Mag-log in全員が樹里の事務所で合流する日。
蓮はやっと儀式の準備を済ませた部屋で、王政区の者と連絡がついていた。『そうですか。ではこちらの審査次第またご連絡いたします。
こちらでもニグラム様に聴取をして、リヴァイエル様の生活環境の見直しを図りますので』「ありがとうございます。
あの……本当に……。音楽だけは彼女から取り上げないで下さい。 あいつは攻撃の為に魔法を使ったり、戦いに身を置く様な者ではありません」『それはレン様の感情的な物差しにしか過ぎません。
……ですが、確かに人間の就職活動も大変だと言いますし、それで生活していけるのなら……第五契約者もいるようですし他の悪魔からみを守れるなら、人目に付く行動も……。人間界は法律もありますし、比較的治安のいい国にいるとは聞いていますので』「あとは、屋敷を護る動物契約者もいたんです。勝手に記憶を消されてしまって……どうにか……どうかお願いします」
『その場合、動物の記憶は消した本人……つまりニグラム様自身に戻して貰わないといけません。こちらでも説諭してみます』
交信が途絶える。
正直、あの暴君な兄が説諭だけで「はい、分かりました」と言うわけが無い。蓮は不安なまま、結局シャドウを元に戻せないまま霧香と合流する事になった。
気分が落ち込む。
シャドウの事を「また記憶戻せるかもしれないんだ」と希望を持たせる甘い言葉か、「同じ個体なら記憶が無くなってもシャドウだから」という夢を持たせるか。蓮が一人掛けソファに垂れていると、突然ドアノブがガタガタ言い出した。
「…… ?」
魔法が満足に使えない今、敵襲は困る。だが自分を襲うとしたら、それは自分の身内のヴァンパイアである。この銀製品の多い部屋で中まで侵入出来るとは思えないと決めつけた。
ま、まさか連載する事になるとは。それもこの子達もお引き取り頂いて、本当に感慨深いんです。何がと申しますと、この主人公キリを中心としたレン、ハラン、サイ、ケイヤ、さらに後日追加キャラになるキラという5人の関係性及びストーリーは高校生の時に執筆した大元の作品があり、それから何度も名を変えジャンルを変え挑戦してきました。まさに私にとって作家人生で初めて産んだ子供達でした。更にプロトタイプは公募にも出さず、ファンタジーやSFという概念を経て生きてきた彼らですから少し『バンドもの』や『恋愛もの』と言うより『日常系』という括りに収まったのかなと思います。これから、配信者活動をゲーム企業から公式配信となった彼らですが、どうぞ引き続きよろしくお願いいたしますm(_ _)m2025 !! 担当様、閲覧してくださった方、また私がGNにたどり着くまで支えてくださった読者様と同業の皆様。本当にお世話になりました ! 良いお年を !!
全員が樹里の事務所で合流する日。 蓮はやっと儀式の準備を済ませた部屋で、王政区の者と連絡がついていた。『そうですか。ではこちらの審査次第またご連絡いたします。 こちらでもニグラム様に聴取をして、リヴァイエル様の生活環境の見直しを図りますので』「ありがとうございます。 あの……本当に……。音楽だけは彼女から取り上げないで下さい。 あいつは攻撃の為に魔法を使ったり、戦いに身を置く様な者ではありません」『それはレン様の感情的な物差しにしか過ぎません。 ……ですが、確かに人間の就職活動も大変だと言いますし、それで生活していけるのなら……第五契約者もいるようですし他の悪魔からみを守れるなら、人目に付く行動も……。人間界は法律もありますし、比較的治安のいい国にいるとは聞いていますので』「あとは、屋敷を護る動物契約者もいたんです。勝手に記憶を消されてしまって……どうにか……どうかお願いします」『その場合、動物の記憶は消した本人……つまりニグラム様自身に戻して貰わないといけません。こちらでも説諭してみます』 交信が途絶える。 正直、あの暴君な兄が説諭だけで「はい、分かりました」と言うわけが無い。 蓮は不安なまま、結局シャドウを元に戻せないまま霧香と合流する事になった。 気分が落ち込む。 シャドウの事を「また記憶戻せるかもしれないんだ」と希望を持たせる甘い言葉か、「同じ個体なら記憶が無くなってもシャドウだから」という夢を持たせるか。 蓮が一人掛けソファに垂れていると、突然ドアノブがガタガタ言い出した。「…… ?」 魔法が満足に使えない今、敵襲は困る。だが自分を襲うとしたら、それは自分の身内のヴァンパイアである。この銀製品の多い部屋で中まで侵入出来るとは思えないと決めつけた。
次の日。 洗って貰ったばかりの洋服は綺麗に乾いていて、柔軟剤のいい香りがした。「困ったら言うのよ ? 」「どうしてもダメな時は一度実家に帰るとか」「はい、ありがとうございました ! 」 霧香と彩、恵也、三人頭を下げる。 ウッドデッキに出て冷たい水を啜る。 まだ朝だが、人が多い。「服、ふわふわだね」「うん」 まだお土産品などの売店は開いていないが、直売所では多くの農家が商品を品出ししていた。 そこへ、一人の女性と鉢合わせる。「「あ ! 」」「えぇ !? キリさんとケイ君……と……」 楽団の真理だ。「……深浦君、待って ! 」 スルーしようとした彩を真理が引き止める。「いえ、あの、ご無沙汰してます。その……」「あ、ごめん ! 蕁麻疹出るんだったわね」 真理が彩の腕を離す。 彩の気が立っている為か、蕁麻疹は出もしない。「楽団とはもう、ご縁がありませんので……」「待って ! ほ、ほら世間話くらいいいでしょ ? ……ここで何してるの ? まだ朝だけど、どこか行くの? 」「俺ら今三人で活動してて〜。行く宛てねぇんすよ」 恵也が言ってしまう。 だが、真理ならという希望。「あぁ〜。そういう事。音楽家あるある !! 」 フランク ! 家も食い物も困ってると言うのに、真理にとっては当たり前のように受け入れられる。「真理さん、余ってる楽器とかあったら〜……出れるステージとか……紹介して貰えませんか ? 」「モノクロで ? 」「あ、ちょっと都合があって三人でなんですけど。 パートはボーカル、チェロ、バイオリン、ギター、ベースですかね」「今日は無いけど……うちは楽団だし……ドラムはなぁ〜 ? キリちゃんはチェロ出来るんだよね ? 歌はどの
「ふーん。ねぇ、楽器さえあればここで弾ける ? 樹里さんになんか借りれないかな ? 余ってる楽器とか」「楽器なんか余らないよ。レンタルはあるだろうけど有料。それにここでもちゃんと許可取らないと勝手に弾いたりとか駄目だし」「許可を取ればいいの ? 」「時間帯とか普段は駄目とか、多分場所によって決まりが違うと思う。イベントとかなら別だろうけど」「イベント……そういえば、夏祭りにここで何かやるよな ? 」「カフェの方にポスターあったね。わたし持って来てみる」「おい、一人で歩き回るなよ ! 」 そう言って霧香と恵也がゴミを持ってカフェの方へ歩いていった。 彩は既にそのポスターはチェック済だった。 イベントでステージが建つ夏祭り。 町内の盆踊り会場とは少し遠いここでは、ステージイベントが開催される。 出演者は地元の中高生吹奏楽部や一般男性のジャズバンド、地方テレビ司会の名産品の紹介コーナーなどだ。 しかし昼の見所は……真理のいる、彩と縁深いあの楽団の演奏会だった。 少人数編成の演奏で、そもそも彩とトラブルを起こした団員など、もう在籍していない。それでも、彩は真理に一言でも声をかけるというのはハードルが高いのでスルーしていた。 そんな事から、カフェでポスターを見た霧香と恵也は、なんだかしっくりと来てしまった。 車から降りて来ない彩。「やっぱ会いたくねぇのかな ? 」「でも、向こうはそうでも無いんじゃない ? 公開配信にも来てくれたし、楽屋の前でも真理さんはわたし達に声掛けて来たし……。 キラの家の通報も何回もしてた人だしさ」「うーん……サイが嫌がってるのに……無理にはなぁ……。 だいたい、これに出た所で、別に収入源になるわけじゃないんだし」「……そうだね。楽器弾くだけなら黒ノ森楽器店のとこの最寄り駅に行けばストリートピアノあるし。 うーん……収入源にならないと意味無いかぁ……」「絶対では無いけどさ。普段なら収益関係なしに活動って……宣伝にもなるし
この二人が呑気に弁当を突く同時刻。 蓮は通話を切られたスマホを投げ捨て、トング片手に鳥の銀細工と格闘している訳である。「くっ…… ! 気持ち悪い ! 」 壁に掛かった銀の鳥がジッと蓮を見つめる……ような気がするのだ。 ガチャン !「ひぃあぁぁああぁあ ! 」 ゴキブリを取る女子大生の如く、パニックを起こしながらトングで挟んだ物を見ずにベランダへ放り出す。霧香になど一番見られたくない、情けない姿だ。「はぁーっ!!!!!!……無理〜っ !!!!!! 」 蓮は何とかヴァンパイア領土と連絡を取りたかった。王政区には第三者機関があり、つまり「ディー · ニグラムがアホなことしたら俺たちが怒るよ」と言う者達がいるのだ。 だが人間界から地獄へ交信するには、この部屋は不向き過ぎる。大掛かりな儀式用具も置くため、外でチャチャッと済ます……というのは難しいのだ。 蓮の方が地獄へ出向くとなれば、更に大掛かりな魔法を使うことになるし、今は交信だけでもと思ったのだ。 しかし、この悪魔避けが邪魔をして魔法が使えないでいた訳である。「ふ〜っふ〜っ ! クソ ! あと……三つ……。だぁぁぁ !! 気がおかしくなりそう…… ! 」 Prrr 着信。 蓮は反射的に手に取ると恫喝する。「無理だよ !! これが取れたらそもそも悪魔避けじゃねぇだろ !! 」『ご……ごめんなさいぃぃぃっ !! 』 声色がおかしい。 蓮が液晶を見直すと藤白 咲の表示。「あ……すみません咲さん。今、ハランと話してて。 って言うか今から俺の部屋に来ません ? ……は ? 違いますよ、誤解です !&
李病院はたちまち老人たちがこぞってかかりつけになった。「あらあら、成程。この辺り痛むでしょう ? 」 ロイの丁寧な診察は勿論、程よく若くない年齢、甘いマスクは中高年層女性に馬鹿売れとなった。 更に、だ。「立てますか ? ご家族のいるところまで、どうぞ僕に掴まって……遠慮なさらず ! 」「この歳になると、どうもなぁ〜」「いえ、しっかりなさってますよ ? 内臓とか綺麗じゃないですか ! 」「まぁ、早めに酒も煙草も辞めたからなぁ〜」 研修医ポジションとして実家に戻ったハランは男性票も獲得。「若先生、診察はしないのかい ? 」「僕は非常勤ですし、お手伝いです。ブランクもあるので、医療行為は父に許可されてないですよ」「お医者も大変だぁ。俺の若い頃もよぉ〜……」 そんなやり取りを毎日繰り返す。 李病院の信頼には勿論立地の良さもあったが、一番は希星の存在だった。 高齢者の情報網はとんでもないスピードで、あらゆる噂を運ぶ。あの病院さんがあの事件の子供を引き取ったらしい。凄くいい子らしい。お医者の腕もいいらしい。事実ではあるが、ヤケに過剰な評価までついて回っている。「あら ! 希星くん ! 今日もお手伝い ? 」「あ、草野さん ! 夏休みの宿題で家のお手伝いがあるんです ! 」 そう言い、病院の窓を拭いていく。元々人タラシの希星は一度見た患者の顔や声を忘れない。「偉いわねぇ」「ほら、飴ちゃんあげるから ! 」「わぁ !! これ、好きな味 !! 佐伯さん、ありがとうございます ! 」 素直なありがとうございますは、中々の破壊力がある。反抗期に入る直前、というこの今の時期の素直さは、子育てを終えた層に絶大な癒し効果を与えていた。 この貰った飴ちゃんをハランに自慢し、ハランがお礼を言う……まで、ワンセット。 治療の他にエンチャントされるものが多い病院である。「キラ、そろそろ休憩しよう」「うん ! 」