彼女はようやく悟った。結菜が当初、自らを犠牲にしてまで蒼の命を救おうとしたのは、蒼への愛情が根本的には奏への愛から来ていたからだ。彼女の奏への思いは、とわこの奏への思いに劣るものではない。もし結菜が今、意識を取り戻しているなら、決して奏が悟とその息子に脅されることを望まないだろう。昼食を終え、とわこは奏の手を引いて店を出る。「奏、外をちょっと歩かない?」「うん。普段、瞳と一緒に買い物に行く時って、どんなふうに過ごしてるんだ?」と、彼は興味深そうに尋ねる。とわこはよく瞳と一緒に街へ出かけ、帰りが夕方になることが多かった。「たまに瞳がヘアサロンに行ったり、ネイルやエステに行ったりするの。時間がかかるのはそういう時ね。それ以外だと、買い物したり食事したり。瞳は特にバッグが大好きで、家にいくつもバッグ専用の部屋があるくらいよ」奏は苦笑する。「瞳と比べると、君はあまり物欲がないようだな」「どうして?私はちゃんと欲張りよ。だってあなたをしっかり自分のものにしてるじゃない。それ以上の欲がある?」奏は機嫌を良くし、彼女の手を握り返す。「よし、バッグを買いに行こう」「私はバッグなんて興味ないわ」「じゃあ何が欲しい?」「私は、あなたが欲しいのよ」その不意打ちの言葉に、奏は少し顔をこわばらせる。「さっき鍋を食べていた時の君と、今の君はまるで別人みたいだな。そうやって気分を大きく揺さぶられると、こっちまで落ち着かない。やっぱり平凡で静かな日々の方が好きだ」「じゃあバッグを買いに行きましょ」彼女は彼の腰に腕を回し、車の方へと歩く。「もう何度も瞳と行ってるから、きっと店員さんにも顔を覚えられてるはずよ」二人は外で過ごし、午後四時頃に帰宅した。家に着くと、とわこは奏を部屋で休ませた。自分は買ってきたものを並べて写真を撮り、瞳に送った。瞳は驚いて返信してきた。「こんなにたくさんのバッグを一度に買ったなんて!あなたバッグに興味ないって言ってなかった?」とわこ「だって旦那が買ってくれたのよ」瞳「ふーん、バッグを自慢するんじゃなくて旦那を自慢したかったわけね!」とわこ「瞳、今日気づいたの。彼が本当に私を愛してるんだって」瞳「たかがバッグを何個か買ってもらっただけで、愛されてるって思うの?」とわこ「彼ね、自
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