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第378話

Auteur: 花辞樹(かじじゅ)
「大事には至らなかったし、跡も残らないと思うわ」

姿月は研時にまなざしを向ける。「ごめんなさい、陸野先輩。また迷惑かけちゃって」

「俺にそんな他人行儀な口をきくな」

研時はそっけなく答えると、改めて深雲の方へ向き直り、顎で廊下をしゃくってみせた。

「二人とも、こっみ入った話なら外でやってくれよ。病人に障るだろ」暮翔がすかさず助け舟を出す。

長年の付き合いだ、阿吽の呼吸というやつだろう。深雲は研時を一瞥すると、黙って彼の後について病室を出て行った。

何かおかしい――姿月の勘が働いた。

彼女は何食わぬ顔で尋ねる。「周藤先輩、陸野先輩と深雲さん……どうかしたんですか」

「ああ、あれか。こないだ個室で景凪さんのことで殴り合いの喧嘩をしてな」暮翔は籠から蜜柑を一つ取り、皮を剥きながら事もなげに言った。「それからずっとギクシャクしてて、俺が伝書鳩やらされてるってわけ」

姿月の瞳の奥で、鋭い光が走った。彼女は無意識のうちにシーツを強く握りしめ、湧き上がる嫉妬と憎悪をねじ伏せる。

「二人が……景凪さんのことで喧嘩を?」

あの深雲が、まさか景凪のために人と殴り合いをしたというの……
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