したと考えると罪の意識に苛まれてしまう。当時の僕だと…………あれ
閑話その15最近の趣味である料理が完成した私は急いで母上に持って行きましたわ、当然転ばないようにですわよ。「母上、食べてくださいませんか? 今回の料理は上手く出来た自信がありますの!」今回は学校での調理実習も取り入れましたから美味しくなっているはずですわ。「ほんと葵はそそっかしいんだから。そんなに走らなくても私は逃げないから」母上は約束を守ってくれる、私の自慢の母ですのよ!「……どうですか? 母上に食べてほしくて練習しましたのよ」「そんなに緊張しなくても葵の作ってくれる料理は世界で一番美味しいのよ、三つ星だって夢じゃないわよ、もっと自信持ちなさい」「そっ、そこまで言われてしまっては仕方ありませんわね」嬉しいですわ、これは夢かしら……分かっていますわよ、夢じゃないことぐらい。はしたないと分かっていますが、飛び跳ねちゃいそうですわ!!「ねえ葵、一つ聞いてもいい?」母上が私に質問してくるということは、覚悟しなければなりませんわね「いつになったらお友達を連れてきてくれるの? 葵のお友達に会ってみたいの!」やはりこの質問でしたわっ!!架空の友達を作る作戦にいたしましょう「私のお友達は大人の女性なので、お仕事が忙しくなかなかお時間を作れない方なのです。もう少しお待ちいただけませんか?」もっと細かく作らなければ母上から質問が飛んできますわ!「お仕事をしているといえど有休を取ればお休みは可能なはずですけれど?」「だっ、大学を卒業したばかりの方なのでお忙しいのですわよきっと」「大学を卒業といえど会うことは出来ますよね」母上、私を心配してくださるのはいいのですが……少し顔が怖いですわよ!!「えーっと、そのですね……その方は卒業したばかりの二十四歳の方で人助けでボランティアにお時間を割くのでお会いさせるのが難しいのですわ」こっ、これならどうですか母上「そんな立派な方とお友達になったのね。だけど葵……もう少しマシな嘘をつきなさい。お母さん、分かるんだからね。いつかその嘘を本当にしてほしいのはお母さんのワガママかしらね……チラッ」「……本当にできるように努力いたしますわ」「別に努力しなくていいのよ。葵の素を見て仲良くしてくれる人ならきっと現れるから取り繕わずに正面から向かい合いなさい。葵にはその方が合ってると思うわよ」その素がなかなか出